井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 09月 03日

オレンジジュースと糖尿病

糖尿病の患者さんに「オレンジジュースは飲んでいいですか」と聞かれた場合にどのように答えるか。
従来なら「少しだけならいいでしょう」とか「出来るだけ飲まないようにね」といった歯切れの悪い指導をして来ました。
以下の論文で、ますます混迷は深くなってしまいました。

同じようなことが「骨粗鬆症と牛乳」についてもいえます。

骨粗鬆症…「牛乳は有害」説根拠なし
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20071226-OYT8T00202.htm

なまじっかな知識がかえって患者さんへの指導を難しくしてしまいます。

オレンジジュースは糖尿病患者に安全
動脈壁の酸化ストレスと炎症抑制

〔米ニューヨーク州バッファロー〕ニューヨーク州立大学バッファロー校(UB)内分泌学・糖尿病・代謝学のParesh Dandona教授らは,糖分の高カロリー負荷にもかかわらず,オレンジジュースはフラボノイドが豊富に含まれているため糖尿病患者にとって健康的な食品であるようだとDiabetes Care(2007; 30: 1406-1411)に発表した。

動脈壁の酸化ストレスを軽減
フラボノイドは,活性酸素種(ROS)として知られる有害な酸素フリーラジカルの発生を抑制する。
過剰なフリーラジカルは,蛋白質,脂質,DNAを含む細胞のあらゆる構成要素に損傷を与え,心疾患,脳卒中,糖尿病を含む多くの慢性疾患の発症に関与する。
 
研究責任者でウェスタンニューヨーク糖尿病・内分泌学センターの所長でもあるDandona教授は「多くの主要な疾患は動脈壁の酸化ストレスと炎症に関連しているため,このような病状を引き起こす可能性が最も低い食品を探すことが重要である」と述べている。
 
同教授は「われわれの過去の研究から,300kcalのグルコースがROSなどの炎症反応を誘発することが示されている。仮説として,300kcalに相当するオレンジジュースあるいはフルクトースは,同カロリーに相当するグルコースと比べて酸化ストレスと炎症の誘発の度合いが低いのではないかと推測される」としている。
 
仮説を証明するための研究には,健康な正常体重〔body mass index(BMI)が20〜25〕の成人32例(20〜40歳)が参加した。
参加者は,300kcalに相当するグルコース,フルクトース,オレンジジュースまたは甘味料のサッカリン添加水を摂取する 4 群のいずれかに均等にランダム化割り付けされた。
試験前に空腹時の血液を採取したほか,飲みものの摂取に要した10分間が終了してから 1 時間後,2 時間後,3 時間後にも血液サンプルを採取した。

フラボノイドがROSを抑制 その結果,グルコース摂取群の血液サンプルでは,摂取から 2 時間後にROSが有意に増加したが,フルクトース摂取群,オレンジジュース摂取群,サッカリン摂取群では有意な増加は認められなかった。
 
Dandona教授は「オレンジジュースに含有されているグルコース量は,グルコース群と同等であるにもかかわらず,オレンジジュース群では摂取後にROSの増加または炎症が認められないという驚くべき知見が得られた。そこで,オレンジジュースに含まれるフラボノイド,ビタミンC,フルクトースのうちどの成分がROSの発生の抑制に寄与しているのかという疑問が生じた」と述べている。
 
血液サンプルの付加的な検査から,フルクトースとビタミンCはいずれも酸素フリーラジカルを抑制しないことが明らかになった。
一方,オレンジジュースに含有されている2 種類のフラボノイドであるヘスペレチンとナリンゲニンは,ROSの発生をそれぞれ52%,77%阻害することがわかった。
 
同教授は「われわれのデータは糖尿病患者に関連している。なぜなら糖尿病患者の集団では,ROSによるストレスと炎症が有意に増加し,動脈硬化の発症に関与している可能性があるからである。酸化ストレスと炎症を増加させない食品,あるいは減少させる食品を選択することが重要である」と指摘している。
 
さらに「肥満,過体重,2 型糖尿病は酸化ストレスと炎症に関連しており,米国人口の60%以上がこうした状態にあるという現状を考えると,今後も安全な非炎症性の食品や食生活の追求を継続しなければならない」と述べている。

出典 Medical Tribune 2007.9.27
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
オレンジのフラボノイドは糖尿病の味方です
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20070729A/
Fruit juice and type 2 diabetes
Just one glass of orange juice a day could increase risk of diabetes
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1038079/Just-ONE-glass-orange-juice-day-make-obese-AND-increase-risk-diabetes-says-research.html
(オレンジジュースはよくないという記事です)
http://www.nhs.uk/news/2008/07July/Pages/Fruitjuiceandtype2diabetes.aspx
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<番外編>
術前に血糖値が高いと周術期死亡リスクが上昇
〔オランダ・ロッテルダム〕エラスムス医療センター(ロッテルダム)麻酔科のPeter G. Noordzij氏は「血糖値が高い患者では,たとえ心臓や血管以外の手術でも周術期死亡リスクが上昇する」とEuropean Journal of Endocrinology(2007; 156: 137-142)に発表した。
 
同氏らは,1991〜2001年に同センターで心臓と血管以外の手術を受けた患者を対象に症例対照研究を実施した。
評価した症例群は術後30日以内に入院中に死亡した904例で,生存者のなかから年齢や性,手術の種類などが一致する1,247例を対照群とした。
 
術前血糖値が110mg/dL未満を正常群,110mg/dL以上200mg/dL未満を前糖尿病群,200mg/dL以上を糖尿病群と定義して,周術期死亡率を検討した結果,正常群に比べて前糖尿病群では1.7倍,糖尿病群では2.1倍だった。
心血管系合併症の周術期死亡率に限定すると,前糖尿病群で 3 倍,糖尿病群では 4 倍にも達していた。
さらに,心血管系合併症による死亡は症例群の23%(207例)を占めていた。

出典 Medical Tribune 2007.9.27
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
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出典 Medical Tribune 2008.8.28
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-09-03 00:14 | 糖尿病


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