井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 05月 30日

薬物治療の基礎知識 抗菌薬(1)

私自身、専門がもともと循環器科です。
したがって抗生剤の知識が呼吸器科などの先生に比べて十分とはいえません。
先生方はすでに十分な知識をお持ちのことと思います。
自分自身のための勉強ということでとりあげてみました。

社団法人 日本薬剤師会 中央薬事情報センター部長 向井 呈一
抗菌薬は種類が多いこともあり,特定の薬剤が突出して多く処方されるということはないようです。
このため,処方頻度のトップ10に入るような抗菌薬は見られません。
しかし,抗菌薬は日常の臨床でしばしば処方される薬剤です。
薬効分類の中分類で抗菌薬を見てみると,潰瘍治療薬等,抗精神薬,感冒治療薬等,カルシウム拮抗薬に続いて5番目に多い処方数であることがわかります。

1.細菌
多くの細菌は,ペプチドグリカンを含む強靭な細胞壁で被われています。
この細胞壁は,細菌細胞が周囲からの圧力に押し潰されないよう物理的に保護する役割を果たすことから,細胞壁がなくなると,その細胞は通常の環境では破壊に向かうと言われています。
 
細菌はグラム染色による染色性の違いから,ブドウ球菌や連鎖球菌などのグラム陽性菌と大腸菌,サルモネラ菌などのグラム陰性菌に分類されます。
グラム陽性菌とグラム陰性菌では細胞壁の構造が少し異なるために,このような染色性に違いが生じます。
一方,マイコプラズマ,クラミジア,リケッチアはペプチドグリカン層を持たない特殊な細菌です。

2.抗菌薬の作用機序
抗菌薬の作用機序として,細胞壁合成阻害,蛋白質合成阻害,DNA合成阻害,RNA合成阻害,葉酸合成阻害などが一般に知られています()。
 
細胞壁に必要なペプチドグリカンの生合成を阻害すると,グラム陽性菌やグラム陰性菌は細胞壁がなくなるため,破壊されやすい状態になります。
このような細胞壁の合成阻害により細菌数を減少させることで,抗菌薬は殺菌作用を発揮します。
 
通常,細菌は増殖するために,蛋白質の合成が必要になります。
しかし,DNAやRNAがかかわる蛋白質合成過程に作用する抗菌薬は,間違った蛋白質を合成させたり,蛋白質合成を遮断させたりすることで,細菌増殖を阻害します。
つまり,細菌の増殖を抑えている間に,宿主の免疫応答により細菌を排除することで,抗菌薬は静菌的作用を発揮します。
 
また,サルファ薬のように細菌にとって必須である葉酸の合成を阻害しても抗菌作用が発現します。

3.おもな抗菌薬とその作用
抗菌薬には,化学的に合成された化学療法薬と天然ならびにそれを化学修飾した抗生物質があります。
それらは化学構造などからおもに下記のように分類されます。
1)β-ラクタム系抗生物質
化学構造にβ-ラクタム環を持つ抗生物質として,
(1)ペニシリン系抗生物質,
(2)セフェム系抗生物質(セファロスポリン系,セファマイシン系),
(3)オキサセフェム系抗生物質,
(4)モノバクタム系抗生物質,
(5)カルバペネム系抗生物質
があります。
 
これらは,細菌の細胞壁に必要なペプチドグリカンの生合成を最終段階で阻害することにより殺菌作用を発揮します。

2)ホスホマイシン系抗生物質
単純な化学構造式を持つ抗生物質であり,ペプチドグリカン生合成を初期段階で阻害し,殺菌作用を発揮します。
しかし,β-ラクタム系抗生物質やホスホマイシン系抗生物質のような細胞壁合成阻害薬は,ペプチドグリカン層を持たないマイコプラズマ,クラミジア,リケッチアには有効性を発揮しません。
3)マクロライド系抗生物質
14~16員環の巨大ラクトン環を有する構造の抗生物質群であり,細菌のリボゾームに作用して蛋白質合成を抑制します。
それにより,細菌の活動を抑える静菌作用をもたらします。

4)テトラサイクリン系抗生物質
4つの6員環が並んだ化学構造的な特徴を有する抗生物質群であり,細菌のリボゾームに作用して蛋白質合成を抑制し,静菌作用を発揮します。

5)アミノグリコシド系抗生物質
化学構造的にアミノ基の付いた糖を有する抗生物質群であり,マクロライド系やテトラサイクリン系と同様にリボゾームに作用して蛋白質合成を抑制し,静菌作用を発揮します。

6)ニューキノロン系抗菌薬
ピリドンカルボン酸系の誘導体であり,化学合成抗菌薬に分類されます。
細菌のDNAの複製に欠かせないDNAジャイレースを阻害し,殺菌作用を発揮します。

4.作用の特徴
抗菌薬の使い方には,PK/PD(Pharmacokinetics/Pharmacodynamics)の考え方(指標),つまり薬物動態パラメータと抗菌活性パラメータを組み合わせることにより,有効かつ安全に抗菌薬を使用しようとする考え方が導入されています。
抗菌薬はその指標に基づき,下記の3種類に分けられます。
(1)Cmax/MIC(ピーク薬物濃度と最小発育阻止濃度の比)タイプ
(2)AUC24/MIC(抗菌薬の曝露量全体と最小発育阻止濃度比)タイプ
(3)Time above MIC(最小発育阻止濃度を超える薬物濃度時間)タイプ
 
Cmax/MICタイプは,血中濃度のピークが高いほど効きやすいとされる抗菌薬です。
2番目のAUC24/ MICタイプは,MICを超える量を多く確保したい場合に用いられる抗菌薬です。
3番目のTime above MICタイプ は,MICを超える時間を長くしたい場合に用いられる抗菌薬です。それぞれの代表的な抗菌薬をに示します。
 
例えば,アミノグリコシド系で効果を強めたいときには,1回の投与量を増やして,血中濃度ピークを高くするほうが効果的です。
また,β-ラクタム系やマクロライド系では,1回のピークを高くするより,投与回数を増やして有効な血中濃度を長く持続させるほうが効果的です。
さらにニューキノロン系では,血中濃度をある程度高く保ちながら,血中濃度持続時間を延長させることで有効性が上がると言われています。

抗菌薬(1)
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41210591&year=2008(図、表はサイトでご覧下さい)
出典 Medical Tribune 2008.5.22
版権 メディカル・出版社


<参考サイト>
耐性菌について
http://www.central.or.jp/central/023.htm
薬剤感受性試験 抗生剤一覧表
http://www.monolis.com/kensa/saikin/yakuzai.pdf
肺炎起炎菌に対する抗生剤感受性変化と薬物療法の最近の話題
http://www.city.shimonoseki.yamaguchi.jp/byoin/images/isimaru03marWeb.pdf
(スライド形式でわかりやすいPDFです)
当院における薬剤感受性率と抗生剤使用量の変化
http://www.chuzan.or.jp/inken/13/kensa.pdf(スライド形式でわかりやすいPDFです)
各種抗生剤に対する臨床分離株の感受性率の推移
http://info.fujita-hu.ac.jp/~hnagashi/public/euc/html/090.html
細菌感受性検査
http://www.shikoku-cc.go.jp/newest/clinical/receptivity.html

