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2008年 11月 30日

リレンザ(ザナミビル)一考

イチョウの色づいた黄色い葉が奇麗な季節です。
歩道も黄色一色に染まっています。
天気のいい中、きょうは「医療機器フェア」に出かけました。

見て、触って、感動の2日間というキャッチフレーズです。
実はこんなフェア(卸さん主催)に行くのは初めてです。
ちょうど医学関連学会の医療機器展示ブースの開業医版で、調剤機器や受付・待合機器や電子カルテを主体にしたIT関連機器の展示が学会とは異なるところです。

正直いって結構楽しい時間をすごすことができました。

日頃お世話になっている社員、中には今年8月の超音波装置選定の際に落選(?)した医療機器メーカーの社員や、デモのため当院に最近来た経鼻電子内視鏡の営業担当に声をかけられたりしました。

きょうはグラクソ・スミスクライン(株)のリレンザの話を立ち話で聞いた内容の紹介です。
といってもパンフが主です。


リレンザは
●耐性が生じにくい
●気道に直接作用し、全身への影響が少ない
ということを第一にうたっています。

2006年2月 小児の適応追加
2007年1月 予防適応取得
使用期間が3年から5年に変更

精神神経系の副作用発現率は0.40%、消化器系は0.53%。


患者の自覚症状消失までの時間
12時間以内  24.0%
24時間以内  52.6%
48時間以内  79.6%


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by wellfrog2 | 2008-11-30 16:17 | 感染症
2008年 11月 29日

新型インフルエンザのガイドライン改定案が提示

感染拡大時の対策を具体化
厚生労働省の新型インフルエンザ専門家会議(座長=国立感染症研究所感染症情報センター長・岡部信彦氏)は,11月20日,昨年(2007年)3月に策定された対策ガイドラインの改定案を示し,担当委員による説明をもとに議論を行った。
 
改定案が示されたのは,
(1)検疫,
(2)感染拡大防止,
(3)個人,家庭および地域における対策,
(4)埋火葬,
(5)積極的疫学調査実施要項(仮題),
(6)抗インフルエンザウイルス薬,
(7)医療体制,(8)サーベイランス,
(9)情報提供・共有(リスク・コミュニケーション)
-に関する9分野。
国内未発生の第一段階から感染が拡大した第三段階までの各段階における具体的対策が盛り込まれており,今後,政府の方針として正式に打ち出される。

発熱外来で患者を振り分け 軽症者は感染蔓延期には自宅療養に 
改定案のポイントは以下の通り。

感染拡大防止には公衆衛生学的対策が重要となることから,新型インフルエンザの患者が発生した地域においては,不特定多数の者が集まる活動の自粛や学校の臨時休業を実施する。
 
感染発生早期には,感染の疑いがある患者は保健所などに設置される「発熱相談センター」に電話で問い合わせをし,その指示に従って医療機関を受診する。
感染が確認された場合には入院治療を受けるが,感染蔓延期には,軽症者は原則として自宅療養となる。

新型インフルエンザの暴露を受けた者に対しては,第二段階には,同居者および患者と同じ学校や職場などに通う者に対し,抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を実施し,第三段階には,増加する患者の治療を優先し,同居者以外への予防投与は見合わせる。
いずれの段階においても,患者に濃厚接触した医療従事者や水際対策関係者は予防投与の対象となる。
 
抗インフルエンザウイルス薬の選択では,オセルタミビルを第一選択薬とし,オセルタミビル耐性ウイルスにはザナミビルを使用する。

医療機関については,発生前の段階から,慢性疾患の患者に対して定期薬を長期処方する,発熱外来を準備するとしている。
入院措置中止後は,かかりつけ医が電話診療を行って感染が認められた場合,ファクスで処方せんを発行できる。

医療体制について,出席した委員からは,「学校などを閉鎖すると(育児中の)多くの医療スタッフが出勤できなくなるが,それについての対策は議論されているのか」という質問があり,担当委員は「今回の改定では取りまとめに至らなかったが,医療機関における事業継続計画については,重要な検討問題と考えている」と述べた。
 
また,発熱外来の具体的な実施方法や有効性を問う意見に対して,「発熱外来については議論が白熱しているところであるが,発熱している患者とそうでない一般患者を分ける努力は必要である」と答えた。

感染拡大期の検査体制に関して具体化されていないといった指摘があり,座長の岡部氏は「すべての患者に病原検査をすることが実際的であるかどうかという問題はある。診断キットの開発などを進める一方で,具体的に議論しなくてはならない部分である」と述べた。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0811/081129.html
NM online

出典 日経メディカル オンライン 2008.11.25
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-11-29 00:25 | 感染症
2008年 11月 28日

女性のアルツハイマー病とTSH値

女性のアルツハイマー病に甲状腺刺激ホルモン値が関与
ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターおよびハーバード大学(ともにボストン)のZaldy S.Tan博士らは,甲状腺機能や甲状腺ホルモン値に影響を及ぼす甲状腺刺激ホルモン(TSH)が低値または高値の女性はアルツハイマー病(AD)発症リスクが増大する可能性があるとArchives of Internal Medicine(2008; 168: 1514-1520)に発表した。

発症リスクが2倍に
臨床的に検出可能な甲状腺機能の亢進と低下が,治療可能な認知障害(思考,学習,記憶)の原因となることは周知の事実である。
これまでにも,複数の研究で甲状腺から分泌され,甲状腺機能調節の役割を担うTSH値が,甲状腺機能が正常な人の認知能力に関係があるか否かについて検討されてきたが,その結論は一貫性を欠いていた。 
そこでTan博士らは,1977~79年に認知機能に問題のない1,864例(平均年齢71歳)のTSH値を測定した。
地域ベースのフラミンガム研究の一環として参加した対象者は,登録時とその後2年ごとに認知症の評価を受けた。
 
その結果,平均12.7年間の追跡調査で209例がADを発症し,このうち142例は女性であった。
同博士らは,そのほかの関連因子を調整後,TSH値が最も低い(<1mIU/L)女性群と最も高い(>2.1mIU/L)女性群では,AD発症リスクが2倍以上高いことを明らかにした。
一方,男性ではTSH値とAD発症リスクとの関連性は認められなかった。 

