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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 11月 03日

プロトンポンプ阻害薬とaspirin潰瘍

プロトンポンプ阻害薬によるaspirin潰瘍の予防
ランダム化試験では、プロトンポンプ阻害薬(proton-pump inhibitor:PPI)はaspirin以外の非ステロイド系抗炎症薬による胃十二指腸潰瘍を予防できることが示されている。
さらに、aspirinは低用量でも、胃十二指腸潰瘍を引き起こすことがあるが、現在までのところ、aspirinの使用者を対象としてPPIによる予防をプロスペクティブに検討した研究はない。

このメーカーの支援を受けた国際研究では、心血管系の予防としてaspirin(75~325mg)を連日服用している患者992人(年齢60歳以上)をPPIのesomeprazole(連日20mg)またはプラセボ投与にランダムに割り付けた。
患者はベースライン、2ヵ月および6ヵ月の時点にルーティンの内視鏡検査を受けた。
ベースライン時点で胃十二指腸潰瘍がみられた患者は除外された。

プラセボ群と比較して、esomeprazole群では胃または十二指腸潰瘍(5.4%対1.6%)とびらん性食道炎(18.3%対4.4%)の6ヵ月間発症率が有意に低かった。
esomeprazoleはHelicobacter pylori陽性およびH. pylori陰性患者両方の潰瘍を予防した。
プラセボ群内では、潰瘍の発症率は高用量のaspirin(連日101~325mg)を服用した患者のほうが低用量(連日75~100mg)を服用した患者より高かったが(10%対4%)、aspirinの用量にかかわらずesomeprazoleは保護作用を示した。
有症状の胃十二指腸出血は2人のプラセボ投与者と1人のesomeprazole投与者で認められた。

コメント:
この短期研究では、aspirin使用に伴いうる内視鏡的潰瘍のリスクが、PPIであるesomeprazoleによって低下した。
しかし、aspirin使用者における有症状の消化管出血リスクが、長期のPPI予防によって低下するかどうかは不明である。
しかしながら、平均的なリスクを上回る可能性が高い患者(たとえば症状のある消化性潰瘍の既往症がある患者)には、正当にPPI予防を処方することもできうるかもしれない。
このストラテジーは、抗血小板療法に伴いうる消化管リスクを低下させることについて、最近発表されたコンセンサス・ステートメントでも支持されている(Circulation Oct 3 2008 [e-pub ahead of print])。

Allan S. Brett, MD
Published in Journal Watch General Medicine October 16, 2008

Citation(s):
Yeomans N et al. Efficacy of esomeprazole (20 mg once daily) for reducing the risk of gastroduodenal ulcers associated with continuous use of low-dose aspirin. Am J Gastroenterol 2008 Oct; 103:2465.
Medline abstract (Free)

http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-1016-04.html
PPIs to Prevent Aspirin-Induced Ulcers
2008 October 16


by wellfrog2 | 2008-11-03 00:36 | 救急医療


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