カテゴリ:循環器科( 11 )


2008年 12月 10日

JUPITER研究

一次予防のstatinに関するさらなるデータ-JUPITER研究
More Data on Statins in Primary Prevention — The JUPITER Study


一次予防におけるstatin療法の役割は、コレステロール値が顕著に上昇していない患者については確かではない。
こうした患者では、高感度C反応性蛋白質(high-sensitivity C-reactiveproteinhsCRP)値の上昇が過剰な心血管リスクと関連している。
企業の資金提供を受けたこの国際的研究では、既知の心血管疾患がなく、LDLコレステロール値が130mg/dL未満で、hsCRP値が2mg/L以上である17,802人(男性50歳以上、女性60歳以上)を、rosuvastatin(20 mg)またはプラセボの連日投与群にランダムに割り付けた。
糖尿病、コントロールされていない高血圧、他のさまざま慢性疾患を含め、多数の除外基準が設定された。

試験は、中央値1.9年のフォローアップ後、早期に中止となった。
rosuvastatinは、LDLコレステロール値を50%、hsCRP値を37%低下させた。
主要エンドポイント(不安定狭心症、心筋梗塞、脳卒中、動脈血行再建術、または心血管系の原因による死亡を含む、最初の主要な有害心血管イベント)は、rosuvastatin群のほうがプラセボ群と比較して有意に低く(100人・年あたり0.77対1.36、ハザード比[hazard ratio:HR]0.56)、この複合エンドポイントの構成要素のすべてが、全死亡率(HR 0.8)と同様、rosuvastatin群で低かった。
医師の報告による糖尿病の新規発症は、rosuvastatin群で有意に多く認められた。
24ヵ月の時点におけるグリコシル化ヘモグロビン(HbA1c)値の中央値もrosuvastatin群で高かった。

コメント:
hsCRP高値の見かけでは健康な人を対象としたこの研究では、statinが有害心血管イベントの発生率を低下させた。
この結果は、一次予防におけるstatin使用の拡大を支持するものである。
しかし、エディトリアル執筆者は、以下の点に言及し、複数の警告を発している。
すなわち、試験登録から除外された患者の割合が高いこと、絶対効果量(effect size)が比較的限られたものであること(1イベントを予防するために、約100人を約2年間治療する必要がある)、糖尿病の発生率が高いこと、statin療法の害に関する長期的なデータがないことである。
エディトリアル執筆者はまた、これはstatin療法のランダム化試験であり、hsCRP検査の研究ではないことを指摘し、CRP検査は、ルーティンにではなく、選択的に使用するよう主張している。
Ridker PM et al. Rosuvastatin to prevent vascular events in men and women with elevated C-reactive protein. N Engl J Med 2008 Nov 20; 359:2195.
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/359/21/2195

Expanding the Orbit of Primary Prevention — Moving beyond JUPITER
Mark A. Hlatky, M.D.
Hlatky MA. Expanding the orbit of primary prevention — Moving beyond
JUPITER. N Engl J Med 2008 Nov 20; 359:2280.

http://content.nejm.org/cgi/content/full/359/21/2280
2008 November 18



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by wellfrog2 | 2008-12-10 00:23 | 循環器科
2008年 12月 09日

ベナゼプリルとCa拮抗剤、降圧利尿剤

高リスクの高血圧患者に対するベナゼプリル+アムロジピンとベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドの比較
Benazepril plus Amlodipine or Hydrochlorothiazide for Hypertension in High-Risk Patients
K. Jamerson and others

背 景
高血圧に対する至適な薬物併用療法は確立されていないが,米国の現行ガイドラインでは利尿薬を組み入れることが推奨されている.われわれは,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とジヒドロピリジン系カルシウムチャネル遮断薬の併用療法は,ACE 阻害薬とサイアザイド系利尿薬の併用療法に比べて,心血管イベントの発生率を減少させるうえで有効であるという仮説を立てた.

方 法
無作為化二重盲検試験で,心血管イベントリスクの高い高血圧患者 11,506 例を,ベナゼプリル+アムロジピンの併用療法群と,ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドの併用療法群に割り付けた.主要エンドポイントは,心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中,狭心症による入院,突然の心停止後の蘇生,冠動脈血行再建の複合とした.

結 果
両群のベースライン特性は同様であった.平均 36 ヵ月追跡した時点で,事前に規定した試験中止基準の境界を超えたため,試験を早期に終了した.用量補正後の平均血圧は,ベナゼプリル+アムロジピン群で 131.6/73.3 mmHg,ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群で 132.5/74.4 mmHg であった.主要転帰イベントは,ベナゼプリル+アムロジピン群で 552 件(9.6%)発生したのに対し,ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群では 679 件(11.8%)発生し,ベナゼプリル+アムロジピン療法の絶対リスク減少率は 2.2%,相対リスク減少率は 19.6%であった(ハザード比 0.80,95%信頼区間 [CI] 0.72~0.90,P<0.001).副次的エンドポイントである心血管系の原因による死亡,非致死的心筋梗塞,非致死的脳卒中に関してはハザード比 0.79(95% CI 0.67~0.92,P=0.002)であった.有害事象の発生率は,試験薬の臨床経験で観察された発生率と一致した.