同博士らは「TSH値がAD発症前後のいずれの時点で変動するのかはわかっておらず,その神経病理学的機序も解明されてはいない」としながらも,「原因としては,ADに起因する脳内の変化がTSH放出量を減少させているか,TSHに対する身体の反応性に影響している可能性が考えられる」と述べている。
 
また,TSH値が高くても低くても神経や血管を損傷し,それが認知的困難につながっている可能性もあるとしている。 

同博士らは,結論として「女性ではTSH高値または低値によりAD発症リスクが増大するが,男性では関連は認められない。これらの知見は新しい仮説で,臨床的な結論を出す前に他の母集団でもその正当性を立証すべきである」と述べている。
出典 Medical Tribune 2008.10.9
版権 メディカル・トリビューン社

<コメント>
T3,T4ではなくTSHが単独のアルツハイマー病発症の危険因子であるということが興味深いところです。
女性患者は一度は甲状腺ホルモンをチェックしなければと思いながらも、なかなか出来ません。
潜在性の甲状腺異常患者は結構いると思うのですが。
少なくともコレステロール値異常の方、特に女性では必要な検査と思われます。
TSHの解釈も奥が深くなってきました。


認知機能障害は糖尿病の罹病期間と重症度に相関
メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)のRosebud O. Roberts氏らが,軽度認知機能障害を有する人は,早期から糖尿病を発症し,罹病期間も長く,より重度であるとArchives of Neurology(2008; 65: 1066-1073)に発表した。

65歳未満の糖尿病発症と相関
今回の論文の背景情報によると,軽度認知機能障害は正常な老化から認知症への移行段階である。
過去の研究によって,軽度認知機能障害と糖尿病との相関性は既に明らかにされている。
長期にわたる血糖管理の不良はニューロンの喪失につながる可能性がある。
また,糖尿病は認知機能障害リスクの上昇につながる心血管疾患と脳卒中との関連性も指摘されている。
 
Roberts氏らは,ミネソタ州オルムステッド郡の住民(2004年10月1日時点で70~89歳)を対象に研究を行った。参加者に対して神経学的診察,神経心理学的評価,血糖値測定,糖尿病歴と治療および合併症に関する面接調査を実施。糖尿病歴については,医療記録リンケージシステムを用いて確認作業を行った。
 
その結果,軽度認知機能障害を有している329例と同障害を有していない1,640例の糖尿病有病率は同等であった(それぞれ20.1%,17.7%)。しかし,軽度認知機能障害は,65歳未満の糖尿病発症,10年以上の罹病期間,インスリン治療を受けていること,糖尿病性合併症を有していることなどと相関性が認められた。
 
同氏らは「重度糖尿病は,長期の高血糖と相関する可能性が高く,それがひいては脳における微小血管疾患の発症率を高め,ニューロンの障害,脳萎縮や認知機能障害の一因となっている可能性がある」と述べている。
 
糖尿病性網膜症に罹患している人では軽度認知機能障害を有する率が2倍高いという事実は,糖尿病による脳血管障害が認知機能障害発症の一因だとする理論を支持している。
 
同氏らは「今回の知見は,罹病期間および治療法と合併症の有無で判定した糖尿病重症度が,糖尿病患者の認知機能障害発症に重要である可能性を示している。対照的に,糖尿病が晩期発症型で罹病期間が短く,管理良好な患者では,認知機能障害発症はあまり影響しないであろう」と結論している。

出典 Medical Tribune 2008.10.9
版権 メディカル・トリビューン社


便秘薬長期服用で2人死亡 厚労省、注意呼び掛け
05年4月からの約3年間に、便秘薬などとして医師が処方した酸化マグネシウムを服用した15人が副作用の高マグネシウム血症になり、うち服用が長期間だったとみられる2人が死亡したと報告されていたことが27日、明らかになった。
酸化マグネシウムは副作用リスクが低いとみられていたが、厚生労働省は「一般用医薬品(大衆薬)は含有量は少ないが、長く服用すると同じなので気を付けてほしい」としている。
http://www.excite.co.jp/News/society/20081127/Kyodo_OT_CO2008112701000968.htmlexcite.ニュース 2008.11.27


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<医師と裁判員制>定例記者会見
「裁判員制度の施行にあたって、最高裁判所長官、法務大臣らに申し入れ」
―羽生田俊常任理事
http://www.med.or.jp/shirokuma/no1038.html
羽生田常任理事は、裁判員制度では、医療関係者も例外ではなく、原則として、指名されればこれに応じる必要があるため、医療提供に問題等が生ずる恐れがある場合も考えられることから、これを理由に辞退しなければならないケースが多数予想されることに言及。そのうえで、「地域住民の生命、安心・安全を担う医師・医療従事者の使命に鑑み、個別具体的な辞退申し出事由について、十分な理解を得るために、最高裁判所長官、法務大臣などに対して、文書で申し入れを行った」とその経緯を述べた。

 また、同常任理事は、医師・医療従事者が患者の診療上やむを得ず辞退を申し出る場合の取り扱いについて、(1)前年の12月頃、裁判員候補者名簿登載者に送付される「調査票」、(2)具体的な事件の裁判員候補者に裁判の約6週間前に送付される「質問票」、(3)裁判の当日に行われる選任手続き―等の局面において、辞退を申し出ることができるとし、裁判員候補者として指名された者が、当該事件を担当する裁判所に対して個別に辞退理由を説明し、裁判官によって辞退の可否が決定されることを改めて説明した。

問い合わせ先:日本医師会医事法制課 TEL:03-3946-2121(代)

<裁判員制度>明確でない辞退事由 「義務」と「仕事」板挟み
http://tottokotottoko.blog55.fc2.com/blog-entry-2901.html

