カテゴリ:感染症( 14 )


2008年 12月 03日

感染症の予後予測因子としてのCRP

感染症の予後予測因子としてのCRP測定にようやくエビデンス
東札幌病院化学療法センター長/感染管理室長 平山 泰生先生


背景:
CRP測定にエビデンスが望まれていた

感染症を疑った場合,日本の医師は,おそらくC反応性蛋白質(CRP)値を測定すると思われる。
一方,米国の医師はCRP値を測定することがまれであり,これはCRP値が感染症の重症度も予後もあまり反映しないとする論文が多いためである(Chest 1995; 108: 1288-1291, Eur Respir J 2003; 21: 702-705など) 。
むしろ,がんや動脈硬化の危険因子という意外な方面で,CRPは注目されている(Int J Cardiol 2006; 106: 291-297, JAMA 2004; 291: 585-590)。

そのため米国の感染症専門医からは「CRPを重要視してはいけない,そもそも米国ではCRPを感染症のマーカーとして測定する習慣がない」といった,われわれにとって意外なアドバイスを受けることがある。
しかし,臨床医の実感としてはCRP高値の症例は重篤なように思われ,実際,強く注意を払うし,治療後CRP値が低下した場合は,感染症が沈静化したと安堵することが多い。
したがって,このような認識が的外れではないことを支持する論文が待ち望まれているように思われる。

今回,CRP値を測定することは,市中肺炎治療において意味がある,というデータについて紹介する(Am J Med 2008; 121: 219-225)。

方法:
市中肺炎症例の入院時CRP値とアウトカムを検討

Chalmersらは,市中肺炎症例の入院時と入院4病日のCRP値を570人の患者を対象に測定し,予後との相関を検討した。
30日以内の死亡および人工呼吸器装着,肺化膿症などの複雑性肺炎の発症をアウトカムとした。

結果:
入院時CRP低値群で死亡リスクが低い
 
入院時のCRP値別の生存率は,1mg/dL未満群100%,5mg/dL未満群99.1%,10mg/dL未満群98.9%,20mg/dL未満群94.4%であり,入院時のCRP低値(<10mg/dL)では30日以内の死亡のリスクが有意に低かった(オッズ比 0.18;95%信頼区間0.04?0.85,P=0.03)。
さらに,入院時CRP低値群では人工呼吸器装着のリスク(同 0.21;0.14〜0.4,P=0.002),複雑性肺炎の発症率(同 0.05;0.01?0.35,P=0.003)も有意に低かった。

一方,入院4病日以内にCRP値が50%以下にならない症例は,30日以内の死亡率が有意に高かった(同 24.5;6.4?93.4,P<0.0001)。

考察:
感染症症例でのCRP値測定を支持する結果が示された

Herzumらは炎症マーカーに関する総説に,「敗血症ではCRPの絶対値は予後の指標にはならないが,病態が改善されているかどうかのモニターとしては使用可能だ」と記載している(Current Medicinal Chemistry 2008; 15: 581-587)。
しかし,炎症のマーカーに関する多くの論文では,CRP値よりprocalcitoninが有用だと結論している(Clin Infect Dis 2004; 39: 206-217)。
ところが,残念ながら日本の検査センターでは,procalcitonin測定は行っていないことが多い。

今回Chalmersらは,入院時にCRP値が低い症例は死亡率も人工呼吸器装着,複雑性肺炎の発症率も少なく,また入院4病日以内にCRP値が50%以下にならない症例は30日以内の死亡率が高く,CRP値は市中肺炎の独立した予後予測因子であることを示した。

われわれが,感染症でCRP値を測定することを支持する論文である。
とはいえ,日本では,米国の感染症専門医が指摘するようにCRP値を重視しすぎていることは否めない。
感染症におけるCRP値は体温,白血球数と同じく参考程度に留め,臓器特異的なパラメーター(肺炎なら呼吸数,喀痰のグラム染色,ガス分析)を意識して,治療効果を判定してゆくことが実際的であろう。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200811/508463_2.html
出典 NM online 日経メディカル オンライン 2008.11.7
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
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出典 日経新聞・朝刊 2008.12.2
版権 日経新聞社
<関連サイト>
新薬開発を代行・支援する−医薬品開発業務受託機関(CRO)
http://www.nikkan.co.jp/adv/gyoukai/2008/081126a.html

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by wellfrog2 | 2008-12-03 00:30 | 感染症
2008年 11月 30日

リレンザ(ザナミビル)一考

イチョウの色づいた黄色い葉が奇麗な季節です。
歩道も黄色一色に染まっています。
天気のいい中、きょうは「医療機器フェア」に出かけました。

見て、触って、感動の2日間というキャッチフレーズです。
実はこんなフェア(卸さん主催)に行くのは初めてです。
ちょうど医学関連学会の医療機器展示ブースの開業医版で、調剤機器や受付・待合機器や電子カルテを主体にしたIT関連機器の展示が学会とは異なるところです。

正直いって結構楽しい時間をすごすことができました。

日頃お世話になっている社員、中には今年8月の超音波装置選定の際に落選(?)した医療機器メーカーの社員や、デモのため当院に最近来た経鼻電子内視鏡の営業担当に声をかけられたりしました。

