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2008年 11月 04日

日本人の2型糖尿病

第51回日本糖尿病学会年次学術集会 ランチョンセミナー
動脈硬化進展阻止を目指した糖尿病治療

2007年5月22日(木)から3日間にわたり、東京国際フォーラムにて開催された第51回日本糖尿病学会年次学術集会 ランチョンセミナーの記事で勉強しました。
以下の内容は5月24日(土)に行われたランチョンセミナー「動脈硬化進展阻止を目指した糖尿病治療」のものです。

近年大きく変化している日本人2型糖尿病
わが国における2型糖尿病の病態が、近年大きく変化していることに気付いておられることでしょう。
かつての日本人2型糖尿病患者の多くは、欧米人2型糖尿病患者とまったく異なり、非肥満でインスリン分泌能が低かった。
このため、薬物治療においては、まずSU薬を投与し、それでも血糖コントロール不良の場合には、インスリン治療を開始した。
一方、肥満がないことから、細小血管障害に比べ、動脈硬化性疾患の発症は、決して多いとはいえなかった。
 
しかしわが国においても、この20年間で、肥満を伴う2型糖尿病患者が急増している。
このため、日本人2型糖尿病は、インスリン分泌不全に加え、インスリン抵抗性をも有する病態となり、従来の治療法では、良好な血糖コントロールを維持しにくい例が増加するとともに、動脈硬化に起因する疾患の併発が極めて多く認められるようになった。
 
こうした状況の下、今日の日本における糖尿病治療の所期の目標が、脳梗塞ならびに心筋梗塞の発症あるいは進展阻止へと転換してきた、と断言したい。
ここでは、日本人2型糖尿病における動脈硬化症の発症・進展抑制を目的とした血糖コントロール方式について解説してみたい。特に長い歴史を有する薬剤でありながら、近年その評価が急速に高まっているメトホルミンについて、その多彩な効果と作用メカニズムを紹介したい。

厳格な血糖コントロールは、動脈硬化症の進展を抑制しうるか?
良好な血糖コントロールを維持することが網膜症、腎症といった細小血管障害の発症・進展を阻止することのエビデンスは多い。
一方、長年の平均HbA1c 7.9%と7.0%で比較したULPDSの成績などから、動脈硬化性疾患の進展阻止には血糖コントロール状況が関与しない、との見解も多い。 

2008年6月にサンフランシスコで開催されたADA(米国糖尿病学会)で、種々の新しい大規模研究結果が発表された。
2型糖尿病患者11,140例を対象に、厳格な血糖コントロールによる血管合併症の抑制を検討した、世界最大規模の国際共同無作為化比較試験「ADVANCE(Action in Diabetes and Vascular Disease)」では、5年間追跡した結果、強化療法群(平均HbA1c 6.5%)では従来療法群(平均HbA1c 7.3%)に比べ、腎症の発症と進行リスクを21%軽減したが、心筋梗塞と脳卒中の発症リスクの軽減効果を統計学的に証明するまでには至らなかった。
またACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)試験の中間解析では、HbA1c 6.0%未満を目標として強化療法を行った群(結果的に平均HbA1c 6.4%)では、従来療法群(平均HbA1c 7.5%)より全死亡がわずかではあるが、増加したことが報告され、「厳格な血糖コントロールは死亡を防ぎ得ない、低血糖を起こすことは死亡を増加させるのでは」という論議を引き起こした。
しかし重要な事実は、この強化療法群における死亡率は、米国で同様の危険因子を有する患者の平均死亡率の1/3 から1/4であったことである。 
これらの論議に対して私は、
(1)「厳格な血糖コントロール」がなされている、といえるのか?、
(2)進展した動脈硬化の進展阻止はたやすくない!
の2点を強調しておきたい。

(1)私どもは、11,000例のデータベースから、HbA1c 6.5%未満の2型糖尿病患者100例を抽出し、前向き解析を行った。
これら患者では、種々の糖尿病治療薬やスタチン系薬剤、降圧薬などの併用により、3年間にわたって血清脂質、体重、収縮期および拡張期血圧が正常域に収まっていたが、エコー法による頸動脈IMT(内膜中膜複合体肥厚度)は、開始時に既に進展していた。
次に対象患者を、平均HbA1cが3年間で0.2%超上昇した群(試験開始時平均HbA1c 6.0%→3年後の平均HbA1c 6.5%)と、0.2%超改善した群(試験開始時平均HbA1c 5.9%→3年後の平均HbA1c 5.6%)に二分して評価したところ、HbA1c上昇群では、IMTが試験開始時よりさらに増加(+0.036mm/年)していたのに対し、HbA1c改善群では減少しており(-0.035mm/年)、両群の差は有意であった(P=0.0002、ANOCOVA)。
この成績から、すべての指標を良好にコントロールすれば、進行した早期の動脈硬化も退縮する可能性があることが示唆された。
また逆に、極めて厳格な血糖(健常人に近似した状況)ならびに血圧、脂質のコントロールを継続しなければ、動脈硬化は確実に進行すると捉えるべきであろう。
 