医者が裁判員にならなくてすむ方法
http://ruhiginoue.exblog.jp/9587004/

司法に文句をいう千載一遇のチャンス到来:裁判員制度
http://intmed.exblog.jp/6664334/

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by wellfrog2 | 2008-11-28 00:14 | 認知症
2008年 11月 27日

日本人2型糖尿病患者の治療

周知のように、肥満の割合が高い欧米と比べ,肥満の割合が低い日本の2型糖尿病患者では,インスリン分泌の低下が病態の主体となっています。
きょうは、このような病態に則した日本人特有の糖尿病治療についての座談会で勉強しました。
 

座談会
肥満の少ない日本人2型糖尿病患者に対する治療のあり方


司会:
東北大学大学院分子代謝病態学分野教授
岡 芳知 氏 

コメンテーター:
東京医科大学内科学第三講座主任教授
小田原 雅人 氏 
出席:
東北大学大学院再生治療開発分野教授
片桐 秀樹 氏 
奥口内科クリニック院長
奥口 文宣 氏
山田憲一内科医院院長 
山田 憲一 氏
東北労災病院糖尿病代謝内科副院長
  赤井 裕輝 氏 


非肥満例が多い日本人糖尿病患者 専門医の第一選択薬はSU薬
岡 
本日は,日本人の2型糖尿病治療について,病態に即した治療方法や適切な薬剤選択のあり方を中心に討議してまいりたいと思います。
 
まず,小田原先生,血糖コントロールの重要性についてどのようにお考えでしょうか。

小田原 
1型糖尿病患者を対象としたDCCTにより,血糖値を良好にコントロールするほど,網膜症,腎症といった細小血管症の発症が抑制されることが示されました(図1)。
血糖値の正常化は,人種差を越えて細小血管症の発症抑制につながることが疫学的にも明らかになっています。
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岡 
続いて,日本人の2型糖尿病患者の病態についてお伺いします。
日本では欧米ほど2型糖尿病患者の肥満の割合は高くありません。
日本と欧米における2型糖尿病患者の肥満度の違いについてご説明くださいますか。

小田原 
米国人糖尿病患者のBMIは平均32程度であるのに対し,日本人糖尿病患者のBMIは平均23.5程度です(図2)。
つまり,欧米では2型糖尿病患者のほとんどが肥満といっても過言ではありません。
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そうしたことから2006年に発表された米国糖尿病学会(ADA)と欧州糖尿病学会(EASD)の統一見解では,2型糖尿病と診断された患者には,生活習慣の改善とともにメトホルミンの投与が推奨されています。
欧州,米国では2型糖尿病患者に肥満傾向があることを前提にしているためです。
日本では非肥満例が2型糖尿病患者の3分の2を占めるのが現状であり,これをそのまま当てはめることは難しいと思います。

岡 
それでは,日本では2型糖尿病治療においてどのような薬剤選択が行われているのでしょうか。

小田原 
非肥満例が多い日本人の2型糖尿病患者には,スルホニル尿素(SU)薬をはじめとするインスリンの分泌を促進する薬剤の血糖低下効果が高いです。
 
2006年に行われたアンケート調査(日経メディカルオンライン,2007)において,糖尿病専門医が2型糖尿病の第一選択薬として最も多く回答したのは,非肥満例でSU薬,肥満例でビグアナイド薬でした。

肥満はSU薬の効果発現に大きく影響
岡 
海外のデータですが,SU薬の投与により,血糖値がひとまず低下するものの,次第に上昇に転じて投与開始1年後には投与前値に戻ってしまうという報告がありました。

山田 
日本における非肥満糖尿病の例では,体重増加がない場合,少量のSU薬で長期間にわたってコントロールが維持されることも少なくありません。
欧米では通常,診療は3?4か月に一度です。
きめ細かな患者への指導を行いにくいという状況なので,このこともSU薬の効果に対して影響しているかもしれません。

岡 
欧米人は日本人の2型糖尿病患者より対象の肥満度が高いだけではなく,生活習慣の改善が不十分であることも影響している可能性が大きいですね。

片桐 
米国白人の場合,基本的に膵β細胞が肥大化し,かろうじて血糖値を正常に維持している状況で肥満度が高まり続けるので,糖尿病を発症した時点でインスリンを分泌する予備力をかなり失っている例が多くあると考えられます。
そうしたことから欧米の2型糖尿病患者にSU薬を投与すると,一時的には効果を示しますが,いずれ膵β細胞が機能不全に陥ってしまうと考えています。

岡 
欧米人のインスリン分泌能は日本人の3倍近いですからね。

赤井 
肥満を呈していない日本人糖尿病患者でも,過去に肥満があり,極度の血糖コントロール不良を呈する間に次第に痩せていってしまうことがよくあります。

岡 
肥満自体が,膵β細胞に負担をかけているようにも思えます。
確かに肥満歴は血糖コントロールに影響を及ぼしますね。

山田 
非肥満例であれば,SU薬の少量投与によって比較的長期間,安定的に血糖をコントロールできると思います。

小田原 
清野裕らのデータによると,日本人の場合,空腹時血糖値が100mg/dL程度まで上昇すると,インスリン分泌量が増加しますが,空腹時血糖値がそれ以上になると,インスリン分泌量も低下します。
ところが米国白人の場合,空腹時血糖値が100mg/dLを超えた程度では,インスリン分泌量は低下しません。

インスリン抵抗性に対するSU薬の影響
小田原 
日本人に多く見られる比較的軽度の血糖上昇でインスリン分泌が低下する例では, SU薬が有効な場合が多いと考えられます。
また, SU薬が膵β細胞を疲弊させるという説はUKPDSの結果では否定的でした。
 
第3世代のSU薬のグリメピリド(アマリールR)では,新規症例に対する6か月投与でHbA1C値を平均7.6%から6.5%にまで低下させました(図3)。
しかも,最終評価時の投与量は平均1mg/日と低用量でした。
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片桐 
白人では,SU薬が効果を示さないわけではありません。
ただ,血糖改善効果が長期に持続しないのは,糖尿病を発症する時期まで膵β細胞に非常に大きな負担がかかっており,発症後にさらに負担が増すからと考えます。