<コメント>
扁桃炎、急性副鼻腔や急性気管支肺炎などで検体を採取して検査に出すことがあります。
感受性をチェックしてみると、CAMなどはほとんどこれらの起炎菌に対して感受性がありません。
LVFXも同様な傾向です。
感受性がなければ本当に効かないかというと、私自身答えられるだけの知識がありません。
逆にディスク上で感受性があっても臓器移行性の程度によって異なるのではないか、in vivoとin vitroの問題。ディスクでの薬物濃度と組織内薬物濃度についてよく理解できないからです。

読んでいただいてありがとうございます。
コメントお待ちしています。

他にも
ふくろう医者の診察室
http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
「井蛙内科/開業医診療録」 
http://wellfrog.exblog.jp/ 
~2008.5.21
(内科医関係の専門的な内容)
葦の髄から循環器の世界をのぞく
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があります。

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by wellfrog2 | 2008-05-30 00:04 | メタボリックシンドローム
2008年 05月 29日

肥満とがんリスク

肥満は大腸・乳がんなど種々のがんのリスク
がん予防では体重管理も重要

世界がん研究基金と米国がん研究機構は食道,膵臓,大腸,子宮内膜,腎臓,乳房(閉経後)のがんは肥満との関連が確実であると判定している。
わが国でも男性の肥満者が増加しており,肥満に伴うがんの増加が予想される。国立国際医療センター研究所国際保健医療研究部の溝上哲也部長は同学会の教育講演「内臓脂肪蓄積とがんのプロモーション」(座長=日立製作所日立健康管理センタ放射線診断科・中川徹主任医長)においてがんに関する疫学データを紹介し,「がん予防においても運動や適切な栄養摂取とともに体重管理の重要性が広く認識されることが望まれる」と指摘した。

メタボリックシンドロームでは大腸腺腫リスクが増加
世界がん研究基金と米国がん研究機構は7,000を超える疫学研究を分析し,報告書「食物・栄養・運動とがん予防」にまとめた。
そのなかで,腹囲が1インチ(2.54cm)増えるごとに大腸がんのリスクは5%増加すると報告している。
乳がんについては閉経前女性ではBMIが2増加するとリスクは6%低下するが,閉経後では逆に3%増加し,ウエスト・ヒップ比が0.1増えるごとにリスクは19%増加する。
また,肥満により子宮内膜がんのリスクは52%増加,食道がん(腺がん)のリスクも2倍以上増加するとしている。
 
わが国において肥満度と大腸がんとの関連を検討したコホート研究でも,肥満により大腸がんのリスクが増加することが示されている。
大腸がんは腺腫を経て発がんすると考えられるが,九州大学の古野純典教授らのグループによる検討では,メタボリックシンドローム患者は非メタボリックシンドローム者に比べて大きな大腸腺腫を有するオッズが1.5倍以上高くなるとの結果が得られている()。
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また,20歳以降の体重増加は閉経後乳がんの発症リスクを増加させることも報告されている。

大腸がんと糖尿病の発症は同じメカニズムが関与する可能性
溝上部長は肥満による発がんメカニズム(仮説)についてインスリンおよびインスリン様成長因子(IGF),炎症反応を挙げて解説した。
 
IGFは受容体を介して細胞の増殖に関与し,インスリンはIGFの活性を高めることで細胞増殖に対し促進的に作用する。
肥満に伴い,インスリン抵抗性上昇によりインスリン分泌が増大する一方,IGF結合蛋白量は低下。
その結果,IGF 活性が上昇して,腫瘍が増大すると考えられる。欧米において女性を対象にインスリン分泌のマーカーであるC-ペプチド値を5群に分けて検討したところ,最高値群では最低値群に比べて結腸がんのリスクが4倍以上増加するとの成績が得られている。
わが国でも耐糖能異常および糖尿病患者では耐糖能が正常または空腹時のみ高血糖を示す群に比べて大腸腺腫のリスクが増加すると報告されている。
 
炎症反応については,血漿C反応性蛋白(CRP)値との関連を検討したわが国の研究で,CRP値の上昇に伴い,大腸腺腫のリスクは増加することが示されている。
また,内臓脂肪から分泌される炎症促進物質,インターロイキン(IL)-6,腫瘍壊死因子(TNF)-αの各検査値を3群に分けて大腸腺腫との関連を検討した研究では, IL-6,TNF-αの最高値群で最低値群に比べ大腸腺腫のリスクが約1.5倍上昇することが判明した。
さらに,アディポネクチン濃度が上昇すると大腸がんのリスクは低下することも報告されている。
 
以上から同部長は,糖尿病と大腸がんの発症には同じメカニズムが関与している可能性があると指摘した。
 
従来,がん予防では野菜・果物などの摂取が推奨されたが,2007年の報告書「食物・栄養・運動とがん予防」は第1のがん予防として成人期を通じて体重増加と腹囲増大を避けることを推奨している。
一方,日本人を対象とした追跡研究ではやせでもがん発生や全死亡のリスクが高まることが示されている。
同部長は「成人男性と小児の肥満が増加していることから,今後はやせと肥満の両方に対する注意が必要」と強調した。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41210341&year=2008

出典 Medical Tribune 2008.5.22
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-05-29 00:33 | メタボリックシンドローム
2008年 05月 28日

食後高血糖  その3(3/3)

耐糖能異常の早期段階からの血管内皮への保護作用にも注目

糖尿病の前段階であるIGTが糖尿病のみならず,心血管イベントの発症リスクを有する病態であることが明らかとなり,この段階からの積極的な治療介入が世界の趨勢となり始めている。
 
食後高血糖はIGTの段階から心血管系にさまざまな悪影響を及ぼし,
特に血管内皮機能障害から動脈硬化に進展することが懸念される。
これに対し,種々の糖尿病治療薬が内皮機能障害にどのような効果をもたらすかの検討が進められており,薬剤によってはIGTの段階から内皮機能障害を是正し,その悪化をくい止める可能性が示唆されている。
 
わが国でもIGT例に対する研究は着実に進み,琉球大学大学院薬物作用制御学教授の植田真一郎氏らは,比較的若年のIGT例を対象に2種のα-GIを用いて,クッキー(多糖類および脂質)負荷によるPPG上昇と内皮機能への急性作用について検討を行っている。
なお,内皮機能の評価にはプレティスモグラフィを用い,上腕圧迫後の開放時の血流増加反応から非侵襲的な観察を試みている。


食後高血糖是正による動脈硬化防御作用の機序を追究
山岸氏
これまでの研究から,インスリン抵抗性などを背景とした食後高血糖が酸化ストレスを高め,血管内皮を傷害して動脈硬化の発生・進展を促すこと,これに対し経口血糖降下薬であるアカルボースがさまざまな面で防御効果を発揮することがわかってきた。
その作用機序の解明に向けて,久留米大学内科学講座心臓・血管内科講師の山岸昌一氏らは,インスリン抵抗性モデルである高フルクトース食餌ラットなど動物モデルを用いた実験に取り組んでいる。
 
まず,SDラットに正常な食餌を4週間与える群を対照に,高フルクトース食餌にアカルボースを加える群と加えない群の3群で比較。高フルクトース群では対照群に比して収縮期血圧が上昇し,HDLコレステロールが低下したが,これらをアカルボースが有意に抑制した。
また,高フルクトース食によるインスリン値の上昇を有意に抑制し,アカルボースがインスリン抵抗性を改善したことが示唆された。