きょうはグラクソ・スミスクライン(株)のリレンザの話を立ち話で聞いた内容の紹介です。
といってもパンフが主です。


リレンザは
●耐性が生じにくい
●気道に直接作用し、全身への影響が少ない
ということを第一にうたっています。

2006年2月 小児の適応追加
2007年1月 予防適応取得
使用期間が3年から5年に変更

精神神経系の副作用発現率は0.40%、消化器系は0.53%。


患者の自覚症状消失までの時間
12時間以内  24.0%
24時間以内  52.6%
48時間以内  79.6%


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by wellfrog2 | 2008-11-30 16:17 | 感染症
2008年 11月 29日

新型インフルエンザのガイドライン改定案が提示

感染拡大時の対策を具体化
厚生労働省の新型インフルエンザ専門家会議(座長=国立感染症研究所感染症情報センター長・岡部信彦氏)は,11月20日,昨年(2007年)3月に策定された対策ガイドラインの改定案を示し,担当委員による説明をもとに議論を行った。
 
改定案が示されたのは,
(1)検疫,
(2)感染拡大防止,
(3)個人,家庭および地域における対策,
(4)埋火葬,
(5)積極的疫学調査実施要項(仮題),
(6)抗インフルエンザウイルス薬,
(7)医療体制,(8)サーベイランス,
(9)情報提供・共有(リスク・コミュニケーション)
-に関する9分野。
国内未発生の第一段階から感染が拡大した第三段階までの各段階における具体的対策が盛り込まれており,今後,政府の方針として正式に打ち出される。

発熱外来で患者を振り分け 軽症者は感染蔓延期には自宅療養に 
改定案のポイントは以下の通り。

感染拡大防止には公衆衛生学的対策が重要となることから,新型インフルエンザの患者が発生した地域においては,不特定多数の者が集まる活動の自粛や学校の臨時休業を実施する。
 
感染発生早期には,感染の疑いがある患者は保健所などに設置される「発熱相談センター」に電話で問い合わせをし,その指示に従って医療機関を受診する。
感染が確認された場合には入院治療を受けるが,感染蔓延期には,軽症者は原則として自宅療養となる。

新型インフルエンザの暴露を受けた者に対しては,第二段階には,同居者および患者と同じ学校や職場などに通う者に対し,抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を実施し,第三段階には,増加する患者の治療を優先し,同居者以外への予防投与は見合わせる。
いずれの段階においても,患者に濃厚接触した医療従事者や水際対策関係者は予防投与の対象となる。
 
抗インフルエンザウイルス薬の選択では,オセルタミビルを第一選択薬とし,オセルタミビル耐性ウイルスにはザナミビルを使用する。

医療機関については,発生前の段階から,慢性疾患の患者に対して定期薬を長期処方する,発熱外来を準備するとしている。
入院措置中止後は,かかりつけ医が電話診療を行って感染が認められた場合,ファクスで処方せんを発行できる。

医療体制について,出席した委員からは,「学校などを閉鎖すると(育児中の)多くの医療スタッフが出勤できなくなるが,それについての対策は議論されているのか」という質問があり,担当委員は「今回の改定では取りまとめに至らなかったが,医療機関における事業継続計画については,重要な検討問題と考えている」と述べた。
 
また,発熱外来の具体的な実施方法や有効性を問う意見に対して,「発熱外来については議論が白熱しているところであるが,発熱している患者とそうでない一般患者を分ける努力は必要である」と答えた。

感染拡大期の検査体制に関して具体化されていないといった指摘があり,座長の岡部氏は「すべての患者に病原検査をすることが実際的であるかどうかという問題はある。診断キットの開発などを進める一方で,具体的に議論しなくてはならない部分である」と述べた。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0811/081129.html
NM online

出典 日経メディカル オンライン 2008.11.25
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-11-29 00:25 | 感染症
2008年 11月 24日

新型インフルエンザとタミフル

厚生労働省は、新型インフルエンザの流行時に、特定の患者には電話診療だけでタミフルなどの治療薬を処方できるようにすることなどを盛り込んだ対策指針の改定案をまとめ、11月20日開かれた専門家会議に示し、了承された、というニュースがありました。
「患者の殺到が予想される医療機関の混乱を抑えるのが狙い」とのことですが、無診療投薬を厳しく戒める厚生労働省自らが例外を作った形になりました。

電話診療でタミフル処方も 新型インフル対策で厚労省 「医療ニッポン」
http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=83282&categoryId=&sourceType=GENERAL&

そこで誰もが疑問に思う事があります。
それは、タミフルが新型インフルエンザに効くかということです。
そこでちょっと厚生労働省のホームページでの記載をチェックしてみました。

出典は
新型インフルエンザに関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html
です。

「抗インフルエンザウイルス薬はどのようなものがあるのですか」という質問に対して
「新型インフルエンザの治療薬としては、毎年流行する通常インフルエンザの治療に用いられているノイラミニダーゼ阻害薬が有効であると考えられています。
ノイラミニダーゼ阻害薬には、経口内服薬のリン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)と経口吸入薬のザナミビル水和物(商品名:リレンザ)があります。」

結局は「有効であると考えられています。」とさらっと流しています。
想定質問は「タミフルは新型インフルエンザに訊くのでしょうか」とすべきです。
言語明瞭、意味不明の典型例です。


さらに新型インフルエンザ対策の現状を読売新聞はこう伝えています。

新型インフルエンザ対策  タミフル頼み限界
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20051206ik08.htm

