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2008年 07月 31日

耳閉塞感

内科で開業していると風邪の患者さんを多く見ます。
風邪医者と揶揄される所以でもあります。
しかし、風邪の患者さんを診る場合には実に多くの知識が必要になり、むしろ開業医の生き甲斐でもあるのです。
私も長いあいだ勤務医の経験があり、開業するまでしっかり風邪の患者さんを診察した記憶はありません。
今でも患者さんが社内の診療所でPLを処方された患者さんが来院すると、大学のネーベンの先生の処方だと凡そ見当がつきます。
昔のわが身を思い返すからです。

そういったわけで、開業してからは内科に限らず耳鼻科などの他科にも興味が広がっていきます。
特に遠い昔の医学生時代に、マイナーの授業には殆ど出席せず、勉強もしなかった自分にとってはこれらの科の話はいつも新鮮です。

きょうは第109回日本耳鼻咽喉科学会の「耳閉塞感」の記事の勉強をしました。


耳閉塞感の診療指針,発症機序解明の最近の知見
耳閉塞感は日常臨床で多く見られる訴えの1つであるが,その発症機序はいまだ不明な点が多く,診断・治療指針は確立されていない。
大阪市で開かれた第109回日本耳鼻咽喉科学会(会長=関西医科大学耳鼻咽喉科・山下敏夫教授)の臨床セミナー「耳閉感の診断と治療」(司会=東北大学大学院感覚器病態学講座耳鼻咽喉科学分野・小林俊光教授)では,耳閉塞感の発症要因,診断・治療に関する知見が報告された。


病因に体性感覚が関連か
福岡大学耳鼻咽喉科の中川尚志教授は,外中耳および内耳いずれも体性感覚が関与するという発症要因について仮説を提示(図)。「感音系由来の耳閉塞感は音感覚が体性感覚によって修飾され,耳閉塞感の病因となる可能性がある」と指摘した。

鼓膜以外の体性感覚も関与
中川教授によると,外中耳疾患には滲出性中耳炎,航空性中耳炎があり,耳管通気・換気チューブで中耳腔の圧を調節することで耳閉塞感が軽減するという。
鼓膜には圧受容体があり,鼓膜の主たる支配神経は三叉神経であるとの報告があることから,同教授は鼓膜の知覚神経が耳閉塞感に関係していると考察。そこで,外耳道圧負荷実験を行ったところ,鼓膜は圧感知能を有し,三叉神経が鼓膜の圧知覚を伝えていることが示された。
 
また,側頭骨外側切除術を施行した患者28例から,耳閉塞感が生じた時期の聞き取り調査を行ったところ,神経再生の時間経過に伴って耳閉塞感が発症することが認められた。
また,鼓膜穿孔例でも圧感知が可能であったことから,鼓膜以外の体性感覚も耳閉塞感に関係していることが推測された。
 
また,同教授は,聴力の変化により耳閉塞感が引き起こされることを示した。
これまでの文献から,同教授は知覚・聴覚入力間には異種感覚統合(cross-modality)と呼ばれる相互作用が存在すると述べ,これが聴力の変化による耳閉塞感に関係するのではないかと推測した。
 
耳閉塞感を生じることが多い低音障害型感音難聴と体性感覚についても検討したところ,圧刺激感知閾値に左右差があり,難聴側で体性感覚の閾値が上昇していた。
また,グリセロールテスト陽性例では,聴覚閾値とともに体性感覚の閾値が低下していたことから,同教授は聴覚と体性感覚が機能的に結び付いていることを示唆した。

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さまざまな発症関連疾患に準じた診断・治療を
感覚異常である耳閉塞感は,感性を有する人間にとって不快であり,著明なときには耐え難い症状を呈する。
山口内科耳鼻咽喉科(東京都)の山口展正院長は「耳閉塞感を生じるさまざまな疾患を同定し,それに準じた診断・治療を行うのが望ましい」と述べた。


耳管開放症による受診患者が増加
山口院長によると,耳閉塞感の発症誘因には,
(1)入浴・シャワー・水泳後
(2)上気道感染,アレルギー性鼻炎の発作,花粉症
(3)こう鼻(鼻をかむ)
(4)飛行機への搭乗,山登り,高層ビルのエレベーターなどの気圧変動環境
などが挙げられる。
 
耳閉塞感を生じる疾患には,外耳では耳垢栓塞,湿疹など,中耳では鼓膜内陥症,急性中耳炎,滲出性中耳炎など,耳管では耳管機能低下症,耳管開放症など,内耳では低音障害型感音難聴,メニエール病,突発性難聴など,後迷路性では聴神経腫瘍や顎関節症などさまざまである。
耳閉塞感患者に対しては,まず問診で発症の機転・誘因を特定し,局所所見の観察や関与する疾患に応じた検査〔耳鏡検査:顕微鏡,硬性内視鏡,純音聴力検査,オトスコープの聴取,耳管機能検査,画像診断,不安度検査(STAI)など〕を行う。
近年,患者自身が耳管開放症と自己診断して耳鼻咽喉科を受診するケースが多く見られるため,特に同症状への対策が必要である。
 
耳管開放症の症状は耳管が開放していることで生じると考えられるため,耳管を閉鎖した状態にすることにより症状が軽減するかを調べる方法(耳管開放症の治療的診断)があり,これはきわめて単純な方法である。
同院長によると,治療的診断による改善率は耳閉塞感が86%,自声強聴が67%,頸・肩凝りが54%,耳鳴が34%,頭痛感・頭痛が24%と報告されているという。
 
