2008年 08月 25日

がん検診における超音波検査の位置付け高まる

がんは増殖するとともに転移しやすくなるため,早期であればあるほど治療による治癒率は高まる。
そこで,がんを早期に発見することが重要課題とされ,がん検診の体制が確立されてきた。
第81回日本超音波医学会のシンポジウム「検診ではここは見逃さないように」(座長=アーバンクリニック・小西豊院長,長野県立こども病院循環器科・里見元義副院長)では,これまで超音波検査の位置付けがあまり高くなかった乳がんや腹部がんの検診などにおいてその有用性が明らかになりつつあることが示された。


<子宮体がん>
経腟超音波カラードプラによる血流診断で早期発見の可能性

子宮がんによる死亡率は子宮頸がんの検診の普及で年々減少していたが,1990年以降,高齢化,生活スタイルの欧米化に伴い,子宮体がんが急増してきたことから増加に転じた。
そこで子宮体がんの早期発見が重要課題となっているが,有用な検診方法は確立されていない。
福岡大学産婦人科の江本精・准教授らは,子宮内膜生検で診断が確定した患者を対象にした検討から,
経腟超音波Bモード法で子宮内膜の厚みを測定し,カラードプラ法を併用して血流の有無を確認することにより,子宮体がんを早期に発見できる可能性を示唆した。

子宮内膜肥厚のみでは鑑別できず
江本准教授らは,子宮内膜の厚みを経腟超音波Bモード法で調べた後,子宮内膜生検で診断が確定した子宮内膜増殖症25例と子宮体がん55例を対象にカラードプラ法にて腫瘍内血流の有無を調べ,組織型,分化度,進行期,筋層浸潤,リンパ節転移の有無との関連を後方視的に検討した。
対照は,健常閉経後女性60人。
子宮内膜の厚みは,子宮体がんが18.7mm,子宮内膜増殖症が16.2mm,健康人が3.8mmと,前2者は健康人に比べて有意に子宮内膜肥厚が認められたが,前2者間に有意差はなかった。
しかし,血流は子宮体がんに有意に多く認められ,子宮内膜増殖症では留膿症合併の1例を除いて検出されず(71.7% vs. 5.6%,P<0.0001),健康人では1例も検出されなかった。
また,子宮体がんの血流の陽性率は,進行期,分化度,筋層浸潤が進むほど高くなり,リンパ節転移のあるほうが高かった。
 
同准教授は「子宮内膜増殖症と子宮体がんの鑑別はBモード法だけでは難しく,カラードプラ法の併用が有用()。
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また,血流の検出が低分化がんや肉腫,筋層浸潤例の予後不良の予知に役立つことも判明した」と結んだ。


<肝細胞がん>
3cm以下なら生存期間に影響なし
大垣市民病院消化器科の熊田卓部長らは,肝細胞がん(HCC)と診断された患者のサーベイランス形態を調査し,HCCの早期発見・早期治療が生存率に与えるインパクトを解析したところ,腫瘍径3cm以下で発見されれば生存期間に与える影響は少ないことを明らかにした。
また,近年,高リスク群のサーベイランス体制の確立で早期発見例が増加し,予後が改善していることも明らかになったと報告した。


サーベイランスの質向上と意識改革が必要
熊田部長らは,1989~2007年に経験したHCC 1,596例のうち,単発および多発の2,3,4,5cmで治療を開始した421例を対照とした。
そして3cm未満の単発で発見され,3か月以上の間隔で超音波検査(US)が2回以上行われて腫瘍倍加時間(DT)の測定が可能,かつ肝切除,局所治療あるいは動注化学塞栓療法(TACE)が施行された109例を対象に,DTを用いて各症例で腫瘍が対照症例のサイズに増大するまでの期間を算出し,その期間を実際の生存期間から減算してlead-timeバイアスを補正した生存期間を求め,同サイズの対照の生存期間と比較した。
その結果,補正生存期間は,対照の生存期間に比べ,3cmまではほぼ同等であったが,4cm以上になると有意に長くなり,長期生存には早期治療開始が望ましいことが示唆された。
 
また,1968~2004年に初発HCCと診断された1,850例のうち,初発時のサーベイランスの形態が判明した1,641例を診断年代別に4群( I 期1968~80年151例,II期1981~90年409例,III期1991~2000年757例,IV期2001~04年324例),サーベイランス形態別に3群(同院,近医診療所,なし)に分け,ステージ分類や生存率を検討。
それによると, I 期ではほとんどがステージIVで,サーベイランスなしの飛び込み例であったが,それらは年々減少し,近年ではステージ I および同院や近医診療所でのサーベイランス例が増加していた。
同院や近医診療所でのサーベイランス例ではステージ I が年々増加しており,飛び込み例より明らかに多かった。
また,HCCの生存率は,年々高くなっており,同院や近医診療所でサーベイランスされた例が飛び込み例より有意に高かった。
 
しかし,現在でもなお,近医診療所サーベイランス例ではステージ I が2割以下と少なく,初発HCCの約2割が飛び込み例で,その約半数がステージIVであった。
 
同部長は「近医診療所において侵襲性のないUSを活用するなどサーベイランスの質の向上を目指すとともに,一般市民を含めてサーベイランスに対する意識を改革し,HCCを3cm以下で発見していくことが大切だ」と強調した。


<乳がん>
超音波検査の導入・普及を
ちば県民保健予防財団の橋本秀行診療部長らは,自験例の検討から,乳がんの検出率がマンモグラフィでは40歳代だと約10%低下するのに対して,超音波検査(US)では年齢に関係なく同等であったことを明らかにし,乳がん検診には,USを導入・普及させることが望ましいことを訴えた。

悪性を見分けるポイントはhalo,境界線の断裂,縦横比
現在,日本の乳がん検診は,40歳以上の女性を対象に,2年に1度,マンモグラフィ(40歳代は2方向撮影)を原則とし,その精度を補完するために視触診を併用する形で実施されている。
橋本診療部長らは,乳がん症例694例についてマンモグラフィ,USの乳がん検出率をレトロスペクティブに比較。
すると,乳がん検出率は,マンモグラフィ,USそれぞれ全年齢が82.3%,86.6%,40歳代が76.5%,87.6%,50歳代以上が85.7%,86.0%と,USでは年齢による差がほとんど見られなかったのに対し,マンモグラフィでは40歳代が50歳代以上に比べて約10%低くなることがわかった。
同診療部長は「今のところ,USが乳がん死亡率を低下させるという科学的根拠はないが,検診にUSを導入したほうが望ましい」と述べた。
千葉県では行政の理解によりマンモグラフィやUSを用いた乳がん検診を実施しているという。
 
同診療部長は,マンモグラフィで発見できない5mm未満から10mm前後の浸潤がんを確実に発見するために,腫瘤像形成性病変のUS所見から悪性の可能性(カテゴリー3以上)を判定するポイントについて言及した()。
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すなわち,腫瘤が嚢胞であれば良性で,混合性パターンであれば良性のことから悪性のこともあり,症例に応じて判断する。
充実性パターンの場合はまず境界部高エコー像(halo),および乳腺境界線の断裂の有無を確認し,いずれかが認められれば悪性(疑い)と判断する。
また,いずれもない場合でも,微細・点状高エコーを有したり,縦横比(D/W:最大径断面における腫瘤の低エコー像の縦方向の長さを横方向の長さで除したもの)がカットオフ値の0.7以上(縦長)であったりすれば悪性を疑うという。


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by wellfrog2 | 2008-08-25 00:07 | 未分類


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