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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 12月 10日

JUPITER研究

一次予防のstatinに関するさらなるデータ-JUPITER研究
More Data on Statins in Primary Prevention — The JUPITER Study


一次予防におけるstatin療法の役割は、コレステロール値が顕著に上昇していない患者については確かではない。
こうした患者では、高感度C反応性蛋白質(high-sensitivity C-reactiveproteinhsCRP)値の上昇が過剰な心血管リスクと関連している。
企業の資金提供を受けたこの国際的研究では、既知の心血管疾患がなく、LDLコレステロール値が130mg/dL未満で、hsCRP値が2mg/L以上である17,802人(男性50歳以上、女性60歳以上)を、rosuvastatin(20 mg)またはプラセボの連日投与群にランダムに割り付けた。
糖尿病、コントロールされていない高血圧、他のさまざま慢性疾患を含め、多数の除外基準が設定された。

試験は、中央値1.9年のフォローアップ後、早期に中止となった。
rosuvastatinは、LDLコレステロール値を50%、hsCRP値を37%低下させた。
主要エンドポイント(不安定狭心症、心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建術、または心血管系の原因による死亡を含む、最初の主要な有害心血管イベント)は、rosuvastatin群のほうがプラセボ群と比較して有意に低く(100人・年あたり0.77対1.36、ハザード比[hazard ratio:HR]0.56)、この複合エンドポイントの構成要素のすべてが、全死亡率(HR 0.8)と同様、rosuvastatin群で低かった。
医師の報告による糖尿病の新規発症は、rosuvastatin群で有意に多く認められた。
24ヵ月の時点におけるグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)値の中央値もrosuvastatin群で高かった。

コメント:
hsCRP高値の見かけでは健康な人を対象としたこの研究では、statinが有害心血管イベントの発生率を低下させた。
この結果は、一次予防におけるstatin使用の拡大を支持するものである。
しかし、エディトリアル執筆者は、以下の点に言及し、複数の警告を発している。
すなわち、試験登録から除外された患者の割合が高いこと、絶対効果量(effect size)が比較的限られたものであること(1イベントを予防するために、約100人を約2年間治療する必要がある)、糖尿病の発生率が高いこと、statin療法の害に関する長期的なデータがないことである。
エディトリアル執筆者はまた、これはstatin療法のランダム化試験であり、hsCRP検査の研究ではないことを指摘し、CRP検査は、ルーティンにではなく、選択的に使用するよう主張している。
Ridker PM et al. Rosuvastatin to prevent vascular events in men and women with elevated C-reactive protein. N Engl J Med 2008 Nov 20; 359:2195.
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/359/21/2195

Expanding the Orbit of Primary Prevention — Moving beyond JUPITER
Mark A. Hlatky, M.D.
Hlatky MA. Expanding the orbit of primary prevention — Moving beyond
JUPITER. N Engl J Med 2008 Nov 20; 359:2280.

http://content.nejm.org/cgi/content/full/359/21/2280
2008 November 18



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# by wellfrog2 | 2008-12-10 00:23 | 循環器科
2008年 12月 09日

ベナゼプリルとCa拮抗剤、降圧利尿剤

高リスクの高血圧患者に対するベナゼプリル+アムロジピンとベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドの比較
Benazepril plus Amlodipine or Hydrochlorothiazide for Hypertension in High-Risk Patients
K. Jamerson and others

背 景
高血圧に対する至適な薬物併用療法は確立されていないが,米国の現行ガイドラインでは利尿薬を組み入れることが推奨されている.われわれは,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とジヒドロピリジン系カルシウムチャネル遮断薬の併用療法は,ACE 阻害薬とサイアザイド系利尿薬の併用療法に比べて,心血管イベントの発生率を減少させるうえで有効であるという仮説を立てた.

方 法
無作為化二重盲検試験で,心血管イベントリスクの高い高血圧患者 11,506 例を,ベナゼプリル+アムロジピンの併用療法群と,ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドの併用療法群に割り付けた.主要エンドポイントは,心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,狭心症による入院,突然の心停止後の蘇生,冠動脈血行再建の複合とした.