同院長は,原因疾患や病態が推測されても現実には耳閉塞感の治療は難渋する例が多いと付言した。

出典 Medical Tribune 2008.7.24
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-07-31 00:01 | 未分類
2008年 07月 30日

上部消化管出血と起因薬剤

■ SSRIは上部消化管出血リスクを増やす
うつ病の治療薬としてわが国でも広く使われている選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)による上部消化管出血の副作用については、以前から指摘されています。
わが国で使われているSSRIの添付文書には、「出血の危険性を高める薬剤を併用している患者、出血傾向又は出血性素因のある患者」には、慎重に投与することと明記されています。

<論文紹介>
Risk of upper gastrointestinal tract bleeding associated with selective serotonin reuptake inhibitors and venlafaxine therapy: interaction with nonsteroidal anti-inflammatory drugs and effect of acid-suppressing agents.
Arch Gen Psychiatry 2008; 65: 795-803. (2008年7月号)

SSRIが出血リスクを増やすメカニズムは、次のように考えられています。
セロトニンには血小板凝集を促進する働きがあり、SSRI投与により血小板内のセロトニンの濃度が下がって、結果として出血のリスクが増すのだそうです。

 

日経メディカル ブログ:北澤京子の「医学論文を斬る」 2008. 7. 25

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kitazawa/200807/507354.html

パキシル錠(添付文書)
http://glaxosmithkline.co.jp/medical/medicine/item/paxil_tab10/paxil_tab10.pdf
(消化管出血の記載あり)


■ スピロノラクトンに上部消化管出血の副作用
消化性潰瘍、上部消化管出血の一般的なリスク要因は、年齢、既往、喫煙、アルコール誤用、ヘリコバクター・ピロリ感染、NSAIDs、コルチコステロイド、抗凝固剤、SSRIなどである。
最後のSSRI。
添付文書には「出血の危険性を高める薬剤を併用している患者、出血傾向または出血性素因のある患者」への注意事項が書かれているが余り知れ渡ってはいない。
一方、スピロノラクトンも上部消化管出血に注意する必要があるようです。
Spironolactone and risk of upper gastrointestinal events: population based case-control study.
BMJ.2006;333:330

アルドステロンは、心臓やその他の器官においても糖質コルチコステロイド受容体と結合し、線維組織の形成促進的に働く。
スピロノラクトンはアルドステロン拮抗剤ということで、線維様組織修復を抑制する。
したがって心不全や高血圧の際のリモデリングに対して有効
ということのようですが、胃や十二指腸のような上部消化管では逆に不利となっている可能性があるということです。

 
アルダクトンA錠50mg (添付文書)
http://www.ps.toyaku.ac.jp/welgunde/drug/ViewXml.do?style=packins&yjcode=2133001F2057&scope=all
(消化管出血の記載なし)



■ 低用量アスピリン療法中の消化性潰瘍例、約4割の医師が経験
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200711/504874.html

約4割の医師が低用量アスピリン療法中に消化性潰瘍を発現した症例を経験していることが分かった。
過去1年間に平均6.6症例で、経験医師の半数以上は「増える傾向にある」と回答した。
日経メディカル オンラインが実施した「消化器系疾患の診療に関する調査」で明らかになった。

調査は欧州消化器学会週間ダイジェストに合わせて実施し、日ごろ診察している消化器系疾患、最近目立っている疾患、特に注目している疾患などを尋ねた。
その中で、低用量アスピリン療法中の消化性潰瘍についても回答してもらった。

過去1年間に、低用量アスピリン療法中に消化性潰瘍を発現した症例を経験したかどうかを尋ねたところ、「経験した」は36.8%と少なくなかった。
一方、「経験していない」は62.8%だった。

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トレンツ・リャド『カネットの睡蓮』
http://page10.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/m53902748

<追記>
低用量アスピリンでの潰瘍については
Nikkei Medical 2008.7 p32-33
「低用量アスピリで潰瘍」というタイトルでも紹介されています。

<参考サイト>
NSAIDs/低用量アスピリンによる胃粘膜傷害
http://www.pariet.jp/alimentary/vol54/no564/sp02-01.html
■ 急性のNSAIDs潰瘍では、通常の消化性潰瘍に比べ胃痛などの自覚症状が軽く、貧血や突然の吐下血で診断されることが多い。
■ NSAIDs潰瘍の形態としては、不整あるいは地図状で多発するか、多発する小潰瘍が特徴的所見である。
■ NSAIDs潰瘍は通常の潰瘍と比較し出血症状が多く、ピロリ感染率が低い。
■ これまでのエビデンスのある検討から、NSAIDs潰瘍の発生を予防できる薬剤はプロスタグランディン製剤、高用量のファモチジン、PPIであり、海外ではPPIがNSAIDs潰瘍の発生予防に主に用いられる。


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by wellfrog2 | 2008-07-30 00:16 | 消化器科
2008年 07月 29日

糖尿病患者の血圧とLDL-C目標値

糖尿病患者の血圧とLDL-C目標値
"標準"以下でもCVD発症率に差ないがIMTは退縮

シカゴ〕メッドスター研究所(メリーランド州ハイアッツビル)のBarbara V. Howard所長らは「糖尿病患者の血圧とLDLコレステロール(LDL-C)を標準的な目標値以下に下げると標準的目標値の患者と比べて頸動脈壁厚はより減少するが,心血管疾患(CVD)イベントの発生率には差はなかった」とする試験結果をJAMA(2008; 299: 1678-1689)に発表した。