結 論
心血管イベントリスクの高い高血圧患者に対して,ベナゼプリル+アムロジピンの併用療法は,ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジドの併用療法に比べて,心血管イベントを減少させるうえで優れていた.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00170950)

<原文>
Benazepril plus Amlodipine or Hydrochlorothiazide for Hypertension in High-Risk Patients
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/23/2417

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by wellfrog2 | 2008-12-09 00:17 | 循環器科
2008年 12月 08日

心不全とイルベサルタン

駆出率の保持された心不全患者に対するイルベサルタン
Irbesartan in Patients with Heart Failure and Preserved Ejection Fraction
B.M. Massie and others

背 景
心不全患者の約半数では左室駆出率が 45%以上であるが,これらの患者の転帰を改善することが示されている治療法はない.
われわれは,このような心不全患者に対するイルベサルタンの効果を検討した.

方 法
年齢が 60 歳以上で,ニューヨーク心臓協会(NYHA)の心機能分類で II~IV 度の心不全を有する,駆出率が 45%以上の患者 4,128 例を登録し,イルベサルタン 300 mg/日投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた.
主要複合転帰は,全死因死亡または心血管系の原因(心不全,心筋梗塞,不安定狭心症,不整脈,脳卒中)による入院とした.
副次的転帰は,心不全による死亡または入院,全死因死亡および心血管系の原因による死亡,QOL などとした.

結 果
平均 49.5 ヵ月間の追跡中に,主要転帰は,イルベサルタン群の 742 例,プラセボ群の 763 例で発生した.
主要転帰の発生率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 100.4,プラセボ群 105.4 であった(ハザード比 0.95,95%信頼区間 [CI] 0.86~1.05,P=0.35).
全死亡率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 52.6,プラセボ群 52.3 であった(ハザード比 1.00,95% CI 0.88~1.14,P=0.98).
主要転帰に寄与する心血管系の原因による入院率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 70.6,プラセボ群 74.3 であった(ハザード比 0.95,95% CI 0.85~1.08,P=0.44).事前に規定したほかの転帰には,有意差は認められなかった.

結 論
イルベサルタンにより,左室駆出率の保持された心不全患者の転帰は改善しなかった.
http://www.nankodo.co.jp/yosyo/xforeign/nejm/359/359dec/xf359-23-2456.htm

<原文>
Irbesartan in Patients with Heart Failure and Preserved Ejection Fraction
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/23/2456

<コメント>
イルベサルタンにはCKDに関する大規模臨床試験以外にはエビデンスがありません。
心不全に対するこの臨床試験で良い結果が出なかったのは発売側としては痛いところです。

f0174087_7462926.jpg


<きょうの一曲>
LIBERTANGO played ヨーヨーマ
http://jp.youtube.com/watch?v=44QBoISwIkg

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by wellfrog2 | 2008-12-08 00:15 | 循環器科
2008年 12月 07日

駆出率の保持された心不全患者に対するイルベサルタン

駆出率の保持された心不全患者に対するイルベサルタン

Irbesartan in Patients with Heart Failure and Preserved Ejection Fraction

B.M. Massie and others

背 景
心不全患者の約半数では左室駆出率が 45%以上であるが,これらの患者の転帰を改善することが示されている治療法はない.われわれは,このような心不全患者に対するイルベサルタンの効果を検討した.
方 法
年齢が 60 歳以上で,ニューヨーク心臓協会(NYHA)の心機能分類で II~IV 度の心不全を有する,駆出率が 45%以上の患者 4,128 例を登録し,イルベサルタン 300 mg/日投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた.主要複合転帰は,全死因死亡または心血管系の原因(心不全,心筋梗塞,不安定狭心症,不整脈,脳卒中)による入院とした.副次的転帰は,心不全による死亡または入院,全死因死亡および心血管系の原因による死亡,QOL などとした.
結 果
平均 49.5 ヵ月間の追跡中に,主要転帰は,イルベサルタン群の 742 例,プラセボ群の 763 例で発生した.主要転帰の発生率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 100.4,プラセボ群 105.4 であった(ハザード比 0.95,95%信頼区間 [CI] 0.86~1.05,P=0.35).全死亡率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 52.6,プラセボ群 52.3 であった(ハザード比 1.00,95% CI 0.88~1.14,P=0.98).主要転帰に寄与する心血管系の原因による入院率は,1,000 人年あたりイルベサルタン群 70.6,プラセボ群 74.3 であった(ハザード比 0.95,95% CI 0.85~1.08,P=0.44).事前に規定したほかの転帰には,有意差は認められなかった.
結 論
イルベサルタンにより,左室駆出率の保持された心不全患者の転帰は改善しなかった.(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00095238)