結 果
両群のベースライン特性は同様であった.平均 36 ヵ月追跡した時点で,事前に規定した試験中止基準の境界を超えたため,試験を早期に終了した.用量補正後の平均血圧は,ベナゼプリル+アムロジピン群で 131.6/73.3 mmHg,ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群で 132.5/74.4 mmHg であった.主要転帰イベントは,ベナゼプリル+アムロジピン群で 552 件(9.6%)発生したのに対し,ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群では 679 件(11.8%)発生し,ベナゼプリル+アムロジピン療法の絶対リスク減少率は 2.2%,相対リスク減少率は 19.6%であった(ハザード比 0.80,95%信頼区間 [CI] 0.72~0.90,P<0.001).副次的エンドポイントである心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中に関してはハザード比 0.79(95% CI 0.67~0.92,P=0.002)であった.有害事象の発生率は,試験薬の臨床経験で観察された発生率と一致した.

結 論
心血管イベントリスクの高い高血圧患者に対して,ベナゼプリル+アムロジピンの併用療法は,ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドの併用療法に比べて,心血管イベントを減少させるうえで優れていた.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00170950)

<原文>
Benazepril plus Amlodipine or Hydrochlorothiazide for Hypertension in High-Risk Patients
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/23/2417


# by wellfrog2 | 2008-12-09 00:17 | 循環器科
2008年 12月 08日

心不全とイルベサルタン

駆出率の保持された心不全患者に対するイルベサルタン
Irbesartan in Patients with Heart Failure and Preserved Ejection Fraction
B.M. Massie and others

背 景
心不全患者の約半数では左室駆出率が 45%以上であるが,これらの患者の転帰を改善することが示されている治療法はない.
われわれは,このような心不全患者に対するイルベサルタンの効果を検討した.

方 法
年齢が 60 歳以上で,ニューヨーク心臓協会(NYHA)の心機能分類で II~IV 度の心不全を有する,駆出率が 45%以上の患者 4,128 例を登録し,イルベサルタン 300 mg/日投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた.
主要複合転帰は,全死因死亡または心血管系の原因(心不全,心筋梗塞,不安定狭心症,不整脈,脳卒中)による入院とした.
副次的転帰は,心不全による死亡または入院,全死因死亡および心血管系の原因による死亡,QOL などとした.

結 果
平均 49.5 ヵ月間の追跡中に,主要転帰は,イルベサルタン群の 742 例,プラセボ群の 763 例で発生した.
主要転帰の発生率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 100.4,プラセボ群 105.4 であった(ハザード比 0.95,95%信頼区間 [CI] 0.86~1.05,P=0.35).
全死亡率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 52.6,プラセボ群 52.3 であった(ハザード比 1.00,95% CI 0.88~1.14,P=0.98).
主要転帰に寄与する心血管系の原因による入院率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 70.6,プラセボ群 74.3 であった(ハザード比 0.95,95% CI 0.85~1.08,P=0.44).事前に規定したほかの転帰には,有意差は認められなかった.

結 論
イルベサルタンにより,左室駆出率の保持された心不全患者の転帰は改善しなかった.
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/359/359dec/xf359-23-2456.htm

<原文>
Irbesartan in Patients with Heart Failure and Preserved Ejection Fraction
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/23/2456

<コメント>
イルベサルタンにはCKDに関する大規模臨床試験以外にはエビデンスがありません。
心不全に対するこの臨床試験で良い結果が出なかったのは発売側としては痛いところです。

心不全とイルベサルタン_f0174087_7462926.jpg


<きょうの一曲>
LIBERTANGO played ヨーヨーマ
http://jp.youtube.com/watch?v=44QBoISwIkg

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# by wellfrog2 | 2008-12-08 00:15 | 循環器科
2008年 12月 07日