積極治療で有害イベント多い
この論文の背景情報によると,糖尿病患者はCVD発症リスクが高く,成人の糖尿病患者では冠動脈心疾患(CHD)が死因の第1位である。
糖尿病に関連したCVDリスクが上昇するのは,糖尿病患者では脂質異常症や高血圧などの主要なCVD危険因子を有する率も高いことによる。
糖尿病患者の収縮期血圧(SBP)とLDL- Cを推奨値よりも下げることにより,CVD関連の便益が得られる可能性を示唆する試験もある。
 
今回の試験は,2型糖尿病を有する米国先住民の男女499例における無症候性のアテローム動脈硬化症の進展を比較検討したStop Atherosclerosis in Native Diabetics Study(SANDS)
被験者のLDL-C値とSBP値をそれぞれ70mg/dL以下,115 mmHg以下まで積極的に下げる群(積極治療群)と標準的な目標値(100 mg/dL以下, 130mmHg以下)まで下げる群(標準治療群)にランダムに割り付けた。
3年に及ぶこの試験はオクラホマ,アリゾナ,サウスダコタなどの臨床センターで実施された。
 
その結果,両群ともLDL-CとSBPの平均的な目標値は達成され,その値は維持された。
試験開始前時と比べて,内膜中膜複合体厚(IMT)は積極治療群で退縮したが,標準治療群では進展した。
頸動脈の断面積も積極治療群で縮小した。
降圧薬に関係した有害イベント発生率(38.5%対26.7%)と重度な有害イベント発生数(4例対1例)は,積極治療群で高かった。
臨床的なCVDイベント発症率は両群で有意差はなかった。


健全な論争のきっかけに
Howard所長らは「臨床的なCVDアウトカムに関しては両群間に有意差はなかったが,イベント発生率は両群とも低く,標準治療群の無症候性のアテローム動脈硬化症の進展率は予想より低かった」と結論。
さらに「今回のデータは,LDL-CとSBPの目標値を定めた治療によりCVDの代理アウトカムが改善し,目標値をより低くすればより大きな便益が得られることを示唆している」と付け加えている。
 
しかし,「イベント発生率に差がなかったことと,降圧に関係した有害イベント発生率と重度有害イベント発生数が上昇したことから,長期的なアウトカムに対する便益は認められない可能性が示唆される。LDL-Cあるいは血圧をより積極的に低下させる治療戦略により,長期的なCVD発症率の低下ないしは経済的便益が得られるかどうかはいまだ明らかにされていない」と述べている。
 

JAMAの寄稿編集者でデューク大学(ノースカロライナ州ダーラム)医療センター循環器内科のEric D. Peterson教授らは,付随論評(2008; 299: 1718-1720)で「SANDSから学び取るべきメッセージは何であろうか。
今回の試験により,ある者にとっては,積極的な脂質異常治療と降圧療法が証明された早期マーカーに対してよい効果をもたらした。
したがって,長期間のフォローアップがなされれば,患者アウトカムの改善が証明されることはほぼ間違いないと捉えるだろう。
しかし,ある者にとっては2型糖尿病に罹患している高リスク患者を対象とし,理想的な状況で試験を行ったにもかかわらず,3年間のフォローアップ後でもまだ臨床的便益が確認されなかったと捉えるだろう」とコメント。
実際,積極的治療群では多剤併用(polypharmacy)により費用増大,有害イベントリスクの上昇が認められたという。
 
結論として,同教授らは「SANDSは目標値を下げることが一次予防のために実際によいことであるかどうかを明らかにするための重要な第一歩である。今回の結果からは,理想的な治療目標値に関する2つの異なる見解のいずれをも支持する解釈が可能だが,このようなディベートは健全なもので,最終的には,より確かなエビデンスの発見に医師を駆り立てることになり,さらに地域医療における治療目標をより効果的に達成するための,システムワイドな戦略を求めるきっかけとなるであろう」と述べている。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社


<関連ブログ>
コレステロールと血圧を積極的に下げよう?!
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20080620A/index2.htm
Effect of Lower Targets for Blood Pressure and LDL Cholesterol on Atherosclerosis in Diabetes
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/299/14/1678?etoc
2型糖尿病に対するコレステロール・血圧積極治療は動脈硬化退縮・・・だがイベントは・・・
http://intmed.exblog.jp/6989612/

<コメント>
対象をAmerican Indianにしぼって行ったトライアルということに興味があります。
米国の論文の多くが人種をはっきりさせないことが多いからです。
aggressive とstandard な治療でCVDイベントに差がなかったが、前者でIMTの退縮と心肥大改善効果がみられたとのこと。
しかしIMTがCVDイベントのサロゲートマーカーとするには少し無理があるのではないかと。
使用薬剤については不明ですが,最近大いに話題となったENHANCE試験を思い出してしまいます。

ENHANCE試験
http://blog.m3.com/reed/20080418/ENHANCE


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by wellfrog2 | 2008-07-29 00:09 | 循環器科
2008年 07月 28日

内科 あれこれ 2008.7.26

高学歴者ほど認知症による記憶力低下が急速に進行
高学歴者ほど認知症による記憶力低下の発現時期は遅いが,いったん低下が始まるとその進行が速いと,米アルバート・アインシュタイン医科大学のグループがNeurologyの10月23日号に発表した。
 