小田原 
SU薬の日本人に対する血糖低下作用は長期にわたって持続するという報告が多いようです。
また,グリメピリドがアディポネクチンを上昇させることも報告されています。

奥口 
グリメピリドがインスリン抵抗性を改善するという文献もありますね。

赤井 
グリメピリドは,ある程度抗酸化作用も有すると言われていますがどうなのでしょうか。

小田原 
グリメピリドにインスリン抵抗性改善作用があることは間違いありませんが,そのメカニズムには諸説あり,何が主な作用か明らかではありません。
ただ,アディポネクチンの分泌を促進し,それ以外の悪玉アディポカインの分泌を抑制することもインスリン抵抗性改善の機序の1つと思われます。

糖尿病性腎症をいかに抑制するか
岡 
奥口先生はグリメピリド投与例を対象に糖尿病性腎症を検討したデータをお持ちとのことですが,ご紹介いただけますか。

奥口 
糖尿病データマネジメント研究会(JDDM)に参加している施設のデータを元に,後ろ向き研究で2,251例の2型糖尿病患者におけるグリメピリド投与前後のHbA1C値と尿中微量アルブミン量(U-ALB)の増減について検討しました。
 
これによると,HbA1C値は投与開始3か月後に低下し,それが12か月後まで持続しました。
また,U-ALBの低下も見られました。
なお,12か月後に収縮期・拡張期の血圧も低下が観察されました。

岡 
血圧を低下させたメカニズムについては,どのようにお考えですか。

奥口 
グリメピリドの投与により血糖値が低下し,インスリン抵抗性が改善することが,血圧を低下させている可能性があると考えます。

体重増加を来しにくいグリメピリド
岡 
SU薬は原則的に体重増加を来しやすく注意が必要ですが,グリメピリドに関してはどのような印象をお持ちですか。

小田原 
グリメピリドとグリベンクラミド(ダオニールR)を比較したところ,BMIの低下度がグリメピリド投与群で大きかったと報告されています(Martin S, et al: Diabetologia 46: 1611-1617, 2003)。
グリメピリドは低血糖の発現頻度が低いので,それも体重増加の抑制に関係していると思います。

岡 
SU薬による脳のATP感受性カリウム(KATP)チャネルへの刺激が,食欲の増減に関与している可能性があるのではないかと思うのですが,片桐先生はどうお考えですか。

片桐 
経口血糖降下薬は,血糖値を低下させることにより,体重の増加に影響を及ぼすと思います。
なおかつインスリン分泌が促進されれば,体重が増加しても不思議ではありません。
さらにSU薬は,脳のKATPチャネルに働きかけ,食欲を増やすことも報告されています(Spanswick D, et al: Nature 390: 521-525, 1997)。

岡 
グリメピリド投与により患者の体重が増加し,対処に苦慮した経験はありますか。

赤井 
多少体重が増加しても血糖値の正常化を優先し,その後で体重対策を行うという方針で治療していますが,グリメピリド投与により体重が増加した例は経験していません。

奥口 
先程のJDDM研究の際にBMIも検討しています。
6,967例にグリメピリドを投与した際に,開始時と12か月後で変化は認められませんでした。

山田 
理想的な経口血糖降下薬の条件としては,十分な血糖改善効果を有する一方,低血糖を起こしにくく,体重増加を来さず,膵β細胞に対し保護的な作用があることなどがあります。
これらを踏まえ,欧米ほど肥満の割合が高くない日本の2型糖尿病患者の病態を考慮すると,どのような薬剤選択をすべきなのでしょうか。

小田原 
日本人の2型糖尿病患者において,HbA1C値を十分低下させ血糖コントロールを維持するためには,多くの場合SU薬は欠かせない薬だと思います。
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドラインにも,細小血管症の抑制についてエビデンスがあるのはSU薬とメトホルミンだけであると記載されており,世界的に評価の確立した薬剤と言えるでしょう()。
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岡 肥満の割合が少ない日本人の2型糖尿病患者には,SU薬をベースにした治療が適しているということですね。

出典 MT pro  2008.11.20
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by wellfrog2 | 2008-11-27 00:26 | 糖尿病
2008年 11月 26日

第2世代抗うつ薬適正使用のガイドライン

米国内科学会が第2世代抗うつ薬の適正使用に関するガイドラインを作成
11月18日付の米国内科学会(ACP)誌(Ann Intern Med 2008; 149: 725-733)で第2世代抗うつ薬の適正使用に関するガイドラインが発表された。

薬剤間で効果に差はなし
一般臨床医を対象にした同ガイドラインでは,大うつ病障害患者に対する急性期,継続期,維持期のエビデンスに基づいた薬物治療の管理指針が示されている。

推奨内容はMEDLINE,EMBASEなど各種データベースから検索されたパロキセチン,セルトラリン,フルボキサミン,トラゾドンなど12の第2世代抗うつ薬に関する203の臨床試験に関する英語論文を元に策定された。

第2世代抗うつ薬のみを対象とした理由について,同学会は三環系抗うつ薬,モノアミン酸化酵素(MAO-B)阻害薬などの第1世代の薬剤は,同等の効果で過剰投与による毒性発現の頻度が少ない第2世代の薬剤に比べ使用頻度が低いからとしている。
さらに,同ガイドラインでは,選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI),セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)や他の薬剤のタイプによる効果の差は見られないだろうとの見解が示されている。

作成委員会のAmir Qaseem氏らは,気分変調症や亜症候性うつ病を有する患者群での第2世代抗うつ薬の効果や超高齢者,合併症を有する患者群に対する治療効果のほか,抗うつ薬の併用療法や第一選択薬無効例に対する薬剤選択のエビデンスなども今後必要と述べている。

