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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 10月 02日

片頭痛に対する正しい認識を

女性ホルモンと片頭痛の関連性
片頭痛は男性に比べて女性で発症率が2~4倍高く,20~40歳代で多いとされる。
30歳代女性では約5人に1人が片頭痛に悩まされており,日常生活に支障を来している症例も目立つ。
東京都で開かれたプレスセミナー「女性のライフステージと片頭痛―女性ホルモンと片頭痛の関係を自覚し,正しい治療と対策を―」(主催=グラクソ・スミスクライン(株))では,神奈川歯科大学横浜クリニック内科学講座の五十嵐久佳教授が,片頭痛と女性ホルモンや月経との関連性などを解説し,その治療法や対策について述べた。

多様な片頭痛の特徴と病態
片頭痛には,
(1)ずきんずきんと脈打つ痛み
(2)片側が多い
(3)動くと痛みが増す
(4)光がまぶしい
(5)音が気になる
(6)顔が蒼白になる
(7)悪心,嘔吐を伴う
―などの特徴があり,若い女性に多いとされる。
 
国際頭痛分類第2版による「前兆のない片頭痛」では,
(A)B~Dを満たす頭痛発作が5回以上あるものとし,
(B)頭痛の持続時間は4~72時間(未治療もしくは治療が無効の場合),
(C)頭痛は以下の特徴の少なくとも2項目を満たす:
(1)片側性(2)拍動性(3)中等度?重度の頭痛(4)日常的な動作(歩行や階段昇降などの)により頭痛が増悪する,あるいは頭痛のために日常的な動作を避ける,
(D)頭痛発作中に少なくとも以下の1項目を満たす:
(1)悪心または嘔吐(あるいはその両方)(2)光過敏および音過敏,(E)その他の疾患によらない
―と定義されている。

エストロゲン関与の可能性
五十嵐教授は「片頭痛発作は月経前から月経3日目に多く,妊娠中に改善し分娩後に再発する。
また,経口避妊薬21日使用後の休止期に発作が起こり,閉経後は頭痛が改善する」と解説し,「女性ホルモンと片頭痛」の関連性に着目した。
 
片頭痛発作と月経周期・ホルモン変動の関係を見ると,エストロゲンとプロゲステロンの分泌量が急激に低下する月経前から月経3日目にかけて発作回数が増加することが示されている()。
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また,エストロゲンのみが低下する排卵日にも発作回数は上昇する。さらに,エストロゲンを補充すると発作回数が減少し,プロゲステロンではそうした傾向は見られないとの報告があることから,同教授は「エストロゲンが強く関与する可能性がある」と指摘した。
 国際頭痛分類第2版の付録では,月経に関連した頭痛も定義されており,月経開始日±2日のみに生じる頭痛を「純粋月経時片頭痛」と呼んでいるが,女性片頭痛患者の約半数以上が月経に関連した片頭痛を経験しているものの,この純粋月経時片頭痛を持つのは4~14%にすぎない。
 
この月経時に起こる片頭痛は,月経前2日間に1.7倍起こりやすく,痛みが2.1倍強い。
また,月経1~3日までに2.5倍起こりやすく,痛みは3.4倍強い。また,月経に関連した片頭痛の特徴として,(1)前兆のない片頭痛(2)持続時間が長い(3)痛みが強い(4)薬剤が効きにくい(5)再発しやすい(6)毎月必ず頭痛が起こる―などが挙げられる。
 同教授は「なかでも,月経前症候群や生理痛として片付けられ,適切な処置をせずに放置してしまうことが問題である」と強調した。

頭痛日記を付けることも大切
月経に関連した片頭痛への対処法としては,まず寝すぎ・寝不足をしない,食事をきちんと取る,アルコールを控えるなどで他の誘発因子を排除し,発作頓挫薬であるトリプタン系薬を服用〔場合によっては非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の併用〕する。
また,月経前?月経終了時は,必要に応じて予防薬の増加・追加を行う。
月経時と非月経時の予防療法は異なることから,五十嵐教授は「患者自身の片頭痛と月経の関連性を明らかにするためにも,頭痛を日記として記録することが大切である」と述べた。
 
同社が行った「月経に関連して起こる頭痛に関する実態調査」から,片頭痛群では月経に関連した頭痛を「生理痛」と誤って認識している人が78%にのぼること,また頭痛が起きても「我慢できる」などの理由で受診に結び付いていないことから,同教授は「片頭痛に対する認識を高め,適切な治療を行い,家族や周囲の理解を得ることでQOLも向上するだろう」と締めくくった。

出典 Medical Tribune 2008.9.25
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-10-02 00:02 | 未分類


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