<原文>
Irbesartan in Patients with Heart Failure and Preserved Ejection Fraction
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/23/2456
f0174087_233317.jpg

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by wellfrog2 | 2008-12-07 00:11 | 循環器科
2008年 11月 25日

hs-CRPとロスバスタチン

C反応性蛋白値が上昇した男女の血管イベント予防におけるロスバスタチン投与
Rosuvastatin to Prevent Vascular Events in Men and Women with Elevated C-Reactive Protein
P.M. Ridker and others
背 景
炎症バイオマーカーである高感度 C 反応性蛋白(CRP)の上昇により,心血管イベントを予測することが可能である。
スタチンはコレステロールとともに CRP を低下させることから,われわれは,高感度 CRP が上昇しているが高脂血症を伴わない人も,スタチン投与により利益が得られるという仮説を立てた。
方 法
低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールが 130 mg/dL(3.4 mmol/L)未満で,高感度 CRP が 2.0 mg/L 以上の一見健康な男女 17,802 例を,ロスバスタチン 20 mg/日投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた。
複合主要エンドポイントを,心筋梗塞,脳卒中,動脈血行再建,不安定狭心症による入院,心血管死亡とし,その発生について追跡した。
結 果
試験は追跡期間中央値 1.9 年(最長 5.0 年)後に中止された。
ロスバスタチン投与により,LDL コレステロールは 50%,高感度 CRP は 37%低下した。
主要エンドポイントの発生率は,追跡 100 人年あたりロスバスタチン群 0.77,プラセボ群 1.36 であり(ロスバスタチン群のハザード比 0.56,95%信頼区間 [CI] 0.46~0.69,P<0.00001),心筋梗塞の発生率はそれぞれ 0.17,0.37(ハザード比 0.46,95% CI 0.30~0.70,P=0.0002),脳卒中は 0.18,0.34(ハザード比 0.52,95% CI 0.34~0.79,P=0.002),血行再建または不安定狭心症は 0.41,0.77(ハザード比 0.53,95% CI 0.40~0.70,P<0.00001),心筋梗塞・脳卒中・心血管死亡の複合エンドポイントは 0.45,0.85(ハザード比 0.53,95% CI 0.40~0.69,P<0.00001),全死因死亡は 1.00,1.25(ハザード比 0.80,95% CI 0.67~0.97,P=0.02)であった。
評価した全サブグループで効果は一貫して認められた。
ロスバスタチン群ではミオパチーおよび癌の有意な増加は認められなかったが,医師の報告による糖尿病の発症率が高かった。
結 論
高脂血症を有しないが高感度 CRP の上昇した一見健康な人を対象としたこの試験では,ロスバスタチン投与により,主要心血管イベントの発生率が有意に低下した。
(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00239681)
本論文(10.1056/NEJMoa0807646)は,2008 年 11 月 9 日に www.nejm.org で発表された。
(N Engl J Med 2008; 359 : 2195 - 207 : Original Article)
<原文アブストラクト>
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/21/2195

<高感度CRP 関連サイト>
CRPと高感度CRPの違いを教えてください。
http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/08.html
最近、動脈硬化は慢性炎症が関係していることが分かってきました。0.01mg/dLまで測定できる高感度検査では、慢性炎症を持っていて将来心筋梗塞を起こすかもしれない人を見つける研究が行われています。

心筋梗塞のリスクを予知  高感度CRP検査  超早期の治療が可能に
http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0106crp.html

[PDF] 12.高感度 CRP (high sensitive C_reactive protein:hs_RP)
http://www.kessen-junkan.com/2004121204/46.pdf

感度CRP検査 心筋梗塞を超早期に予知
http://kumanichi.com/iryou/kiji/heart/34.html

日本人の高血圧を予測する高感度CRPの値は約0.1mg/L−−循環器疾患コホート研究
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200503/365655.html

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by wellfrog2 | 2008-11-25 00:18 | 循環器科
2008年 11月 19日

低線量被曝と心疾患リスク

無視できない低線量被曝 心疾患リスクに影響
米国立がん研究所(NCI)のKiyohiko Mabuchi,Parveen Bhatti,Alice Sigurdsonの各博士は「放射線被曝によるがんリスクについては十分な報告があるが,低線量放射線の心血管疾患リスクに対する影響については,まだ多くの研究が必要である」とLancet(2008; 372: 697-699)に発表した。