抗うつ薬は疾患そのもの,あるいは他の疾患との関連といった病態への認識が浸透するにつれ,各国で広く用いられるようになっている。
精神疾患を有さない人口においても,抗うつ薬の服用が一般化しているとの報告(http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?phrase=%E6%8A%97%E3%81%86%E3%81%A4%E8%96%AC&perpage=0&order=1&page=0&id=M41460411&year=2008&type=article)もある。
それだけに,一般臨床に携わる医師にも抗うつ薬に関する正確な知識と処方が求められると言えるだろう。
ガイドラインにおける推奨内容は表の通り。
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ガイドライン,ここがポイント?効果に差はないが,副作用に関する説明が必要
すでにヨーロッパでは一般医による処方が普通に行われているそうだが,日本ではごく一部の関心の高い一般医が処方しているに過ぎないという抗うつ薬。
しかし,うつ病に対する社会的認知度の高まりとともに,患者数は明らかに増えており,専門医だけでなく一般医家が診療に携わる機会は今後ますます多くなると見られる。東北大学病院精神科講師の松本和紀氏に,同ガイドラインで押さえるべきポイントと日本の診療現場が抱える問題点を解説してもらった。

特に自殺企図に関する十分な認識が不可欠
今回のガイドラインの一番よい点は,エビデンスに基づく推奨内容が示されたことで,推奨内容そのものには格段の目新しさはない。
ポイントは「薬剤間の効果の差はないので,副作用の違いを患者にきちんと説明し,患者の意見を取り入れながら処方する」というところではないか。
 
注意すべき点は,SSRIで少なくとも非致死性の自殺企図が増えるという結果が取り上げられていること。
自殺の問題を扱うことに不安を感じる一般医は多いと思うが,これはうつ病診療には欠かせないポイントで,この問題を避けて薬剤を処方するのは危険だということを十分認識する必要がある。
また,SSRIでの不安,焦燥の増大,性機能低下などもきちんとモニターすることが重要だ。
 
また,今回のガイドラインを参照する際,期待通りの効果が出るのは半分くらいに過ぎないということも押さえておくべき。
そうでないと,効く人は病院から離れていくので,うつ病をよく診る医師ほど,残った効かない人を沢山目の当たりにし,「SSRIは効かない」という印象を持ってしまう可能性がある。

安易な診断・処方に危機感,治療難渋例に対する診療体制の不足も
疾患に対する認識が広まる一方で,安易な診断,処方を行われているケースも確実に増えている。
古典的なうつ病に馴染んだ専門医にとっては,昨今の非古典的なうつ病に対する批判もあるが,現実にこれだけ非古典的うつ病が増え,市民権を得るに至っては対処を考えざるを得ない。
 
また,薬剤無効例には心理療法などが必要な場合も多い。
しかし日本では診療報酬化されておらず,効果的な心理療法を受ける機会を得るのがかなり難しいことも問題だ。
専門医の立場からは治療難渋例についてもきちんと診療報酬を取れて,5分診療ではない,時間をかけた専門的治療が出来る環境を担保すべきと考える。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0811/081123.html
出典 MT pro  2008.11.20
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-11-26 00:03 | 未分類
2008年 11月 25日

hs-CRPとロスバスタチン

C反応性蛋白値が上昇した男女の血管イベント予防におけるロスバスタチン投与
Rosuvastatin to Prevent Vascular Events in Men and Women with Elevated C-Reactive Protein
P.M. Ridker and others
背 景
炎症バイオマーカーである高感度 C 反応性蛋白(CRP)の上昇により,心血管イベントを予測することが可能である。
スタチンはコレステロールとともに CRP を低下させることから,われわれは,高感度 CRP が上昇しているが高脂血症を伴わない人も,スタチン投与により利益が得られるという仮説を立てた。
方 法
低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールが 130 mg/dL(3.4 mmol/L)未満で,高感度 CRP が 2.0 mg/L 以上の一見健康な男女 17,802 例を,ロスバスタチン 20 mg/日投与群とプラセボ投与群に無作為に割り付けた。
複合主要エンドポイントを,心筋梗塞,脳卒中,動脈血行再建,不安定狭心症による入院,心血管死亡とし,その発生について追跡した。
結 果
試験は追跡期間中央値 1.9 年(最長 5.0 年)後に中止された。
ロスバスタチン投与により,LDL コレステロールは 50%,高感度 CRP は 37%低下した。
主要エンドポイントの発生率は,追跡 100 人年あたりロスバスタチン群 0.77,プラセボ群 1.36 であり(ロスバスタチン群のハザード比 0.56,95%信頼区間 [CI] 0.46~0.69,P<0.00001),心筋梗塞の発生率はそれぞれ 0.17,0.37(ハザード比 0.46,95% CI 0.30~0.70,P=0.0002),脳卒中は 0.18,0.34(ハザード比 0.52,95% CI 0.34~0.79,P=0.002),血行再建または不安定狭心症は 0.41,0.77(ハザード比 0.53,95% CI 0.40~0.70,P<0.00001),心筋梗塞・脳卒中・心血管死亡の複合エンドポイントは 0.45,0.85(ハザード比 0.53,95% CI 0.40~0.69,P<0.00001),全死因死亡は 1.00,1.25(ハザード比 0.80,95% CI 0.67~0.97,P=0.02)であった。
評価した全サブグループで効果は一貫して認められた。
ロスバスタチン群ではミオパチーおよび癌の有意な増加は認められなかったが,医師の報告による糖尿病の発症率が高かった。
結 論
高脂血症を有しないが高感度 CRP の上昇した一見健康な人を対象としたこの試験では,ロスバスタチン投与により,主要心血管イベントの発生率が有意に低下した。
(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00239681)
本論文(10.1056/NEJMoa0807646)は,2008 年 11 月 9 日に www.nejm.org で発表された。
(N Engl J Med 2008; 359 : 2195 - 207 : Original Article)
<原文アブストラクト>
http://content.nejm.org/cgi/content/short/359/21/2195

<高感度CRP 関連サイト>
CRPと高感度CRPの違いを教えてください。
http://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/08.html
最近、動脈硬化は慢性炎症が関係していることが分かってきました。0.01mg/dLまで測定できる高感度検査では、慢性炎症を持っていて将来心筋梗塞を起こすかもしれない人を見つける研究が行われています。