さらに
(2)2型糖尿病と診断された時期から積極的にコントロールして、決して動脈硬化を進行させないことが治療の目標、と捉えるべきではないだろうか。

http://www.carenet.com/diabetes/jds51/text_01.html
出典 Care Net.com
版権 ケアネット

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by wellfrog2 | 2008-11-04 00:08 | 糖尿病
2008年 09月 03日

オレンジジュースと糖尿病

糖尿病の患者さんに「オレンジジュースは飲んでいいですか」と聞かれた場合にどのように答えるか。
従来なら「少しだけならいいでしょう」とか「出来るだけ飲まないようにね」といった歯切れの悪い指導をして来ました。
以下の論文で、ますます混迷は深くなってしまいました。

同じようなことが「骨粗鬆症と牛乳」についてもいえます。

骨粗鬆症…「牛乳は有害」説根拠なし
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20071226-OYT8T00202.htm

なまじっかな知識がかえって患者さんへの指導を難しくしてしまいます。

オレンジジュースは糖尿病患者に安全
動脈壁の酸化ストレスと炎症抑制

〔米ニューヨーク州バッファロー〕ニューヨーク州立大学バッファロー校(UB)内分泌学・糖尿病・代謝学のParesh Dandona教授らは,糖分の高カロリー負荷にもかかわらず,オレンジジュースはフラボノイドが豊富に含まれているため糖尿病患者にとって健康的な食品であるようだとDiabetes Care(2007; 30: 1406-1411)に発表した。

動脈壁の酸化ストレスを軽減
フラボノイドは,活性酸素種(ROS)として知られる有害な酸素フリーラジカルの発生を抑制する。
過剰なフリーラジカルは,蛋白質,脂質,DNAを含む細胞のあらゆる構成要素に損傷を与え,心疾患,脳卒中,糖尿病を含む多くの慢性疾患の発症に関与する。
 
研究責任者でウェスタンニューヨーク糖尿病・内分泌学センターの所長でもあるDandona教授は「多くの主要な疾患は動脈壁の酸化ストレスと炎症に関連しているため,このような病状を引き起こす可能性が最も低い食品を探すことが重要である」と述べている。
 
同教授は「われわれの過去の研究から,300kcalのグルコースがROSなどの炎症反応を誘発することが示されている。仮説として,300kcalに相当するオレンジジュースあるいはフルクトースは,同カロリーに相当するグルコースと比べて酸化ストレスと炎症の誘発の度合いが低いのではないかと推測される」としている。
 
仮説を証明するための研究には,健康な正常体重〔body mass index(BMI)が20〜25〕の成人32例(20〜40歳)が参加した。
参加者は,300kcalに相当するグルコース,フルクトース,オレンジジュースまたは甘味料のサッカリン添加水を摂取する 4 群のいずれかに均等にランダム化割り付けされた。
試験前に空腹時の血液を採取したほか,飲みものの摂取に要した10分間が終了してから 1 時間後,2 時間後,3 時間後にも血液サンプルを採取した。

フラボノイドがROSを抑制 その結果,グルコース摂取群の血液サンプルでは,摂取から 2 時間後にROSが有意に増加したが,フルクトース摂取群,オレンジジュース摂取群,サッカリン摂取群では有意な増加は認められなかった。
 
Dandona教授は「オレンジジュースに含有されているグルコース量は,グルコース群と同等であるにもかかわらず,オレンジジュース群では摂取後にROSの増加または炎症が認められないという驚くべき知見が得られた。そこで,オレンジジュースに含まれるフラボノイド,ビタミンC,フルクトースのうちどの成分がROSの発生の抑制に寄与しているのかという疑問が生じた」と述べている。
 
血液サンプルの付加的な検査から,フルクトースとビタミンCはいずれも酸素フリーラジカルを抑制しないことが明らかになった。
一方,オレンジジュースに含有されている2 種類のフラボノイドであるヘスペレチンとナリンゲニンは,ROSの発生をそれぞれ52%,77%阻害することがわかった。
 