対象は,Bronx Aging Studyで追跡された高齢者のなかで認知症の発症が確認された117例。
Buschke Selective Reminding Testにより評価した結果,教育期間が 1 年増すごとに記憶力低下の加速が始まる時期が0.21年遅れた。
しかし,記憶力低下の加速が始まった後の低下率は教育期間が 1 年増すごとに年間0.10ポイント上昇した。
Hall CB, et al. Neurology 2007; 69: 1657-1664.
1: Neurology. 2007 Oct 23;69(17):1657-64.
Related Articles, Links

<原著 抄録>
Education delays accelerated decline on a memory test in persons who develop dementia.
Hall CB, Derby C, LeValley A, Katz MJ, Verghese J, Lipton RB.
Department of Epidemiology and Population Health, Albert Einstein College of Medicine, 1300 Morris Park Avenue, Bronx, NY 10462, USA. chall@aecom.yu.edu
OBJECTIVE:
To test the cognitive reserve hypothesis by examining the effect of education on memory decline during the preclinical course of dementia.
BACKGROUND:
Low education is a well known risk factor for Alzheimer disease (AD). Persons destined to develop AD experience an accelerated rate of decline in cognitive ability, particularly in memory. The cognitive reserve hypothesis predicts that persons with greater education begin to experience acceleration in cognitive decline closer to the time of diagnosis than persons with lower reserve, but that their rate of decline is more rapid after the time of acceleration due to increased disease burden.
METHODS:
We studied the influence of education on rates of memory decline as measured by the Buschke Selective Reminding Test in 117 participants with incident dementia in the Bronx Aging Study. Subjects had detailed cognitive assessments at entry and at annual follow-up visits. We estimated the time at which the rate of decline begins to accelerate (the change point), and the pre- and post-acceleration rates of decline, from the longitudinal data using a change point model. RESULTS: Each additional year of formal education delayed the time of accelerated decline on the Buschke Selective Reminding Test by 0.21 years. Post-acceleration, the rate of memory decline was increased by 0.10 points per year for each year of additional formal education.
CONCLUSIONS:
As predicted by the cognitive reserve hypothesis, higher education delays the onset of accelerated cognitive decline; once it begins it is more rapid in persons with more education.

Medical Tribune 2007.11.8
メディカル・トリビューン社


BMIよりウエスト周囲径が心血管疾患,糖尿病と強く関連
Body mass index(BMI)よりウエスト周囲径のほうが心血管疾患(CVD),糖尿病との関連が強いというデータが,International Day for Evaluation of Abdominal Obesity(IDEA)から得られた。
結果はCirculationの10月23日号に発表された。
 
腹部肥満が世界の異なる地域で同じようにCVDや糖尿病と関連しているかは不明で,プライマリケアの場でBMIに加えてウエスト周囲径を測定する有益性はわかっていない。
 
IDEAには世界63か国からランダムに選択されたプライマリケア医が参加。あらかじめ定められた 2 日間(いずれも半日)に受診した18〜80歳の患者のBMIとウエスト周囲径を測定し,CVDと糖尿病の有無を記録した。
対象となった患者は男性 6 万9,409人,女性 9 万8,750人。
 
男性の24%と女性の27%が肥満(BMI 30以上),さらに男性の40%と女性の30%が過体重(BMI 25〜30未満)であった。
男女それぞれウエスト周囲径の増大(男性>102cm,女性>88cm)が29%と48%,CVDが16%と13%,糖尿病が13%と11%に記録された。
 
BMIとウエスト周囲径は,ともにCVDと糖尿病の発症頻度の有意な段階的増加と関係していた。この相関は男女,地域を通じてBMIよりウエスト周囲径で強く,特に糖尿病ではBMI 25未満の患者においてもウエスト周囲径との関連が認められた。
Balkau B, et al. Circulation 2007; 116: 1942-1951.

<英文抄録>
Circulation. 2007 Oct 23;116(17):1942-51.
International Day for the Evaluation of Abdominal Obesity (IDEA): a study of waist circumference, cardiovascular disease, and diabetes mellitus in 168,000 primary care patients in 63 countries.
Balkau B, Deanfield JE, Després JP, Bassand JP, Fox KA, Smith SC Jr, Barter P, Tan CE, Van Gaal L, Wittchen HU, Massien C, Haffner SM.
BACKGROUND:
Abdominal adiposity is a growing clinical and public health problem. It is not known whether it is similarly associated with cardiovascular disease (CVD) and diabetes mellitus in different regions around the world, and thus whether measurement of waist circumference (WC) in addition to body mass index (BMI) is useful in primary care practice.
METHODS AND RESULTS:
Randomly chosen primary care physicians in 63 countries recruited consecutive patients aged 18 to 80 years on 2 prespecified half days. WC and BMI were measured and the presence of CVD and diabetes mellitus recorded. Of the patients who consulted the primary care physicians, 97% agreed to participate in the present study. Overall, 24% of 69,409 men and 27% of 98,750 women were obese (BMI > or = 30 kg/m2). A further 40% and 30% of men and women, respectively, were overweight (BMI 25 to 30 kg/m2). Increased WC (> 102 for men and > 88 cm for women) was recorded in 29% and 48%, CVD in 16% and 13%, and diabetes mellitus in 13% and 11% of men and women, respectively. A statistically significant graded increase existed in the frequency of CVD and diabetes mellitus with both BMI and WC, with a stronger relationship for WC than for BMI across regions for both genders. This relationship between WC, CVD, and particularly diabetes mellitus was seen even in lean patients (BMI < 25 kg/m2).
CONCLUSIONS:
Among men and women who consulted primary care physicians, BMI and particularly WC were both strongly linked to CVD and especially to diabetes mellitus. Strategies to address this global problem are required to prevent an epidemic of these major causes of morbidity and mortality.