そこで,マクロファージを血管壁に動員するなどして動脈硬化惹起に重要な役割を果たす単球走化活性因子1(MCP-1)の遺伝子発現について検討したところ,対照群に比して高フルクトース群で有意に上昇するMCP-1のmRNA発現を,アカルボースは正常レベルにまで抑制した(図2)。 
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また一方,2型糖尿病モデルGKラットを用いた食餌前の速効型インスリン分泌促進薬・ナテグリニド投与実験から,最終糖化産物(AGE)生成が食後高血糖の鋭敏なマーカーであり,これをナテグリニドが改善しうることがわかった。
 
まだ分子機序の解明には至らないが,これらの知見から山岸氏は,食後高血糖は酸化ストレスを高め,その結果でありかつ源ともなるAGEを生じ,これが血管内皮機能障害などを介して,動脈硬化やインスリン抵抗性の進展につながると考えられるとした。
さらに「これに対して,アカルボースは食後高血糖を抑制することにより,酸化ストレスやAGE生成を抑えて,MCP-1発現の抑制効果やインスリン抵抗性の改善をもたらすのであろう」と推測している。


食後高血糖による炎症・免疫反応への抑制効果の詳細も次第に明らかに 
続いて,Hanefeld氏が再び登壇し,アカルボースの2型糖尿病患者における炎症・免疫反応,動脈硬化に対する影響を検討する臨床試験AIDA(Placebo controlled investigation on action of Acarbose on subclinical Inflammation and Immune - response in early type 2 Diabetes and Atherosclerosis risk)試験の中間解析の成績を紹介した。
 
AIDA試験は,新規に診断され,まだ薬物治療を受けていない比較的早期のコントロール良好な2型糖尿病患者を対象とした,アカルボース投与群とプラセボ群の無作為対照比較試験である。
試験投与期間は20週。ここでは,種々の炎症・炎症反応指標の変化を観察するとともに,評価対象97例中66例に空腸・回腸の生検を行い,多様な関連遺伝子発現について解析した。
 
おもな結果をまとめると,アカルボースは食後高血糖を有意に改善するとともに,脂肪代謝マーカーのアディポネクチン放出の上昇を抑える傾向にあり,アディポネクチン/レプチン比を有意に改善。食後の白血球数およびリンパ球の増加を有意に抑制した。
多変量解析にて食後4時間の白血球増加と有意に相関した決定因子は,食後2時間白血球増加,食後2時間のインスリン値および血糖値の上昇,アカルボース治療であった。
このように,細胞性の炎症反応をアカルボースは抑制したが,炎症性マーカーのCRPには特に作用しなかった。
 
一方,注目の空腸・回腸粘膜上皮における遺伝子発現について,アカルボースが有意に作用した遺伝子クラスターは,リンパ球のホーミング,免疫活性化である。
これらについて現在詳細な解析が進行中で,さらに検討していきたいとHanefeld氏は述べた。


ラットの膵ラ氏島血流量を増大
アカルボースは糖尿病モデル動物において,膵ランゲルハンス(ラ氏)島には直接作用しないにもかかわらず,ラ氏島の障害とβ細胞の減少を抑制する。
その機序を探るべく,九州大学大学院病態機能内科学講師の岩瀬正典氏らは,今回,肥満2型糖尿病モデルのOLETFラットを用いて,ラ氏島血流量に対するアカルボース6週間投与の効果を検討した(Pancreas, in press)。
 
その結果,アカルボースは投与前に比して,体重とブドウ糖静注後の高血糖を有意に改善した。
また,血清インスリンの高値と糖負荷後の上昇も抑制した。
一方,注目の膵ラ氏島におけるアカルボースの作用をみると,対照とした同系統の正常ラットであるLETOラットに比して肥大したOLETFラットのラ氏島容積を減少させ,定常状態でのラ氏島血流量を増加していた。
さらに,糖負荷後のラ氏島血流量も増大させた。
また膵血流量は,LETOラットとOLETFラットのいずれにおいても同薬投与で有意に増加した。
 
膵に対するアカルボース投与の影響については,ラ氏島傷害やβ細胞減少への軽減,GKラットでのラ氏島の酸化ストレスの抑制,加齢に伴う膵萎縮の抑制効果なども報告されている。
 
以上より岩瀬氏は,食後高血糖を是正するアカルボースは,肥満糖尿病モデルラットにおいて膵およびラ氏島の血流量を増加するとし,これが膵・ラ氏島の機能維持に寄与しているのであろうと結論した。


脂肪肝への有用性も示唆
それでは,糖尿病と同様にメタボリック・シンドローム(MetS)を基盤とする非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD),いわゆる脂肪肝に対するアカルボースの効果はどうであろうか。
この点について,筑波大学大学院分子細胞生理学分野教授の石井哲郎氏らは,新たに発見したマクロファージの酸化ストレス誘導蛋白A170(p62)の遺伝子欠失(A170KO)マウスを用いて検討を行った。
 
A170(p62)は酸化ストレス/炎症に対する防御機構の一端を担っており,A170KOマウスでは,酸化ストレスの増大に基づいて,過食・肥満に加えてインスリン抵抗性,脂肪肝を合併すると考えられており,MetSモデルとなりうることが見出された。
 
同氏らがA170KOマウスにアカルボースを10週間経口投与したところ,食餌摂取量に変化はなかったが,非投与群に比してアカルボース投与群では体重増加と総コレステロール値が有意に抑えられた。
 
肝機能については,アカルボース群でALT値が有意に低下し,CT画像上で内臓脂肪量が減少し,体脂肪率が低下した。
肝標本の解析では,アカルボース群で肝組織中の中性脂肪量が有意に低下し,病理組織学的にみても脂肪滴の占める割合が有意に低下し,肝脂肪化が抑制された。
 
以上のように,アカルボース長期投与によって,過食・肥満MetSモデルのA170KOマウスの肝の脂肪化が明らかに抑制された。
石井氏は,アカルボースはMetSに随伴するNAFLDの発症予防と治療に有用である可能性が示唆されたと述べ,新たな方向性を示した。



Closing Remark
順天堂大学内科学教授 河盛 隆造 氏
食後高血糖がCVDの独立した強力な危険因子であることは既に確立している。
2007年のIDFガイドラインでは臨床試験で得られたエビデンスが採用され,糖尿病患者のCVD発症を抑制するために食後高血糖の是正が強く推奨された。
 
食後高血糖がもたらす負の作用についても種々の検討が着実に進んでおり,本ワークショップのトライアルレポートにおいても,血管内皮機能の障害だけでなく,膵や肝への影響も報告された。
 
こうした検討結果は,アカルボースを用いる際に,食後高血糖の是正を介してどのような作用が期待できるのかのヒントとなる。
糖尿病治療はCVD予防につながると心に留めて,日常診療に取り組んでいただきたい。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41150481&year=2008
出典 Medical Tribune
版権 メディカル・トリビューン社


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三塩清巳・すみれ
http://page17.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/v56983839?u=artsquare8260
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<自遊時間>
特定健診の受診券の配布が始まったようです。
当院の受付でも対応に苦慮しています。
医師会からいつからスタートする健診なのかさえ正式の連絡がないからです。
多分6月1日と解釈しています。
役人は複雑な制度を作るのが仕事のようです。
こんな面倒なこと、正直言ってやりたくありません。