同教授は「われわれのデータは糖尿病患者に関連している。なぜなら糖尿病患者の集団では,ROSによるストレスと炎症が有意に増加し,動脈硬化の発症に関与している可能性があるからである。酸化ストレスと炎症を増加させない食品,あるいは減少させる食品を選択することが重要である」と指摘している。
 
さらに「肥満,過体重,2 型糖尿病は酸化ストレスと炎症に関連しており,米国人口の60%以上がこうした状態にあるという現状を考えると,今後も安全な非炎症性の食品や食生活の追求を継続しなければならない」と述べている。

出典 Medical Tribune 2007.9.27
版権 メディカル・トリビューン社

<関連サイト>
オレンジのフラボノイドは糖尿病の味方です
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20070729A/
Fruit juice and type 2 diabetes
Just one glass of orange juice a day could increase risk of diabetes
http://www.dailymail.co.uk/news/article-1038079/Just-ONE-glass-orange-juice-day-make-obese-AND-increase-risk-diabetes-says-research.html
(オレンジジュースはよくないという記事です)
http://www.nhs.uk/news/2008/07July/Pages/Fruitjuiceandtype2diabetes.aspx
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<番外編>
術前に血糖値が高いと周術期死亡リスクが上昇
〔オランダ・ロッテルダム〕エラスムス医療センター(ロッテルダム)麻酔科のPeter G. Noordzij氏は「血糖値が高い患者では,たとえ心臓や血管以外の手術でも周術期死亡リスクが上昇する」とEuropean Journal of Endocrinology(2007; 156: 137-142)に発表した。
 
同氏らは,1991〜2001年に同センターで心臓と血管以外の手術を受けた患者を対象に症例対照研究を実施した。
評価した症例群は術後30日以内に入院中に死亡した904例で,生存者のなかから年齢や性,手術の種類などが一致する1,247例を対照群とした。
 
術前血糖値が110mg/dL未満を正常群,110mg/dL以上200mg/dL未満を前糖尿病群,200mg/dL以上を糖尿病群と定義して,周術期死亡率を検討した結果,正常群に比べて前糖尿病群では1.7倍,糖尿病群では2.1倍だった。
心血管系合併症の周術期死亡率に限定すると,前糖尿病群で 3 倍,糖尿病群では 4 倍にも達していた。
さらに,心血管系合併症による死亡は症例群の23%(207例)を占めていた。

出典 Medical Tribune 2007.9.27
版権 メディカル・トリビューン社


<番外編>
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出典 Medical Tribune 2008.8.28
版権 メディカル・トリビューン社


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by wellfrog2 | 2008-09-03 00:14 | 糖尿病
2008年 07月 29日

糖尿病患者の血圧とLDL-C目標値

糖尿病患者の血圧とLDL-C目標値
"標準"以下でもCVD発症率に差ないがIMTは退縮

シカゴ〕メッドスター研究所(メリーランド州ハイアッツビル)のBarbara V. Howard所長らは「糖尿病患者の血圧とLDLコレステロール(LDL-C)を標準的な目標値以下に下げると標準的目標値の患者と比べて頸動脈壁厚はより減少するが,心血管疾患(CVD)イベントの発生率には差はなかった」とする試験結果をJAMA(2008; 299: 1678-1689)に発表した。

積極治療で有害イベント多い
この論文の背景情報によると,糖尿病患者はCVD発症リスクが高く,成人の糖尿病患者では冠動脈心疾患(CHD)が死因の第1位である。
糖尿病に関連したCVDリスクが上昇するのは,糖尿病患者では脂質異常症や高血圧などの主要なCVD危険因子を有する率も高いことによる。
糖尿病患者の収縮期血圧(SBP)とLDL- Cを推奨値よりも下げることにより,CVD関連の便益が得られる可能性を示唆する試験もある。
 
今回の試験は,2型糖尿病を有する米国先住民の男女499例における無症候性のアテローム動脈硬化症の進展を比較検討したStop Atherosclerosis in Native Diabetics Study(SANDS)
被験者のLDL-C値とSBP値をそれぞれ70mg/dL以下,115 mmHg以下まで積極的に下げる群(積極治療群)と標準的な目標値(100 mg/dL以下, 130mmHg以下)まで下げる群(標準治療群)にランダムに割り付けた。
3年に及ぶこの試験はオクラホマ,アリゾナ,サウスダコタなどの臨床センターで実施された。
 
その結果,両群ともLDL-CとSBPの平均的な目標値は達成され,その値は維持された。
試験開始前時と比べて,内膜中膜複合体厚(IMT)は積極治療群で退縮したが,標準治療群では進展した。
頸動脈の断面積も積極治療群で縮小した。
降圧薬に関係した有害イベント発生率(38.5%対26.7%)と重度な有害イベント発生数(4例対1例)は,積極治療群で高かった。
臨床的なCVDイベント発症率は両群で有意差はなかった。