国は新型インフルエンザの感染者数を国民の25%と想定して2500万人分の備蓄を計画、タミフルを巡り各国や国内の綱引きが過熱している。
だが、この薬が新型ウイルスに確実に効く保証はない。
新型インフルエンザへの変化が懸念されている鳥インフルエンザ「H5N1」に対し、タミフルは作用メカニズムから効果が予想され、試験管内の実験でもウイルスの増殖を防ぐことは確認されている。
こうした理論上や実験では有効でも、人に使うと効果がみられない薬も多く、タミフルの場合も人で確かめなければ分からない。
鳥から人への感染が起きた東南アジアで、治療に使われたケースもあるが、効果があるとされる発症2日以内に使った症例が少なく、有効性は証明できていない。


最後に、新型インフルエンザワクチンについての厚生労働省のホームページでの見解です。

新型インフルエンザに関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html
Q:
新型インフルエンザにワクチンは効きますか。
A:
通常のインフルエンザの予防接種は、新型インフルエンザとはウイルスの種類が異なるため、感染防止の効果はほとんど期待できないと考えられています。
新型インフルエンザに対して効果が期待できるワクチンとして、プレパンデミックワクチンとパンデミックワクチンがあります。
プレパンデミックワクチンとは、新型インフルエンザウイルスが大流行(パンデミック)を起こす以前に、トリ-ヒト感染の患者または鳥から分離されたウイルスを基に製造されるワクチンを指します。
政府は現在流行している鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に対するワクチンをプレパンデミックワクチンとして製造、備蓄しています。
パンデミックワクチンとは、ヒト-ヒト感染を引き起こしているウイルスを基に製造されるワクチンです。
プレパンデミックワクチンと異なり、ワクチンの効果はより高いと考えられます。
ただし、パンデミックワクチンは実際に新型インフルエンザが発生しなければ製造できないため、現時点で製造、備蓄は行えません。

というように、現在のインフルエンザワクチンが完璧でないのと同様ないしはそれ以下のはずです。
現在のインフルエンザワクチンでさえ、私達医療提供側は予想株と実際の流行株を知らされないまま毎年「粛々と」予防接種を行っているのが現状です。
誰一人文句を言わないのが不思議です。

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by wellfrog2 | 2008-11-24 00:46 | 感染症
2008年 11月 18日

急性虫垂炎の診断

急性虫垂炎については、以前にこのブログでとりあげました。

急性虫垂炎の診断
http://wellfrog.exblog.jp/6883879

私は、「帯状疱疹」「妊娠」と並んでしばしば診断を間違えやすい疾患として常日頃から肝に銘じています。
「フナ釣りに始まりフナ釣りに終わる」の感のある疾患です。

この前も、尿管結石の既往がある若い男性が腹痛を訴えて来院しました。
右下腹部に圧痛があるために虫垂炎を疑い、病院に紹介して事なきを得ました。
診断は壊死性虫垂炎でした。

患者のいうことを信じ過ぎても疑い過ぎてもいけないという教訓を得ました。


急性虫垂炎の的確な診断 依然として診察の重要性は揺るがず
急性虫垂炎の診断においては,現在でも医師による診察が決定的な意味を持っている。
聖クララ病院(バーゼル)外科のIda Montali博士らは「上腹部痛またはびまん性の腹痛が時間の経過とともに右下腹部へと移ってきたら,必ず虫垂炎を疑ってみるべきである」とSchweizerisches Medizin-Forum(2008; 8: 451-455)で解説した。

はっきりしない場合は経過観察
虫垂炎の典型的症状としてはほかに悪心があり,便秘が認められることも多い。
マックバーニー点の圧痛も虫垂炎を示唆しているが,疼痛部位は虫垂の位置次第で,この位置にはかなりの個人差があることに注意する必要がある。
さらに,虫垂炎では腹膜刺激症状(板状硬,叩打痛,反跳痛)と腸腰筋微候陽性も認められる。
 
虫垂炎患者では,腋下体温より直腸体温のほうが0.5〜1.0℃高いことがあるが,必ずしもそうとは言い切れない。
また,大半の患者で白血球数とC反応性蛋白(CRP)値が上昇しているが,例外も存在する。
したがって,白血球増多のみを手がかりとして手術の適応を決定すべきではない。
 
臨床上,急性虫垂炎が疑われる患者において,超音波検査で同心円状の特徴的な虫垂像が描出されるか,
(1)プローブで圧迫してもつぶれない
(2)虫垂内腔が低エコーである
(3)虫垂の径が8mmを超えている
−といった所見が得られれば,虫垂炎である可能性が高い。
 
しかし,正常な虫垂は超音波では描出されないことも多く,肥満患者の場合にも同検査はあまり役に立たない。
CT検査は感度,特異度ともに98%と有用である。
ただし,日常的な検査法としてルーチンに使用する診断法ではない。
 
Montali博士は「虫垂炎かどうかがはっきりしない場合には,患者を入院させて臨床症状と臨床化学検査値を頻回にチェックしながら,経過観察を行うべきである」と指摘している。
患者の約3分の1では疼痛が自然に消失するため,不要な虫垂摘出術の施行件数を減らすことができるという。
診断法が進歩した今日でも,誤診率は約5%にのぼる。
 
急性虫垂炎治療における第一選択は今なお虫垂摘出術である。
抗菌薬療法の効果は実証されておらず,まず最初に保存的治療を受けた患者の多くが結局は手術を余儀なくされている。そ
れでは,炎症を生じた虫垂は直ちに切除すべきなのだろうか。
この点について,同博士は「最初に疼痛が発現してからの経過時間が重要であり,その時間次第では手術を数時間遅らせても穿孔リスクは上昇しない」と述べている。
 
