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カテゴリ:メタボリックシンドローム( 8 )


2008年 11月 22日

腹囲・ウエスト/ヒップ比

腹囲・ウエスト/ヒップ比は死亡リスクと関連:欧州の大規模研究より 
ドイツ栄養研究所疫学部門のTobias Pischon氏らは,大規模データベースによる研究から死亡リスクの評価にウエスト周囲径(腹囲),ウエスト/ヒップ比が有用との報告を行った(N Engl J Med 2008; 359: 2105-2120)。

BMIに加え,腹囲・ウエスト/ヒップ比の有意な相関が確認
Pischon氏らは,欧州最大規模の疫学データベースEPIC(European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition)を用いて,BMI,腹囲,ウエスト/ヒップ比と死亡リスクの関連を調査。
欧州9か国,35万9,387人が登録された。

9.7年(中央値)の追跡期間中,1万4,723人が死亡。
最も死亡リスクが低いBMI値は,男性25.3,女性24.3であった。
 
男女を問わず,BMI補正後の死亡リスクと腹囲,ウエスト/ヒップ比には強い相関が見られた。それぞれの相対リスク(RR)は,腹囲の最高五分位における男性の相対リスク(RR)は2.05〔95%信頼区間(CI) 1.80~2.33〕,女性のRRは1.78(95%CI 1.56~2.04)(各P for trend<0.001),ウエスト/ヒップ比の最高五分位におけるRRは男性1.68(95%CI 1.53~1.84),女性1.51(95%CI 1.37~1.66)であった。
 
また,腹囲あるいはウエスト/ヒップ比を含めた解析を行っても,BMIは死亡リスクと有意な相関を示していた(P<0.001)。

以上の結果から,同氏らは全身肥満と腹部肥満は死亡リスクと関連することが明らかで,リスク評価にはBMIに加え腹囲,ウエスト/ヒップ比が必要としている。

疾患や死亡の予防における腹囲の意義については,いまだ結論が出ていない。
 
今年(2008年)9月のMedical Tribuneアンケートでは,今春より開始された特定健診・特定保健指導制度で必要のない診断項目の第1位が腹囲となり,他を大きく引き離す回答結果となった。

過度の肥満が疾患や死亡のリスクを高めることは明らかだが,BMIや腹囲を一律に採用することで,やせ型の高リスク症例の取りこぼしを懸念する意見もある。病的な脂肪蓄積がもたらす代謝異常への至適アプローチについては,まだまだ議論が続きそうだ。

出典 MT pro 2008.11.19
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
何だかよく理解できない論文です。
われわれが知りたいのは「腹囲」と「ウエスト/ヒップ比」のどちらが、より死亡リスクの評価に有用かということです。
どちらも有用といわれても、結局どっちでもいいんでしょということになってしまいます。
隔靴掻痒の感がありますが、NEJMにどうして受理されたのか不思議な結論です。
原著にはきっといい内容が散りばめられているのでしょうが・・・。
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by wellfrog2 | 2008-11-22 00:07 | メタボリックシンドローム
2008年 10月 25日

内臓脂肪と血圧、MetS

先日、肝機能正常で肥満だけを健診で指摘された中年男性の方が来院されました。
早速、腹部エコーを行ったのですが、肝腎コントラストもなく脂肪肝の所見はまったくありません。
結構な愛飲家でしたが、中性脂肪もγGTPも正常。
肝と腎の間に脂肪がたまっている所見が印象的でした。
このように内臓などの実質臓器に脂肪沈着が見られず、腹膜に脂肪が多い症例も内臓肥満というのでしょうが、なんだかしっくりいきません。
さて、きょうは内臓肥満の報告で勉強しました。

内臓脂肪は皮下脂肪より血圧とMetSに強く関連する
国際循環器疫学研究「ERA-JUMP」のサブ解析で明らかに
地域在住の40歳代男性について、CT画像から算出した内臓脂肪・皮下脂肪の面積と血圧、メタボリックシンドロームの関連をみたところ、多変量解析では、内臓脂肪だけが有意な関連がみられた。
循環器疫学に関する国際共同研究「ERA-JUMP」のデータを基にした研究成果で、京都女子大学家政学部生活福祉学科教授の中村保幸氏らが10月9日、札幌で開催中の第31回日本高血圧学会(JSH2008)のポスターセッションで発表した。
 
研究グループは、滋賀県草津市で2001年5月から2004年2月にかけて無作為に接触した40歳代の男性約600人のうち、降圧薬服用者を除外し、重大な合併症がなく、調査に同意した293人(約49%)を対象とした。

対象群の属性と測定値の平均値は次の通り。年齢は45.1歳、収縮期血圧は124.6mmHg、拡張期血圧は76.1mmHg、BMIは23.6kg/㎡で、内臓脂肪面積は78.9cm2、皮下脂肪面積は81.0c㎡、メタボリックシンドローム診断要素数は1.6だった。

これらを基に重回帰分析を実施、血圧とメタボリックシンドローム診断数に対する内臓脂肪、皮下脂肪の寄与を求めた。
メタボリックシンドローム診断要素の有無は、血糖値≧100mg/dL、血圧高値≧130/85mmHg、HDL-C<40mg/dL、TG≧150mg/dLの4つとした。
内臓脂肪、皮下脂肪面積は、CTで腰椎4-5間における計測により求めた。
調整因子は年齢、飲酒、喫煙とした。

重回帰分析の結果は、収縮期血圧について、調整因子に内臓脂肪を加えたモデル、皮下脂肪を加えたモデルではいずれも有意(それぞれp<0.0001とp=0.0002)だったが、内臓脂肪と皮下脂肪の両方を加えたモデルでは、皮下脂肪の有意性はなくなって、内臓脂肪だけが有意(p=0.001)だった。
内臓脂肪、皮下脂肪のそれぞれとBMIを組み合わせたモデルでも、内臓脂肪+BMIだけ有意(p=0.0022)だった。

この傾向は、拡張期血圧とメタボリックシンドローム要素数についても同様で、内臓脂肪だけが有意な寄与因子となった。

これらの結果から中村氏は、内臓脂肪を指標とした生活習慣指導が重要と結論付け、「対象者全員にCTを施行するのは困難だが、内臓脂肪量を推定できる体重計などが活用できるのではないか」とした。