健全な論争のきっかけに
Howard所長らは「臨床的なCVDアウトカムに関しては両群間に有意差はなかったが,イベント発生率は両群とも低く,標準治療群の無症候性のアテローム動脈硬化症の進展率は予想より低かった」と結論。
さらに「今回のデータは,LDL-CとSBPの目標値を定めた治療によりCVDの代理アウトカムが改善し,目標値をより低くすればより大きな便益が得られることを示唆している」と付け加えている。
 
しかし,「イベント発生率に差がなかったことと,降圧に関係した有害イベント発生率と重度有害イベント発生数が上昇したことから,長期的なアウトカムに対する便益は認められない可能性が示唆される。LDL-Cあるいは血圧をより積極的に低下させる治療戦略により,長期的なCVD発症率の低下ないしは経済的便益が得られるかどうかはいまだ明らかにされていない」と述べている。
 

JAMAの寄稿編集者でデューク大学(ノースカロライナ州ダーラム)医療センター循環器内科のEric D. Peterson教授らは,付随論評(2008; 299: 1718-1720)で「SANDSから学び取るべきメッセージは何であろうか。
今回の試験により,ある者にとっては,積極的な脂質異常治療と降圧療法が証明された早期マーカーに対してよい効果をもたらした。
したがって,長期間のフォローアップがなされれば,患者アウトカムの改善が証明されることはほぼ間違いないと捉えるだろう。
しかし,ある者にとっては2型糖尿病に罹患している高リスク患者を対象とし,理想的な状況で試験を行ったにもかかわらず,3年間のフォローアップ後でもまだ臨床的便益が確認されなかったと捉えるだろう」とコメント。
実際,積極的治療群では多剤併用(polypharmacy)により費用増大,有害イベントリスクの上昇が認められたという。
 
結論として,同教授らは「SANDSは目標値を下げることが一次予防のために実際によいことであるかどうかを明らかにするための重要な第一歩である。今回の結果からは,理想的な治療目標値に関する2つの異なる見解のいずれをも支持する解釈が可能だが,このようなディベートは健全なもので,最終的には,より確かなエビデンスの発見に医師を駆り立てることになり,さらに地域医療における治療目標をより効果的に達成するための,システムワイドな戦略を求めるきっかけとなるであろう」と述べている。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社


<関連ブログ>
コレステロールと血圧を積極的に下げよう?!
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20080620A/index2.htm
Effect of Lower Targets for Blood Pressure and LDL Cholesterol on Atherosclerosis in Diabetes
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/299/14/1678?etoc
2型糖尿病に対するコレステロール・血圧積極治療は動脈硬化退縮・・・だがイベントは・・・
http://intmed.exblog.jp/6989612/

<コメント>
対象をAmerican Indianにしぼって行ったトライアルということに興味があります。
米国の論文の多くが人種をはっきりさせないことが多いからです。
aggressive とstandard な治療でCVDイベントに差がなかったが、前者でIMTの退縮と心肥大改善効果がみられたとのこと。
しかしIMTがCVDイベントのサロゲートマーカーとするには少し無理があるのではないかと。
使用薬剤については不明ですが,最近大いに話題となったENHANCE試験を思い出してしまいます。

ENHANCE試験
http://blog.m3.com/reed/20080418/ENHANCE


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by wellfrog2 | 2008-07-29 00:09 | 循環器科
2008年 07月 04日

HbA1cと特定検診

HbA1cを国民に浸透した指標に
特定検診・特定保健指導とともに啓発を
4月30日の厚生労働省による報告「平成18年(2006年)国民健康・栄養調査結果の概要」で,2006年時点で糖尿病が疑われる人は1,870万人にのぼり,4年間で約250万人(15.4%)増加していることが明らかになった。
今年4月には特定健診・特定保健指導が開始されていることからも,国民の生活習慣病対策への意識向上が求められている。
東京都で開かれたプレスセミナー「特定健診・特定保健指導と糖尿病~グリコヘモグロビン(HbA1c)意識調査から見る糖尿病治療の現状と課題」(主催=サノフィ・アベンティス(株))では,加藤内科クリニック(東京都)管理栄養士の加藤則子氏が2008年4月に行われた「特定健診・特定保健指導と糖尿病,健診項目に新たに加わったHbA1cに対する意識調査」の結果から見た糖尿病治療の現状と課題について解説した。


