井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 11月 05日

メトホルミンの多彩な作用

第51回日本糖尿病学会年次学術集会 ランチョンセミナー
動脈硬化進展阻止を目指した糖尿病治療
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007年5月22日(木)から3日間にわたり、東京国際フォーラムにて開催された第51回日本糖尿病学会年次学術集会 ランチョンセミナーの記事で勉強しました。

昨日の
日本人の2型糖尿病
http://wellfrog2.exblog.jp/9532048/の続きです。

では、実際に動脈硬化進展の抑制を念頭において、糖尿病治療薬を選択する上では、どのような点に留意すべきだろうか。
私は、血糖応答は「糖のながれ」の結果であると捉え、特に、食事によるブドウ糖の流入、インスリン分泌動態、肝の糖放出および取り込み、筋の糖取り込みといった種々の制御因子を解明してきた。
2型糖尿病患者は、その1例1例、病態生理が異なる多彩な例をまとめて呼んでいる集団であり、われわれが今手にしている様々な治療薬は、「乱れた糖のながれ」のさまざまなポイントを改善する。
良好な血糖コントロールを目指すためには、臨床医が「糖のながれ」を念頭において、患者1人1人の病態に合った薬剤を的確に選択する必要がある。
そのためには、新しい薬剤のみならず、従来の糖尿病治療薬に関する新たな知見にも注目して、その作用を十分に理解する必要がある。
メトホルミンは一般に、肥満を合併した2型糖尿病患者で有効と考えられている。
しかし私どもは、メトホルミンの大規模前向き観察臨床研究「MORE(Melbin Observational Research) study」で、SU薬およびα-GIを併用しており、インスリン分泌不全を呈すると考えられる患者に対しても、メトホルミン併用により、HbA1cの低下が認められたことを報告してい。
この研究でBMI 25以上の患者のみならず、BMI 20以下の患者でも、同様にHbA1cの低下がみられたことから、本剤の効果は、肥満のない患者において有効であることが示唆された。
 
さらにメトホルミンは最近、極めて多彩な作用を有する薬剤であることが明らかになってきた。私どもが、肥満の2型糖尿病患者に3ヵ月間メトホルミンを投与したところ、MR Spectroscopyで検索した肝細胞内の中性脂肪量は有意に低下し、生理学的濃度下でのインスリンレベルにおける全身の糖取り込み率は有意に増加した(P<0.05、Paired-t検定)。
またメトホルミンは、軽度のALT上昇を認めた非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)患者のトランスアミナーゼのレベルを改善し、肝臓の容積を低下させたことが報告されている※。

※メトホルミンは、肝機能障害の患者に対する投与は禁忌とされており、現状では、基準値内での使用が基本となっている。

メトホルミンの様々な作用をもたらすメカニズムについても、次第に新たな知見が蓄積されてきている。
メトホルミンが食欲を低下させることはよく知られているが、本剤投与により、GLP(Glucagton-like peptide)-1の食後レベルが有意に上昇したとの報告がある(図1)。
GLP-1は食欲抑制作用を持つインクレチンである。
GLP-1増加の作用機序として、GLP-1を分解する酵素であるDPP(Dipeptidyl peptidase)-IVの作用をメトホルミンが阻害することが挙げられる(図2)。
また本剤は、食欲亢進をもたらすグレリンに対して、食後のレベル低下を延長させるとも報告されている
図3)。

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図1. メトホルミン投与による食後の血清GLP-1レベル
(BMI30以上の非糖尿病男性10名にメトホルミン2,550mg/日*を14日間投与後、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)を実施)
*わが国におけるメトホルミンの1日最高投与量は750mgです。

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図2. メトホルミンのDPP-IV阻害作用
(2型糖尿病患者8例にクロスオーバー法で、メトホルミン1gあるいはプラセボを1週間投与した後、血漿中のDPP-IV活性を測定)

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図3. メトホルミン投与による食後の血清グレリンレベル
(食事療法のみの2型糖尿病患者11例と、メトホルミンを単独投与した2型糖尿病患者10例に600kcalの朝食を与えた後、血中のグレリン濃度を測定)

一方私どもは、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットを用いた研究から、水晶体、坐骨神経、腎皮質において、糖尿病血管障害発症の原因の一つであるAGEs(Advanced glycation endproducts:終末糖化産物)の蓄積が、メトホルミン投与により、有意に抑制されることを明らかにした(一元配置分散分析あるいはKruskal-Wallis検定)。
メトホルミンがAGEsの産生を阻害すると、たとえ同程度の血糖コントロール状況であっても、動脈硬化を含む血管障害を抑制できるものと考えている。
さらにメトホルミンは、炎症に関わる種々の因子、血栓形成に関わる種々の因子、また内皮保護作用を含め、様々な心血管疾患発症・進展の危険因子にも改善作用を有すると報告されている()。

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表. メトホルミンの心血管危険因子への作用
メトホルミンは、AMPK(AMPキナーゼ)の活性化(リン酸化)を介し、特に肝での糖新生および脂肪蓄積を抑制することで、血糖改善作用を発揮する。
また本剤は、筋肉組織においてもAMPKの活性を亢進し、骨格筋における脂肪酸の燃焼などを高める可能性があると考えられている(図4)
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さらにごく最近、メトホルミンはOCT-1(Organic Cation Transporter-1)によって、肝に積極的に取り込まれ、一部は癌抑制遺伝子として知られるLKB1を介して、AMPKを活性化していることなども明らかになってきた。
このことから、メトホルミンには発癌リスクを抑制する可能性についても示唆されている

http://www.carenet.com/diabetes/jds51/text_01.html
出典 Care Net.com
版権 ケアネット

<きょうの一曲> "ワインレッドの心"
53秒で聞く「ワインレッドの心」(安全地帯)
http://video.taggy.jp/detail/187181384
ワインレッドの心
http://jp.youtube.com/watch?v=HGy6AH-RR0U
ワインレッドの心
http://jp.youtube.com/watch?v=isLjC8na08Q&feature=related
安全地帯 「ワインレッドの心」
http://jp.youtube.com/watch?v=_X03u_MltGk&feature=related
ワインレッドの心 / 井上陽水
http://jp.youtube.com/watch?v=hQcJzYBxgkE&feature=related
ワインレッドの心 by 美空ひばり
http://jp.youtube.com/watch?v=zIWb685-RNY&feature=related
(ダウンロードに少し時間がかかります)


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by wellfrog2 | 2008-11-05 00:07 | 糖尿病


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