出典 NM online 2008. 10. 20
版権 日経BP社

<きょうの一曲>  ”Annie's Song”
John Denver Annie's Song - With Lyrics
http://jp.youtube.com/watch?v=uarIi6qb10I&feature=related


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by wellfrog2 | 2008-10-25 00:09 | メタボリックシンドローム
2008年 09月 11日

特定健診における抗加齢医療の役割

東京都で開かれた第8回日本抗加齢医学会(会頭=順天堂大学大学院加齢制御医学講座・白澤卓二教授)の特別シンポジウム「特定検診の行方『抗加齢医学の役割』」(座長=評論家・ジャーナリスト・立花隆氏,白澤教授)では,今年4月にスタートした特定健康診査と特定保健指導の実践から,予防医学のなかでの抗加齢医療の役割についての発言,討論が行われた。

「メタボ型糖尿病」と「肥満+高血圧」に注意
慶應義塾大学腎臓内分泌代謝内科の伊藤裕教授は「既に糖尿病や高血圧がある場合は,それだけで心血管イベントのリスクが存在するわけであり,メタボリックシンドロームという診断からは除外してよいとも考えられる。
また,日本人の場合,高血圧が他の2項目の危険因子より早期に発現する。肥満ぎみで血圧が高い人は,いわばプレ・メタボリックシンドロームの状態であり,これを見逃してはならない」と強調した。

より早期からの介入を
伊藤教授は,老化のプロセスのなかで生活習慣病の全体像を捉える概念として,「メタボリックドミノ」を提唱してきた。
特定健診は,このドミノ倒しの下流で起こる心血管合併症の早期予防を目指して実施されており,ドミノの概念とも合致する。
 
わが国では欧米とは異なり,インスリン抵抗性よりも内臓脂肪蓄積が上流に存在し,重要と考えられる。欧米では,糖尿病患者の90%がメタボリックシンドロームであるのに対し,日本では糖尿病患者の約半数はやせている。
したがって,特定健診のなかで,心血管イベントのリスクの高いメタボ型の糖尿病とそうでない糖尿病を,正確に区別する必要がある。
 
メタボリックドミノは,動脈硬化と糖尿病の両方の予備軍になっており,さらにその上流に肥満がある。
メタボリックシンドロームの意味するところは,「肥満をベースにした生活習慣病の重積」である。
軽症の危険因子が重積している病態を見つけるためには早期介入が必要でり,既に糖尿病や軽症以上の高血圧がある人は,大きな心血管イベントのリスクを有することから,特定健診においても今さらメタボリックシンドロームとして扱う必要はないとも考えられる。
 
また,日本人の場合は図のようにドミノの上流で肥満と血圧上昇が起きているケースが多く,この「プレ・メタボリックシンドローム」の段階こそ見逃してはならない。
ドミノのパイが倒れないよう,確実に血圧をコントロールするには,3~4剤の降圧薬が必要となるが,それにより確実に血圧を下げることは,医療経済的にも有益と考えられる。
同教授は「メタボリックシンドロームに関しては,遠くのことを近くに見るような視点を持って,より早期からの介入を考えていくべき」と結んだ。

高齢者には介護予防のための健診を
東京都老人総合研究所の新開省二研究部長は,地域住民を対象とした長期縦断研究の結果を提示し,「疫学的見地からの調査では,高齢者は肥満よりもやせ,過栄養よりも低栄養のほうが早死のリスクとなる。
健康余命とは,余命に占める自立して生活できる期間。
その延伸のためには,肥満を問題とする現行の特定健診を現在の高齢者に強力に導入する意義は少ない。
むしろ下限値を設定して,介護予防に対する支援を行うほうが妥当」と指摘した。

高齢者では肥満よりもやせが問題
中年期の健康づくりの目標は,生活習慣病をはじめとした致死的な疾病を予防し,早死を回避することだが,高齢期では疾病や加齢に伴う心身機能の低下を予防し,生活機能を維持すること,すなわち健康余命の延伸が目的となる。
新開研究部長らは,この健康余命を規定する要因を,疫学調査により検討してきた。
 
同研究所では「中年からの老化予防総合的長期追跡研究(TMIG-LISA)」を行い,医学的な検査数値だけでなく心理的,体力的,社会的な変数も重視し,過去の健康情報にさかのぼって長寿につながる要因とリスクを探っている。
小金井市と秋田県の65歳以上の高齢者約1,100人の調査から,栄養学的には血清アルブミンや総コレステロールが高値傾向であること,体力的には筋力や歩行能力が保持されていること,社会的には仕事や社会活動を高齢期にも継続していることなどが健康長寿の要因とわかった。
 
高齢者には,アクティブ・エイジングを目指して,生活機能低下のリスクを早期に発見し,介護予防に結び付ける健診が必要である。
介護保険制度による地域支援事業として,認知機能や口腔機能,体力,心理的な健康度,栄養チェックなどを含む「生活機能評価健診」が導入されたが,さらに今年から,65~74歳にも特定健診が適用されるようになった。
しかし,高齢者にも肥満や過栄養が問題になるかは疑問である。
 
先のTMIG-LISAで日常生活動作(ADL)障害なしと判定された1,046人の男女高齢者について,BMIで4群に分けて肥満度別の死亡率を検討した結果,BMIで男性24,女性25以上の群では,総死亡率は高くならず,むしろBMI 20以下で総死亡率が高かった。
さらに栄養の指標として血清アルブミン,ヘモグロビンまたは総コレステロールで分けたデータでも,それぞれ低値の群で予後が悪く,最も高値の群で生存率が高かった。
また,BMIと医療費・介護費の関係を調べたデータでも,BMIが高いほど毎月の医療費や介護費が少なかった。
 
今回の調査により,現在の高齢者では肥満や過栄養は特に問題ではなく,むしろやせのほうが早死のリスクとなることが明らかになった。
同研究部長は「健康余命延伸のためには,65歳以上の高齢者に現行の特定健診と保健指導を適用することは無意味であり,むしろ生活機能の低下を招く可能性があるため,再考が必要」と結んだ。

医療保険者とかかりつけ医に期待
4月に始まった特定健診は,受診対象者5,600万人,医療費2兆円の削減を見込んだ予防主体の壮大なモデル事業である。
日本医師会の内田健夫常任理事は,特定健診とこれに伴う特定保健指導について現状での課題を提示し,「成功の可否は,医療保険者による保健事業の取り組み強化と,初回受診時におけるかかりつけ医のかかわり方にかかっている。
今後集積される膨大なデータの活用の仕方も課題だ」と強調した。

