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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 09月 05日

血圧上昇と年余命

20mmHgの血圧上昇で16年余命が縮む
脳卒中発症率の半減を目標に

〔ベルリン〕 シュレスビッヒ・ホルシュタイン大学病院(リューベック)のHeribert Schunkert教授は「脳卒中発作に関して,ドイツでは,1990年代初めから実際には何の対策も講じられていない」とMSD Sharp & Dohme社の記者会見で指摘。
「唯一の明るい兆しは,少なくとも高血圧女性患者は,15年前よりも現在のほうが前向きに高血圧と取り組んでいるという点で,女性のほうがうまく情報を得て,治療を受けようとしているようだ」と述べた。

高血圧患者はリスクを過小評価
高血圧に関する医学的な問題は,かなりの程度,解決ずみである。
診断法は明確になり,臓器障害を阻止することができる有効な薬剤も使用可能である。
しかし,残された問題は,問題意識がまだ不十分であるという点だ。
 
ドイツでは,高血圧患者は約2,000万人と推定されているが,そのうち,実際に診断が付けられているのは1,000万人のみで,治療を受けているのは500万人,治療により血圧がコントロールされているとみなすことができるのは250万人でしかない。
このような無知と怠慢の連鎖は,脳卒中の例で示されるように,致命的な結果をもたらす。
 
ベルリンの循環器科開業医であるAndreas Forster講師は「降圧薬を服用しない,あるいは独断で服用を中止する患者が多い背景には,リスクに関する誤った認識があるのではないか」と主張した。
多くの患者は,高血圧により自分の余命がどの程度縮むか想像できない。
実際には血圧が10mmHg上昇すると,余命は平均 4年,20mmHgの上昇では16年も短縮する。
 
このような悲惨な状況を回避するために,内科,循環器科,神経内科の専門学会,さらに高血圧連盟,脳卒中患者団体,欧州脳卒中同盟(SAFE)などが提携して,脳卒中予防のためのリューベック・アクションプランを策定した。
同プランは10項目から成り,医師,患者,政治家,企業,研究者,疾病金庫向けに作成されている。
 
同プランの目標は,回避可能な脳卒中発作(全発作の大多数を占める)の件数を2025年までに半減させるというものである。
そのため,まずは同社の支援で情報提供キャンペーンが開始され,ドイツ全域で多数の催しなどが行われる予定である。

血圧の正常化は可能
大多数の高血圧患者は,現在使用可能な降圧薬で,血圧を現行の目標値(合併症のない高血圧では140/90 mmHg未満,糖尿病または腎障害を伴う場合は130/80mmHg未満)にコントロールできる。
シャリテ病院(ベルリン)のThomas Unger教授によると,特に糖尿病などの問題を抱える患者では,ACE阻害薬またはAT1受容体拮抗薬と低用量の利尿薬との併用が有効であることが実証されており,副作用も少なく,それらの相乗効果が発揮されるという。
 
また,単なる降圧にとどまらないレニン・アンジオテンシン系(RAS)抑制薬の追加的効果を利用することもできる。
このことは,LIFE(The Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension Study)をはじめとする複数の大規模試験で明らかにされている。
それらの試験によると,ロサルタン投与群では,β遮断薬投与群より脳卒中発症リスクが約25%低かったという。

出典 Medical Tribune 2008.9.27
版権 メディカル・トリビューン社 


<コメント>
タバコ1本吸うごとに何分縮まるといった患者さんへの説明が説得力があるようです。
今回の具体的数字をあげて指導するというのも効果的に思われます。

あなたが今、禁煙したら?
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/08/28


<診察椅子>
明らかに「ばね指」と簡単に診断のつく方が来院されました。
60代の女性Aさんです。

Aさん
「これって「ばち指」ですよね。整形外科の病気とは思うんですが、先生のところにかかっているのでついでに治していただけませんか?」

「これはばね指」っていうんですよ。困りましたねえ。私は診断をつけることは出来ても治してあげることは出来ないんですよ。生憎(あいにく)内科だもんですから」
Aさん
「それはわかってます。私は元来医者嫌いであちこちかかるのがイヤなんです」

「私も総合内科医を自称していますから、他の診療科の病気も診断出来るように心がけています。しかし、専門の先生の方が患者さんにとっていいと思われる場合には積極的に紹介するのが私のスタンスなんです」
それでもAさんは食い下がります。
困ってネット検索で手術以外の方法を探して、プリントアウトして資料を渡して納得してもらいました。

やれやれ。
それにしても、どうして「ばち指」という言葉を知っていたんだろう。

ばね指、注射で改善
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20070808-OYT8T00075.htm


読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
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by wellfrog2 | 2008-09-05 00:07 | 循環器科


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