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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 06月 11日

親が長寿だと子も長寿

長寿が遺伝するかどうかは大いに気になるところです。
結論は両親が長寿ということが重要なようです。
心血管イベントが日本と欧米では異なるため外国のデータをそのまま敷衍することはできません。
しかし参考にはなると思います。

〔米オハイオ州クリーブランド〕ボストン大学(ボストン)老人病学のDellara F. Terry博士らは,マサチューセッツ州フラミンガムの住民を対象に1948年から心血管リスクなどの健康関連因子の情報を収集している長期フラミンガム研究の最新知見をArchives of Internal Medicine(2007; 167: 438-444)に発表した。
親が長寿だった被験者は,同様に長寿者が多かったとしている。


両親とも長寿が最高に有利
Terry博士らは,親もフラミンガム研究に参加した85歳以上の長寿者,または1985年1月1日以前に死亡した1,697例の分析を行った。
このうち両親とも,あるいは片親が85歳以上の長寿であったのはそれぞれ11%,47%であった。
血圧と総コレステロール/HDLコレステロール比が最適あるいは正常で,フラミンガム・リスクスコアが低値の住民の割合は,両親とも85歳以上の長寿の群が最高であった。
body mass index(BMI)との関係は明らかではなかったが,肥満住民で両親とも存命していた人は少なかった。
両親とも長寿の群では高血圧リスクが低く,経時的なフラミンガム・リスクスコアの進行が遅かった。
同博士らは「これらの知見は,親が長寿の人は長寿でない人と比べて中年期の心血管リスクの点で有利で,この利点は持続するものであることを示唆している」と結論。
心血管リスクが低いことと,親が長寿であることの遺伝的背景を理解することは,リスクが低い人の寿命を延ばす新たな方法につながるのではないか」と述べている。

アルバートアインシュタイン医科大学(ニューヨーク州ブロンクス)のClyde B. Schecter博士は,同誌の論評(2007; 167: 428-429)でフラミンガム研究は重要であるとコメント。
心疾患が原因で多くの人が死亡する。長寿を促進する因子は,当然,心疾患による死亡リスクを低下させるはずである。これが心血管疾患を長寿研究の主領域とする理由の1つである」と述べている。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4022023&year=2007

出典 Medical Tribune 2007.3.31
版権 メディカル・トリビューン社


<フラミンガムスコア関連サイト>
Estimating Coronary Heart Disease (CHD) Risk Using Framingham Heart Study Prediction Score Sheets
http://www.nhlbi.nih.gov/about/framingham/riskabs.htm

全世界がフラミンガムスコアで良いのか?
英国人にとってはフラミンガムよりQRISKが有用
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200707/503894.html
心血管リスク推算には、米国のフラミンガムコホート研究に基づく算出法が広く用いられている。しかし、人種差や社会環境の差を考えると、最適なリスク推算法は国ごとに異なるのではないだろうか。
英国Nottingham大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、英国の一般開業医の診療データベースを利用して、独自のリスク予測指標を開発、この指標が英国人にとってはフラミンガムスコアよりも有用であることを確認した。

Framingham Heart Studyによる男性の10年間の冠動脈疾患発症(心筋梗塞発症や冠動脈疾患による死亡)のリスク予測
http://www.gik.gr.jp/~skj/HL/framingham-men.php3

Framingham Heart Studyによる女性の10年間の冠動脈疾患発症(心筋梗塞発症や冠動脈疾患による死亡)のリスク予測
http://www.gik.gr.jp/~skj/HL/framingham-women.php3

フラミンガムリスクスコア
http://www.drnasu.com/health/framingham_male.htm

<長寿・遺伝 関連サイト>
遺伝からみた老化
http://www.tyojyu.or.jp/hp/page000000500/hpg000000478.htm
線虫とよばれる生物において、エネルギー代謝の調節と密接に関連するタンパク質の遺伝子の変異によって老化が早くなったり、または遅延することによって健康寿命が変化することが明らかになってきています。興味深いことにこの代謝調節の経路は、下等な動物から私たち人類まで非常によく保存されています。