Medical Tribune 2007.11.8
メディカル・トリビューン社


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2008.5.21~
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by wellfrog2 | 2008-07-28 00:39 | 未分類
2008年 07月 27日

かえる切り抜き帖 2008.7.27

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(画像をクリックすると大きくなります)
出典 日経新聞・朝刊 2008.7.21
版権 日経新聞社

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出典 日経新聞・朝刊 2008.7.20
版権 日経新聞社
<コメント>
記事の中の「医師の資格を持つ技官」。
たしかに現在の医療崩壊の問題は、臨床現場を知らない彼らにもありそうです。
「医政局と保険局」の縦割り行政にも問題が。

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by wellfrog2 | 2008-07-27 00:18 | 未分類
2008年 07月 26日

かえる切り抜き帖 2008.7.26

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日経新聞・朝刊 2008.7.18

<コメント>
私の出身大学は、とある都会にあります。
卒業名簿をみると他大学出身の入局者の欄に、記事の中の学長コメントのY大学の出身者が毎年数人います。
多い年は5人といった状況です。
いわゆるUターンと思われますが、そんな現実をこの学長はどのように把握し、そして対策しているのでしょうか。
そもそもの国立単科医科大学の設立の目的は医師偏在の是正であったわけですから。
そして、いまや東北地方のこれらの大学には驚くほどの定員増にすでになっています。
(A大学105名、Y大学110名)
出るを制して・・・。
これらの地方(?)大学は定員増を訴えるなら、まずは卒業生の進路を公表すべきです。
<参考サイト>
医学部収容定員増予定大
http://promedicus.blog111.fc2.com/blog-entry-38.html
新人医師、半数近くが臨床研修後も母校に戻らず
http://promedicus.blog111.fc2.com/blog-entry-45.html


そして女性医師の問題。
最近、国立大学医学部卒の若い女性が、顔写真入りで「家庭教師ト○イ」の折込広告にしばしば出てきています。
子育てとか本人の事情もあり、そして本人の自由でもあります。
しかし血税で医師になった彼女達。
そういうことって無神経ではありませんか?
家庭教師をやるのは勝手ですが、そういうことに顔写真や出身校を載せること。
何だか・・・。

大袈裟かもしれませんが、こんなことも「ノブレス・オブリージュ」では。
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by wellfrog2 | 2008-07-26 08:06 | 未分類
2008年 07月 25日

終末糖化産物(AGEs)


特別企画
第33回日本脳卒中学会 ランチョンセミナー
終末糖化産物(AGEs)―糖尿病大血管症の新しい治療標的―
従来,糖尿病の血管合併症といえば細小血管症を指す場合が多かった。
しかし近年では,糖尿病患者において大血管症から死に至るケースが増加し,その抑制が糖尿病治療における究極の目標となっている。
第33回日本脳卒中学会総会ランチョンセミナーでは,糖尿病大血管症の新たな治療標的として注目される終末糖化産物(Advanced Glycation End products: AGEs)の機能的役割やその治療戦略などについて久留米大学糖尿病性血管合併症病態・治療学准教授の山岸昌一氏が講演し,インスリン分泌作用とインスリン抵抗性改善作用を併せ持つ第3世代スルホニル尿素(SU)薬グリメピリド(アマリールR)などを用いた早期からの厳格な血糖コントロールの重要性が再確認された。
座長:
埼玉医科大学神経内科 教授
棚橋 紀夫 氏 
演者:
久留米大学糖尿病性血管合併症病態・治療学講座 准教授
山岸 昌一 氏
近年,糖尿病人口は世界的に増加の一途をたどり,成人の約15%は何らかの糖代謝異常を有することが知られている。
糖尿病は,初期には激しい臨床症状を伴わないために5年,10年と放置される場合が多く,わが国においても,腎症や網膜症などの細小血管症のみならず,冠動脈疾患や脳血管障害などの大血管症を合併し,死に至るケースが増加している。
 
最近の調査によれば,糖尿病患者は日本人全体に比べ平均余命が短く,心血管系疾患が多いことが明らかにされている。
山岸氏は,「糖尿病治療の究極的目標は生命に関わる大血管症を未然に防ぐことにある」とし,糖尿病性大血管症の新たな治療標的として, AGEsとその受容体RAGEの機能的役割や治療戦略についての知見を述べた。

2型糖尿病ではHbA1c 値7%程度の早期から動脈硬化が進展
2型糖尿病患者において,大血管症の指標となる頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)とHbA1c値との関係をみると, HbA1c値7%を超えるとIMTのオッズ比が上昇することが報告されている。
また,UKPDS35では,HbA1c値が1%低下すると,心筋梗塞14%,脳卒中12%,心不全では16%発症リスクが低下するという結果が得られている。
山岸氏は「2型糖尿病において,動脈硬化はHbA1c 7%程度の早期段階から進展すると考えられる」とし,「大血管症を未然に防ぐためには早期からの厳格な血糖管理がきわめて重要である」と語った。