さらに,術式に関して,開腹術と腹腔鏡下手術のいずれを選択するかは術者の経験次第である。
というのも,少なくとも現時点では腹腔鏡的手技の優位性は明確には証明されておらず,いずれの方法でも得られる成績は同等であるからである。
同博士は,臨床的に判然としない点がある患者に対しては,同時に術中検査を行える腹腔鏡的手技を優先しているという。

出典 Medical Tribune 2008.11.13
版権 メディカル・トリビューン社


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三塩清巳 油彩6号『夕映』
http://page19.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/x53997971


<きょうの一曲> "翼の折れたエンジェル"
中村あゆみ・翼の折れたエンジェル
http://jp.youtube.com/watch?v=lXKnNOXUJv4

http://jp.youtube.com/watch?v=236XTggQsZw&feature=related

http://jp.youtube.com/watch?v=Ul1Y8Z4zwB0&feature=related


<自遊時間>
日本医事新報 NO.4280 (2006.5.26)の巻頭の「プラタナス」で国立長寿医療センターの大島伸一総長が「医者が尊敬されなくなった理由」というタイトルでエッセイを書いてみえます。

『100%を求める患者と100%を保証できない医師。
そのジレンマをどう埋めるか。
結果責任を法や金で清算するやり方では溝は広がるばかりだろう。
医師が尊敬されなくなったのは、個と社会との関係やバランス感覚の欠如、複雑な生命体であるひとを総体としてみるという視野の欠落などを背景に、医師・患者関係の基本である「信頼」という意味や価値がわからなくなったからではないか。』

と結論づけています。

医療訴訟やモンスター患者を、総長としての立場で体験してのエッセイと思います。
昔と比べて。尊敬されているかされていないかは私自身何とも判断できません。
幸い医療訴訟に巻き込まれた経験はありませんが、モンスター患者が増えているのは実感しています。
先生方の感想はいかがでしょうか。


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by wellfrog2 | 2008-11-18 00:10 | 感染症
2008年 11月 08日

待望のHibワクチン

DPTとの同時接種などで、効率的な導入を 待望のHibワクチンがついに発売へ
小児科医が長年待ち望んでいた、インフルエンザ菌b型(Hib)ワクチン「アクトヒブ」が、2008年12月についに日本でも発売される。

 
インフルエンザ菌には莢膜を持つ株と持たない株があり、b型は莢膜を持つ株の中でも特に病原性が強い。
主に免疫機能の未熟な乳児において、細菌性髄膜炎や肺炎、喉頭蓋炎といった重篤な疾患を引き起こす。

 
アクトヒブは、Hibの莢膜多糖体に、破傷風トキソイドをキャリア蛋白として結合させた不活化ワクチンだ。
アクトヒブをはじめとするHibワクチンは、海外では20年以上前から発売され、現在は100カ国以上が導入、90カ国以上が定期接種に組み込んでいる。
 
一方、日本では、Hibワクチンは任意接種として扱われる。
接種対象年齢は、生後2カ月〜5歳まで。標準開始年齢は生後2〜7カ月未満で、初回免疫として4〜8週間の間隔で(医師の判断によっては3週間でも可)3回、追加免疫として約1年後に1回接種を行う。
7カ月〜1歳未満の場合は初回免疫2回、追加免疫1回で、1〜5歳未満の場合は1回接種とされている。

 
国立病院機構三重病院小児科医長の中野貴司氏は、「Hib髄膜炎の罹患年齢は生後3カ月〜1歳がピーク。早い時期から接種して抗体を獲得させることが何よりも肝心だ」と強調する。
初回免疫だけでは抗体価が長期間持続しないため、追加接種も必ず受けるよう促すことも重要だという。


Hibワクチンの接種時期は、定期接種であるジフテリア、百日咳、破傷風の3種混合(DPT)ワクチンの接種時期と重なっている(図1)。
来院回数が最小限に抑えられ、ほかの予防接種のスケジュールにも影響しないことから、中野氏らはDPTワクチンとの同時接種を推奨する。

 
HibワクチンとDPTワクチンの同時接種は、欧米ではごく一般的に行われている上、WHOも同時接種が可能であるとの見解を示しており、それぞれの抗体産生が阻害される懸念はないという。
ちなみに、「11〜12月はインフルエンザの予防接種の需要も高まるが、これも同時接種での対応が可能だ」と中野氏は話す。

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図1 
Hibワクチンとほかのワクチンの接種スケジュール(国立感染症研究所感染症情報センターの資料を編集部で改変) 生後1年までに接種が必要な定期接種のスケジュールとともに示した。

このほか、小児用の7価肺炎球菌結合型ワクチンも承認申請中だが、接種スケジュールは未定。

重篤な副反応の報告はなし
 
ふたばクリニック(東京都世田谷区)院長の廣瀬久人氏は、以前から海外渡航者向けに国内未販売のワクチンを個人輸入し、接種を行っている。
アクトヒブも1年半ほど前から扱っていたが、今年5月にテレビ報道で細菌性髄膜炎が取り上げられた直後から、接種希望者が急増。診療に支障を来すとして現在は受け入れ人数を絞っているが、それでも月に70人以上の接種希望者が来院する。