難点は交絡因子の除外
例えば,乳がんの治療に用いられるような30〜40Gyを超える高線量の治療放射線が,心疾患リスクを増加させることは既に知られている。
しかし側弯症など,がん以外の特定の疾患に用いられる線量は,これよりはるかに低い。
そのなかで,心臓への被曝線量が1.6〜3.9Gyになる放射線療法を受けた消化性潰瘍の患者では,心疾患リスクが大幅に上昇するという用量反応関係のエビデンスがある。
英国における原子力産業の従事者を対象にした最近の研究でも,さらに低線量の被曝と心血管疾患リスクとの間に統計学的に有意な関連があることが判明した。
 
Mabuchi博士らは,低線量被曝の影響を効果的に評価することの困難さと,患者の心疾患の原因または原因の一部となりうる"交絡因子"を除外するという問題について述べている。
また,放射線は他の生物学的経路と同じ機序で損傷を引き起こす可能性があると指摘している。
例えば,アテローム動脈硬化症は炎症過程で血管内皮細胞の損傷を伴うが,これは放射線による組織への影響と共通の経路である可能性がある。
 
報告の最後で,同博士らは「放射線関連の心疾患リスクは放射線関連のがんリスクよりはるかに低いが,心疾患リスクについては未確定であるため,放射線被曝集団における莫大な数の心疾患患者を評価し始めるのは時期尚早である」と述べ,「現在実施中・計画中の放射線被曝集団の研究において,放射線と交絡因子の影響を見出すために,さらなる調査が必要である。
また,低線量放射線が心血管に及ぼす影響の生物学的機序を調べるには,新たな基礎実験が必要である。
低線量放射線の心血管疾患リスクに対する影響は難問で議論が続くと見られ,それは現在のがんリスクのLNT(linear no-threshold;無閾値直線関係)仮説に関する議論を超えるものになりそうだが,無視すべきではない」と結論付けている。

出典 Medical Tribune 2008.11.13
版権 メディカル・トリビューン社


<切り抜き帖>
日本医事新報 NO.4398 2008.8.9
エッセイ「クリーブランドの想い出」 名古屋セントラル病院長 斉藤英彦先生
(一部改変)
■クリーブランドはエリー湖に面した街である。
ジョージ・セル、ズービン・メータなどの名指揮者が育てたオーケストラ、クリーブランド・インディアンズや、クリーブランド・ブラウンズがあることでも知られている。
■緯度は函館市に近いので、冬は零下になるほど寒く、降雪も多い。
■北国なので、5月になるとマグノリア、ハナミズキ、桃、梅、ライラック、レンギョウなどの花々が一斉に咲き、とても奇麗である。
■Case Western Reserve大学の外来では多くの鎌状貧血、地中海貧血、G6PD欠乏症の患者をフォローしたし、病棟では通常の悪性リンパ腫とともにSezary症候群やmycosis fungoides の治療を行った。
■研究では、新しい血液凝固因子Fitzgerald因子(高分子キニノゲン)を発見できた。
■本年の6月には指導を受けたOscar D. Ratnoff博士が92歳で亡くなった。
一つの時代が終わりつつあるという感慨をもつこの頃である。
<関連サイト>
齋藤 英彦 病態内科学講座・分子細胞内科学・教授
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/eval/2001/13-1p01.html
Oscar D. Ratnoff (1916 - 2008)
http://www.hematology.org/education/legends/ratnoff/index.cfm
Oscar Ratnoff, 91, Expert on Blood Clots, Is Dead
http://www.nytimes.com/2008/06/06/health/06ratnoff.html?partner=rssnyt&emc=rss
Dr. Oscar Ratnoff, 91; blood clot specialist
ttp://www.boston.com/bostonglobe/obituaries/articles/2008/06/07/dr_oscar_ratnoff_91_blood_clot_specialist/
クリーブランド紹介
http://www.otasuke.com/clevshokai/index.html
■オハイオ州北端の都市、別名Forest City。
■オハイオ州クリーブランドは ガソリン・スタンドの創始者ロックフェラーを生んだ街。トーマス・エジソンも西方郊外(マイラン)で生まれている。
■大学院大学で有名なケース・ウェスタン・リザーブ大学(CWRU)があり、アメリカで最初のノーベル賞受賞者二人を生む。これまでに12人のノーベル賞受賞者を輩出している。
■未来のアメリカの気候温暖の最適都市は、 何とクリーブランドであるという。
■マグノリア
http://ja.wikipedia.org/wiki/モクレン属
f0174087_7325669.jpg


<コメント>
私自身アメリカといえば、メキシコへ観光旅行に行った時、ロスに立ち寄って半日の観光をしたこととハワイに行ったぐらいで、本当のアメリカに行った事がありません。
恐らく今後も一生、渡米の機会はないと思っています。
しかし今年の春、我が子がアメリカへ短期留学(ジョンズホプキンス)したため、俄然関心を持つようになりました。
こういったエッセイからでもアメリカ医学や留学の空気が読めたら(KY)いいなと思っています。

