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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 11月 26日

第2世代抗うつ薬適正使用のガイドライン

米国内科学会が第2世代抗うつ薬の適正使用に関するガイドラインを作成
11月18日付の米国内科学会(ACP)誌(Ann Intern Med 2008; 149: 725-733)で第2世代抗うつ薬の適正使用に関するガイドラインが発表された。

薬剤間で効果に差はなし
一般臨床医を対象にした同ガイドラインでは,大うつ病障害患者に対する急性期,継続期,維持期のエビデンスに基づいた薬物治療の管理指針が示されている。

推奨内容はMEDLINE,EMBASEなど各種データベースから検索されたパロキセチン,セルトラリン,フルボキサミン,トラゾドンなど12の第2世代抗うつ薬に関する203の臨床試験に関する英語論文を元に策定された。

第2世代抗うつ薬のみを対象とした理由について,同学会は三環系抗うつ薬,モノアミン酸化酵素(MAO-B)阻害薬などの第1世代の薬剤は,同等の効果で過剰投与による毒性発現の頻度が少ない第2世代の薬剤に比べ使用頻度が低いからとしている。
さらに,同ガイドラインでは,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)や他の薬剤のタイプによる効果の差は見られないだろうとの見解が示されている。

作成委員会のAmir Qaseem氏らは,気分変調症や亜症候性うつ病を有する患者群での第2世代抗うつ薬の効果や超高齢者,合併症を有する患者群に対する治療効果のほか,抗うつ薬の併用療法や第一選択薬無効例に対する薬剤選択のエビデンスなども今後必要と述べている。

抗うつ薬は疾患そのもの,あるいは他の疾患との関連といった病態への認識が浸透するにつれ,各国で広く用いられるようになっている。
精神疾患を有さない人口においても,抗うつ薬の服用が一般化しているとの報告(http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%E6%8A%97%E3%81%86%E3%81%A4%E8%96%AC&perpage=0&order=1&page=0&id=M41460411&year=2008&type=article)もある。
それだけに,一般臨床に携わる医師にも抗うつ薬に関する正確な知識と処方が求められると言えるだろう。
ガイドラインにおける推奨内容は表の通り。
第2世代抗うつ薬適正使用のガイドライン_f0174087_1545975.jpg


ガイドライン,ここがポイント?効果に差はないが,副作用に関する説明が必要
すでにヨーロッパでは一般医による処方が普通に行われているそうだが,日本ではごく一部の関心の高い一般医が処方しているに過ぎないという抗うつ薬。
しかし,うつ病に対する社会的認知度の高まりとともに,患者数は明らかに増えており,専門医だけでなく一般医家が診療に携わる機会は今後ますます多くなると見られる。東北大学病院精神科講師の松本和紀氏に,同ガイドラインで押さえるべきポイントと日本の診療現場が抱える問題点を解説してもらった。

特に自殺企図に関する十分な認識が不可欠
今回のガイドラインの一番よい点は,エビデンスに基づく推奨内容が示されたことで,推奨内容そのものには格段の目新しさはない。
ポイントは「薬剤間の効果の差はないので,副作用の違いを患者にきちんと説明し,患者の意見を取り入れながら処方する」というところではないか。
 
注意すべき点は,SSRIで少なくとも非致死性の自殺企図が増えるという結果が取り上げられていること。
自殺の問題を扱うことに不安を感じる一般医は多いと思うが,これはうつ病診療には欠かせないポイントで,この問題を避けて薬剤を処方するのは危険だということを十分認識する必要がある。
また,SSRIでの不安,焦燥の増大,性機能低下などもきちんとモニターすることが重要だ。
 
また,今回のガイドラインを参照する際,期待通りの効果が出るのは半分くらいに過ぎないということも押さえておくべき。
そうでないと,効く人は病院から離れていくので,うつ病をよく診る医師ほど,残った効かない人を沢山目の当たりにし,「SSRIは効かない」という印象を持ってしまう可能性がある。

安易な診断・処方に危機感,治療難渋例に対する診療体制の不足も
疾患に対する認識が広まる一方で,安易な診断,処方を行われているケースも確実に増えている。
古典的なうつ病に馴染んだ専門医にとっては,昨今の非古典的なうつ病に対する批判もあるが,現実にこれだけ非古典的うつ病が増え,市民権を得るに至っては対処を考えざるを得ない。
 
また,薬剤無効例には心理療法などが必要な場合も多い。
しかし日本では診療報酬化されておらず,効果的な心理療法を受ける機会を得るのがかなり難しいことも問題だ。
専門医の立場からは治療難渋例についてもきちんと診療報酬を取れて,5分診療ではない,時間をかけた専門的治療が出来る環境を担保すべきと考える。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0811/081123.html
出典 MT pro  2008.11.20
版権 メディカル・トリビューン社


第2世代抗うつ薬適正使用のガイドライン_f0174087_1510429.jpg


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by wellfrog2 | 2008-11-26 00:03 | 未分類


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