電子レセプト化を機会に廃業する開業医がかなりいると聞いています。
何だか医業に希望が持てなくなって来ました。

以前に舛添厚労大臣が、後期高齢者医療証が届いていない対象者に自分を証明するものがあれば医療機関で受け付けると、彼が得意のパフォーマンスを行いました。
その際、関係機関には周知徹底するように通達を出したと言いました。
しかし、そんな通達は受け取っていませんし、医師会からも何の連絡もありませんでした。

医師会も全くあてになりません。
多分あてにしてない医師会員も多いのではないでしょうか。
医師会上層部が医師会員の目線で考えているとは思えないのです。
特に日本医師会長やそれに準じる人達は叙勲目線と思ってしまうのです。

厚労省、日本医師会、会員の三者には深い溝がある。
そのことだけはどうしても言っておきたいことです。



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by wellfrog2 | 2008-05-28 00:30 | 糖尿病
2008年 05月 27日

食後高血糖  その2(2/3)

食後高血糖
CVDの発症・進展に果たす食後高血糖の役割とその分子機序を検証

食後高血糖がCVDの強力な危険因子であることは,数多くの疫学的検討から明らかで,次なる段階はその機序の解明である。
英国・Warwick大学臨床科学研究所教授のAntonio Ceriello氏は,これまでに蓄積されたエビデンスを振り返り,その意味を解説するとともに,食後高血糖がCVDリスクを押し上げる分子機序についての最新の知見を紹介した。

最高ランクのエビデンスが示す食後高血糖の危険性 
CVDリスクは食後高血糖の段階,すなわちIGTの時点で既に上昇している。
IGTが空腹時高血糖より強力にCVDリスクの上昇と相関することを示すエビデンスは,舟形研究(1999)DECODE試験(1999)など,枚挙にいとまがない。 
一方,糖代謝異常がより進行して糖尿病となった場合については,最近まで前向き試験による質の高いエビデンスは得られていなかった。しかし,2006年にCavalotらが529例の2型糖尿病患者を5年にわたって追跡した結果を報告。
年齢や糖尿病罹病期間などの交絡因子を補正後,昼食後血糖値は空腹時血糖値よりCVD発症率と強く相関していたことが明らかにされている。
すなわち,それ自体が強力なCVD危険因子である糖尿病の罹患者においても,食後高血糖は独立したCVD危険因子となることが示されたことになる。
 
では,食後高血糖への介入により,CVDを予防することができるのだろうか。
この点についても,これを肯定する高レベルのエビデンスが近年になって示された。
そのエビデンスであるメタ解析MeRIA7では,α-GIのアカルボースによる食後高血糖の是正で,35%のCVD発症リスク低下が得られたことが明らかにされている。 
こうした事実を受け,国際糖尿病連合(IDF)が2007年9月に発表した「食後血糖管理ガイドライン」では,「食後高血糖は独立したCVD危険因子である」,「食後高血糖をターゲットとした薬物治療によりCVDリスクが低減される」,「ある種の薬剤には食後高血糖を低下させる作用がある」が,最高ランクのエビデンスに裏打ちされた事項として明記されている。
"ある種の薬剤"の筆頭はα-GIであるとして,Ceriello氏は「食後高血糖の是正は,糖尿病による合併症予防のカギを握る重要な戦略だ」と述べた。


間欠的な高血糖は抗酸化システムの増強を妨げる
続いてCeriello氏は,食後高血糖がCVDリスクを押し上げる分子機序に話題を移した。
 
これまでに同氏らは,24時間ごとに高血糖下と正常血糖下に置いた培養ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)では,常に高血糖下に置いた細胞よりアポトーシスが著明に増強することを報告している()。
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すなわち,血糖の上昇・下降を繰り返す血糖変動では,慢性的な高血糖より細胞傷害機序が強く働くことが示唆される。
 
言うまでもなく,「高血糖による細胞傷害機序」の中心は酸化ストレスの亢進である。
しかし,間欠的な高血糖が恒常的な高血糖以上に活性酸素種(ROS)産生を亢進させるとは考えがたい。
そこで同氏らは,問題はROSではなく,これを迎え撃つ防御因子にあるのではないかと推測。間欠的または恒常的な高血糖下に置いた網膜細胞における抗酸化酵素・スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の発現量と活性を調べた。
 
その結果,恒常的高血糖下では正常血糖下に比べてSOD発現量と活性の有意な亢進が認められたが,間欠的高血糖下に置かれた細胞では,発現量・活性とも有意な変化は認められなかった。
すなわち,高血糖刺激に対する防御応答として誘導されるべき抗酸化システムの増強が,間欠的高血糖下では誘導されないことが示唆された。 
また,Meugnierら(2007)は,健常人に高血糖クランプを行って急性高血糖状態とすることにより,骨格筋では316個,脂肪組織では336個の遺伝子発現パターンが変化することを報告している。
つまり,急激な血糖上昇は健康な人においても,転写レベルでの変化を誘導することになる。Ceriello氏は,「万人にとって非常に危険な存在,それが食後高血糖だ」と講演を結んだ。


アカルボース・トライアルレポート
アカルボースの心血管保護作用についての多面的研究成果を提示

α-GI・アカルボースは食後高血糖の是正作用に基づき,糖尿病そのものだけでなく,心血管イベントの発症・進展を抑制することが明らかになっている。
現在,その心血管保護作用に関して,さまざまな観点から研究が進められている。
そうした多角的研究の成果を発表するトライアルレポート・セッションの開始に当たり,ドイツ・Dresden工科大学臨床研究センター所長のMarkolf Hanefeld氏は最近の研究の方向性をまとめた。
 
従来,血糖コントロールの基本的な捉え方として,恒常的な状態を反映するHbA1cを軸に,空腹時血糖(FPG)値が用いられてきた。
しかし近年,種々の検討により食後血糖(PPG)値の過度の上昇,すなわち食後高血糖こそが心血管系に悪影響を及ぼす酸化ストレスなどの多様な因子と相関し,より重要であることがわかっている。
さらには,血糖の日内変動の激しさが重要な意味をもつことが示唆されており,PPGおよび24時間の変動性に留意して,より質の高い血糖コントロールを図る必要性が指摘されている,と同氏は述べた。
 
現在,食後高血糖が酸化ストレスの増大,血液凝固線溶系や脂質代謝の障害,インスリン抵抗性,膵β細胞の機能低下,血管内皮機能障害,これらの悪循環の結果として動脈硬化の進展とプラーク脆弱性を招来することが判明しつつある(図1)。
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これらの食後高血糖の悪影響に対してアカルボースがどのような抑制・改善作用を発揮するか,Hanefeld氏を含む6氏より最新の研究知見が紹介された。


酸化ストレス,血管内皮機能障害,血小板活性化を抑制
食後高血糖による酸化ストレスの増大は,血小板の活性化および炎症反応を惹起する。
イタリア・G. d'Annunzio大学財団のGiovanni Davi氏は,新規に2型糖尿病と診断された未治療の患者を対象に,酸化ストレス,血小板活性化,炎症に対するアカルボースの作用に関する臨床試験成績を報告した。
 