心筋梗塞のリスクを予知  高感度CRP検査  超早期の治療が可能に
http://kk.kyodo.co.jp/iryo/news/0106crp.html

[PDF] 12.高感度 CRP (high sensitive C_reactive protein:hs_RP)
http://www.kessen-junkan.com/2004121204/46.pdf

感度CRP検査 心筋梗塞を超早期に予知
http://kumanichi.com/iryou/kiji/heart/34.html

日本人の高血圧を予測する高感度CRPの値は約0.1mg/L−−循環器疾患コホート研究
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/int/200503/365655.html

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by wellfrog2 | 2008-11-25 00:18 | 循環器科
2008年 11月 24日

新型インフルエンザとタミフル

厚生労働省は、新型インフルエンザの流行時に、特定の患者には電話診療だけでタミフルなどの治療薬を処方できるようにすることなどを盛り込んだ対策指針の改定案をまとめ、11月20日開かれた専門家会議に示し、了承された、というニュースがありました。
「患者の殺到が予想される医療機関の混乱を抑えるのが狙い」とのことですが、無診療投薬を厳しく戒める厚生労働省自らが例外を作った形になりました。

電話診療でタミフル処方も 新型インフル対策で厚労省 「医療ニッポン」
http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=83282&categoryId=&sourceType=GENERAL&

そこで誰もが疑問に思う事があります。
それは、タミフルが新型インフルエンザに効くかということです。
そこでちょっと厚生労働省のホームページでの記載をチェックしてみました。

出典は
新型インフルエンザに関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html
です。

「抗インフルエンザウイルス薬はどのようなものがあるのですか」という質問に対して
「新型インフルエンザの治療薬としては、毎年流行する通常インフルエンザの治療に用いられているノイラミニダーゼ阻害薬が有効であると考えられています。
ノイラミニダーゼ阻害薬には、経口内服薬のリン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)と経口吸入薬のザナミビル水和物(商品名:リレンザ)があります。」

結局は「有効であると考えられています。」とさらっと流しています。
想定質問は「タミフルは新型インフルエンザに訊くのでしょうか」とすべきです。
言語明瞭、意味不明の典型例です。


さらに新型インフルエンザ対策の現状を読売新聞はこう伝えています。

新型インフルエンザ対策  タミフル頼み限界
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20051206ik08.htm

国は新型インフルエンザの感染者数を国民の25%と想定して2500万人分の備蓄を計画、タミフルを巡り各国や国内の綱引きが過熱している。
だが、この薬が新型ウイルスに確実に効く保証はない。
新型インフルエンザへの変化が懸念されている鳥インフルエンザ「H5N1」に対し、タミフルは作用メカニズムから効果が予想され、試験管内の実験でもウイルスの増殖を防ぐことは確認されている。
こうした理論上や実験では有効でも、人に使うと効果がみられない薬も多く、タミフルの場合も人で確かめなければ分からない。
鳥から人への感染が起きた東南アジアで、治療に使われたケースもあるが、効果があるとされる発症2日以内に使った症例が少なく、有効性は証明できていない。


最後に、新型インフルエンザワクチンについての厚生労働省のホームページでの見解です。

新型インフルエンザに関するQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html
Q:
新型インフルエンザにワクチンは効きますか。
A:
通常のインフルエンザの予防接種は、新型インフルエンザとはウイルスの種類が異なるため、感染防止の効果はほとんど期待できないと考えられています。
新型インフルエンザに対して効果が期待できるワクチンとして、プレパンデミックワクチンとパンデミックワクチンがあります。
プレパンデミックワクチンとは、新型インフルエンザウイルスが大流行(パンデミック)を起こす以前に、トリ-ヒト感染の患者または鳥から分離されたウイルスを基に製造されるワクチンを指します。
政府は現在流行している鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に対するワクチンをプレパンデミックワクチンとして製造、備蓄しています。
パンデミックワクチンとは、ヒト-ヒト感染を引き起こしているウイルスを基に製造されるワクチンです。
プレパンデミックワクチンと異なり、ワクチンの効果はより高いと考えられます。
ただし、パンデミックワクチンは実際に新型インフルエンザが発生しなければ製造できないため、現時点で製造、備蓄は行えません。

というように、現在のインフルエンザワクチンが完璧でないのと同様ないしはそれ以下のはずです。
現在のインフルエンザワクチンでさえ、私達医療提供側は予想株と実際の流行株を知らされないまま毎年「粛々と」予防接種を行っているのが現状です。
誰一人文句を言わないのが不思議です。

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by wellfrog2 | 2008-11-24 00:46 | 感染症
2008年 11月 23日

第2回「世界糖尿病デー」

世界糖尿病デーについては2008年11月15日のこのブログで書かせていただきました。

世界糖尿病デー
ttp://wellfrog2.exblog.jp/9663522/

きょうはその続編です。

糖尿病増加の流れ止まらず
糖尿病820万人,“予備軍”1,050万人,4年で250万人の増加

2006年における日本の糖尿病患者は約820万人,その“予備軍”は約1,050万人と推計され,両者を合わせると約1,870万人に達することがわかった。
厚生労働省(厚労省)が4月30日に発表した調査結果によるもので,4年前の調査に比べ,両者合計で約250万人増加していた。
近年,国は糖尿病対策を健康政策の重点項目に位置づけ,自治体による糖尿病予防の取り組みもさかんだが,今回の調査結果からは,増加の流れを食い止めるだけの効力はないことが示唆された。
より強力な対策の導入が必要かもしれない。


糖尿病の増加傾向が加速した可能性も 
調査は「平成18年国民健康・栄養調査」の一部として,厚労省が2006年11月に実施したもので,解析対象者は20歳以上の4,296例。
同集団における糖尿病,“予備軍”の割合を2006年10月1日現在の推計人口に乗じることで全国の有病者数を推計した。