医療連携体制の構築が急務
今回実施された多くの制度改正の背景には,超高齢化・少子化社会の到来,医療機能の分化と医療費の適正化による医療費の削減と財源の確保などがある。
これらを踏まえ,内田常任理事は特定健診と特定保健指導の取り組みや,現状での課題について述べた。
 
特定健診は,「健康日本21」などの健康増進計画の見直しと高齢化による疾病構造の変化,治療主体の医療から予防主体の医療への転換などの観点から,生活習慣病を早期に見つけて指導する目的で始まった。
この制度改革により,「中央から地方へ」,「官(厚生労働省)から民(医療保険者)主導へ」の言葉通り,医療保険者による保健事業への取り組み強化が急がれている。
 
そして,かかりつけ医には受診者にしっかりかかわることが必要となり,日常生活に密着した食事や運動の指導を行うことが求められる。
同時に,がん検診などの受診勧奨や,560万人と推定される要医療者への介入も期待される。
 
しかし,同常任理事によると,特定健診にはいまだ多くの課題が残る。
(1)まず,集合契約であり,代行機関に依頼しても関係者が多く,地域によるばらつきもあって条件が整理されていない
(2)実施体制についても50%→70%と受診者増を目標としているが,その受け皿も検討しなければならない
(3)データ処理などの電子化,がん検診など他の検診との調整,またメタボリックシンドローム以外の疾病の検診や,75歳以上の高齢者や40歳以下の健診についても検討する必要がある
(4)国民への周知不足も否めない。
 
一方で,健診後の特定保健指導に関しても,やはり人材の確保や実施場所,データの電子化などの基盤整備が遅れており,課題は多い。
 
同常任理事は「医師会としては,まず全対象者の半数を占める国民健康保険被保険者への対応を進めたい。
医療連携体制を構築し,今後集積されることになる膨大な医療データを,国民のためにどのように活用するかも検討すべきである」と結んだ。

出典 Medical Tribune 2008.9.4
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by wellfrog2 | 2008-09-11 00:08 | メタボリックシンドローム
2008年 08月 07日

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007

第40回日本動脈硬化学会総会・学術集会の演題で勉強しました。

「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007-この一年-」
動脈硬化の指標や発症抑制などで議論 現状の課題が浮き彫りに

学会初日には、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007-この1年-」をテーマにセッションが開催された。
昨年2月に予防ガイドライン(GL)の改訂版が発表されてから1年余りが経過した。この4月からは特定健診・保健指導がスタートするなど、生活習慣病をめぐる社会環境も様変わりしている。
今回のセッションでは、動脈硬化性疾患の指標など現状の課題が浮き彫りとなり、増加し続ける動脈硬化性疾患の発症をいかに抑制すべきか、考えさせる場となった。

チャートの活用でリスク患者の生活習慣動機付け
Tsukasa Health Care Hospitalの枇榔貞利氏は、GLに参考資料として掲載されたリスクチャートについて「国を代表する貴重なデータ」と評価した上で、活用する上での留意点を解説した。

リスクチャートは、30歳以上の人を対象にしたコホート研究「NIPPON DATA」の結果に基づき、10年後の冠動脈疾患による死亡リスクを視覚化したもの。

枇榔氏は、リスクチャートの活用法について「冠動脈疾患のリスクがある患者に対し、(生活習慣改善の)動機付けをするため」に用いると説明。
「患者を脅すために使うものではない」と強調した。

また、示されたリスク値は、生活習慣が改善されず、現状のまま10年経過した場合の予測値に過ぎないことも紹介。
「生活習慣の改善に加え、薬物療法を考慮することで、その危険度が下がることを患者に理解してもらう」ことが必要とした。

冠動脈疾患の発症リスクが低い人については、加齢に伴い、発症リスクが上昇することから、喫煙者などには「生活習慣の改善を指導し、低いリスクに維持することが重要」と述べた。


LDL-C直接測定法確立に向け日米標準化計画実施
日本動脈硬化学会学術プログラム委員会脂質代謝部会の横山信治氏は“LDL コレステロール(以下、LDL-C)の直接測定法”をテーマに講演した。

横山氏は、LDL-C直接測定法の再現性を高めるために、LDL-Cの標準化を進めることの重要性を強調した。

LDL-Cは一般的に、Friedewaldの計算式で求められるが、TGが300~400mg/dLを超えるケースでは計算式によって求めることができず、LDL-C直接測定法が用いられている。

横山氏は、「LDL-C直接測定法は、臨床検査試薬開発の成果として高く評価されるべきもの」とした上で、まだ試薬による誤差があることを指摘した。

この誤差を明らかにし、再現性を高めるために、試薬メーカー7社が参加し、150~200検体を用いて検討する「日米共同実験計画」を現在行っている。横山氏は、近くこの結果が公表されるとし、この実験結果により「定量的データについて判断し、情報を公共のものとする」重要性を強調した。


高TG血症の第2管理指標にnonHDL-Cを

筑波大大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科の島野仁氏は、高トリグリセリド血症の管理指標として、食事の影響を受けにくい「nonHDL-C」を用いることの有用性を強調した。

nonHDL-Cとは、VLDL-C、LDL-C、IDL-Cなど悪玉コレステロールの総和である指標。総コレステロールから善玉コレステロールのHDL-Cを引くことで簡単に求められる。

高TG血症の指標としては、TGが用いられてきたが、食事などの影響を受けやすく、長期的なマーカーとして適さないことが指摘されていた。
これに対し、nonHDL-Cは、食事などの影響を受けづらいなどのメリットがある。

島野氏は、厚生労働科学研究で行われた原発性高脂血症に関する調査研究班で提唱した治療指針を紹介。
高TG血症の患者では、まずLDL-Cをコントロールすることが必要とした上で、LDL-Cが管理できたケースについては、nonHDL-Cを管理することを求めた。
なお、nonHDL-Cの管理目標値は、LDL-Cの管理目標値に30mg/dL足した値とした。

ただ、nonHDL-Cを管理指標に用いる上での課題があることも島野氏は指摘。
日本人に指標として用いた際のエビデンスが不足していることや、保険診療上の制約があり、2つ指標を測定することができないことなどを挙げた。


