井蛙内科開業医/診療録(2)

wellfrog2.exblog.jp
ブログトップ
2008年 07月 08日

J-DOIT3

多因子介入の意義を検証
血糖・血圧・脂質の多因子介入による心血管イベント抑制効果が実証されてきたが,糖尿病患者を対象とした多因子介入試験は今まで比較的少なく,わが国でも初となるJ-DOIT3※1の登録が始まったところだ。
一方,米国では厳格な血糖管理を検証したACCORD※2において,強化療法群の死亡が従来療法群を上回ったとする報告が波紋を呼んでいる。
会長の門脇教授は,ACCORDとJ-DOIT3の違いを示し,日本から質の高いエビデンスを発信する意義を訴えた。


5.8%を目指し6.5%の壁を超える
これまで糖尿病患者の多因子介入効果を検証した試験として,STENO2が知られている。HbA1c値6.5%未満を目標に設定した強化治療群の達成率は約15%だったが,強化治療群での心血管イベントの有意な抑制が実証され,試験終了後の追跡調査では累積全死亡率の有意な低下も確認された。
 
わが国の糖尿病患者のコントロール状況は,HbA1c値6.5%未満が35%,血圧130/80mmHg未満が20%,LDLコレステロール(LDL-C)120mg/dL未満は45%程度にとどまっている。
このような状況下で登録が進むJ-DOIT3は,高血圧または脂質異常症のある2型糖尿病患者を対象に,HbA1c値6.5%未満,血圧120/75 mmHg未満,LDL-C 120mg/dL未満という厳格な強化療法の効果を検討する試験である。
治療レジメンとしては,血糖管理はチアゾリジン誘導体,血圧管理はレニン・アンジオテンシン系抑制薬,脂質管理はストロングスタチンがおもな基礎薬となっており,増量または併用の3段階のステップとなっている。
 
登録時点の平均HbA1c値は約7.7%であったが,20か月を過ぎた時点で強化療法群6.03%,従来療法群6.78%に推移した。門脇教授は「5.8%を目指すことでいつのまにか6.5%の壁を突破できたのではないか。われわれのなかに目標設定への壁があったのかもしれない」とコメントした。
 
血糖以外の血圧や脂質についても目標値に近い値まで管理できていたが,体重については強化療法群で若干上昇傾向であった。
この傾向は全施設で一様ではなく,生活習慣の改善により増加を認めなかった施設も少なくない。
そのほか,強化療法群で低血糖,浮腫,CPK上昇の頻度が高くなっているが,重篤なものはほとんど認められていない。


ACCORD中止で意義がさらに高まる
今年2月に報告されたACCORDは,従来療法群でHbA1c値7.5%,強化療法群で6.4%のコントロール下で死亡例がそれぞれ203例(11件/1,000人・年),257例(14件/1,000人・年)だった。
両群とも米国で同様の危険因子を有する2型糖尿病の死亡率をはるかに下回ったが,強化療法群の死亡数が多かったことから波紋を呼んだ。
同時期に行われた血圧・血糖の介入試験であるADVANCE※3では,強化療法群の心血管死亡,全死因死亡の増加はなく,細小血管障害の発症抑制が認められた。
 
ACCORDの結果を受け,J-DOIT3も一時登録を見合わせるなどの対応が取られたが,試験評価委員会が行った中間解析の結果,強化療法群と従来療法群で心血管イベント発症率に有意差が認められていないことから,試験の継続が承認された。
門脇教授は,ACCORDでは随時血糖の結果で強制的にインスリン量の増量が行われ,重症低血糖が頻繁に発生していたのに対し,J-DOIT3ではインスリン治療まで移行する症例が少ないなど,両試験のプロトコルの違いを指摘。
生活習慣の改善を十分に行い,日本で通常行われている「個々の病態を踏まえた厳格かつ確かな安全性」を両立した治療を行っていくことが重要とした。
 
同教授は「ACCORDが中止された現在,多因子介入による厳格な強化療法を検討する試験はJ-DOIT3のほかにない。日本から世界にエビデンスを発信する意義がある」と述べた。

※1 Japan Diabetes Optimal Integrated Treatment study for 3 major risk factors of cardiovascular disease
※2 Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes
※3 Action in Diabetes and Vascular Disease: Preterax and Diamicron Modified Release Controlled Evaluation

f0174087_21542420.jpg

デュフィ「The Beach」
http://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/113801081

<番外編>
HbA1c標準化に向けた世界的取り組み始まる
HbA1c値は過去1〜2か月の平均血糖レベルを示す評価項目として糖尿病の診療で広く用いられているが,その測定法や測定標準物質の違いにより国際間でばらつきがある点が問題となっていた。
 
昨年6月に国際糖尿病連盟(IDF),国際臨床化学連合(IFCC),米国糖尿病学会(ADA),欧州糖尿病学会(EASD)がHbA1c値を国際標準化してIFCC値(nmol/mol)に統一する「HbA1c値国際標準化についての共同声明」を発表したのを受け,わが国においてもIFCC値の導入に向けた取り組みが始まっている。
ワークショップ「ヘモグロビンA1cの国際標準化―JDS値からIFCC値へ」において日本糖尿病学会「糖尿病関連検査の標準化に関する委員会」委員長の柏木厚典教授は,従来のJDS値による%表記とIFCC値〔mmol/mol=10.39×JDS値(%)−16.8〕の併記を今後進めることとした。
一方,ADAが検討を進める平均血糖値については今後の研究報告を待ち,現時点での使用検討は見送ったことも報告された。

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞくhttp://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
井蛙内科開業医/診療録http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)
[PR]

by wellfrog2 | 2008-07-08 00:18 | 糖尿病


<< 2型糖尿病と頸動脈エコー      新しい脳梗塞治療 >>