なお,調査では判定基準として,HbA1c値が6.1%以上または糖尿病治療中の人を「糖尿病が強く疑われる人」,HbA1c値が5.6%以上6.1%未満で糖尿病治療中でない人を「糖尿病の可能性を否定できない人」と定義している。
日本糖尿病学会の診断基準ではHbA1cを糖尿病の正式な診断指標に採用していないが,前者を糖尿病型,後者を境界型などの“予備軍”に相当すると判断しても大きな問題はないというのが糖尿病専門家の見解だ。
そこで,ここでは前者を糖尿病,後者を“予備軍”と呼称している。

その結果,2006年における糖尿病患者は約820万人,“予備軍”は約1,050万人と推計された。厚労省では同様の調査を1997年と2002年に実施しているが,2002年の調査との比較では4年間で糖尿病患者が約80万人,“予備軍”が約170万人増加し,全体では約250万人の増加。
1997年と2002年の比較では5年間で糖尿病患者が約50万人,“予備軍”が約200万人増加し,全体では約250万人の増加であり,今回のほうが前回との調査間隔が1年短いことを考えると,糖尿病患者を中心に増加傾向が加速した可能性もある(図1)。

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また,性・年齢層別の有病率を見ると,今回は高齢女性での増加が顕著であった(図2)。 
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食事内容や食事パターンの見直しが必要か
「平成18年国民健康・栄養調査」では,生活習慣や栄養に関する調査も実施しており,今回結果が発表され,過去の調査との比較データも示されたが,そこからは糖尿病増加の要因が見え隠れする。

2型糖尿病の重要な成因である肥満については,男性では20年前の1986年調査に比べ,すべての年齢階級において肥満者の割合が増加していた。
一方,女性では肥満者の割合の増加は認められず,40歳代では20年前,10年前(1996年)の調査に比べ減少。20歳代の女性の約2割が低体重であった。

男性における肥満傾向が糖尿病増加に大きく影響していることが示唆されるが,エネルギー摂取量は男女ともにこの10年間で漸減傾向にある。
ただし,食事内容や食事パターンについては,多くの問題点を指摘できる。例えば,脂肪エネルギー比率が30%以上の人は成人男性で18.1%,女性で27.2%であり,男女ともに25%未満の人の割合が漸減し,30%以上の人の割合が漸増している。
また,若年層を中心に朝食の欠食率が増加,20歳代では男性30.8%,女性22.5%に及ぶ一方,夕食の開始時間は男女ともに20~60歳代の幅広い年齢層で午後9時以降と答えた人の割合が増加。
男性の30~40歳代においては午後11時以降の人が7%以上を占めていた。

運動についても,1週間にまったく行わない人が男女とも20~50歳代で約3割。運動習慣のある人の割合(1回30分以上の運動を週2日以上実施し,1年以上継続)は男女とも全体では3割程度であったが,男女とも30歳代では17.5%であるなど若年層で低かった。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0805/080502.html
MTpro 記事   2008年5月1日掲載
版権 メディカル・トリビューン社




最後に 北里研究所病院糖尿病センター 山田 悟先生の「世界糖尿病デー」についてのエッセイを紹介させていただきます。

糖尿病に関わる医療従事者は奮起すべき
ブルーに染まる東京タワーをロマンチックな風物詩にしてはいけない

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0811/081119.html

MTpro 記事  2008年11月18日掲載
(一部改変)


ブルーライトアップは日本発の発想
2006年12月20日に「糖尿病の脅威を認知する決議」が国連総会で採択され,11月14日は国連公認の「世界糖尿病デー」となった。
この日はインスリンの発見者でその功績によりノーベル生理学医学賞を受賞したバンティング博士の誕生日であり,ブルーのライトアップは,世界が一致団結して糖尿病に立ち向かおうという「Unite for Diabetes」キャンペーン〔2006年6月から国際糖尿病連合(IDF)がはじめたキャンペーン〕のロゴマークであるブルーサークルに由来している。
IDFのシリンク会長によれば,ブルーの色には糖尿病患者の明るい明日の意味がこめられているそうである。

世界糖尿病デーやブルーサークルの認知度は低い
世界糖尿病デーやブルーサークルに対する認識について問うアンケートを実施したところ,世界糖尿病デーを知っている方は3割に満たず,ブルーサークルに至ってはほんの数人しか知らなかったのである。
これは乳がん対策のシンボルマークであるピンクリボンを知る方に比較して格段に低い数値であった。
そして,さらに衝撃的であったのは翌15日の患者友の会で会員患者さんから出た発言である。「(糖尿病患者ではない)友人から“糖尿病になる人は悪い生活をしている人だ”と言われた」というのである。

“普通に生活をしていれば普通にかかってしまう疾病”であることを啓発すべき
2006年度の厚生労働省の調査によれば,糖尿病患者は820万人であり,予備軍を合わせると1,870万人を数える(成人の5〜6人に1人)。
すなわち,糖尿病は国民病であり,「今の日本人が普通に生活をしていれば普通にかかってしまう疾病」である。
しかしながら,今なお多くの国民は糖尿病に大きな関心を寄せず(乳がんも頻度の高い疾患であるが女性の20人に1人程度),なかには「糖尿病は悪い生活習慣を持つ人がなる特殊な疾病」ととらえている人がいるらしい。

糖尿病患者が抱える苦痛に思いをはせ,糖尿病患者が糖尿病療養を苦労しないで継続できる社会を作り上げるべく,社会に向かって情報を発信していく機会とするべきである。

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by wellfrog2 | 2008-11-23 00:10 | 糖尿病
2008年 11月 22日

腹囲・ウエスト/ヒップ比

腹囲・ウエスト/ヒップ比は死亡リスクと関連:欧州の大規模研究より 
ドイツ栄養研究所疫学部門のTobias Pischon氏らは,大規模データベースによる研究から死亡リスクの評価にウエスト周囲径(腹囲),ウエスト/ヒップ比が有用との報告を行った(N Engl J Med 2008; 359: 2105-2120)。

BMIに加え,腹囲・ウエスト/ヒップ比の有意な相関が確認
Pischon氏らは,欧州最大規模の疫学データベースEPIC(European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition)を用いて,BMI,腹囲,ウエスト/ヒップ比と死亡リスクの関連を調査。
欧州9か国,35万9,387人が登録された。