「産業現場も積極的な介入必要」
ソニー人事センター産業保健部の石川俊次氏は、約1万6000人を対象とした健診結果を踏まえ、「産業現場においても、動脈硬化の高リスク群に対して、生活改善や治療による、より積極的な介入が必要」との見解を示した。

石川氏は、2007年に行った1万6104人の健診結果をGLに当てはめると、動脈硬化性疾患の既往歴がない人のうち、1次予防で高リスク群となった人は、女性で1.8%(52人)、男性で10.3%(1339人)だったことを明らかにした。

また、男性6756人の動脈硬化性疾患の危険因子であるLDL-C高値とメタボリックシンドロームを合併している割合をみると、193人(3%)が該当することも分かった。

LDL高値+メタボを合併している人では、主観的メンタルヘルス評価が悪いとのデータも提示し、「(動脈硬化性疾患の)高リスク者は、メンタルヘルスや就業面からも望ましい状況ではなく、通常の保健指導に加え、就業調整も含めた支援が必要」との見解を示した。


「食後採血TGの基準設定を」
札幌医科大第二内科の島本和明氏は、特定健診・保健指導における受診勧奨について紹介した。

脂質異常症について、特定健診の受診勧奨基準は、TG300mg/dL以上、HDL30mg/mL未満としている。

島本氏は、診断基準値・受診勧奨値があくまで空腹時の値であることを説明した。
その上で、「健診では、半数以上の受診者が食後に訪れる」と指摘。血糖値については、HbA1cで食後は判定可能であることを引き合いに出し、「TGの食後採血判定基準の設定が求められている」との見解を示した。
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200807/conference3.html
出典 Japan Medicine
版権 (株)じほう


<番外編>
教授はなぜ学位審査の謝礼で学内処分されたのか
横浜市立大が教員20人を処分、停職の2人は自主退職
学位審査に際し、前医学部長の嶋田紘氏らが学位取得者から謝礼金を受け取っていたことが判明した横浜市立大は、7月29日、計20人の教員に学内処分を下した。内容は懲戒処分が5人、文書による訓戒が15人。

「学位審査の謝礼として教授に金銭を渡すことは、他の大学でも行われてきた」(ある公立大医学部の教授)というように、学位取得者が指導教授や審査の担当教授に謝礼を支払うことは、医学系大学院では“慣行”となっている部分もある。
ではなぜ、横浜市立大は厳しい処分を下すに至ったのか。

同大の金銭授受は、内部告発がきっかけで明るみに出た。
「学位審査等に係る対策委員会」が7月に公表した最終報告によれば、謝礼金を受け取ったことを認めた教授、准教授は19人で、最も多かった教授は2004年度から07年度までに300万円を受領していた(教授名は非公表)。

最終報告では、これらの金銭授受について「全体的に見て、必ずしも直ちに法令に触れるとまではいえない」との判断を示している。

公務員がわいろを受け取れば、刑法の収賄罪が成立する。
「学位審査等に係る対策委員会」の委員長を務めた、元名古屋高検検事長で弁護士の宗像紀夫氏によると、わいろの成立要件は3つ。(1)職務と関連性がある(2)当事者にわいろ性の認識がある(3)一般的に許容される社交儀礼の範囲を超えている、の3つである。宗像氏によれば、「調査の結果、謝礼金は社交儀礼として渡されたもので、謝礼の見返りに便宜を図るようなこともなかった」。3要件のうち(2)(3)を満たさなかったというわけだ。

だが宗像氏は、「学位審査の権限を持つ教授にお金が渡っていたというのは、形から見れば贈収賄的な行為。一般社会の常識から乖離した慣例であり、問題がないというわけではない」と指摘する。大学当局も、金銭授受を「教育や研究に携わる者として、あってはならない悪しき慣習」と断じて学内処分を下した。

なお、最も重い停職処分を受けた嶋田氏と前副学長の奥田研爾氏は、7月29日付で退職願を提出、横浜市立大はこれを受理した。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200808/507454.html


<コメント>
少し風化した”事件”ではありますが、どこの大学でもおこなわれている(いた)というつっこんだ内容に好感を抱きました。
博士号を取得された先生方。
神に誓って教授に謝礼を渡していないと言えますか。
私自身、旧○帝○といわれる大学の一つで博士号を取得する際に、謝礼をしたことを告白します。

自分がやっていてダンマリを決め込んで知らないふりをすることは性分に合いません。
このブログで小さな声でカミングアウトします。

それにしても名古屋と横浜の両市立大学。
自浄作用を示したとして賞賛に値する快挙(?)といってもいいのかも知れません。
黙認している大学や個人には、そのことを批判する資格はないと思うのです。

そして金銭授受は、この両大学だけでは決してないことは誰でも知っていることです。
スケープゴートとすることなく各大学は自主的に調査するか、文科省は処罰の公平性を期するために外部調査を指示すべきです。
刑事事件にもなりうる案件でもあるわけですから。

最後に。
国公立大学と私立大学ではまた意味合いが違うのでしょうか。
そのあたりも曖昧なままです。

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by wellfrog2 | 2008-08-07 00:30 | メタボリックシンドローム
2008年 06月 13日

議論呼ぶメタボリックシンドロームの診断基準

女性の腹囲90cmの根拠とは? 
4月から特定健康診査・特定保健指導、いわゆるメタボ健診が始まった。わが国におけるメタボリックシンドロームの診断基準は、2005年に8学会合同の検討委員会(委員長:松澤佑次氏)がまとめている(日本内科学会誌2005;94:794-809)。
メタボリックシンドロームでは内臓脂肪の蓄積が主要な役割を担うとして、ウエスト周囲径(腹囲)を用い、カットオフ値を男性85cm、女性90cmとした。メタボ健診でも、この値が採用された。

この根拠として唯一引用されたのが、日本肥満学会の委員会が肥満症の定義を定めた論文(Circ J 2002;66:987-92.)だ。
ところがこの論文に対しては以前から、幾つかの疑問が呈されている。
例えば、内臓脂肪面積が100c㎡という基準は、肥満関連障害の数が1を超えるポイントとして、男女合わせての検討で決まったもの。
男女で体格が違うことを考えると、女性にとっては大きすぎるのではないかという疑問が成り立つ。

次に、内臓脂肪面積100c㎡に相当する腹囲を、今度は男女別に求め、女性では92.5cmだったことから、基準としては90cmが適切とされた。
しかし、90cmをカットオフ値として論文のデータをあてはめると、検査としての感度は45.2%、陽性的中率は60.9%となり、いずれも低かった(数字は論文の図を編集部で読んだ推定値)。言い換えれば、内臓脂肪面積が100c㎡の人の5割以上を見逃し、逆に、拾い上げた人の4割が、実は100c㎡に満たなかったことになる。