老いとは何か
http://www.mnc.toho-u.ac.jp/v-lab/aging/doc1/doc1-032.html
「老化」 は遺伝支配を受けていると思われますが、今のところ哺乳類では“老化遺伝子”や“抗老化遺伝子”あるいは“長寿遺伝子”のような特別な遺伝子は見つかっていません。

長寿のギネス記録
http://www.yobouigaku-kanagawa.or.jp/kenkana/430-3.html
長生きの人のことを知ることは長寿の秘訣を探る上で参考になる。
ギネスブックが世界一の長生きと認定したのはフランス人女性のカルマンさん。
1875年2月、南フランスのアルルに生まれ、1997年8月に122才で亡くなった。
カルマンさんの場合、いったい何が長生きの秘訣だったのだろうか?
まず、彼女の遺伝的要因に注目したい。彼女の両親は母親が86才、父親が93才まで長生きしている。
その当時の平均寿命をを考えあわせると、両親は相当の長寿者ということになる。
カルマンさんは遺伝的に長寿に有利な要因を持っていたことになる。
しかも、それは両方の親から引き継いだに違いない。
カルマンさんは結婚して娘を出産した。
しかし、その娘イボンヌさんは1934年に死亡。夫も38年に、唯一の孫も63年にそれぞれ亡くなった。
長生きしたカルマンさんを母や祖母に持ちながら、なぜ彼女の子孫は長生きできなったのか?カルマンさんと彼女の子孫の関係を考えると、長寿者になるには父親も母親も長生きであることが必要で、一方の親だけが長寿であっても十分でないのかも知れない。


長く楽しく生きる ~100歳以上の長寿者に見られる隠れた遺伝子~
http://www.kenko.org/2007/03/

長寿の根拠を求めて(2) 生活習慣病『遺伝』より『環境』に比重
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/food/list/2007/CK2007032702003935.html
(過去の記事で「シリーズ長寿の根拠」の記事をみることができます)

<コメント>
日本には久山町研究という立派な研究があります。
貴重な研究データは大いに活用して実地医療にも生かしたいものです。

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西村計雄  「南フランス」油彩3号
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p111661625

<自遊時間>
点滴治療:患者1人死亡14人発熱、嘔吐 三重・伊賀
三重県は10日、同県伊賀市の診療所で5月23日から9日まで鎮痛薬の点滴治療を受けた14人の患者が腹痛、発熱、おう吐、ふるえ、白血球の減少などの症状を訴え、1人が死亡したと発表した。
同県は医療ミスなどの可能性があるとみて調べている。
三重県警によると、死亡したのは女性I さん(73)。
県警は事件事故の両面で捜査を始めた。

三重県などによると、死亡したI さん以外に症状を訴えた13人は60~80歳代の男女。
23日に3人、6月2日に2人、6日に1人、9日に7人が伊賀市内の病院に入院した。
いずれも快方に向かっているが、11人はまだ入院中。

患者が共通して受けた治療は生理食塩水100ミリリットルに鎮痛薬「ノイロトロピン」3ミリリットルとビタミン剤「メチコバール」1ミリリットルを混合した薬剤の点滴とみられる。
敗血症の症状を示している患者がいることから、県などは点滴の際に細菌感染などがあった可能性もあると見て調べている。

I さんは9日にT整形で治療を受け、10日に自宅で亡くなっているのを家族が見つけた。
県警は11日、司法解剖をして死因の解明を目指す。

毎日新聞 2008年6月11日 0時08分
(最終更新 6月11日 0時11分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080611k0000m040146000c.html


<コメント>
今日、当院には「微量採血のための穿刺器具(針の周辺部分がディスポーザブルタイプでないもの)及び採血器具(単回使用採血ホルダー)の取り扱いに係わる周知徹底」という調査依頼が郵送されて来ました。
もし薬剤ではなく「点滴の際の細菌感染」ということになれば余りにもタイミングのいい「事故」です。
秋葉原の事件もHBV感染拡大の可能性という、血液がらみの話になってきています。

さらに気になったことがあります。
それは、もし薬剤が原因の場合、対応や補償に先発品とジェネッリクで相違がないことが医療提供者には担保されているかということです。



読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞくhttp://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
井蛙内科開業医/診療録http://wellfrog.exblog.jp/


by wellfrog2 | 2008-06-11 00:42 | 腎臓病


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