9割以上が自分のHbA1c値を知らない現状
同調査では,全国各地の30歳以上で世帯年収600万円以上の416人(男女各208人)を対象に,2008年4月にインターネット調査を実施し,特定健診に対する認知度と,糖尿病およびHbA1cの浸透度の把握を行った。
 
その結果,4人に1人が特定健診・特定保健指導の「名前を知らない」と回答。
全体の6割以上が肥満の検査と誤った回答をしていたことから,表面的な理解にとどまっていることが示された。
 
糖尿病に関しては,全体の95.0%が糖尿病を「怖い」と認識していたものの,加藤氏は「50~59歳の男性では怖くないとの回答率が高い傾向がある」と指摘。
また,実際には40歳以上の3人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍であるにもかかわらず,糖尿病または糖尿病予備軍に該当する可能性があると認識しているのは5人に1人にとどまった。
 
HbA1cは,特定健診に新たに導入された検査項目であるが,79.1%が名前さえ知らず,自分のHbA1c値を知らない人は92.1%にのぼった。 
また,特定健診の結果,HbA1c値が高く,糖尿病が疑われる場合に取る行動として,約7割が「病院や保健所で医師に相談」と回答。
62.6%が「食事の内容・量を制限」,38.5%が「定期的に運動」と回答していたことから,同氏は「糖尿病の早期予防・治療へ行動を起こすには,検査自体とその検査値の意味を正しく理解することが重要」と述べた。
 
以上の意識調査の結果から,同氏はHbA1cの認知度,測定値の把握度がきわめて低い点に懸念を示し,「糖尿病の予防・治療において血糖コントロールが重要であることを認知させ,『生活にごく身近な』指標としてHbA1c値を認識するよう国民に啓発すべき」とし,「HbA1cの認知向上だけでなく,基準値自体の認識向上も必要」と述べた。


HbA1c値6.5%未満にコントロールを 
加藤氏は,同院がある葛飾区保健医療実態調査(2007年6月,調査対象は葛飾区在住20歳以上の2,400人)から,20歳代の若年層で肥満(BMI 25以上)が増加している現状を指摘。
その一因として約3割が「体重を測定しない」と回答している事実を挙げ,体重測定を促すサポートが必要と強調した。
また,健康診断を受診しにくい職業として飲食店関係が多い点を指摘し,職業別の健診受診率にも考慮すべきと述べた。
 
さらに同氏は,1日50kcalを余分に摂取した場合,5年後には12.9kg体重が増加するという肥満のシミュレーションを示し,毎日の食事への配慮を強く指導すべきであると強調。
特に,就寝前の食事摂取は肥満の原因となることから「夕食から就寝までは2~3時間の間隔を開けるべき」と述べた。
 
同氏は最後に,HbA1c測定の意義について解説。
HbA1cは食事や運動などの影響を受けやすい血糖値に比べて,過去1~2か月の血糖値の平均を反映するため,より正確な身体状況の把握に有用であるとし,HbA1c値6.5%未満のコントロールの重要性を広く啓発することが重要と強調した。
また,糖尿病治療において,1人ではなく地域や職場などの集団で検査値(HbA1c値)を認識することにより,よりよい血糖コントロールを継続し,健康を維持することも大切であると述べた。
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41260751&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.6.26
版権 メディカル・トリビューン社


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中村善種  「モントクレアの冬」15号
http://page6.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/f64046980

<番外編>
メタボと死亡リスクの関係は?
蓄積され始めた日本の疫学研究
日本医事新報 No.4375 2008.3.1 P18〜21
■平成17年4月 「メタボリックシンドローム診断基準」が発表になる。
(関連8学会検討委員会)
■平成19年4月「標準的な健診・保健指導に関するプログラム(確定版)」策定(厚労省)
■診断基準の発表当時。国内にはこの診断基準に基づくエビデンスは厳密には蓄積されていなかった。
■日本人の死亡原因の1位は以前としてがんである。その検診を充実させることの方がはるかに重要である。
■ADAとEASDは2005年9月、共同声明をADAの学会誌「Diabetes Care」に発表。
概要   
Metsの診断基準はいずれも「曖昧で不完全」
患者にMetsというレッテル張りをしない。
心血管疾患の危険因子(糖尿病、高血圧、高脂血症など)はそれぞれ独立した危険因子であり、Metsに該当したからといって、そのリスクが相乗的に増大うるわけではない。

<番外編>
高村薫氏も指摘する”医療崩壊の元凶”
日本医事新報 No.4375 2008.3.1 P32
■急患の搬送先がないような現状と、世界最先端の医療の普及のアンバランスを異常だと思わない政治家たちが、いま、国会で道路建設推進の放談にかまけている。