 
廣瀬氏は「これまで数百人にHibワクチンの接種を行ってきたが、深刻な副反応は経験していない。むしろ安心して使える部類に入るのではないか」と話す。
生後2〜6カ月の乳児122人を対象に行われた国内臨床試験でも、報告された副反応のほとんどが発赤、腫脹、硬結などの軽微なものにとどまっていた。

 
Hibワクチンを定期接種化した諸外国では、導入後、Hib感染症の罹患率が激減した。
しかし、日本では任意接種での導入となるため、そこまで劇的な効果が見込めるかどうかは分からない。
4回接種の場合、被接種者が支払う費用は3万円前後に上るとみられ、高い経済的負担が普及の足かせとなる恐れもある。まずは接種率の向上が、当面の課題となるだろう。

出典 MN online 2008. 10. 31
版権 日経BP社


<きょうの一曲>  「枯葉」
キース・ジャレット・トリオ 「枯葉」
http://www.kiraku.tv/category/7771/movie/1/io1o1Hwpo8Y



読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。
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by wellfrog2 | 2008-11-08 00:09 | 感染症
2008年 10月 23日

RSウイルス感染症

RSウイルス感染症の報告数が早くも増加している(図1)。
例年冬季に流行するが、今年は流行の立ち上がりが非常に早く、2008年第40週(9月29日~10月5日)の報告数は1256人。
第28週以降、過去5年の同一週における最高値を13週連続で更新している。週当たり1200人を超える報告数は、例年の11月下旬に匹敵する数字。
都道府県別に見ると、福岡県(273人)、大阪府(154人)、東京都(74人)の報告数が多い。

図1 RSウイルス感染症の報告数の推移 (データ:国立感染症研究所)
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RSウイルスは、主に乳幼児において気管支炎、細気管支炎、肺炎などを引き起こす。
RSウイルス感染症は、2003年の感染症法改正から5類感染症として小児科定点把握疾患となっており、国立感染症研究所のまとめによると、第38週までの累積報告では、1歳以下の小児の感染者が全体の76.3%を占める。
低出生体重児や、心肺系の基礎疾患や免疫不全のある乳幼児では特に重症化のリスクが高く、注意が必要だ。

臨床症状は、感冒様症状から肺炎に至るまで多彩なため、それだけで診断を下すことはできない。
そこで、届け出には、
1)ウイルス分離による病原体の検出、
2)迅速診断キットによる抗原の検出、
3)中和反応や補体結合反応による血清抗体の検出
――のいずれかを行っていることが必須条件となっている。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200810/508217.html
出典 NM online 2008. 10. 17
版権 日経BP社


RSウイルス感染症の報告数が早くも増加している(図1)。
例年冬季に流行するが、今年は流行の立ち上がりが非常に早く、2008年第40週(9月29日~10月5日)の報告数は1256人。
第28週以降、過去5年の同一週における最高値を13週連続で更新している。週当たり1200人を超える報告数は、例年の11月下旬に匹敵する数字。
都道府県別に見ると、福岡県(273人)、大阪府(154人)、東京都(74人)の報告数が多い。

図1 RSウイルス感染症の報告数の推移 (データ:国立感染症研究所)
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RSウイルスは、主に乳幼児において気管支炎、細気管支炎、肺炎などを引き起こす。
RSウイルス感染症は、2003年の感染症法改正から5類感染症として小児科定点把握疾患となっており、国立感染症研究所のまとめによると、第38週までの累積報告では、1歳以下の小児の感染者が全体の76.3%を占める。
低出生体重児や、心肺系の基礎疾患や免疫不全のある乳幼児では特に重症化のリスクが高く、注意が必要だ。

臨床症状は、感冒様症状から肺炎に至るまで多彩なため、それだけで診断を下すことはできない。
そこで、届け出には、
1)ウイルス分離による病原体の検出、
2)迅速診断キットによる抗原の検出、
3)中和反応や補体結合反応による血清抗体の検出
――のいずれかを行っていることが必須条件となっている。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200810/508217.html
出典 NM online 2008. 10. 17
版権 日経BP社


<きょうの一曲> ” Desafinado”
Desafinado by Joao Gilberto
http://jp.youtube.com/watch?v=g6w3a2v_50U&feature=related

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by wellfrog2 | 2008-10-23 00:15 | 感染症
2008年 09月 27日

新型インフルエンザのワクチン接種

新型インフルエンザ:ワクチン接種、医師ら来年度から 97業種5段階に分け 
◇政府が試案公表
政府は18日、新型インフルエンザに備えたプレパンデミック(大流行前)ワクチンを接種する対象者の試案を公表した。
対象は97業種の従事者で、優先順位で5段階に分類。
総数は推計1000万~1500万人で、最も優先度の高い医師や救急隊員ら100万~200万人は来年度から接種を始める。
政府は国民から意見募集してさらに試案を示し、年度内の確定を目指す。
 
プレパンデミックワクチンは世界的に流行している高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)のウイルスから作り、新型インフルエンザを予防できる可能性がある。
国は現在2000万人分を備蓄、ガイドラインで「医療従事者と社会機能維持者に接種する」としているものの、詳細は決まっていなかった。
 
試案では、接種対象の業種を優先度の順に
▽カテゴリー1(即時に第一線で対応)
▽カテゴリー2(国民の生命・健康・安全・安心に関係)
▽カテゴリー3(国民の最低限の生活維持に関係)
−−と分類。
さらにカテゴリー2は3段階に分けた。
 