過去の「高血糖の記憶」が負債となり,その後の血管合併症の進展を決定する
次に山岸氏は,糖尿病血管合併症のメカニズムを特徴的に説明するhyperglycemic memory(高血糖の記憶)と呼ばれる概念を紹介した。
「高血糖の記憶」とは,過去の高血糖レベルとその曝露期間が生体に記憶され,その後の血管合併症の進展を左右するという考え方である。
山岸氏は,ヒトの糖尿病においてもこの"高血糖の記憶"が存在していることを示すエビデンスとして,DCCTのフォローアップ試験であるEDIC-DCCTについて解説した。
 
DCCTでは,1型糖尿病患者を従来の通常療法群とより厳格に血糖管理を行う強化療法群に分け,平均6.5年間追跡した。
その結果,通常療法群に比べ強化療法群で平均HbA1c値が1.9%低下し,強化療法群で血管合併症の進展リスクが大幅に減少した。
一方,同スタディ終了後に通常療法群にも強化療法を実施し,両群をさらに平均11年間追跡したEDIC-DCCTでは,開始から3~4年で両群の平均HbA1c値がほぼ同等となったにも関わらず,両群で11年間の非致死的心筋梗塞,脳卒中,心血管死のリスクは強化療法群のほうが相変わらず低かった(相対リスク57%低下,p=0.02,log-rank test 図 1)。
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この結果から,ヒトにおいて,一定期間血糖コントロールが不良であると,高血糖の記憶がいわば"負債"として生体内に残り,その後良好なコントロールが得られても血管合併症リスクの差は縮まらないことが示された。

組織沈着AGEsが血管を傷害し続ける
続いて山岸氏は,"高血糖の記憶"を最もよく説明するAGEs病因仮説について語った。
 
AGEsとは,糖と蛋白が酵素を介さない糖化反応を起こした結果生じる生成物である。
この非酵素的糖化反応はつい最近まで主に食品化学の領域で研究されてきたが,1980年代に入ると,同様の反応がヒトの体内にも存在することが明らかになった。
ヒトの体内には様々な構成蛋白が存在するが,それらがブドウ糖などの還元糖と共に存在することで非酵素的に糖化され,AGEsとなって生体内に残る。
糖尿病の血糖管理指標であるHbA1cはAGEsの前駆物質の1つであるが,このAGEsでは,蛋白が変性され本来の機能が変化(劣化)している。
AGEsは血糖コントロールのレベルとその持続時間により不可逆的に形成,蓄積され,生体内から容易に排出されず,組織に沈着した状態で血管合併症を引き起こし続けると考えられる。

AGEsは血栓形成や石灰化により血管障害を進展させる
一方,動脈硬化巣のプラーク(粥腫)には多様な構成蛋白が存在する。
糖尿病では慢性的な高血糖状態にあるため様々な蛋白がAGE化されており,これらのAGEsは粥腫の拡大や不安定化のみならず,プラーク自体の血栓傾向や糖尿病患者によく見られる石灰化を伴った動脈硬化巣(complicated atherosclerosis)の形成にも関わっているという。
 
in vitroにおいても,AGEsにはPGI2の産生を低下させ血栓傾向を惹起したり,線溶阻害活性を高めることが報告されている。

心血管系疾患発症に関わるAGEs-RAGE系は新しい治療標的
山岸氏らの最近の研究により, AGEsが血栓傾向や石灰化を惹起するメカニズムにおいて情報伝達を担っているのは,血管構成細胞に発現しているAGE受容体(RAGE)であることが明らかとなった。
細胞表面のRAGEにAGEsが結合すると,細胞内のNADPHオキシダーゼを介して酸化ストレスが誘導され,最終的には血栓,炎症,動脈硬化などに関連する血管内皮増殖因子(VEGF),PAI-1,細胞接着因子のICAM-1,単球走化活性因子のMCP-1などのレベルが上昇して血管障害が引き起こされると考えられる。
一方,AGEsの脳血管障害への関与については,正常マウスに糖尿病時の血中AGEsレベルに達するまでAGEsを投与し,中大脳動脈閉塞により脳梗塞を作成すると,AGEs非投与マウスに比べ梗塞領域が有意に増大するという報告もある。
したがって,AGEsは前述の血管障害経路を介し,あるいは直截的に酸化ストレスなどを介して,動脈硬化性疾患の進展あるいは増悪に関わっていると考えられる。
 
さらに最近では,血中AGEs値が主要血管系疾患の重症度や予後を予測する指標となる可能性も示唆されている。
これまで,血中AGEs値は2型糖尿病において冠動脈疾患重症度,内皮機能障害,高感度CRP値と相関する一方,1型糖尿病では左室拡張能障害や脈拍の増大と相関し,さらに非糖尿病患者ではPAI-1や冠動脈疾患の存在と相関することが示されている。
一般住民を対象に行った観察研究では,血中AGEs値がPAI-1やフィブリノゲンと相関を示し,女性では将来の冠動脈疾患発症率との相関が報告されている。
 