これらについて、論文の筆頭著者である住友病院院長の松澤佑次氏は、「BMIが25以上で、腹囲が90cmを超えるような女性は、やせることにメリットがあるという意味ととらえてほしい」と説明する。

この診断基準が発表された後も、日本人のメタボリックシンドロームにおける腹囲の至適カットオフ値に関して、複数の研究が相次いで行われている。
それらによると、男性の腹囲は現行基準(85cm)とほぼ一致しているが、女性の腹囲は、いずれも90cmより細めで、80cm前後だ。

日本内科学会は3月に、メタボリックシンドロームの診断基準についてはさまざまな議論があるとした上で、「今後、新たな疫学研究および臨床研究を踏まえて検討を行う」と発表した。
女性の腹囲の基準は今後、見直される可能性がある。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200806/506684.html
日経メディカル オンライン 2008.6.3
Nikkei Medical 2008.6
版権 日経BP社


<コメント>
本来、新年度の4月から施行すべき特定健診もドタバタを繰り返してやっと6月からスタートしました。
当院にも国保を中心に、時間にゆとりのある停年後の方が健診を受けにみえるようになりました。
働き盛りの方とは異なり、多くの方はメタボの基準を満たしません。
必要条件である腹囲が正常範囲であるためです。

最近、職域健診の方の検査結果をみせて貰いました。
総コレステロールが例年高いということでチェックを受けていたのですが今年の検査では総コレステロール値が280mg/dlでも異常は指摘されていませんでした。
例年ついている*印がついていないのです。
脂質異常症とメタボの概念とは違うとはいえ、こんなメタボ狂騒劇を黙って見過ごして我々医師は粛々と健診をしなければならないのです。

読んでいただいてありがとうございます。
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by wellfrog2 | 2008-06-13 00:25 | メタボリックシンドローム
2008年 06月 02日

CTと内臓脂肪面積

CT検査には被爆の問題がつきまといます。
腹囲測定は、いろいろ問題はありますが、内臓肥満のCTに変わるサロゲートマーカーとしての一定に評価をすべきです。
企業によっては、わざわざCT装置を導入して、「メタボ狩り」に乗り出す大手企業まで出てきています。
はたして、そこまでする意味があるのでしょうか?
きょうは、そのあたりの勉強をしてみました。

教材は「第15回日本CT検診学会」の発表内容です。

CTによる内臓脂肪面積測定は有用か特定健診・特定保健指導への導入に向け討議
内臓脂肪型肥満はメタボリックシンドロームの病態基盤であり,内臓脂肪面積(VFA)測定は病態評価に有用と考えられる。
東京都で開かれた第15回日本CT検診学会(大会長=日立製作所日立健康管理センタ放射線診断科・中川徹主任医長)のパネルディスカッション「特定健診・特定保健指導とCT検診」(座長=岡山県健康づくり財団附属病院・西井研二院長,管工業健康保険組合健康管理センター・高山重光副所長)ではVFA測定の意義やメタボリックシンドローム対策として先月から実施されている特定健診・特定保健指導におけるCT検査の有用性,検査項目として導入するための課題について討議が行われた。

先月からメタボリックシンドロームに着目した特定健診・特定保健指導が保険者に義務付けられ,効率的な健康診断や保健指導に対する関心が高まっている。
日立製作所日立健康管理センターの山本修一郎氏は「CTによるVFA測定やインスリン値測定はメタボリックシンドロームの高リスク者検出に有用であり,生活習慣改善の動機付けとしても活用可能である」と述べ,特定保健指導の具体例として同センタが実施している体重測定を活用した同シンドローム撃退作戦「はらすまダイエット」についても紹介した。

ダイエット指導により62.7%でメタボリックシンドロームが改善 
同センターでは,メタボリックシンドローム対策として2003年9月から人間ドックにおいてCTによるVFA測定を実施している。受診し同測定を行った2,238人(男性1,880人,女性358人,平均年齢54.6歳)における検討では,VFAはBMIや体脂肪率と比べて,中性脂肪,HDLコレステロール,空腹時血糖値,HbA1C値,血圧とは強い相関が認められた。
また,同人間ドック受診者3,318人(男性2,823人,女性495人,平均年齢52.3歳)を対象に検討したところ,VFAが大きい人ほど,同シンドロームの診断基準を満たす項目数(血圧,脂質,血糖)が増えていた。
さらに,30?60歳代の内臓脂肪型肥満者は,いずれの年代においても空腹時血中インスリン値およびインスリン抵抗性指数(HOMA-IR)値が非内臓脂肪型肥満者に比べて有意に高値であった。

 VFA測定と空腹時血中インスリン値測定の両方を施行され,かつ便潜血検査から大腸精密検査を受けて大腸腺腫または大腸がんと診断された63例(全例男性)と対照群を比較したところ,早期大腸がん例では同シンドロームの保有率が有意に高かった。
また,早期大腸がんの有無に関するロジスティック回帰分析を行った結果,HOMA-IR値が有意な危険因子であった。
 
同センタでは現在,人間ドックのオプション検査として,CTによるVFA測定を施行している。
そして,患者に自分の腹部の断面を提示することで生活習慣改善の動機付けに用いている。また,摂取カロリーの減量目標を設定した後に,"100kcalカード"を使用して,自分で行うべき行動を複数選択し,毎日の体重と行動を記録させる「はらすまダイエット」を実施している。同ダイエットを90日間実施し検査を受けた51例を対象に検討したところ,32例(62.7%)で同シンドロームが改善し,改善に失敗した群でも体重,中性脂肪,空腹時血糖値,HbA1C値はダイエット前に比べ低下していた。
また,1年後の検討でも体重,腹囲,血圧,中性脂肪,AST,ALT,空腹時血糖,HbA1Cなどの各値は有意に改善していた。
 
山本氏は「CTによるVFA測定と腹囲は高リスク者検出手段として利用できるが,その後のダイエットには体重のほうが利用しやすかった」と述べ,VFA測定と同ダイエットの有用性を強調した。