KYといえば、ある週刊誌にある国の首相をKY(漢字が読めない)と書いていました。
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by wellfrog2 | 2008-11-19 00:28 | 循環器科
2008年 10月 15日

β遮断薬は残すべき

「β遮断薬は第1選択薬として残すべきである」
本態性高血圧治療において、β遮断薬は第1選択薬として不要なのか――。
この問いかけに対し、「β遮断薬は第1選択薬として残すべき」とする研究成果が報告された。
血行動態に着目し、β遮断薬が第1選択薬となりうる症例を調査したところ、約30%が対象例だったことが分かったからだ。
一橋病院(東京都小平市)内科部長の青鹿佳和氏が10月10日、札幌市で開催されている日本高血圧学会で発表した。

日本高血圧学会が改訂を進めている高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009)の案では、本態性高血圧治療においてβ遮断薬は条件付きの第1選択薬という方向性が打ち出されている。青鹿氏らは、血行動態の特徴を見定めてから降圧薬を選択するという治療方針で診療に当たっているが、β遮断薬が第1選択薬として有効である症例を数多く経験していた。

そこで実際の有効例を把握するため、同科高血圧外来の初診患者で、未治療の本態性高血圧で合併症のない87例(平均年齢55±12歳、男性44人、女性43人)を対象に調査を行った。

外来においてImpedance cardiographyを用いて非侵襲的に血行動態を測定。
外来随時採血で、血漿レニン活性、アルドステロン濃度、カテコラミン3分画も測定した。

その結果、心拍出係数(CI)のみ高値が25例(29%)、末梢血管抵抗高値(TPRI)のみ高値が43例(49%)あり、両方が高値を示した症例が19例(22%)が存在した。

CI値で高CI群(CI3.0以上)と低CI群(CI3.0未満)に分けて比較検討したところ、高CI群では、年齢がやや高い傾向が認められた。
また、BMIは有意に低い、女性が有意に多い、高心拍数である、血中カテコラミン濃度が高い傾向にある、などが分かった。

結局、β遮断薬の有効性が報告されている「高心拍出量+正常末梢血管抵抗」の症例が29%だったことから、青鹿氏は「β遮断薬を第1選択薬とすべき症例が少なからず存在する」と結論した。
その上で、最近の大規模臨床試験では、降圧療法の効果は、選択した降圧薬の種類よりも、降圧そのものが大事であることを示していると考察。
「個々の症例にあった、より適切な降圧が得られる薬剤を選択することが大切である点を考慮するなら、β遮断薬は第1選択薬として残すべきである」と考察した。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsh2008/200810/508136.html
出典 NM online 2008. 10. 11
版権 日経BP社


<きょうの一曲> “Smoke Gets In Your Eyes”
Platters - Smoke Gets In Your Eyes
http://jp.youtube.com/watch?v=57tK6aQS_H0
Judy Garland - Smoke Gets In Your Eyes
http://jp.youtube.com/watch?v=xz68KvMtHOA&feature=related
Smoke Gets in Your Eyes - Irene Dunne
http://jp.youtube.com/watch?v=gkQU-VQkhGw&feature=related
Sonny Rollins - Smoke Gets In Your Eyes
http://jp.youtube.com/watch?v=bFTqYjA5lVM&feature=related
(ダウンロードに少し時間がかかります)


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by wellfrog2 | 2008-10-15 00:13 | 循環器科
2008年 09月 05日

血圧上昇と年余命

20mmHgの血圧上昇で16年余命が縮む
脳卒中発症率の半減を目標に

〔ベルリン〕 シュレスビッヒ・ホルシュタイン大学病院(リューベック)のHeribert Schunkert教授は「脳卒中発作に関して,ドイツでは,1990年代初めから実際には何の対策も講じられていない」とMSD Sharp & Dohme社の記者会見で指摘。
「唯一の明るい兆しは,少なくとも高血圧女性患者は,15年前よりも現在のほうが前向きに高血圧と取り組んでいるという点で,女性のほうがうまく情報を得て,治療を受けようとしているようだ」と述べた。

高血圧患者はリスクを過小評価
高血圧に関する医学的な問題は,かなりの程度,解決ずみである。
診断法は明確になり,臓器障害を阻止することができる有効な薬剤も使用可能である。
しかし,残された問題は,問題意識がまだ不十分であるという点だ。
 
ドイツでは,高血圧患者は約2,000万人と推定されているが,そのうち,実際に診断が付けられているのは1,000万人のみで,治療を受けているのは500万人,治療により血圧がコントロールされているとみなすことができるのは250万人でしかない。
このような無知と怠慢の連鎖は,脳卒中の例で示されるように,致命的な結果をもたらす。
 
ベルリンの循環器科開業医であるAndreas Forster講師は「降圧薬を服用しない,あるいは独断で服用を中止する患者が多い背景には,リスクに関する誤った認識があるのではないか」と主張した。
多くの患者は,高血圧により自分の余命がどの程度縮むか想像できない。
実際には血圧が10mmHg上昇すると,余命は平均 4年,20mmHgの上昇では16年も短縮する。
 