他にもブログがあります。
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(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞくhttp://blog.m3.com/reed/
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by wellfrog2 | 2008-07-04 00:29 | 糖尿病
2008年 07月 01日

糖尿病治療/基礎インスリン その2(2/2)

SU薬+インスリングラルギン併用でHbA1cは約2%改善
田中 
持効型インスリン製剤のインスリングラルギンが注目されています。
先頃,先生方と共同でSU薬効果不十分症例に対するインスリングラルギンの上乗せ効果を検討したJUN-LAN STUDY 4の成績を報告しました。

弘世 
本試験では,SU薬を極量から準極量服用しているにもかかわらず,1年以上HbA1c 7.5%以上が持続している2型糖尿病患者44例を対象に,食直前あるいは眠前にインスリングラルギンを併用し,18か月間の治療効果を検討しました。
 
投与開始6か月後,HbA1cは投与前の9.7%から7.6%へと有意に改善し,重篤な低血糖は認められませんでした。
HbA1c7%以下を示した改善群17例と7%以上を示した非改善群27例の患者背景を見ますと,グリベングラミドの平均使用量は改善群で7.5mg,非改善群で7.7mgといずれも高用量で,性別,年齢,BMI,罹病期間などには差はありませんでした。
 
改善群は投与開始18か月後もHbA1c 6.9%と効果が持続し,インスリングラルギン使用量も6か月後から有意な増加を必要とはしませんでした。
18か月後のFPGは改善群133 mg/dL,非改善群131mg/dLでした。
非改善群の1日の血糖レベルは昼・夕・眠前となるにつれて上昇していました。
食後のインスリン分泌が十分でなく,インスリン頻回注射へのステップを考慮すべきでしょう。


FPG 110mg/dL以下を目標にインスリングラルギンを調節し,追加分泌の回復を
田中 
SU薬の効果が不十分となった患者さんに対し,インスリングラルギンを上乗せすることでベースラインのHbA1cが総じて2%前後改善し,重篤な低血糖を認めなかったことは注目に値しますね。

弘世 
どのインスリン療法も共通して,早期の治療の開始がよい結果につながります。
なかでも,インスリングラルギンは投与タイミングが効果の差に影響せず,患者さんは朝食前でも眠前でも打ちやすい時間に打てるため,コンプライアンスも維持しやすい特長があります(図 1)。
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SU薬+インスリングラルギン併用療法のレスポンダーがどういう方かを考えることも大事ですが,実際に試みてみるほうがより現実的で正しい解答が出ると思います。
半年ないし1年間で,SU薬の効果が発揮されているか否かが判断できるでしょう。

田中 
SU薬+インスリングラルギン併用療法では空腹時血糖を指標にして増量を図っていくわけですが,目標をいくつに定めればよいのか考えてみたいと思います。

以前,2,121例を対象にブドウ糖負荷試験を行ってFPGとインスリン値との関係を見ました。
FPGが正常型,境界型,糖尿病型の順で高値を示すのは当然ですが,軽症2型糖尿病患者ではFPGが高いのに空腹時インスリンもこの順に高くなることがわかりました。
高血糖を是正すべく,インスリン分泌が代償的に増加したからだと考えられます。

FPGと空腹時インスリンの関係を見ますと,FPG150から160mg/dLまではインスリン基礎分泌が代償的に上昇しますが,追加分泌の代償はFPG110mg/dL程度が限界と考えられます。
したがって,インスリングラルギン投与によりFPGを110mg/dL以下にすると,弱っていた追加分泌の代償機能の回復が期待できます。
 
そこで,毎食前血糖,特に朝食前血糖が110mg/dL以下となるようにインスリングラルギンの用量を調節し,追加分泌の代償機能の回復を図ります。
そのことによりSU薬の効果が改善し,食後の門脈内インスリンが上昇する可能性が出てきますので,その時点で食後血糖180mg/dL未満を目標に,今度は経口糖尿病薬を調節するというストラテジーも考えられるようになると思います。

弘世 
JUN-LAN STUDY6では,1日4回の頻回注射をしている方の基礎インスリンと追加インスリンの比率の検討を行っています。

明らかなピークがないインスリングラルギンは,低血糖のリスクが少ないので増量が容易です。
増量によりFPGをしっかりと抑えれば,食後血糖値の上昇も抑えやすく,追加インスリン量を減少できるでしょう。
 