9.7年(中央値)の追跡期間中,1万4,723人が死亡。
最も死亡リスクが低いBMI値は,男性25.3,女性24.3であった。
 
男女を問わず,BMI補正後の死亡リスクと腹囲,ウエスト/ヒップ比には強い相関が見られた。それぞれの相対リスク(RR)は,腹囲の最高五分位における男性の相対リスク(RR)は2.05〔95%信頼区間(CI) 1.80~2.33〕,女性のRRは1.78(95%CI 1.56~2.04)(各P for trend<0.001),ウエスト/ヒップ比の最高五分位におけるRRは男性1.68(95%CI 1.53~1.84),女性1.51(95%CI 1.37~1.66)であった。
 
また,腹囲あるいはウエスト/ヒップ比を含めた解析を行っても,BMIは死亡リスクと有意な相関を示していた(P<0.001)。

以上の結果から,同氏らは全身肥満と腹部肥満は死亡リスクと関連することが明らかで,リスク評価にはBMIに加え腹囲,ウエスト/ヒップ比が必要としている。

疾患や死亡の予防における腹囲の意義については,いまだ結論が出ていない。
 
今年(2008年)9月のMedical Tribuneアンケートでは,今春より開始された特定健診・特定保健指導制度で必要のない診断項目の第1位が腹囲となり,他を大きく引き離す回答結果となった。

過度の肥満が疾患や死亡のリスクを高めることは明らかだが,BMIや腹囲を一律に採用することで,やせ型の高リスク症例の取りこぼしを懸念する意見もある。病的な脂肪蓄積がもたらす代謝異常への至適アプローチについては,まだまだ議論が続きそうだ。

出典 MT pro 2008.11.19
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<コメント>
何だかよく理解できない論文です。
われわれが知りたいのは「腹囲」と「ウエスト/ヒップ比」のどちらが、より死亡リスクの評価に有用かということです。
どちらも有用といわれても、結局どっちでもいいんでしょということになってしまいます。
隔靴掻痒の感がありますが、NEJMにどうして受理されたのか不思議な結論です。
原著にはきっといい内容が散りばめられているのでしょうが・・・。
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by wellfrog2 | 2008-11-22 00:07 | メタボリックシンドローム
2008年 11月 21日

脳室サイズとAD

脳室サイズの増大がADと直接関連

ウェスタンオンタリオ大学(UWO)Robarts研究所(カナダ・ロンドン)のRobert Bartha博士らは,脳室サイズの増大が認知機能障害やアルツハイマー病(AD)と直接関連していることを示す明確なエビデンスを見出したとBrain(2008; 131: 2443-2454)に発表した。

剖検を待たずに確定診断が可能

 脳室は髄液で満たされている脳内の空洞である。今回の研究では,周囲の組織が死滅すると脳室サイズが増加することが判明した。
 共同研究者で同研究所大学院生のSean Nestor氏らは,大規模多施設試験Alzheimer's Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)の被験者データから入手した米国およびカナダ在住の504例(AD患者105例,軽度認知機能障害を有する患者247例,健康な高齢者152例)の試験開始前および6か月時点におけるMRI画像を分析した。
 その結果,AD患者では軽度認知機能障害を有する患者と健康な高齢者に比べて脳室サイズが増大していた(P=0.0004,P<0.0001)。また,軽度認知障害を有する患者は,健康な高齢者に比べて脳室サイズが増大していた(P=0.0001)。さらに,6か月後に軽度認知障害からADを発症した患者では,軽度認知障害を引き続き有する患者に比べて脳室サイズが増大していた(P=0.0270)。
 Bartha博士は「将来, MRIによる脳室サイズの変化の測定によって,早期により確定的な診断を下せる可能性がある。さらに,今後新たなADの治療法が開発されれば,脳室サイズの測定によってその治療法の効果を迅速に判定できる可能性がある」と述べている。
 また,今回の研究から,AD発症の危険因子として知られるアポリポ蛋白E遺伝子型を有するAD患者では脳室サイズの増大が速いことも明らかになった。

ソフトウエアにより可能に

 MRI画像による脳室サイズの測定は,Merge Healthcare社のOEM部門であるCedara Software社が開発したソフトウエアにより可能になった。これまでは,得られたすべての断面に対し脳画像上で脳室を手動または半手動でトレースしなければならなかった。共同研究者でMerge OEMソフトウエアチームを率いるVittorio Accomazzi氏は,他の研究者と共同でソフトウエアを改良し,大量のデータ処理を迅速に行うことを可能にした。
 なお,共同研究者でADNIの参加施設の1つであるローソン医療研究所(カナダ・ロンドン)のMichael Borrie博士は,パークウッド病院の老年医学臨床試験グループ,聖ヨセフ病院の医療ディレクター,UWO老年医学研究部門の責任者も務めている。
 同博士は「これは,ADNIのデータを利用して公表された主要な研究のうち最も早く発表された研究結果の1つである。今後も,ADNI関連プロジェクトからさらに多くの神経画像とバイオマーカーに関連する事実が明らかにされるだろう。世界中の研究者がADNIデータベースを活用し,最新の技術を用いて協力することで,AD研究をより迅速に,客観的に行え ,効果的な進展が期待できる。既にADNIからはこれまで想像できなかった新しい国際的な協力体制が築かれている」と述べている。
出典 Medical Tribune 2008.11.13
版権 メディカル・トリビューン社

<番外編>
Nikkei Medical 2008.1 「日経メディカルクイズ」より
■股関節痛、下肢屈曲位では可能性腸腰筋を考える
■喫煙者の嗄声ではポリープ様声帯も疑う
■肝内の腫瘍や腫瘍栓の診断には超音波造影を行う
■汎発性環状肉芽腫を診たら糖尿病を疑う
■気管支結核は、閉塞性無気肺を示す代表的感染症
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by wellfrog2 | 2008-11-21 00:06 | 認知症