このような悲惨な状況を回避するために,内科,循環器科,神経内科の専門学会,さらに高血圧連盟,脳卒中患者団体,欧州脳卒中同盟(SAFE)などが提携して,脳卒中予防のためのリューベック・アクションプランを策定した。
同プランは10項目から成り,医師,患者,政治家,企業,研究者,疾病金庫向けに作成されている。
 
同プランの目標は,回避可能な脳卒中発作(全発作の大多数を占める)の件数を2025年までに半減させるというものである。
そのため,まずは同社の支援で情報提供キャンペーンが開始され,ドイツ全域で多数の催しなどが行われる予定である。

血圧の正常化は可能
大多数の高血圧患者は,現在使用可能な降圧薬で,血圧を現行の目標値(合併症のない高血圧では140/90 mmHg未満,糖尿病または腎障害を伴う場合は130/80mmHg未満)にコントロールできる。
シャリテ病院(ベルリン)のThomas Unger教授によると,特に糖尿病などの問題を抱える患者では,ACE阻害薬またはAT1受容体拮抗薬と低用量の利尿薬との併用が有効であることが実証されており,副作用も少なく,それらの相乗効果が発揮されるという。
 
また,単なる降圧にとどまらないレニン・アンジオテンシン系(RAS)抑制薬の追加的効果を利用することもできる。
このことは,LIFE(The Losartan Intervention for Endpoint Reduction in Hypertension Study)をはじめとする複数の大規模試験で明らかにされている。
それらの試験によると,ロサルタン投与群では,β遮断薬投与群より脳卒中発症リスクが約25%低かったという。

出典 Medical Tribune 2008.9.27
版権 メディカル・トリビューン社 


<コメント>
タバコ1本吸うごとに何分縮まるといった患者さんへの説明が説得力があるようです。
今回の具体的数字をあげて指導するというのも効果的に思われます。

あなたが今、禁煙したら?
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/08/28


<診察椅子>
明らかに「ばね指」と簡単に診断のつく方が来院されました。
60代の女性Aさんです。

Aさん
「これって「ばち指」ですよね。整形外科の病気とは思うんですが、先生のところにかかっているのでついでに治していただけませんか?」

「これはばね指」っていうんですよ。困りましたねえ。私は診断をつけることは出来ても治してあげることは出来ないんですよ。生憎(あいにく)内科だもんですから」
Aさん
「それはわかってます。私は元来医者嫌いであちこちかかるのがイヤなんです」

「私も総合内科医を自称していますから、他の診療科の病気も診断出来るように心がけています。しかし、専門の先生の方が患者さんにとっていいと思われる場合には積極的に紹介するのが私のスタンスなんです」
それでもAさんは食い下がります。
困ってネット検索で手術以外の方法を探して、プリントアウトして資料を渡して納得してもらいました。

やれやれ。
それにしても、どうして「ばち指」という言葉を知っていたんだろう。

ばね指、注射で改善
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20070808-OYT8T00075.htm


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by wellfrog2 | 2008-09-05 00:07 | 循環器科
2008年 07月 29日

糖尿病患者の血圧とLDL-C目標値

糖尿病患者の血圧とLDL-C目標値
"標準"以下でもCVD発症率に差ないがIMTは退縮

シカゴ〕メッドスター研究所(メリーランド州ハイアッツビル)のBarbara V. Howard所長らは「糖尿病患者の血圧とLDLコレステロール(LDL-C)を標準的な目標値以下に下げると標準的目標値の患者と比べて頸動脈壁厚はより減少するが,心血管疾患(CVD)イベントの発生率には差はなかった」とする試験結果をJAMA(2008; 299: 1678-1689)に発表した。

積極治療で有害イベント多い
この論文の背景情報によると,糖尿病患者はCVD発症リスクが高く,成人の糖尿病患者では冠動脈心疾患(CHD)が死因の第1位である。
糖尿病に関連したCVDリスクが上昇するのは,糖尿病患者では脂質異常症や高血圧などの主要なCVD危険因子を有する率も高いことによる。
糖尿病患者の収縮期血圧(SBP)とLDL- Cを推奨値よりも下げることにより,CVD関連の便益が得られる可能性を示唆する試験もある。
 
今回の試験は,2型糖尿病を有する米国先住民の男女499例における無症候性のアテローム動脈硬化症の進展を比較検討したStop Atherosclerosis in Native Diabetics Study(SANDS)
被験者のLDL-C値とSBP値をそれぞれ70mg/dL以下,115 mmHg以下まで積極的に下げる群(積極治療群)と標準的な目標値(100 mg/dL以下, 130mmHg以下)まで下げる群(標準治療群)にランダムに割り付けた。
3年に及ぶこの試験はオクラホマ,アリゾナ,サウスダコタなどの臨床センターで実施された。
 