試験では超速効型インスリン3回とインスリングラルギン1回の計4回の注射を施行している45例を,低血糖を起こさない範囲で追加インスリンを10%減量し,減量分と同量だけインスリングラルギンを増量した変更群と不変群に分け,血糖コントロールへの影響を検討しました。

20週後,基礎インスリン/追加インスリン比は不変群で0.6のままですが,変更群は1に近づき,グリコアルブミンは8週後から不変群に比べ有意に改善しました。
興味深いことに,追加インスリンが減少したにもかかわらず食後高血糖の改善例が多数認められました。
 
このデータからも基礎インスリンの重要性が読み取れます。
実地医家の先生方がインスリングラルギンの増量をお考えになる際は,治療目標値をFPG110mg/dL以下とし,3日間連続で測定した朝食前FPGの平均値に基づき2週間ごとにインスリングラルギンの投与量を調節されるようお勧めします。
朝食前FPGの平均値が110から140mg/dL未満であれば1単位/日,140mg/dL以上であれば2単位/日追加するといったアルゴリズムを活用し,空腹時血糖をしっかりと是正するということが重要だと思います。
 
インスリングラルギンは,1日1回の投与で明らかなピークを示さず24時間効果が持続する基礎インスリン製剤であることから,治療目標値に向かって積極的な治療が可能であると考えます。


出典 Medical Tribune 2008.4.24
版権 メディカル・トリビューン社


腎移植に拒絶反応抑える新手法 女子医大と順大、実施へ
2008年6月30日
移植された臓器への拒絶反応を抑える新手法での腎移植手術を、東京女子医科大と順天堂大のグループが近く始める。
免疫をつかさどるリンパ球の一種の「T細胞」に、特殊な処理を加えることで可能にした。
患者は手術直後以外は免疫抑制剤を飲まずにすみ、副作用を避けられる。長期的な成功率も高まると期待される。

計画しているのは、東京女子医科大の寺岡慧教授(腎臓外科)、順天堂大の奥村康教授(免疫学)ら。
手術する女子医大の倫理委員会の承認を今春得た。
親族から腎臓提供を受けて手術する患者のうち希望者に行う。
当面3~5組に絞り、慎重を期す。

T細胞は、ウイルスや細菌など異物を認識して攻撃する免疫機能をつかさどる。
移植臓器も「異物」と認識し攻撃するのが拒絶反応で、ひどいと臓器が全く機能しなくなる。
奥村教授らは、T細胞に働きかけ、移植臓器を自己のものと勘違いさせる特殊な抗体を特定。サルの実験で5年以上、拒絶反応を抑えられることを確認した。

新手法では、移植手術の前日に患者と提供者の血液からT細胞を採取。
両者を混ぜ、特殊な抗体とともに2週間培養して患者の体内に戻す。
このT細胞が調節役として働き、ほかのT細胞にも影響を与えて「勘違い」を連鎖させる。
一方、ウイルスや細菌などへの攻撃は衰えない。

通常の移植では、患者は免疫抑制剤を生涯飲む必要がある。
だが、新手法では、手術直後に限られる。体内でこのT細胞が働き始めたのを確認しながら次第に量を減らし、手術から約1カ月~1カ月半後に中止できる。

その後は免疫抑制剤を飲まずにすむため、腎障害など副作用の恐れがなくなる。
数カ月から数年で起きる可能性がある動脈硬化など慢性拒絶反応も避けることができる。
このため、手術から10年後も腎臓が機能する割合は、今より2割ほど高い9割程度にまで上がると期待される。
生体腎移植は年939件(06年)行われており、新手法が成功すれば影響は大きい。

新手法は、心臓、肝臓移植などにも応用が可能。
特に、慢性拒絶反応に苦しむ心移植が多い米国で注目されており、世界の移植医療を変える可能性がある。
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出典 朝日新聞・朝刊 2008.6.30
版権 朝日新聞社


腎臓移植では拒絶反応を防ぐため,できるだけ免疫学的に適合する提供者の臓器を使い,移植後は免疫抑制剤を使い続けなければならない。ところが,適合しない腎臓を移植した後でも免疫を抑制できる方法の研究が進み,臨床試験で5人中4人が免疫抑制剤の使用をやめることができた。この方法は,患者の骨髄の一部を破壊して一連の治療を行った後,提供者から臓器とともに骨髄も移植するというものだ。4人は数カ月~10カ月で免疫抑制剤が必要なくなり,腎臓は移植後2~5年以上,正常に機能しているという。現在,さらに20人を対象とした研究が計画されている。
http://medieigo.com/weeklytopic.php?id=80

原著
Experimental procedure induces tolerance to mismatched kidney transplants
http://www.massgeneral.org/news/releases/012308sachs.html