以上から,山岸氏は「AGEsは心血管系イベント発症に深く関わっており,AGEs-RAGE系は糖尿病大血管症の新たな治療戦略のターゲットになりうる」と述べた。

良好な血糖コントロールの維持にはグリメピリドなど第3世代SU薬を早期から基礎薬に
AGEsの特異的阻害剤となるRAGEアンタゴニストはまだ開発途上にある。
現在,入手可能なAGEs-RAGE系阻害薬の候補として山岸氏は
(1)AGEs形成阻害(厳格な血糖管理:SU薬),
(2)AGEs情報伝達阻害(スタチン,ARB),
(3)食品由来AGEs吸収阻害の3つを挙げている()。
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AGEsはいわば"高血糖の記憶"を担う物質であり,2型糖尿病患者においてAGEsの形成を阻害するためには,早期から厳格な血糖管理を行うことが必須である。
血糖コントロールが不良であれば,AGEsは"返す術のない借金"として体内に溜まる一方であり,いったん上昇した大血管症のリスクは将来にわたって影響する。
ところが,小林らの治療実態調査が示しているように,現実の臨床では,良好な血糖コントロールが得られていない患者は全体の70%にも及ぶという。
こうした状況を踏まえ,山岸氏は「(1)に挙げた通り,2型糖尿病治療において良好な血糖コントロールを維持していくためには,強力な血糖降下作用を有するSU薬を早期から基礎薬として使用することが望ましい」と強調した。
 
従来,SU薬には肥満を促進したり,また肥満症例に対して薬効が得られにくいなどの懸念があったが,グリメピリドは, 0.5mg/日からの少量の投与でもBMIにかかわらず良好な血糖コントロールが得られることが報告されている(図 2)。
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AGEsを標的とした2型糖尿病治療戦略の基本はSU薬による厳格な血糖コントロール
一方,AGEs-RAGE情報伝達系のブロックという観点からは,(2)のARBやスタチンなどが有用と考えられる。
さらに(3)食品由来AGEs吸収阻害薬(炭素剤)を活用し食事由来のAGEsを減らすことも将来の血管合併症進展抑制につながるという。
 
さらに最近の動物実験や臨床研究の結果から,AGEs-RAGE系は糖尿病以外にもある種のがんやアルツハイマー病などの神経変性疾患,糖尿病患者の約半数に発症する難治性疾患として知られる後縦靱帯骨化症(OPLL),さらにはメタボリックシンドロームや糖尿病に高頻度に合併する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの様々な病態と深く関わっていることが明らかにされている(図 3)。
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以上から,山岸氏はAGEs-RAGE系が今後糖尿病のみならず多様な疾患の治療標的となる可能性を示唆するとともに,「2型糖尿病の治療にあたっては,大血管症の抑制を念頭に,早期から良好な血糖コントロールを行うことが戦略の基本であり,そのためにはグリメピリドなどのSU薬は必要な一手段である」と結んだ。

出典 Medical Tribune 2008.6.5
版権 メディカル・トリビューン社

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by wellfrog2 | 2008-07-25 00:08 | 糖尿病
2008年 07月 24日

インスリン療法と血糖自己測定

インスリン療法を受けていない2型糖尿病患者では、血糖自己測定を続けても効果がなく、費用がかかる
Routine Self-Monitoring of Glucose in Non-Insulin-Treated Type 2 Diabetes Is Ineffective and Costly

ルーチンな血糖自己測定が、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善する手段として推奨されている。
自分の血糖値を知っている患者は、血糖コントロールを達成する確率が高まると推測されている。
しかし、最近の試験では(日本語版JW Jul 3 2007)、インスリン療法を受けていない2型糖尿病患者453人を、通常のケア、結果の解釈についてかかりつけの医師に問い合わせる指示を追加した強化度の低い自己測定(less-intensive群)、または結果の解釈や結果への対応の指導を追加した強化度のより高い自己測定(more-intensive群)にランダムに割り付けたが、12ヵ月後のヘモグロビンA1c値に差はみられなかった。
また、自己測定には高額の費用がかかる。
研究者はその試験のデータを用いて、費用対効果と生活の質(quality of life:QOL)に及ぼす自己測定の影響を検討した。

血糖自己測定の費用は、通常ケア群でless-intensive群およびmore-intensive群よりも有意に少なかった。
さらに、more-intensive群では、自己測定がQOLに有意な悪影響を及ぼした。

コメント
insulin療法を受けていない2型糖尿病患者では、less-intensive群およびmore-intensive群ともに血糖コントロールを改善せず、費用が高くなった。
さらに、more-intensive群では自己測定がQOLを低下する。
これらの所見は、これらの患者のルーチンの自己測定に異を唱えるものとなっている。
しかし、特定の問題(たとえば低血糖の検出、あるいは患者が新しく追加した経口薬物に反応しているかどうかの迅速な判断など)に取り組むためには、家庭での間欠的な測定が有用かもしれない。
さらに、これらの所見はinsulin治療を受けている2型糖尿病患者や1型糖尿病患者には適用できない。
— Paul S. Mueller, MD, MPH, FACP
Published in Journal Watch General Medicine May 22, 2008
<コメント>
自己尿糖測定での効果はどうでしょうか。
コストもかからず、患者への侵襲も少ないはずです。

<参考>
JW; Journal Watch

Citation(s):
Simon J et al. Cost effectiveness of self monitoring of blood glucose in patients with non-insulin treated type 2 diabetes: Economic evaluation of data from the DiGEM trial. BMJ 2008 Apr 17; [e-pub ahead of print]. (http://dx.doi.org/10.1136/bmj.39526.674873.BE)

http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-0522-02.html

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by wellfrog2 | 2008-07-24 00:12 | 糖尿病
2008年 07月 23日

長時間作用型βアゴニスト

長時間作用型βアゴニストに関する論争は決着するか?Settling the Controversy About Long-Acting β-Agonists?
2008 June 03

