2008年 09月 20日
インフルエンザワクチン 高齢者の肺炎リスクへの効果は不十分 〔ニューヨーク〕グループヘルス協同組合保健研究センター(ワシントン州シアトル)のMichael Jackson博士らは,免疫応答の正常な高齢者の肺炎リスクに関して,インフルエンザワクチン接種による効果はこれまで考えられていたほどではないと,Lancet(2008; 372: 398-405)に発表した。 健康状態指標を調整 これまでの研究では,ワクチン接種を受けた高齢者は,受けていない高齢者と比べて肺炎による入院リスクが20〜30%低下するとされてきた。 しかし,これらの知見は研究対象群間における健康状態の背景因子の差によるバイアスがかかっていた可能性があるという。 Jackson博士らは,免疫応答の正常な高齢者に対するインフルエンザワクチン接種が健康状態指標の調整後も市中肺炎リスクと関連しているか否かを評価した。 研究では,2000〜02年のインフルエンザの前流行期と流行期にグループヘルス協同組合に登録されていた65〜94歳の高齢者を対象とした。 入院患者と外来での市中患者の肺炎症例は,カルテまたは胸部X線所見を確認した。 症例1例に対して年齢と性をマッチさせた2例を対照としてランダムに選んだ。 また,カルテにより,喫煙歴,胸部疾患の有無と重症度,体調の変化の指標などの潜在的な交絡因子を同定した。 同博士らは,市中肺炎患者1,173例と対照の2,346例を調査した。 その結果から,カルテレビューを行って対象患者における他疾患の有無と重症度により交絡する影響を調整したところ,インフルエンザワクチン接種は市中肺炎リスクの低下と関連していなかった。 ワクチン開発に大きな意味 Jackson博士らは今回の結果を受けて,「インフルエンザ感染は高齢者の肺炎の原因としてはごく一部にすぎず,その感染リスクを減少させても,その他のあらゆる原因による肺炎を大きく減らせない可能性がある」と述べている。 さらに,今回の結果は,肺炎リスクのある高齢者ではこのワクチンがインフルエンザ感染リスクを低下させるうえであまり有効ではない可能性を示唆している。 この2つの可能性は,ワクチン開発とワクチン接種の推奨意義に対してきわめて大きな影響を与えることになる。 マーシュフィールド・クリニック研究財団(ウィスコンシン州マーシュフィールド)のEdward Belongia博士と米疾病管理センター(CDC)インフルエンザ部門のDavid Shay博士は,同誌の付随論評(2008; 372: 352-354)で「検査で確認されたアウトカムに依拠して幅広い交絡因子を調整した研究がさらに行われれば,高齢者におけるワクチンの有効性に影響する抗原適合性やその他の要因に関する貴重な情報が得られるであろう」と述べている。 出典 Medical Tribune 2008.9.18 版権 メディカル・トリビューン社 <コメント> インフルエンザワクチンには大なり小なりの副作用を伴います。 この論文から何を学び、高齢者に対するインフルエンザワクチン接種を今後どのようにしていけばいいのか、戸惑ってしまいます。 何故なら、従来いわれていたことが根底から覆されてしまうからです。 「幼児や高齢者や病弱者こそ積極的に接種すべき」という指導は今後どのようにすればいいのでしょうか。 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 井蛙内科開業医/診療録http://wellfrog.exblog.jp/ (内科開業医関係の専門的な内容) 葦の髄から循環器の世界をのぞく http://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容)
by wellfrog2
| 2008-09-20 00:48
| 感染症
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