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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 07月 21日

メトホルミンの投与量

メトホルミン
既承認用量の倍量1,500mgの優越性を証明

メトホルミンは用量依存性にHbA1c低下が得られることがわかっており,米国では2,550mg/日,欧州では3,000mg/日まで使用できるが,わが国の承認用量は最高750mg/日である。そこで,日本人を対象とした用量反応検討試験が行われた結果,承認用量よりも高用量(1,500mg)のほうが優れていることが示されたと,東京医科大学第三内科の小田原雅人主任教授が同学会で報告した。

7割がHbA1c値6.5%未満を達成
メトホルミンは欧米では2型糖尿病治療の第一選択薬として広く用いられているが,わが国での適応はインスリン非依存型糖尿病で,スルホニル尿素(SU)薬が効果不十分な場合あるいは副作用などにより同薬の使用が不適当な場合に限るとされている。
小田原主任教授は「わが国ではメトホルミンの承認最高用量が750mg/日ときわめて低く抑えられているため,欧米では同薬によるHbA1c低下量が1.5〜2.0%なのに対し,わが国では0.9%と軽度な低下しか得られない」と説明した。
 
そこで,わが国でも高用量メトホルミンを使用できるようにするため,2型糖尿病患者を
(1)プラセボ
(2)メトホルミン750mg/日
(3)同1,500mg/日
―の3群に動的割り付けする二重盲検並行群間比較試験が実施された。
なお,食事療法や運動療法で効果不十分な患者はメトホルミン単独療法(267例),SU薬で治療中の患者はメトホルミンを追加する併用療法(258例)とし,それぞれ解析した。
対象は,平均BMI 25前後,平均糖尿病罹病歴7.1/7.5年であった。
 
HbA1c値の変化量の推移を見ると,単独療法,併用療法ともにプラセボ群では悪化(上昇)しているのに対し,メトホルミン群では単独,併用ともにプラセボ群に比べて有意に低下。
実薬では用量依存性に効果が増しており,750mg/日群(低下量0.6〜0.7%)と1,500mg/日群(同1.0〜1.3%)の間に有意差が認められた。
 
HbA1c値6.5%未満の達成率は,単独療法ではプラセボ群2割,メトホルミン750mg/日群4割に対し,同1,500mg/日群では7割と飛躍的に上がっていた。併用療法も同様で,750mg/日群に比べて1,500mg/日群では有意に達成率が高かった。
 
有害事象および副作用の発現率は,単独療法,併用療法ともに1,500 mg/日で増えていたが,ほとんどが消化器症状で,投与初期に認められた。
また,低血糖症は単独療法では皆無で,SU薬との併用療法でのみ見られたが,重症例はなかった。
さらに,乳酸アシドーシスに関連する臨床症状や血中乳酸値上昇,体重増加も認められなかったことから,メトホルミン1,500mg/日を投与しても安全性に特に問題はないと考えられた。
 
同主任教授は「日本人2型糖尿病患者においてメトホルミン既承認用量(750mg/日)を超える高用量(1,500 mg/日)の有用性が確認された」と結論。肥満の有無で同薬の効果に差があるのかとの質問に対しては,「BMIを25以上と未満に分けても効き方は全く同じであった」と述べた。


軽症の2型糖尿病
グリメピリド0.5mg投与の有用性を示唆
第3世代スルホニル尿素薬グリメピリドは一般に,食事療法や運動療法を十分に行っても血糖コントロールが不良の2型糖尿病に使用される。
順天堂大学代謝内分泌学の金澤昭雄准教授らは,HbA1c値が6.6〜7.9%の軽症の2型糖尿病患者を対象にグリメピリドの有用性について検討。
グリメピリドは月1回程度の外来管理でも自己血糖測定(SMBG)使用例と同様に軽症例において十分な血糖コントロールを達成し,多くの症例は0.5mg/日で管理しえたと報告した。


0.5mg/日投与有効例の75%がHbA1c値6.5%未満を達成
対象は,食事療法のみ,あるいはメトホルミンかα-グルコシダーゼ阻害薬の単独投与でHbA1c値が6.6〜7.9%の2型糖尿病患者50例で,グリメピリドの投与量を,朝夕のSMBG値に応じて調節(120mg/dL以上から0.5mg単位で増量)するSMBG群24例と,月1回の外来受診時に測定したHbA1cやグリコアルブミンを指標に調節する従来療法群26例にランダムに割り付け,両群ともに0.5mg/日から投与を開始し,6か月間経過を観察した。
患者背景については両群間に差はなく,グリメピリド投与前のHbA1c値は従来療法群7.3±0.4%,SMBG群7.2±0.5%であった。
 
その結果,グリメピリド投与6か月後の平均投与量は従来療法群(0.6±0.3mg/日)に比べてSMBG群では1.0±0.8mg/日と有意に多かったが,HbA1cの変化は両群間に差がなかった。
対象全体では,グリメピリド投与6か月後の平均投与量は0.9mg/日,HbA1c値6.5%未満の達成率は57%で,食後血糖値,HbA1c,グリコアルブミンが治療前後で有意に改善した。
一方,重篤な副作用はなく,低血糖様症状が3例発生した。BMIも投与前後で変化はなかった。
 
さらに,初期投与から6か月間増量しなかった初期投与量群(0.5mg/日)32例と増量群(1.0mg/日以上)15例に分け,HbA1cの推移を検討した。
その結果,両群ともに有意に改善したが,初期投与量群の改善がより良好であったという。
 
以上の結果から,金澤准教授は「グリメピリドは軽症の2型糖尿病に対して月1回の外来管理でも十分な血糖コントロールを達成した。0.5 mg/日の少量投与が有効であった症例のHbA1c値6.5%未満達成率は75%と高く,軽症でも初期投与量0.5mg/日で管理できるような患者でより有益な可能性がある」と述べた。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-07-21 00:05 | 糖尿病


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