カテゴリー1の該当者は、来年度から接種を開始。
カテゴリー2以降は、新型インフルエンザ発生後に接種するが、今年度実施している臨床研究で効果が確認されれば、前倒しも検討する。
これ以外の希望する国民への接種も将来的な検討課題とした。
 
一方、発生後に全国民に接種する新型インフルエンザウイルスから作ったワクチンについては、どの年齢層から優先接種するかを明示せず、議論を先送りした。

 
<プレパンデミックワクチンの接種対象者>
カテゴリー1
(1)感染拡大防止、被害の最小化に資する業種
病院、一般診療所職員▽保健所職員▽救急隊員、消防職員▽在外公館職員▽税関・入国管理局・検疫所職員▽警察職員▽宿泊施設従事者▽自衛隊員▽海上保安庁職員▽航空運送事業者(国際線)▽空港管理者・機能維持者▽水運業(外航海運)▽外航海運代理店業▽水先業
カテゴリー2
(2)新型インフルエンザ対策に関する意思決定に携わる者(首長など)
国家機関▽都道府県機関▽市町村機関
(3)国民の生命、健康の維持にかかわる業種
病院、一般診療所、在宅看護サービス▽歯科診療所▽その他の医療業▽老人福祉・介護事業▽児童福祉事業▽障害者福祉事業▽医薬品製造業▽医薬品販売業▽医療機器製造販売業者
(4)国民の安全、安心の確保にかかわる業種
消防職員((1)以外)▽警察職員(同)▽自衛隊員(同)▽海上保安庁職員(同)▽海事関係職員▽港湾管理者▽国会議員▽国会議員公設秘書▽国会事務局職員▽都道府県議▽市区町村議▽地方議会議員事務局職員▽放送業▽新聞業▽電気通信業▽電気通信に付帯するサービス業▽矯正職員▽更生保護官署職員、保護司、更生保護施設職員▽検察庁従事者▽裁判官
カテゴリー3
(5)ライフラインの維持にかかわる業種
電気業者▽原子力事業者▽上水道事業者▽下水道事業者▽工業用水道事業者▽ガス事業者▽熱供給事業者▽石油精製業者▽石油販売業者▽LPガス事業者▽石油備蓄事業者▽石油採掘事業者▽航空運送事業者(国内線)▽港湾管理者▽空港管理者((1)以外)▽水運業(内航海運)▽海運代理店業▽港湾運送業▽その他の運輸付帯サービス業▽鉄道業▽道路旅客運送業▽道路貨物運送業▽運輸関連業者▽道路管理者▽倉庫業▽精穀・製粉業▽パン・めん類など製造業▽乳製品製造業▽缶詰製造業▽レトルト食品製造業▽冷凍食品製造業▽せっけん・合成洗剤製造業▽トイレットペーパー製造業▽ごみビニール袋製造業▽衛生用品など製造販売業▽食品流通関係者▽食料品・生活用品小売業▽金融機関▽日本銀行▽保険会社▽政府系中小企業金融機関▽ソフトウエア業▽情報処理・提供サービス業▽インターネット付随サービス業▽郵便局▽国家公務員▽都道府県職員▽市町村職員▽独立行政法人職員▽火葬・埋葬業▽廃棄物処理業
 ※(1)~(5)が優先順位
毎日新聞 2008年9月19日 東京朝刊


<コメント>
効果があるかどうか、そして安全かどうかもわからないワクチン。
ワクチンで防げない可能性の方がはるかに高いはずなのにその際の人工呼吸器の確保などはどうなっているのでしょうか。

<自遊時間>
少年、しかめっ面でたばこ購入 顔認証自販機、識別できず
http://www.excite.co.jp/News/society/20080926/Kyodo_OT_CO2008092601000655.html
<コメント>

私はタバコは吸いません。
結構な年なのですが童顔なので、笑顔で顔認証方式の自販機の前に立って成人と認識されるかどうか自信がありません。
それにしても、国側も馬鹿なことを真剣に考えるものです。
業界や技術の発展には寄与しますが、誰がこの高価な器械の金を出しているのでしょうか。
もちろん税金・・・・ですか。

税金を「吸い」上げるために税金を投入する、という図式ですか。


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by wellfrog2 | 2008-09-27 00:36 | 感染症
2008年 09月 20日

高齢者へのインフルエンザワクチン

インフルエンザワクチン 高齢者の肺炎リスクへの効果は不十分
〔ニューヨーク〕グループヘルス協同組合保健研究センター(ワシントン州シアトル)のMichael Jackson博士らは,免疫応答の正常な高齢者の肺炎リスクに関して,インフルエンザワクチン接種による効果はこれまで考えられていたほどではないと,Lancet(2008; 372: 398-405)に発表した。

健康状態指標を調整
これまでの研究では,ワクチン接種を受けた高齢者は,受けていない高齢者と比べて肺炎による入院リスクが20〜30%低下するとされてきた。
しかし,これらの知見は研究対象群間における健康状態の背景因子の差によるバイアスがかかっていた可能性があるという。
 