対象は48例で,無作為割り付けにてアカルボース投与群25例とプラセボ投与群23例に分け,20週間の試験治療を行った。
その結果,アカルボース群ではプラセボ群に比して著明なHbA1c値の低下,FPGの低下,および試験食負荷後のPPG低下が確認された。
 
酸化ストレスについて尿中8-iso-PGF2αを指標としてみると,プラセボ群ではベースラインに比して3.6%増加したのに対し,アカルボース群では32.4%も著明に低下した。
また,血小板活性の指標である尿中11-dehydro-TXB2においても,プラセボ群の8.6%増に対してアカルボース群は38.7%減と,血小板活性化の著明な抑制効果が示された。
さらにこれらの変化は有意な正相関を示し,それぞれの変化とHbA1cおよびPPGの変化のいずれもが有意に正相関していた。
 
一方,炎症に関しては,CD40Lでみた血管局所の炎症がプラセボ群1.9%増に対しアカルボース群29.8%減と,アカルボースによる明らかな抑制効果を認めた。
なお,全身性炎症マーカーCRPは両群ともベースラインに比して有意に低下し,群間に有意差はなかった。
さらに,血管内皮機能障害についても,内因性NO合成酵素阻害物質(ADMA)とP-セレクチンのいずれの指標でみても,アカルボース群では有意な抑制効果がみられ,これらの変化はHbA1cの変化と有意に相関していた。
 
以上よりDavi氏は,2型糖尿病の初期段階からアカルボースはPPGを低下させるとともに,酸化ストレスの増大と血小板活性化や炎症,さらには内皮機能障害を抑制し,これらが心血管保護作用につながるのであろうと結論した。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41150481&year=2008
出典 Medical Tribune
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
α-GIは炭水化物の摂取量の多い日本人には効果が高いといわれています。
逆に西洋人には効果があまり期待出来ず、糖尿病治療薬としての位置づけは低いと聞いています。
実際欧米でのα-GI効果の効果はどうなんでしょうか。

αグルコシダーゼ阻害剤は糖尿病治療薬として適しているのか?
http://intmed.exblog.jp/3127633/
(α-GIに関してはこんな冷めた内容のブログもあります。)



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by wellfrog2 | 2008-05-27 00:32 | 糖尿病
2008年 05月 26日

食後高血糖  その1(1/3)

昨年11月の世界糖尿病デーに合わせて開催されたバイエル社主催のワークショップ(大阪)に関する記事です。
どうしてもアカルボースに関する話題が多くなっていますが、タダで勉強できるので我慢するしか仕方がありません。
いつも思うのですが、製薬メーカーはどれだけ儲けているのでしょうか。
外国から演者を呼ぶ莫大な交通費(決してエコノミーではないはず)。
国内の司会者、演者への謝礼。、
ホテルの会場費、全国からの参加者の交通費(航空運賃、新幹線グリーン車)や宿泊費。
このことを考えれば招待されなかった私もタダで勉強してもバチは当たらないと思います。

さて、最近出席した糖尿病の研究会で会場から質問があり、胃切後で食後高血糖がある患者(?)に心血管イベントが増えるというエビデンスがあるか」という質問が演者に浴びせられました。
グルコーススパイク云々といった説明がありましたが、結局はエビデンスははっきりしていないというような判然としない回答でした。

私も時々会場で質問をするのですが、口達者の演者にベラベラと要領を得ない回答をされることが多いのです。
そんな時には回答をいただいた誠意を汲み取って、深く突っ込んだ再質問はしないことにしています。
他の質問予定者もあるだろうしKYと思われるのも癪(しゃく)だからです。

大概は心にわだかまりが出来ますが、懇親会の食事ですっかりわだかまりがとれている自分が情けないです。


4th International Glucobay Workshop(Osaka 2007)
食後高血糖
―糖尿病および心血管イベント進展の推進力―
 
東京タワーや通天閣など日本を含め,世界各地のランドマーク約180か所が青くライトアップされた世界糖尿病デー(2007年11月14日)は記憶に新しい。
生活習慣病の1つとして扱われてきた糖尿病に対し,10秒に1人がその合併症で命を落とす疾患であるという脅威を広くアピールし,発症の抑制を図る世界規模のキャンペーンは社会的な注目を集めた。
 
世界糖尿病デーと前後して開催された4回目の「International Glucobay Workshop」では,致死的合併症である心血管イベントの発症に重要な役割を担う食後高血糖に焦点を当て,そのメカニズムや治療などさまざまな角度から検証が行われた。
以下にその概要を紹介する。


Opening Remark
ドイツ・Academic Hospital第三内科主任教授 Eberhard Standl 氏
 
糖尿病の罹患人口は現在2億4,600万人,このまま手をこまねいていれば2025年には3億8,000万人に達すると推測されている。
この糖尿病の爆発的な波"tsunami"を回避するために,さまざまな研究や啓発活動が精力的に行われており,本日のワークショップにその中心となる研究者たちが参集したことを,座長の1人として誇りに思う。
 
今回は,心血管イベント発症を抑制するための糖尿病治療について,これまでに得られた知見やエビデンスを紹介したのち,食後高血糖がもたらす悪影響について疫学および分子生物学的観点から解説する。
また,アカルボースを用いた基礎および臨床研究を集めたパートを最後に設けた。本日の講演が糖尿病のbig waveを乗り切る一助となれば幸いである。


血糖異常とCVD
臨床試験で得た知見を実地医療に活かす試みが盛んに
 
ワークショップの最初のパートでは,糖尿病と心血管疾患(CVD)が関連すること,それを念頭に置いた治療についての講演が行われた。
糖尿病とCVDの治療と予防における3つの課題
まず,オーストラリア・International Diabetes Institute准教授のJonathan Shaw氏が,糖尿病とCVDの治療と予防に関する未解決の重要課題を3点挙げた。
 
第一は「実地医療においても糖尿病予防は可能か」。
フィンランド糖尿病予防研究(DPS)は,ライフスタイル介入によって肥満の耐糖能異常(IGT)例の2型糖尿病発症リスクが58%低下することを示した。
しかし,これを実地医療に近い形で検証すべく行われたフィンランドとオーストラリアの2試験では,体重減少の達成率が著しく低かった。Shaw氏は「この結果は臨床試験で得られた知見を実地医療,さらには健常人の糖尿病予防に広く取り入れることの難しさを物語っている」と述べた。
 
第二の課題は「血糖低下によってCVDリスクは低下するのか」。
UKPDSにおいて,厳格な血糖・血圧コントロールにより糖尿病患者のCVDリスクは低下したものの,有意差には至らなかった。
プラセボとピオグリタゾンを比較したPROactiveでも一次エンドポイントで有意差が得られないなど,決定的なエビデンスは確立されていない。
ただし,IGT例を対象としたSTOP-NIDDMでα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)のアカルボースによるベネフィットが示されており,同氏は「CVD発症予防のための適切なターゲットが食後高血糖であることが示唆された」として,研究のさらなる進展に期待を寄せた。
 
第三は「糖尿病の自然経過を変える薬剤はあるのか」。
Shaw氏は再びUKPDSの結果に触れ,どんな治療もHbA1cの増加を抑制しえなかった点を指摘。
糖尿病の病態の本質はβ細胞機能の悪化だが,β細胞機能を保護できる薬剤はなかったと説明した。