駆出率の保持された心不全患者に対するイルベサルタン

駆出率の保持された心不全患者に対するイルベサルタン

Irbesartan in Patients with Heart Failure and Preserved Ejection Fraction

B.M. Massie and others

背 景
心不全患者の約半数では左室駆出率が 45%以上であるが,これらの患者の転帰を改善することが示されている治療法はない.われわれは,このような心不全患者に対するイルベサルタンの効果を検討した.
方 法
年齢が 60 歳以上で,ニューヨーク心臓協会(NYHA)の心機能分類で II~IV 度の心不全を有する,駆出率が 45%以上の患者 4,128 例を登録し,イルベサルタン 300 mg/日投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた.主要複合転帰は,全死因死亡または心血管系の原因(心不全,心筋梗塞,不安定狭心症,不整脈,脳卒中)による入院とした.副次的転帰は,心不全による死亡または入院,全死因死亡および心血管系の原因による死亡,QOL などとした.
結 果
平均 49.5 ヵ月間の追跡中に,主要転帰は,イルベサルタン群の 742 例,プラセボ群の 763 例で発生した.主要転帰の発生率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 100.4,プラセボ群 105.4 であった(ハザード比 0.95,95%信頼区間 [CI] 0.86~1.05,P=0.35).全死亡率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 52.6,プラセボ群 52.3 であった(ハザード比 1.00,95% CI 0.88~1.14,P=0.98).主要転帰に寄与する心血管系の原因による入院率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 70.6,プラセボ群 74.3 であった(ハザード比 0.95,95% CI 0.85~1.08,P=0.44).事前に規定したほかの転帰には,有意差は認められなかった.
結 論
イルベサルタンにより,左室駆出率の保持された心不全患者の転帰は改善しなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00095238)

<原文>
Irbesartan in Patients with Heart Failure and Preserved Ejection Fraction
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/23/2456
駆出率の保持された心不全患者に対するイルベサルタン_f0174087_233317.jpg


# by wellfrog2 | 2008-12-07 00:11 | 循環器科
2008年 12月 06日

低用量ペグインターフェロンを用いた長期療法

進行 C 型慢性肝炎に対する低用量ペグインターフェロンを用いた長期療法
Prolonged Therapy of Advanced Chronic Hepatitis C with Low-Dose Peginterferon
A.M. Di Bisceglie and others



背 景
C 型慢性肝炎で抗ウイルス療法に反応しない患者では,疾患が肝硬変,肝不全,肝細胞癌,死亡へと進展する可能性がある.
抗ウイルス療法を長期に行うことで,このような患者の肝疾患の進展を阻止することができるのかどうかは,まだ明らかにされていない.

方 法
過去にペグインターフェロン+リバビリン併用療法に反応しなかった,線維化の進展した C 型慢性肝炎患者 1,050 例を対象として,3.5 年にわたりペグインターフェロン α-2a 90 μg/週の維持療法を行う群と,治療を行わない群を比較する無作為化比較試験を実施した.
線維化の程度により患者を層別し(肝硬変を伴わない例 622 例,肝硬変を伴う例 428 例),3 ヵ月ごとに診察を行い,無作為化の 1.5 年後と 3.5 年後に肝生検を施行した.主要エンドポイントは,死亡,肝細胞癌,非代償性肝硬変によって示される肝疾患の進展とし,ベースラインで架橋線維化がみられた患者については,Ishak 線維化スコアの 2 ポイント以上の上昇とした.

結 果
517 例を 3.5 年にわたりペグインターフェロンを投与する群に,533 例を無治療群に無作為に割り付けた.
血清アミノトランスフェラーゼ値,血清中 C 型肝炎ウイルス RNA 量,組織学的壊死・炎症スコアは,いずれもペグインターフェロン投与群で有意に減少したが(P<0.001),主要転帰の発生率には両群間で有意差は認められなかった(投与群 34.1% 対 無治療群 33.8%,ハザード比 1.01,95%信頼区間 0.81~1.27,P=0.90).
重篤な有害事象が 1 件以上認められた患者の割合は,投与群で 38.6%,無治療群で 31.8%であった(P=0.07).

結 論
C 型慢性肝炎で線維化が進展しており,ペグインターフェロン+リバビリンの初回治療に反応しなかった患者では,肝硬変の有無にかかわらず,ペグインターフェロン投与を長期に行っても疾患が進展する割合は低下しなかった.
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/359/359dec/xf359-23-2429.htm
Journal WATCH Online 日本語版

New England Journal of Medicine 日本語アブストラクト
<原文>
Prolonged Therapy of Advanced Chronic Hepatitis C with Low-Dose Peginterferon
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/23/2429


# by wellfrog2 | 2008-12-06 00:07 | 消化器科