Jackson博士らは,免疫応答の正常な高齢者に対するインフルエンザワクチン接種が健康状態指標の調整後も市中肺炎リスクと関連しているか否かを評価した。
 
研究では,2000〜02年のインフルエンザの前流行期と流行期にグループヘルス協同組合に登録されていた65〜94歳の高齢者を対象とした。
 
入院患者と外来での市中患者の肺炎症例は,カルテまたは胸部X線所見を確認した。
症例1例に対して年齢と性をマッチさせた2例を対照としてランダムに選んだ。
 
また,カルテにより,喫煙歴,胸部疾患の有無と重症度,体調の変化の指標などの潜在的な交絡因子を同定した。
 
同博士らは,市中肺炎患者1,173例と対照の2,346例を調査した。
その結果から,カルテレビューを行って対象患者における他疾患の有無と重症度により交絡する影響を調整したところ,インフルエンザワクチン接種は市中肺炎リスクの低下と関連していなかった。

ワクチン開発に大きな意味
Jackson博士らは今回の結果を受けて,「インフルエンザ感染は高齢者の肺炎の原因としてはごく一部にすぎず,その感染リスクを減少させても,その他のあらゆる原因による肺炎を大きく減らせない可能性がある」と述べている。
 
さらに,今回の結果は,肺炎リスクのある高齢者ではこのワクチンがインフルエンザ感染リスクを低下させるうえであまり有効ではない可能性を示唆している。
この2つの可能性は,ワクチン開発とワクチン接種の推奨意義に対してきわめて大きな影響を与えることになる。
 
マーシュフィールド・クリニック研究財団(ウィスコンシン州マーシュフィールド)のEdward Belongia博士と米疾病管理センター(CDC)インフルエンザ部門のDavid Shay博士は,同誌の付随論評(2008; 372: 352-354)で「検査で確認されたアウトカムに依拠して幅広い交絡因子を調整した研究がさらに行われれば,高齢者におけるワクチンの有効性に影響する抗原適合性やその他の要因に関する貴重な情報が得られるであろう」と述べている。

出典 Medical Tribune 2008.9.18
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
インフルエンザワクチンには大なり小なりの副作用を伴います。
この論文から何を学び、高齢者に対するインフルエンザワクチン接種を今後どのようにしていけばいいのか、戸惑ってしまいます。
何故なら、従来いわれていたことが根底から覆されてしまうからです。
「幼児や高齢者や病弱者こそ積極的に接種すべき」という指導は今後どのようにすればいいのでしょうか。

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by wellfrog2 | 2008-09-20 00:48 | 感染症
2008年 08月 28日

増加する成人の百日咳感染

かつては乳幼児が大半を占めていた百日咳であるが,近年では成人の割合が増加傾向にある()。
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軽いかぜと油断していると痙攣性の咳が長く続き,いずれは周囲を巻き込んでいく。
大学生などにおける大規模な集団感染の報告も相次いでおり,医療者や一般市民の関心が高まっている。
そこで,成人で百日咳が蔓延するようになった原因,今後の対策を独立行政法人国立病院機構福岡病院小児科の岡田賢司部長に聞いた。

大学などで集団感染が報告
今年4月,東京大学の教養学部で新入生を中心に百日咳が流行,5月には島根大学でも数人の学生の感染が確認された。
一方,全国約3,000か所の小児科定点から国立感染症研究所に寄せられた患者の報告数も確実な上昇を見せ,第18週に200人の大台を突破,翌週には300人を超え,過去最高を記録した。
 
もっとも,徴候は既に2007年からあった。
同研究所がまとめたデータによると,香川大学では5月の中旬以降,医学部に加え,教育・法・経済学部のキャンパスで長引く咳に悩まされる学生や教職員が続出,7月初旬までにその総数は361人に達している。
それだけでなく,血清学的検査から,うち290人の百日咳感染が明らかになった。
 
この事態を前に高知大学医学部も水際作戦を展開するが,7月19日に実施したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査では対象とした28人中24人が陽性と判明,急きょ,休講措置を取った。
その後の調査データを見ると,学生は5月下旬~6月下旬に,職員は6~7月に発症のピークがあり,講義や部活の参加者の間でまず感染が拡大,臨床実習などを通じて職員へと受け渡された可能性が強い。
また,PCR検査の陽性率は学生(医学部・看護学部)が45.7%,職員(医師・看護師)では69.8%と高いものの,症状との相関は乏しかった。
学生610人と職員473人に抗菌薬の服用を強いた同大学の集団感染は9月下旬,終息にこぎ着けた。
 
一方,青森県板柳町の消防署でも5~6月にかけて隊員4人(26~54歳)とその家族5人(9~53歳)が持続性の咳を訴え,うち2人から百日咳菌が分離された。
このほか,8?12月には患者の散発的な発生を重く見た愛媛県宇和島市がサーベイランスを試み,小流行を報告している。

土着の菌が流行を呼び込む
百日咳は好気性グラム陰性桿菌,百日咳菌(Bordetella pertussis)によって引き起こされる急性の呼吸器感染症で,通常は感染から7?10日の潜伏期間を経て発症し,臨床的にはカタル期,痙咳期,回復期に区分できる。
うちカタル期はくしゃみや軽い咳などのかぜ様の症状から始まり,痙咳期に入ると,連続的な短い咳(スタッカート)とヒューという笛のような吸気音(whoop)を伴う発作を繰り返す(レプリーゼ)。
息を詰めながら咳き込むため,顔面のむくみや鼻出血,嘔吐に見舞われるほか,肋骨を疲労骨折する場合もある。
また,乳幼児では典型的な症状を欠いたまま無呼吸発作や痙攣,呼吸停止を呼び込むなど,重篤化しやすい。
 