糖尿病と冠動脈疾患は表裏一体:死の二重奏に打ち勝つには早期介入を
このように今後さらに検証すべき課題もあるものの,高血糖とCVDとの関連性を踏まえた治療や予防への取り組みは着実に前進している。
欧州糖尿病学会(EASD)と欧州心臓病学会(ESC)による合同ガイドラインも策定された。続いて登壇した,座長を務めるStandl氏は,同ガイドラインについて「最大のメッセージは糖尿病と冠動脈疾患(CAD)は表裏一体だということだ」と説明した。
 
糖尿病とCADとが予想以上に共存していることを示すエビデンスは枚挙にいとまがない。
またEuro Heart SurveyやChina Heart Surveyにみるように,血糖異常は糖尿病発症が明らかになる以前から心血管にも負の影響を及ぼす。
GAMI研究でも示されたように血糖異常の患者はCVDの予後も不良で,より注意して観察する必要がある()。
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同ガイドラインでは,糖尿病と診断されればCADの,CADと診断されれば糖尿病の検査を行うというように,どちらが先に診断されても双方の検査を行ったうえで予防と治療に進むアルゴリズムが示されている。
「血糖異常とCAD,この死の二重奏に打ち勝つには早期介入が重要だ」と語るStandl氏が推奨事項として特に重要視するのは,
1)CADリスク低下の治療目標をすべて達成する,
2)すべてのCVD患者にOGTTによる糖尿病・IGTのスクリーニングを行う,
3)ライフスタイルカウンセリングが糖尿病治療と糖尿病およびCAD予防の基本である,
という3点だという。


エビデンスの集積に伴い,世界的な広がりをみせる糖尿病予防への取り組み 
ライフスタイル介入による糖尿病予防については,世界的にもエビデンスが集積されつつある。
DPS,Diabetes Prevention Program(DPP)と同様に,ライフスタイル介入によって,中国のDa Qing試験では2型糖尿病発症リスクが42%,日本でも男性のみを対象とした試験だが,糖尿病の進展リスクが67%低減するとの成績が得られている。
臨床研究の場では,ライフスタイルの改善が糖尿病リスクを低下させうることに,もはや疑いがない。
 
Shaw氏は本パートの最後に,各地域における糖尿病・CVD予防への取り組みを紹介した。
それによると,欧州や日本,オーストラリアなど資金豊富な国では,糖尿病が経済や生産性に大きな損失を及ぼすとの認識から,政府主導で国家レベルあるいは国際的な予防プログラムに参加している場合が多い。
日本でも厚生労働省の資金援助のもと, J-DOIT試験が開始されている。
 
一方,発展途上国では,バスで農村を巡る移動糖尿病クリニック(インド)など,散発的で地道な地域活動が多く見受けられ,人々の啓発だけでなく,コミュニティの積極的な関与を生むといった成果にもつながっているという。
同氏は「今後数年間で,資金豊富な行政プログラムと小規模な地域プログラムが,それぞれどのような成果を挙げるのか興味深い」と語った。


α-GI・アカルボース
食後高血糖の是正でCVD発症を抑制

CVDの発症抑制を目的とした糖尿病の至適治療が模索される一方,その進展を上回るスピードで糖尿病患者が世界的に増加している。
本パートでは,なかでも悲観的な状況が予測される中国・香港の現状について,香港・香港中文大学内科・薬物治療学教授のJuliana Chan氏が紹介。
カナダ・Toronto大学内科教授のRobert G. Josse氏からは,2型糖尿病患者に対して心血管イベントの発症抑制を証明したα-GI・アカルボースについて解説が行われた。

糖尿病の早期発見・早期治療が急務 
現在,経済成長が爆発的に進む中国では,人口の増加と生活環境の変化が相まって,疾病構造の変動と患者数の増加が著しい。
しかも未治療の患者が多く,Chan氏によると,2002年の段階で,高血圧患者1億6,000万人,糖尿病患者とIGT例でそれぞれ2,000万人,肥満者6,000万人が未治療であったという。
 
CADによる入院患者3,513例の糖代謝を調べたChina Heart Survey(2006)では,約4分の3の患者が糖代謝異常を呈するという,Euro Heart Surveyとほぼ同じ結果であった。ただし,糖代謝異常を呈する患者の約6割が既知の糖尿病であったEuro Heart Surveyに対し,China Heart Surveyのそれは約4割にすぎず,糖代謝異常を呈する患者の大半が見逃されていたことが示された。
 
続いて同氏は中国で行われた研究から,耐糖能の悪化とアルブミン尿を呈する患者の割合の相関を示したコホート研究(2,934例)や,アルブミン尿が存在すると死亡率が3~5倍に高まることを明らかにした検討(対象: 2型糖尿病患者3,773例)など中国で行われた研究を紹介し,糖代謝異常の早期発見・早期治療の重要性を訴えた。


CVD発症に重要な役割を担う食後高血糖をアカルボースが改善
以上のような状況下,Chan氏は糖尿病におけるCVD発症抑制を望める薬剤である,アカルボースに期待を寄せていると述べた。
同薬の作用機序やエビデンスについては,Josse氏より解説がなされた。
 
アカルボースは,小腸における炭水化物の吸収を遅延させることで,食後の急激な血糖上昇を抑える薬剤である。
また,食後の血糖値のみならず,HbA1cも低下させ,長期にわたる良好な血糖コントロールが報告されている。
なお,同薬は腹部膨満感や鼓腸・放屁といった腹部症状を伴いやすいが,初期投与量を通常の半量に減らし,徐々に通常量まで増量する漸増療法で腹部膨満感などを最小限にとどめることができる。
 
アカルボースがCVDの発症を抑制するエビデンスとなった成績が,同薬を1年以上投与したプラセボ対照二重盲検比較試験7試験のメタ解析であるMeRIA7 (Meta-analysis of Risk Improvement under Acarbose-7)である。
同解析によると,アカルボース群では対照群に比して,すべての心血管イベントの発症を35%,心筋梗塞の発症を64%も有意に抑制する効果が認められた()。
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食後高血糖を改善するアカルボースが,なぜCVDの発症をも抑制するのか。
それは,CVD発症において食後高血糖が多彩な役割を担うためと考えられている。
血糖変動そのものが血管内皮細胞を傷害し,さらに食後高血糖は血液凝固・線溶系や,NF-κB活性,血清CRP値など各種因子にも異常をもたらすとされる。
アカルボースはこれら食後高血糖の悪影響を抑制することになる。
 
Josse氏は,各種因子の異常においても効果が期待できるアカルボースを"現在望める最適な治療薬"と称した。
なおChan氏によると,糖尿病予備群を大量に抱えた中国において,同薬による心血管死などを含めた心血管イベントの発症,および2型糖尿病の発症抑制作用を検討する臨床試験が開始されたという。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41150481&year=2008

出典 Medical Tribune
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by wellfrog2 | 2008-05-26 00:10 | 糖尿病
2008年 05月 23日