~腹部脂肪分布の評価?~
最終的な心血管疾患早期予防に期待
 
VFAは肥満症やメタボリックシンドロームの重要な病態基盤である。
医療法人川崎病院(兵庫県)予防医学部の善積透診療放射線技師長はX線CT装置を使用した腹部脂肪分布評価の歴史を概観するとともに,脂肪蓄積評価の臨床的意義について解説した。
また,腹部インピーダンス直接測定方式によりVFAを推定する内臓脂肪計についても紹介。
「計測法の組み合わせにより,肥満症やメタボリックシンドロームの診断法が広く普及し,最終的には心血管疾患早期予防の実現につながることが期待される」と述べた。

体脂肪計とアディポネクチン測定で高リスク集団を同定 
1982年,大阪大学第二内科の徳永勝人氏らはX線CT画像の断面像から脂肪組織の面積を測定し,全身の脂肪量を推定する脂肪分布評価法を開発した。
これにより,身体各部位の正確な脂肪量の測定が可能となり,特に腹部においては内臓脂肪と皮下脂肪を分けて評価できるようになった。
 
同氏らが高度肥満者(BMI>26.4)を対象に,腹部のVFA/皮下脂肪面積比(V/S比)が0.4以上を内臓脂肪型,0.4未満を皮下脂肪型に分けて検討したところ,内臓脂肪型は皮下脂肪型に比べて空腹時血糖,総コレステロール,中性脂肪,HDLコレステロールなどが有意に高値であった。
 
のちに非肥満者にもCTによる腹部脂肪分布評価が行われるようになった。
V/S比は高度肥満者では内臓脂肪蓄積のよい指標であるが,正常体重者では分母の皮下脂肪量が少ないため適切な指標にはならず,VFAを直接計測する必要があることが判明した。
しかし,脂肪組織のCT値はCT装置や個体差により異なる数値を示す。
そこで,善積技師長らは皮下脂肪部分をトレースして求めた脂肪CT値範囲を用いて総脂肪量を算出,次に内臓脂肪を含む部分をトレースしてVFAを計測し,両者の差を皮下脂肪面積とする標準化CT値脂肪面積計測法を開発した。
現在は内臓脂肪面積計測ソフトが開発されている。
 
現行の内臓脂肪量の測定方法としては腹部X線CT検査と腹囲測定がある。
このうち,前者は正確な測定が可能であるが,大規模な装置を要する,コスト負担が大きい,X線被曝といった問題点がある。
一方,後者は簡易な測定法であるが,腹部の皮下脂肪量の多寡を考慮できない。
そこで,簡便に内臓脂肪量を正確に測定する方法として腹部生体インピーダンス法が開発された。
 
また,冠危険因子の1つとして低アディポネクチン血症が知られており,血漿アディポネクチン値が低くなるとメタボリックシンドロームを有する率が高くなることも報告されている。
そこで,内臓脂肪測定と血中アディポネクチン測定を組み合わせることで,高リスク集団を簡便かつ正確に同定できる可能性がある。男性2,433例,女性754例を対象とした検討において,男女ともVFAが100cm2以上かつアディポネクチンが4.0μg/mL未満の群はVFAが100cm2未満かつ/またはアディポネクチン4.0μg/mL以上の群に比べメタボリックシンドロームの有病率が有意に高いことが明らかになっている。
 
今後の展望として,同技師長は「脂肪分布の評価に関しては計測精度の高いCTやMRI画像法が主流であるが,今後はこれらの方法と体脂肪計測機器を用いた簡便かつ汎用性を求める方法の組み合わせにより,肥満症・メタボリックシンドロームの診断が広く普及し,心血管疾患早期予防の実現につながることが期待される」と述べた。

健診項目への導入には前向きRCTが必要 
CT画像は対象者に視覚からのアプローチが可能なため,生活習慣改善のための行動変容の動機付けとしてはきわめて有用な教材とされている。
しかし,検査には6,000円以上要することから,現時点では特定健診の検査項目に導入することは困難と考えられる。
日本人間ドック学会特定健診・特定保健指導対策委員会委員長を務める三井記念病院(東京都)総合健診センターの山門實所長は「CT検査を個別的契約で実施することは可能であるが,保険者グループとの集合契約において検査項目に含めるためには,費用効果を前向きランダム化比較試験(RCT)で検証する必要がある」と指摘した。

保険者と実施機関との個別契約では実施可能 
先月から医療保険者は40~74歳の加入者(被保険者・被扶養者)を対象として特定健診を毎年度実施し,特定健診の結果から健康保持に努める必要がある者に対しては特定保健指導を行うことが義務付けられた。
特定健診では身長・体重・腹囲の測定などを行うが,腹囲測定に代えてVFAを測定できるとされている。
 
特定健診および特定保健指導は,個々の保険者と医療機関との個別契約で実施する場合と,グループによる契約(集合契約)で実施する場合がある。
このうち集合契約では国保の場合は市町村国保と地区医師会,被用者保険では代表医療保険者と健診機関の全国組織との間で,単価や内容などを契約する。健康保険組合連合会と日本人間ドック学会との契約を例に挙げると,特定健診における基本的な健診項目として問診,身体計測,理学的所見,血圧,血中脂質検査,肝機能検査,血糖検査,尿検査などであるが,VFA測定は含まれていない。
また,1人当たり委託料は基本的な健康診査が5,250円,特定保健指導のうち動機付け支援は5,250円,積極的支援は2万1,000円である。これらの委託料単価は医科点数表に準拠して決められているが,同表のCT診断料は1単純CT撮影のうちマルチスライスによる場合は850点,それ以外は660点である。
そこで,特定健診・特定保健指導にCTによるVFA測定を含めるとすると,6,600円が加算されることになり,保険者側の負担は大きく,保険者側の理解を得るのは難しい。ただし,各保険者・各施設との個別的契約により実施することは可能である。
 厚生労働省健康局が作成した「標準的な健診・保健指導プログラム」(確定版)では「今後は特定健診・保健指導の実施に伴い,集積された知見に基づき,健診項目の有効性・必要性を定期的に見直す必要がある」とし,「その有効性・必要性について,費用効果を含め,検証を行う必要がある」と記されている。
 
一方,2013年に糖尿病などの患者・予備軍を25%減少させることが特定健診・特定保健指導の目標である。
山門所長は「特定健診受診者を腹囲測定実施群とCTによるVFA測定群にランダムに割り付け,糖尿病などの患者・予備軍の減少率を前向きに比較検討するRCTを実施しなければ,VFA測定の導入は難しいだろう」と述べた。
また,エビデンスが得られれば,「特定健診では血糖,脂質,血圧,肥満の全項目に該当する者に対して実施される詳細健診においてVFA測定を追加できる可能性がある」と指摘した。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41210341&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.5.22
版権 メディカル・トリビューン社