最も有効な予防策はワクチンの接種である。
わが国では1950年代,小児を中心に1年につき10万例以上の患者が発生し,うち約10%が死亡したと言われる。その打開に向け,58年に百日咳(P)とジフテリア(D)を組み合わせたDPワクチン,68年からは破傷風(T)を追加した三種混合(DPT)ワクチンの接種がスタート,患者数の大幅な減少が見られた。
 
ところが,2002年を境に20歳以上の世代の感染が目立ち始め,現在では全国約3,000か所の小児科施設(定点)の累積報告数のうち36.7%を占めている。
この集計は小児科からの報告のため,成人の患者はかなりの数に及ぶと考えられる。
香川大学や高知大学のケースのような規模の大きな集団感染が報告されるようになったのは,これまでにない現象と言える。
 
あるいは,百日咳菌の遺伝子に変異が生じ,ワクチンを無効化させているのか。
しかし,国立感染症研究所はMLST(multilocus sequence typing)法を応用,青森や高知,愛媛などで採取されたサンプル(患者のスワブや分離株)の分析を試み,それぞれの地域の株が遺伝的に異なると結論付けた。
したがって,百日咳菌の病原性が変化し,特定の地域から全国へと波及したわけではなく,各地に定着していた菌がたまたま同時に流行したと見るのが妥当だろう。

成人が小児に菌を受け渡す
小児の百日咳とは違い,成人では症状が穏やかで発熱も少ない。
そこで,キャリア状態のまま学校や職場に出向き,結果的に菌をまき散らしてしまう。
感染の経路はおもに飛沫感染だが,感染力は麻疹に次いで強い。
 
発症が医療施設への受診につながらないのも,若者や働き盛りの壮年層の特徴である。
ようやく受診したころには1か月ほどが経過し,既に菌の排出は終わっている。
 
「発作性の咳は夜間に集中し,日中にはおさまる。そこから,受診を先延ばしにしがちだが,体内から菌が消えても毒素は残るため,咳症状は持続する。
つまり,マクロライド系などの抗菌薬で菌の増殖を抑えて症状を軽減させる意味でも,早い段階の受診と診断が望ましい」(岡田部長)
 
特に,小児の感染の大半は家族内感染と考えてよく,両親,姉妹,同居中の叔父や叔母,祖父母がキャリアになるという。
むろん,成人についても,百日咳と診断されたり,咳が長く続く家族や同僚,クラスメートの有無を洗い出し,検査データをもとに診断を確定させる必要がある。
 
その検査法には菌培養検査,血清学的検査,遺伝子検査などが含まれる。
うち,菌培養検査は保菌量の少ない成人の患者には適していない。遺伝子検査(LAMP法;loop mediated isothermal amplificationやPCR法)は感度こそ高いものの,相応のコストと技術が要求される。他方,最も一般的な方法が細菌の菌体に対する凝集抗体価を測る血清学的検査で,急性期に東浜株(ワクチン株)ないし山口株(流行株)のいずれかが320倍以上のケースは感染が疑われるなど,一応の参考にはなる(シングル血清)。
しかし,確定診断のためには山口株の抗体価が320?640倍に達する健康人を視野に入れ,急性期と回復期(およそ2週間後)の抗体価を測定,4倍以上の上昇を確認するペア血清が基本とされている。

追加ワクチンで感染予防の徹底を
成人の感染の増加を促すもう1つの要因と目されるものにワクチンの効果の減衰がある。
現行の予防接種法では生後3~12か月の期間に3回( I 期初回),12~18か月に1回(追加接種)と,計4回のDPTワクチンの接種が組み入れられ,近年の接種率は約95%と高い。
しかし,免疫の持続期間は5?10年程度と短く,成人になる前に薄れていく。
300人近い感染者を出した香川大学でも患者の86%はワクチンの接種を経験しており,こうした実情を裏づける形となった。
 
米国では,1980年代後半から青年層や成人層の罹患率が増加傾向を示し,2004年には患者全体の27%に達した。
このため,従来の生後2か月,4か月,6か月,15~18か月,5歳の5回に加え,11~18歳で成人用のDPTワクチン(Tdap)を1回追加する方針を打ち出し,欧州の一部の国も類似の方式を採用している。
 
これを受け,日本ワクチン学会や厚生労働省研究班も小学校6年を対象としたDTワクチンの接種(第 II 期)をDPTに切り替える方向で検討を開始,今秋から臨床試験を行う予定という。
 
成人の百日咳は修飾麻疹と同様,ワクチンが普及し,病原体にさらされる機会が減ったお陰で顕在化した現象と言える。
成人では乳児に比べ,症状そのものは軽くてすむ。
しかし,なかには喘息やがんを疑い,ドクターショッピングを繰り返す患者もいる。
また,慢性閉塞性肺疾患(COPD)を抱えた高齢者では,感染が原因で死亡する例が見られるという。
 
「患者数の増加や集団感染は必ずしも百日咳の流行を意味しない。むしろ医療関係者や一般の関心が高まった結果,感染の実態が明確化したと見るのが順当だろう。一般内科にもそれを考慮に入れた対応が求められる」(岡田部長)

出典 Medical Tribune 2008.8.14
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
一時期、百日咳の抗体検査が検査センターで出来ないか、結果がかなり遅れるという事態が続きました。
最近、件体を出していないのでわかりませんがこの異常事態(?)は解消されたのでしょうか。
麻疹ワクチンもそうですが、こういうことが起こる度に島国日本の懐(ふところ)の浅さを感じてしまいます。


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