その結果,両群ともLDL-CとSBPの平均的な目標値は達成され,その値は維持された。
試験開始前時と比べて,内膜中膜複合体厚(IMT)は積極治療群で退縮したが,標準治療群では進展した。
頸動脈の断面積も積極治療群で縮小した。
降圧薬に関係した有害イベント発生率(38.5%対26.7%)と重度な有害イベント発生数(4例対1例)は,積極治療群で高かった。
臨床的なCVDイベント発症率は両群で有意差はなかった。


健全な論争のきっかけに
Howard所長らは「臨床的なCVDアウトカムに関しては両群間に有意差はなかったが,イベント発生率は両群とも低く,標準治療群の無症候性のアテローム動脈硬化症の進展率は予想より低かった」と結論。
さらに「今回のデータは,LDL-CとSBPの目標値を定めた治療によりCVDの代理アウトカムが改善し,目標値をより低くすればより大きな便益が得られることを示唆している」と付け加えている。
 
しかし,「イベント発生率に差がなかったことと,降圧に関係した有害イベント発生率と重度有害イベント発生数が上昇したことから,長期的なアウトカムに対する便益は認められない可能性が示唆される。LDL-Cあるいは血圧をより積極的に低下させる治療戦略により,長期的なCVD発症率の低下ないしは経済的便益が得られるかどうかはいまだ明らかにされていない」と述べている。
 

JAMAの寄稿編集者でデューク大学(ノースカロライナ州ダーラム)医療センター循環器内科のEric D. Peterson教授らは,付随論評(2008; 299: 1718-1720)で「SANDSから学び取るべきメッセージは何であろうか。
今回の試験により,ある者にとっては,積極的な脂質異常治療と降圧療法が証明された早期マーカーに対してよい効果をもたらした。
したがって,長期間のフォローアップがなされれば,患者アウトカムの改善が証明されることはほぼ間違いないと捉えるだろう。
しかし,ある者にとっては2型糖尿病に罹患している高リスク患者を対象とし,理想的な状況で試験を行ったにもかかわらず,3年間のフォローアップ後でもまだ臨床的便益が確認されなかったと捉えるだろう」とコメント。
実際,積極的治療群では多剤併用(polypharmacy)により費用増大,有害イベントリスクの上昇が認められたという。
 
結論として,同教授らは「SANDSは目標値を下げることが一次予防のために実際によいことであるかどうかを明らかにするための重要な第一歩である。今回の結果からは,理想的な治療目標値に関する2つの異なる見解のいずれをも支持する解釈が可能だが,このようなディベートは健全なもので,最終的には,より確かなエビデンスの発見に医師を駆り立てることになり,さらに地域医療における治療目標をより効果的に達成するための,システムワイドな戦略を求めるきっかけとなるであろう」と述べている。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社


<関連ブログ>
コレステロールと血圧を積極的に下げよう?!
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20080620A/index2.htm
Effect of Lower Targets for Blood Pressure and LDL Cholesterol on Atherosclerosis in Diabetes
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/299/14/1678?etoc
2型糖尿病に対するコレステロール・血圧積極治療は動脈硬化退縮・・・だがイベントは・・・
http://intmed.exblog.jp/6989612/

<コメント>
対象をAmerican Indianにしぼって行ったトライアルということに興味があります。
米国の論文の多くが人種をはっきりさせないことが多いからです。
aggressive とstandard な治療でCVDイベントに差がなかったが、前者でIMTの退縮と心肥大改善効果がみられたとのこと。
しかしIMTがCVDイベントのサロゲートマーカーとするには少し無理があるのではないかと。
使用薬剤については不明ですが,最近大いに話題となったENHANCE試験を思い出してしまいます。

ENHANCE試験
http://blog.m3.com/reed/20080418/ENHANCE


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by wellfrog2 | 2008-07-29 00:09 | 循環器科
2008年 07月 02日

サッカー観戦と心血管イベント

オーストリアとスイスで共催のサッカー欧州選手権は6月29日、ウィーンで5万人の観客を集めて決勝が行われ、スペインがドイツを1―0で下して1964年以来、44年ぶり2度目の優勝を果たしました。
次回2012年大会はウクライナとポーランドの共催で実施されるそうです。
サポーターの熱狂振りはすごいですね。
スタンドであんなに飛び跳ねていては、それだけで心血管イベントを起こしそうです。
もっともそんな人はスタンドには行かないかも知れません。
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http://www.nikkei.co.jp/news/main/im20080630SSXKB000230062008.html
NIKKEI NET
サッカー観戦による情動ストレスで心血管イベントが増加
〔ニューヨーク〕スポーツイベントの観戦ではだれもがおおいに盛り上がるが,ストレスの多い出来事は心血管疾患,さらには死を誘発しうるのだろうか。
ルートウィヒ・マクシミリアン大学(独ミュンヘン)のUte Wilbert-Lampen博士らは,2006年にドイツで開催されたサッカーのFIFAワールドカップ期間中に,選手ではなく観客を対象とした心血管イベントの調査を行い,その結果をNew England Journal of Medicine(2008; 358: 475-483)に発表した。
それによると,同期間中,ドイツチームの試合があった日には心疾患の急患発生率が対照期間の2.66倍にのぼった〔95%信頼区間(CI)2.33~3.04,P<0.001〕。