<参考ブログ>
CTとX線被曝
http://wellfrog.exblog.jp/7210455

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞくhttp://blog.m3.com/reed/
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by wellfrog2 | 2008-06-02 00:05 | メタボリックシンドローム
2008年 05月 30日

薬物治療の基礎知識 抗菌薬(1)

私自身、専門がもともと循環器科です。
したがって抗生剤の知識が呼吸器科などの先生に比べて十分とはいえません。
先生方はすでに十分な知識をお持ちのことと思います。
自分自身のための勉強ということでとりあげてみました。

社団法人 日本薬剤師会 中央薬事情報センター部長 向井 呈一
抗菌薬は種類が多いこともあり,特定の薬剤が突出して多く処方されるということはないようです。
このため,処方頻度のトップ10に入るような抗菌薬は見られません。
しかし,抗菌薬は日常の臨床でしばしば処方される薬剤です。
薬効分類の中分類で抗菌薬を見てみると,潰瘍治療薬等,抗精神薬,感冒治療薬等,カルシウム拮抗薬に続いて5番目に多い処方数であることがわかります。

1.細菌
多くの細菌は,ペプチドグリカンを含む強靭な細胞壁で被われています。
この細胞壁は,細菌細胞が周囲からの圧力に押し潰されないよう物理的に保護する役割を果たすことから,細胞壁がなくなると,その細胞は通常の環境では破壊に向かうと言われています。
 
細菌はグラム染色による染色性の違いから,ブドウ球菌や連鎖球菌などのグラム陽性菌と大腸菌,サルモネラ菌などのグラム陰性菌に分類されます。
グラム陽性菌とグラム陰性菌では細胞壁の構造が少し異なるために,このような染色性に違いが生じます。
一方,マイコプラズマ,クラミジア,リケッチアはペプチドグリカン層を持たない特殊な細菌です。

2.抗菌薬の作用機序
抗菌薬の作用機序として,細胞壁合成阻害,蛋白質合成阻害,DNA合成阻害,RNA合成阻害,葉酸合成阻害などが一般に知られています()。
 
細胞壁に必要なペプチドグリカンの生合成を阻害すると,グラム陽性菌やグラム陰性菌は細胞壁がなくなるため,破壊されやすい状態になります。
このような細胞壁の合成阻害により細菌数を減少させることで,抗菌薬は殺菌作用を発揮します。
 
通常,細菌は増殖するために,蛋白質の合成が必要になります。
しかし,DNAやRNAがかかわる蛋白質合成過程に作用する抗菌薬は,間違った蛋白質を合成させたり,蛋白質合成を遮断させたりすることで,細菌増殖を阻害します。
つまり,細菌の増殖を抑えている間に,宿主の免疫応答により細菌を排除することで,抗菌薬は静菌的作用を発揮します。
 
また,サルファ薬のように細菌にとって必須である葉酸の合成を阻害しても抗菌作用が発現します。

3.おもな抗菌薬とその作用
抗菌薬には,化学的に合成された化学療法薬と天然ならびにそれを化学修飾した抗生物質があります。
それらは化学構造などからおもに下記のように分類されます。
1)β-ラクタム系抗生物質
化学構造にβ-ラクタム環を持つ抗生物質として,
(1)ペニシリン系抗生物質,
(2)セフェム系抗生物質(セファロスポリン系,セファマイシン系),
(3)オキサセフェム系抗生物質,
(4)モノバクタム系抗生物質,
(5)カルバペネム系抗生物質
があります。
 
これらは,細菌の細胞壁に必要なペプチドグリカンの生合成を最終段階で阻害することにより殺菌作用を発揮します。

2)ホスホマイシン系抗生物質
単純な化学構造式を持つ抗生物質であり,ペプチドグリカン生合成を初期段階で阻害し,殺菌作用を発揮します。
しかし,β-ラクタム系抗生物質やホスホマイシン系抗生物質のような細胞壁合成阻害薬は,ペプチドグリカン層を持たないマイコプラズマ,クラミジア,リケッチアには有効性を発揮しません。
3)マクロライド系抗生物質
14~16員環の巨大ラクトン環を有する構造の抗生物質群であり,細菌のリボゾームに作用して蛋白質合成を抑制します。
それにより,細菌の活動を抑える静菌作用をもたらします。

4)テトラサイクリン系抗生物質
4つの6員環が並んだ化学構造的な特徴を有する抗生物質群であり,細菌のリボゾームに作用して蛋白質合成を抑制し,静菌作用を発揮します。

5)アミノグリコシド系抗生物質
化学構造的にアミノ基の付いた糖を有する抗生物質群であり,マクロライド系やテトラサイクリン系と同様にリボゾームに作用して蛋白質合成を抑制し,静菌作用を発揮します。

6)ニューキノロン系抗菌薬
ピリドンカルボン酸系の誘導体であり,化学合成抗菌薬に分類されます。
細菌のDNAの複製に欠かせないDNAジャイレースを阻害し,殺菌作用を発揮します。

4.作用の特徴
抗菌薬の使い方には,PK/PD(Pharmacokinetics/Pharmacodynamics)の考え方(指標),つまり薬物動態パラメータと抗菌活性パラメータを組み合わせることにより,有効かつ安全に抗菌薬を使用しようとする考え方が導入されています。
抗菌薬はその指標に基づき,下記の3種類に分けられます。
(1)Cmax/MIC(ピーク薬物濃度と最小発育阻止濃度の比)タイプ
(2)AUC24/MIC(抗菌薬の曝露量全体と最小発育阻止濃度比)タイプ
(3)Time above MIC(最小発育阻止濃度を超える薬物濃度時間)タイプ
 
Cmax/MICタイプは,血中濃度のピークが高いほど効きやすいとされる抗菌薬です。
2番目のAUC24/ MICタイプは,MICを超える量を多く確保したい場合に用いられる抗菌薬です。
3番目のTime above MICタイプ は,MICを超える時間を長くしたい場合に用いられる抗菌薬です。それぞれの代表的な抗菌薬をに示します。
 