消化器内視鏡の最新情報 再掲

消化器内視鏡の最新情報

消化器内視鏡の進歩はめざましいものがあります。
胃カメラひとつをとりあげても経口式では患者さんが嫌がる時代です。
最近、解像度に関しては経鼻式は経口式に少し劣り、2割の早期がんを見落とすという話を聞きました。
相変わらず経口式でやっている私としてはグッドニュースです。
開業医では経鼻式が普及しつつあるようですが、病院ではどうなんでしょうか。
以下のカプセル式の解像度も気になります。

特別企画
第74回日本消化器内視鏡学会総会ランチョンセミナー
消化器内視鏡の最新情報

座長
杏林大学医学部第三内科教授
高橋 信一 氏
演者
大阪医科大学第二内科教授
樋口 和秀 氏
 
近年,臨床の場にさまざまな機能をもった内視鏡が登場し,食道や小腸など,従来は使用できなかった部位に特化した内視鏡も開発されている。また,コンピュータの画像解析による診断の効率化や操作性の向上もみられ,診断・治療の上で大きく期待されている。ここでは,当研究室で開発中の,日本初の自走式カプセル内視鏡を中心に,消化管内視鏡の最新情報を紹介したい。


小腸内視鏡
最近,患者に嚥下させることにより消化管内を撮影するカプセル内視鏡が登場し,これまで不可能であった小腸粘膜表層の病変を捉えることが可能となった。
一方,オーバーチューブと内視鏡の先にそれぞれバルーンが付いたダブルバルーンおよび,オーバーチューブのみにバルーンが付いたシングルバルーン小腸内視鏡も新たに登場し,小腸粘膜からの出血も,内視鏡下で治療を行うことができるようになった。
また,1人でも操作できるなど,操作性も向上している。
 
大阪市立大学医学部附属病院において,原因不明の消化管出血患者32例を対象に,カプセル内視鏡とダブルバルーンの病変認識率・診断率を比較したところ,病変の検出率はいずれも約70%であったが,陽性所見認識率はカプセル内視鏡が優れていた。
カプセル内視鏡はスクリーニング的要素が,ダブルバルーン内視鏡は治療的要素が強いと考えられる。
診断面では,カプセル内視鏡はびらんや血管異形成などの小病変を検出しやすいのに対し,ダブルバルーン内視鏡では憩室や腫瘍を検出しやすいなど,相補的な部分も多い。
現時点では,小腸出血で緊急治療を要する場合はダブルバルーン,時間的余裕のある場合はまずカプセル内視鏡を行うことが勧められる。
ただしカプセル内視鏡では,特に消化管閉塞・狭窄・瘻孔が疑われる症例では,その停滞・滞留に十分な注意が必要である。
 
カプセル内視鏡は2枚/1秒,計5万枚の撮影が可能で,付属のソフトにより連続する類似画像を1枚の画面に結合することで効率的にチェックできるオートマチックモードや,色調とパターンの変化に基づき,より特徴的な画像を抽出するクイックビュー,赤みを帯びた画像を抽出する赤色領域推定表示などの機能がある。また前処置薬服用により,病変の検出率が向上することも明らかとなった。
今後は,標準的な前処置法の検討が必要と考えられた。


NSAIDs小腸潰瘍 
従来,NSAIDs潰瘍は胃・十二指腸のみが注目されていたが,原因不明の小腸出血の約10%がNSAIDs小腸潰瘍であることが知られてきた。
カプセル内視鏡を用いると,NSAIDsを3か月以上毎日服用している変形性関節炎,関節リウマチまたは非特異的関節炎患者(nonspecific arthritis)では,小腸潰瘍がコントロール群に比べ,約60%も高い確率で認められるとのデータもある。
 
このような小腸潰瘍に対する予防法としては,例えばプロスタグランジン(PG)製剤や防御因子増強剤などが考えられ,胃潰瘍とは異なり,酸分泌抑制薬は無効である。
 
しかし,NSAIDsによる胃への影響を考えると酸分泌抑制剤の使用機会は多く,小腸の炎症を悪化させない,抗炎症作用を有するラニチジン(商品名:ザンタックR)のようなH2ブロッカーも選択肢の1-つとなると考えられる。


H2ブロッカーと潰瘍治療の質
胃潰瘍において,治癒の状態を平坦型と非平坦型とに分けて再発率を見ると,平坦型は再発しにくく,また潰瘍瘢痕局所の炎症が抑制されていることが明らかにされている。
平坦型の治癒を促すためには,PG産生作用や抗炎症作用のある薬剤が適していると考えられる。
 
H2ブロッカーのなかで,ラニチジンは,好中球浸潤抑制,好中球の活性酸素産生能抑制および好中球エラスターゼ放出抑制作用が認められることが,動物実験により証明されている。そこで実際にヒトの潰瘍について多施設で検討したところ(図1)12週目の胃潰瘍の治癒率はほぼ95%以上であったが,ラニチジンでは平坦型瘢痕治癒率が63%であり,潰瘍治癒の質(QOUH)が優れていることが示された。
例えばHelicobacter pylori(H.pylori)除菌後の治療においても,ラニチジンは,抗炎症作用による除菌後の再発抑制効果が期待されること,偽陽性などの問題も少ないため,除菌終了1か月後のH.pylori除菌判定がラニチジン内服中でも可能,PPI(Proton Pump Inhibitor)に比べマイルドで日本人に合った酸分泌抑制作用,さらにPPIよりも安価,というメリットがあると考えられた。


食道用,大腸用のカプセル内視鏡と今後の課題
食道用のカプセル内視鏡は,仰臥位で飲み込んだ後,徐々に頭を上げていくことで,食道内をゆっくりと写真をとるもので,海外では逆流性食道炎やバレット,食道静脈瘤などのフォローアップに用いられている。
ただし,今後これまでの内視鏡所見との比較検討が必要と考えられる。
 
大腸用のカプセル内視鏡は,前後にレンズが付いているためヒダの後方も撮影でき,憩室や腫瘍,ポリープなどが明瞭に描出できるのが特徴である。
 
すべての部位に共通するカプセル内視鏡の今後の課題としては,自立して動くカプセル,病変を認識しリアルタイムで観測できるシステム,体外からの電力供給,消化管内への治療薬・試薬の散布,腸液や腸内ガスの採取,および病変の自動認識システムなどが挙げられよう。


日本初の自走式カプセル内視鏡
われわれは現在,日本初の"自走式カプセル内視鏡"を龍谷大学理工学部・大塚尚武教授のグループと共同開発している。
構造が簡単であること,動力を非接触で供給できること,また遠隔制御が可能であることをコンセプトとし,磁場を利用した駆動制御を採用した(図2)。
磁石に交流磁場を与え磁石を振動させてカプセルの"ヒレ"に伝えることにより,ヒレが振動を推進力に変え自力で移動するもので,交流磁場の波形を変化させることにより速度や進行方向を制御でき(図3),バックや回転も可能である。現在,胃の模型に,ポリープに見立てたビーズを入れてカプセルを実際に動かし,撮像させる実験を行っている。
焦点距離や明るさなどの課題はあるものの,撮像可能な段階まできている。

以上,ここに紹介したのはほんの一部であり,最近注目されているNOTESと呼ばれる胃や子宮からの内視鏡下腹腔内手術をはじめ,内視鏡分野は今後さらなる進歩が期待される。

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出典 Medical Tribune 2008.2.28
版権 メディカル・トリビューン社



