井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 12月 03日

感染症の予後予測因子としてのCRP

感染症の予後予測因子としてのCRP測定にようやくエビデンス
東札幌病院化学療法センター長/感染管理室長 平山 泰生先生


背景:
CRP測定にエビデンスが望まれていた

感染症を疑った場合,日本の医師は,おそらくC反応性蛋白質(CRP)値を測定すると思われる。
一方,米国の医師はCRP値を測定することがまれであり,これはCRP値が感染症の重症度も予後もあまり反映しないとする論文が多いためである(Chest 1995; 108: 1288-1291, Eur Respir J 2003; 21: 702-705など) 。
むしろ,がんや動脈硬化の危険因子という意外な方面で,CRPは注目されている(Int J Cardiol 2006; 106: 291-297, JAMA 2004; 291: 585-590)。

そのため米国の感染症専門医からは「CRPを重要視してはいけない,そもそも米国ではCRPを感染症のマーカーとして測定する習慣がない」といった,われわれにとって意外なアドバイスを受けることがある。
しかし,臨床医の実感としてはCRP高値の症例は重篤なように思われ,実際,強く注意を払うし,治療後CRP値が低下した場合は,感染症が沈静化したと安堵することが多い。
したがって,このような認識が的外れではないことを支持する論文が待ち望まれているように思われる。

今回,CRP値を測定することは,市中肺炎治療において意味がある,というデータについて紹介する(Am J Med 2008; 121: 219-225)。

方法:
市中肺炎症例の入院時CRP値とアウトカムを検討

Chalmersらは,市中肺炎症例の入院時と入院4病日のCRP値を570人の患者を対象に測定し,予後との相関を検討した。
30日以内の死亡および人工呼吸器装着,肺化膿症などの複雑性肺炎の発症をアウトカムとした。

結果:
入院時CRP低値群で死亡リスクが低い
 
入院時のCRP値別の生存率は,1mg/dL未満群100%,5mg/dL未満群99.1%,10mg/dL未満群98.9%,20mg/dL未満群94.4%であり,入院時のCRP低値(<10mg/dL)では30日以内の死亡のリスクが有意に低かった(オッズ比 0.18;95%信頼区間0.04?0.85,P=0.03)。
さらに,入院時CRP低値群では人工呼吸器装着のリスク(同 0.21;0.14〜0.4,P=0.002),複雑性肺炎の発症率(同 0.05;0.01?0.35,P=0.003)も有意に低かった。

一方,入院4病日以内にCRP値が50%以下にならない症例は,30日以内の死亡率が有意に高かった(同 24.5;6.4?93.4,P<0.0001)。

考察:
感染症症例でのCRP値測定を支持する結果が示された

Herzumらは炎症マーカーに関する総説に,「敗血症ではCRPの絶対値は予後の指標にはならないが,病態が改善されているかどうかのモニターとしては使用可能だ」と記載している(Current Medicinal Chemistry 2008; 15: 581-587)。
しかし,炎症のマーカーに関する多くの論文では,CRP値よりprocalcitoninが有用だと結論している(Clin Infect Dis 2004; 39: 206-217)。
ところが,残念ながら日本の検査センターでは,procalcitonin測定は行っていないことが多い。

今回Chalmersらは,入院時にCRP値が低い症例は死亡率も人工呼吸器装着,複雑性肺炎の発症率も少なく,また入院4病日以内にCRP値が50%以下にならない症例は30日以内の死亡率が高く,CRP値は市中肺炎の独立した予後予測因子であることを示した。

われわれが,感染症でCRP値を測定することを支持する論文である。
とはいえ,日本では,米国の感染症専門医が指摘するようにCRP値を重視しすぎていることは否めない。
感染症におけるCRP値は体温,白血球数と同じく参考程度に留め,臓器特異的なパラメーター(肺炎なら呼吸数,喀痰のグラム染色,ガス分析)を意識して,治療効果を判定してゆくことが実際的であろう。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200811/508463_2.html
出典 NM online 日経メディカル オンライン 2008.11.7
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
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出典 日経新聞・朝刊 2008.12.2
版権 日経新聞社
<関連サイト>
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http://www.nikkan.co.jp/adv/gyoukai/2008/081126a.html

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by wellfrog2 | 2008-12-03 00:30 | 感染症


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