例えば,アミノグリコシド系で効果を強めたいときには,1回の投与量を増やして,血中濃度ピークを高くするほうが効果的です。
また,β-ラクタム系やマクロライド系では,1回のピークを高くするより,投与回数を増やして有効な血中濃度を長く持続させるほうが効果的です。
さらにニューキノロン系では,血中濃度をある程度高く保ちながら,血中濃度持続時間を延長させることで有効性が上がると言われています。

抗菌薬(1)
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41210591&year=2008(図、表はサイトでご覧下さい)
出典 Medical Tribune 2008.5.22
版権 メディカル・出版社


<参考サイト>
耐性菌について
http://www.central.or.jp/central/023.htm
薬剤感受性試験 抗生剤一覧表
http://www.monolis.com/kensa/saikin/yakuzai.pdf
肺炎起炎菌に対する抗生剤感受性変化と薬物療法の最近の話題
http://www.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/byoin/images/isimaru03marWeb.pdf
(スライド形式でわかりやすいPDFです)
当院における薬剤感受性率と抗生剤使用量の変化
http://www.chuzan.or.jp/inken/13/kensa.pdf(スライド形式でわかりやすいPDFです)
各種抗生剤に対する臨床分離株の感受性率の推移
http://info.fujita-hu.ac.jp/~hnagashi/public/euc/html/090.html
細菌感受性検査
http://www.shikoku-cc.go.jp/newest/clinical/receptivity.html

<コメント>
扁桃炎、急性副鼻腔や急性気管支肺炎などで検体を採取して検査に出すことがあります。
感受性をチェックしてみると、CAMなどはほとんどこれらの起炎菌に対して感受性がありません。
LVFXも同様な傾向です。
感受性がなければ本当に効かないかというと、私自身答えられるだけの知識がありません。
逆にディスク上で感受性があっても臓器移行性の程度によって異なるのではないか、in vivoとin vitroの問題。ディスクでの薬物濃度と組織内薬物濃度についてよく理解できないからです。

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他にも
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
(内科医関係の専門的な内容)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
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(循環器科関係の専門的な内容)
があります。

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by wellfrog2 | 2008-05-30 00:04 | メタボリックシンドローム
2008年 05月 29日

肥満とがんリスク

肥満は大腸・乳がんなど種々のがんのリスク
がん予防では体重管理も重要

世界がん研究基金と米国がん研究機構は食道,膵臓,大腸,子宮内膜,腎臓,乳房(閉経後)のがんは肥満との関連が確実であると判定している。
わが国でも男性の肥満者が増加しており,肥満に伴うがんの増加が予想される。国立国際医療センター研究所国際保健医療研究部の溝上哲也部長は同学会の教育講演「内臓脂肪蓄積とがんのプロモーション」(座長=日立製作所日立健康管理センタ放射線診断科・中川徹主任医長)においてがんに関する疫学データを紹介し,「がん予防においても運動や適切な栄養摂取とともに体重管理の重要性が広く認識されることが望まれる」と指摘した。

メタボリックシンドロームでは大腸腺腫リスクが増加
世界がん研究基金と米国がん研究機構は7,000を超える疫学研究を分析し,報告書「食物・栄養・運動とがん予防」にまとめた。
そのなかで,腹囲が1インチ(2.54cm)増えるごとに大腸がんのリスクは5%増加すると報告している。
乳がんについては閉経前女性ではBMIが2増加するとリスクは6%低下するが,閉経後では逆に3%増加し,ウエスト・ヒップ比が0.1増えるごとにリスクは19%増加する。
また,肥満により子宮内膜がんのリスクは52%増加,食道がん(腺がん)のリスクも2倍以上増加するとしている。
 
わが国において肥満度と大腸がんとの関連を検討したコホート研究でも,肥満により大腸がんのリスクが増加することが示されている。
大腸がんは腺腫を経て発がんすると考えられるが,九州大学の古野純典教授らのグループによる検討では,メタボリックシンドローム患者は非メタボリックシンドローム者に比べて大きな大腸腺腫を有するオッズが1.5倍以上高くなるとの結果が得られている()。
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また,20歳以降の体重増加は閉経後乳がんの発症リスクを増加させることも報告されている。

大腸がんと糖尿病の発症は同じメカニズムが関与する可能性
溝上部長は肥満による発がんメカニズム(仮説)についてインスリンおよびインスリン様成長因子(IGF),炎症反応を挙げて解説した。
 
IGFは受容体を介して細胞の増殖に関与し,インスリンはIGFの活性を高めることで細胞増殖に対し促進的に作用する。
肥満に伴い,インスリン抵抗性上昇によりインスリン分泌が増大する一方,IGF結合蛋白量は低下。
その結果,IGF 活性が上昇して,腫瘍が増大すると考えられる。欧米において女性を対象にインスリン分泌のマーカーであるC-ペプチド値を5群に分けて検討したところ,最高値群では最低値群に比べて結腸がんのリスクが4倍以上増加するとの成績が得られている。
わが国でも耐糖能異常および糖尿病患者では耐糖能が正常または空腹時のみ高血糖を示す群に比べて大腸腺腫のリスクが増加すると報告されている。
 
炎症反応については,血漿C反応性蛋白(CRP)値との関連を検討したわが国の研究で,CRP値の上昇に伴い,大腸腺腫のリスクは増加することが示されている。
また,内臓脂肪から分泌される炎症促進物質,インターロイキン(IL)-6,腫瘍壊死因子(TNF)-αの各検査値を3群に分けて大腸腺腫との関連を検討した研究では, IL-6,TNF-αの最高値群で最低値群に比べ大腸腺腫のリスクが約1.5倍上昇することが判明した。
さらに,アディポネクチン濃度が上昇すると大腸がんのリスクは低下することも報告されている。
 
以上から同部長は,糖尿病と大腸がんの発症には同じメカニズムが関与している可能性があると指摘した。
 
従来,がん予防では野菜・果物などの摂取が推奨されたが,2007年の報告書「食物・栄養・運動とがん予防」は第1のがん予防として成人期を通じて体重増加と腹囲増大を避けることを推奨している。
一方,日本人を対象とした追跡研究ではやせでもがん発生や全死亡のリスクが高まることが示されている。
同部長は「成人男性と小児の肥満が増加していることから,今後はやせと肥満の両方に対する注意が必要」と強調した。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41210341&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.5.22
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by wellfrog2 | 2008-05-29 00:33 | メタボリックシンドローム