<番外編>

禁煙薬で意識消失 米航空当局「使用禁止」
【ワシントン21日共同】米製薬大手ファイザーの禁煙治療薬「チャンティックス」(一般名バレニクリン)の服用後に視覚障害やけいれん、意識消失などの症状が多数報告されたと、米国の民間団体「安全な薬物治療のための研究所」(ペンシルベニア州)が21日発表した。
この薬は日本でも今月8日に禁煙補助薬「チャンピックス錠」として発売されたばかり。
ロイター通信によると、米連邦航空局(FAA)の広報担当者は「航空機の操縦士にはこの薬の使用を禁止する」と述べ、ファイザーの株価も1997年以来、最低水準に下落した。
米ファイザーは「一部の副作用は注意書きに記してある。ほかの症状も因果関係がはっきりしない」としている。
同社の日本法人も「詳しいことは分からないが、国内の製品の添付文書には米国での報告も反映されている」と説明している。
チャンティックスは脳のニコチン受容体に作用し、たばこへの切望感や不安、不眠などの離脱症状を減らす飲み薬。
2008/05/22 11:45 【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/200805/CN2008052201000237.html

<コメント>
「チャンピックス」は米国では「チャンティックス」として発売されていることを知りました。
つい先日MRに詳しいパンフを貰い、しっかりを受けたばかりです。


他にもブログがあります。
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by wellfrog2 | 2008-05-23 00:35 | 認知症
2008年 05月 22日

レビー小体型認知症 再掲

画像のメモリがいっぱいになったため
新たに 
  井蛙内科開業医/診療録(2)
としてブログをたちあげました。


井蛙内科開業医/診療録(右のエキサイトブログでリンクしています)
ともどもよろしくお願いします。

このブログの内容は2008.5.20に「井蛙内科開業医/診療録」でとりあげた内容に画像を添付したものです。


レビー小体型認知症
レビー小体型認知症については昨年2007年9月28日のこのブログでとりあげました。
レビー小体型認知症(DLB)
http://wellfrog.exblog.jp/7065699

第26回日本認知症学会でのレビー小体型認知症の記事がたまたま目にとまりました。
きょうは認知症で勉強しました。


レヴィ小体型認知症
精神症状としては幻覚が最も多い
レヴィ小体型認知症(DLB)はアルツハイマー病に次いで多い神経変性認知症である。
滋賀県立成人病センター老年神経内科の長濱康弘氏らはDLB患者の精神症状を因子分析を用いて客観的に分類し,症状としては幻覚が78%と最も高頻度に見られたことを,第26回日本認知症学会で報告した。

妄想は女性性と正の相関
対象は,同科もの忘れ外来を受診した患者のうち,DLB国際合意基準に従って診断されたDLB患者100例(probable:臨床的確診96例,possible:臨床的疑診4例)である。
男性31例,女性69例と女性が多く,平均年齢は77.2歳。
それぞれの精神症状の有無を明らかにするため,患者とその主介護者に,精神症状(幻覚,妄想,誤認)と気分障害(気分変調)に関して構成された質問表を用いた半構造化面接を行った。
 
解析の結果,4因子解が得られた。
因子1~4の固有値はそれぞれ2.58,1.77,1.59,1.40であり,因子間の相関は非常に低かった。
因子1は,人物や場所の誤認,カプグラ症候群(既知の人が"そっくりの人物"に置き換わったと確信する錯覚),"幻の同居人",人物や場所の重複記憶錯誤が含まれる。
因子2は,人物の重複記憶錯誤,死亡した身内が生存していると信じている,来訪していない身内が家のなかにいると信じているというもの。
因子3は,動物や虫の幻視,物体の幻視,要素幻視。
因子4は,人物の幻視や実体意識性(実際はいないのに背後に人がいる気配を感じる)である。
なお,物盗られ妄想や迫害妄想は上記因子とは独立したものだった。
 
DLBの精神症状は表のように分類された。78%が幻覚カテゴリーの症状を,56%が誤認カテゴリーの症状を,25%が妄想症状を有していた。
幻覚や誤認は,性,教育レベル,気分変調,認知機能障害の重症度と関連しなかったが,幻覚のある患者はない患者よりも有意に年齢が高かった(78.2±6.4歳 vs. 73.5±5.3歳,P=0.0019)。
妄想の存在と女性性とには正の相関が見られた(妄想患者25例中22例と妄想のない患者75例中47例が女性,χ2=4.50,P=0.034)。また,この女性優位は特に物盗られ妄想において顕著であった(14例中13例)。
年齢や教育レベル,気分変調,認知機能障害の重症度に関しては,妄想の有無に有意差は認められなかった。
 
以上から,長濱氏は「DLBの基礎にある病態生理および精神病理を理解するうえで,幻覚,誤認,妄想は分けて考える必要がある」 と結論付けた。
なお,同研究の論文はAm J Geriatr Psychiatryの11月号(2007; 15: 961-967)に掲載されている。
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http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4050181&year=2007

出典 Medical Tribune 2007.12.13
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
AD治療薬ドネペジル 中止率は予想より高く,重症例ほど高頻度
アルツハイマー病(AD)の治療にはコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルが用いられているが,名古屋大学大学院老年科学の梅垣宏行氏らは,同薬の中止率は予想より高く,重症例ほど高頻度であることを明らかにした。
重症例では無効がおもな理由
対象は,2003年7月~05年6月に同科外来を訪れ,精神疾患の分類と診断の手引き第 4 版(DSM-IV)基準に従ってADと診断された患者である。
薬物治療はドネペジル3mg/日で開始し,1~2週間服用して耐容性が認められたら,5mg/日まで増量するというもの。
認知症の重症度は臨床認知症評価尺度(CDR)により評価した。
 
ドネペジルを処方されたのは264例(平均年齢79.6±6.5歳,男性87例,女性177例)で,内訳はCDR0.5が9例,同 1 が165例,同2が58例,同3が32例。ちなみにCDRは数値が大きくなるほど重症度が増す。
 
観察期間中に同薬を中止したのは140例(53.1%)で,継続群と中止群の平均年齢に差はなかった(それぞれ79.5±6.7歳,79.8±6.4歳)。
 
Kaplan-Meier解析の結果,認知機能障害がより重症な患者ほど,より早期に中止し,中止率も高いことがわかった。
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中止理由は,治療している医師の交替が71例,薬剤の無効が16例,消化器系の副作用が11例などであった。
年齢で補正してロジスティック回帰分析を行ったところ,中止に関連する変数として,年齢,性,CDR,独居が抽出されたが,そのうち中止に有意な影響を及ぼしているのはCDRだけであった(オッズ比1.654,95%信頼区間1.122~2.439,P=0.011)。
 
CDR 1~2の患者では医師の交替が中止理由として圧倒的に多かったが,CDR 3の重症患者では医師の交替と薬剤の無効がほぼ同数でおもな中止理由となっていた。
 
梅垣氏は「大学病院のもの忘れ外来においてドネペジルはわれわれが予想したよりも高い頻度で中止されており,とりわけ認知症が進展した患者で高かった。薬物治療をとぎれなく行っていくという観点からは,認知症が進展した患者への効果的な薬剤が切望される」と締めくくった。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4050181&year=2007
出典 Medical Tribune 2007.12.13
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-05-22 00:03 | 認知症