性と心疾患歴でリスクに差
ワールドカップ前後の期間を対照として4,279例の急性心血管イベントを評価するために行われたこの前向き研究について,Wilbert-Lampen博士らは「情動ストレスと心血管イベントの関係を検討する機会となった。
ストレスの多いサッカー観戦は,急性心血管イベントリスクを倍加させる」と結論している。
 
同期間中の心血管イベント発生率の上昇には,男女差があった。
男性の場合,ドイツチームの試合があった日の急性心血管イベント発生率は,対照期間の3.26倍であった(95%CI 2.78~3.84,P<0.001)のに対し,女性の場合は1.82倍であった(95%CI 1.44?2.31,P<0.001)。対照期間中に心血管イベントを起こした症例の56.7%が男性だったのに対して,試合のあった7日間では71.5%が男性だった。
 
同博士らは「特に冠動脈疾患(CHD)の持病がある男性については,予防措置が早急に必要である」と述べ,一定期間の一定群に冠動脈イベントが起こる可能性を減少させるような予防措置を取ることを提案している。
なお,心疾患歴も重要因子であった。
 
同博士らは「ドイツチームの試合があった日に冠動脈イベントを起こした症例のなかで,CHDの持病があった者の割合は47.0%であったのに対して,対照期間中では29.1%であった」と述べている。
関連イベントの増加率は,CHDの既往歴を持つ者が,持たない者より大きかった(発生率比4.03対2.05)。


自国の試合観戦がより危険

重要なのは,ドイツチームの出場する試合当日に起きた冠動脈イベントが軽度ではなかったことである。
 
対照期間と比べて,ドイツチームの試合があった日にはST上昇を伴う心筋梗塞発生率が2.49倍になった(95%CI 1.47~4.23,P<0.001)。また,STの上昇や不安定狭心症のない心筋梗塞の発生率は2.61倍(95%CI 2.22~3.08,P<0.001),心不整脈の発生率は3.07倍(95%CI 2.32?4.06,P<0.001)になった。
 
Wilbert-Lampen博士らは「重要なのは,他国同士の試合中に起こる1日当たりの心疾患急患の平均件数は対照期間中の平均件数の範囲内におさまったことだ」と報告している。
ドイツチームの試合があった日,イベント発生率は試合開始の数時間前から上昇し始め,試合後の数時間も高いままであった。
これらの日にイベントの平均発生率が最も高かったのは,各試合開始から最初の2時間であった。
さらに,ドイツチームの試合があった7日間の患者の平均年齢は65.4歳で,対照期間の68.5歳に比べて若い傾向があった。
加えて,この7日間では患者の平均心拍数と最大血圧はわずかに低かった。


急に予防措置が必要
救急科の記録を利用したため,Wilbert-Lampen博士らは,サッカーの試合の時間と救急通報がなされた時間との経時的関係を正確に分析することができた。
同博士らは,心疾患における急患の増加分はほとんどが男性だった理由については推測を控えているが,この調査結果はこれまでの研究と一致しているという。
 
同博士らは「性による病態生理学的違いと,男性のほうがサッカーの試合に興味がある,あるいは感情的な刺激に反応しやすいという事実には関連があるかもしれない」と述べている。
また,この調査結果は,心臓を原因とする疾患や死亡の発生率と,地震や戦争といったストレスの多い他の出来事との関連を意味するのかもしれないとも示唆している。
 
同博士らは予防措置に関して,特にCHDの持病がある症例には予防措置が必要と指摘。
「考えられる治療法としては,β遮断薬,スタチン系薬や抗血小板薬の処方や増量およびストレスをもたらすレセプターの遮断などがある。
さらに,ストレスに対処する行動療法といった非薬物療法も考慮すべきである」と述べている。

出典 Medical Tribune 2008.6.26
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
本当の予防措置はサッカーに過度な思い入れをしないこと、ということになります。
昔、国内でもプロレスのテレビ観戦で年寄りの死者が出たことを思い出します。
ワールドカップやオリンピック、そしてそれらの予選競技の若者達の過度な応援。
これって純粋な愛国心なんでしょうか?
へそ曲がりものとしては、いつも考えてしまいます。

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by wellfrog2 | 2008-07-02 00:12 | 循環器科