業界とのつながりのない研究者によって実施された2006年のメタアナリシスにおいて、長時間作用型βアゴニスト(long-acting β-agonist:LABA)の使用は喘息関連死と関連していた(日本語版Journal Watch Jul 18 2006)。
この研究の制限は、LABAを投与された多くの患者が、吸入コルチコステロイドを併用していなかったことである。
今回、喘息患者を対象に吸入コルチコステロイド+salmeterolをコルチコステロイド単剤と比較した、業界の資金提供によるランダム化試験のメタアナリシスの結果が報告されている。
66件の試験(参加者計20,966人)はGlaxoSmithKline(AdvairおよびSereventの製造業者)、7件の試験(参加者計503人)は他の企業による援助を受けていた。

喘息による入院と全死因死亡は、併用療法を受けた患者とコルチコステロイド単剤を投与された患者とのあいだに有意差は認められなかった(入院は35件および34件、死亡は両群とも6例)。
併用療法を受けた患者1人において、1件の挿管が報告された。
併用療法は、コルチコステロイド単剤よりも重度の増悪が有意に少なかった(4.9%対8.3%)。

コメント
LABAと吸入コルチコステロイドとの併用により、重篤な有害事象のリスクは増加しないようである。
また、併用療法は重度の増悪が少なく、症状が緩和された。
エディトリアル執筆者は、このメタアナリシスに含められた研究は有効性を検討するものとしてデザインされており(すなわち頻度の低い有害事象は検出できない)、現実というよりも理想的な診療を反映していると述べている。
LABA-ステロイド併用療法は、吸入ステロイド単剤では喘息を適切にコントロールできない患者、および喘息がコントロールできないときに、密接なモニターとケアを受ける意思のある患者にとどめることが推奨される。
— Richard Saitz, MD, MPH, FACP, FASAM
Published in Journal Watch General Medicine June 3, 2008

Citation(s):
Bateman E et al. Effects of adding salmeterol to inhaled corticosteroids on serious asthma-related events. Ann Intern Med 2008 Jun 3; [E-pub ahead of print]. (http://www.annals.org/cgi/content/full/0000605-200807010-00229v1)

Weiss KB. Drug safety and salmeterol: The controversy continues. Ann Intern Med 2008 Jun 3; [E-pub ahead of print]. (http://www.annals.org/cgi/content/full/0000605-200807010-00230v1)

http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-0603-01.html


<コメント>
”業界とのつながりのない研究者によって実施された2006年のメタアナリシス” と ”業界の資金提供によるランダム化試験のメタアナリシス” のhead to head の様相を呈しています。
前者がnegative,後者がpositiveな結果というのもむべなるかなです。
しかしcommentが少し辛口過ぎるような気がします。

読んでいただいてありがとうございます。

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by wellfrog2 | 2008-07-23 00:10 | 呼吸器科
2008年 07月 22日

肺年齢

喫煙者に肺年齢を伝えることが禁煙の可能性を高める
Telling Smokers Their Lung Age Increases Their Likelihood of Quitting
Cochrane reviewの著者らは、呼気一酸化炭素濃度やスパイロメトリーの結果など、生物医学的なリスク評価の結果を喫煙者に提供しても、禁煙率は上昇しないと結論づけている(Cochrane Database Syst Rev 2005; 4:CD004705)。
スパイロメトリーの結果を「肺年齢」に置き換えて伝える方がよいだろうか。
このことを解明するために、英国の研究者は喫煙者561人(年齢35歳以上、平均喫煙量17本/日)を対象に、スパイロメトリーの結果を肺年齢(健康な人が同様の結果となる年齢)で伝える群と、1秒量(forced expiratory volume in 1 second:FEV1)の生の数値を詳しい説明をせずに伝える群のいずれかにランダムに割り付けた。参加者全員に禁煙するように指導し、禁煙外来の連絡先を提供した。

1年後、対照群における禁煙率(一酸化炭素濃度および唾液検体に基づく)は介入群よりも有意に低かった(6.4%対13.6%)。
注目すべきこととして、全参加者のうち、閉塞性肺疾患が89人(16%)で新たに診断された。

コメント:喫煙者に肺機能の結果を理解しやすい言葉(たとえば肺年齢)で伝えることにより、生のFEV1の数値を伝えるよりも禁煙の確率が有意に上昇する。さらに、この介入は費用がかからず効果的である(治療必要数:14)。この介入が、薬物(nicotine代替薬、bupropion、vareniclineなど)および他の介入(医師の助言など)と共に行って、禁煙率を上昇させるかどうかは不明である。肺年齢を算出する公式は論文の原著に記載されている。

— Paul S. Mueller, MD, MPH, FACP
Published in Journal Watch General Medicine March 25, 2008

Citation(s):
Parkes G et al. Effects on smoking quit rate of telling patients their lung age: The Step2quit randomised controlled trial. BMJ 2008 Mar 15; 336:598. (http://dx.doi.org/10.1136/bmj.39503.582396.25)
Original article (Subscription may be required)
Medline abstract (Free)

http://www.nankodo.co.jp/JWJ/archive/JW08-0325-09.html

2008 March 25

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三塩 清巳 『古井戸のある寺院(オルタ・サン・ジュリオ島)』  油彩 キャンヴァス 8号
http://page12.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/p115891691

読んでいただいてありがとうございます。
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by wellfrog2 | 2008-07-22 00:09 | 呼吸器科