医学英語の勉強になる面白いサイトに遭遇しました。
英語で読もうWeekly Topics
(「メディエゴは医療関係者向けの英語学習サイトです」という副題がついています)
http://medieigo.com/index.php



読んでいただいてありがとうございます。
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他にもブログがあります。
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by wellfrog2 | 2008-07-01 00:05 | 糖尿病
2008年 06月 05日

どんな運動でもHbA1cを改善

どんな運動でもHbA1cをある程度改善  組み合わせれば有効性が増大
〔ニューヨーク〕 オークランド工科大学(ニュージーランド・オークランド)のNeil J. Snowling氏とWill G. Hopkins博士は,2 型糖尿病患者1,003例を含む27試験のメタアナリシスを実施し,「血糖コントロールのためには,どのような運動でもある程度の有益性が得られるが,このような運動を12週間以上続けると,HbA1c値を0.8%下げる総合的な効果があり,この有効性は他の2型糖尿病の治療アプローチである食事療法,薬剤治療,インスリン治療と同等である」とする結果をDiabetes Care(2006; 29: 2518-2527)に発表した。
Snowling氏らはまた,エアロビクス運動と筋力トレーニングを組み合わせることで,2 つの運動を別々に行うよりも効果が上がることを示すエビデンスも得ている。

HbA1c以外の数値にも注目
Snowling氏らがメタアナリシスを行った27試験の被験者は,糖尿病の罹患期間が4.9±1.8年になる55±7歳の症例で,うち55%が男性,71%が糖尿病の薬剤治療を受けていた。
全体的な試験開始前のHbA1cは8.6%で,試験開始前の空腹時血糖値は9.5mmol/Lであった。

同氏らは,HbA1c値に対する運動の効果だけでなく,空腹時血糖値,食後血糖値,インスリン感受性,空腹時インスリン値などに及ぼす効果にも注目し,「運動効果のほとんどは明らかに有益で,軽度〜中等度である」と述べている。

インスリン感受性に対する組み合わせ運動の効果を考察した試験はわずか1件しかなかったが,その1件で大きな効果があるとしているのは注目に値する。
しかし同氏らは,この試験が1件のみであるため,「組み合わせ運動がインスリン感受性に対して実際にそれほど有効なのか確定できない」とコメントしている。
また「エアロビクス運動との組み合わせ運動は,血圧に関して軽度〜中等度の効果をもたらしたことは明らかだが,筋力トレーニングの血圧に対する効果は不明である」としている。

同氏らのメタアナリシスからは,組み合わせ運動がHDLコレステロール(HDL-C)値に対してわずかながら有効であること,また,エアロビクス運動がトリグリセライドに対してもわずかに有益であることが判明した。
このほか,エアロビクス運動のみ,筋力トレーニングのみ,両者の組み合わせの3種類の運動タイプは,すべて血中脂質に対してわずかに有効か,有効性が不明であることも判明した。

組み合わせによる違いはわずか
エアロビクス運動は,筋力トレーニングに比べて総コレステロール値に対して小さいながらも明らかに効果を示した。
一方,組み合わせ運動はエアロビクス運動に比べて空腹時血糖値,体重,HDL-C値と拡張期血圧に対して小さいながらも明らかな効果を示した。

その他すべてのアウトカムに対しては,運動タイプの組み合わせによる違いは小さいか,あるいは不明であった。
運動に食事制限を加えてもほとんど相乗効果は得られなかったが,Snowling氏らは「食事制限の効果は,運動効果に直線的に加わるので,臨床医は安心してもらいたい」と述べている。

運動プログラムの期間とHbA1cに対する効果の関係はHb代謝回転時間と一致したが,それ以外では運動時間の総量がHbA1cなどの数値に与える効果は,あっても小さいものであった。

この知見は,ほとんどの症例において,運動プログラムで安定状態に達すると,その後は運動量を増やしても,それ以上の効果が得られないという知見と合致している。
さらに,強度な運動プログラムを組んだ場合の効果も不明であった。

これは運動の強度を増すと,コンプライアンスが下がることに関係しているかもしれない,と同氏らは見ており,「いずれにせよ,強度が異なっても有効性はほとんど変わらないということだ」と付け加えている。

オタワ大学(カナダ・オタワ)のNormand G. Boulé氏らは,2型糖尿病における血糖管理と体重に対する運動の効果を考察したメタアナリシス(12件の比較試験が対象)の結果をJAMA(2001; 286: 1218-1227)に発表した。
同氏らは「運動トレーニングは,糖尿病の合併症リスクを減少させ,HbA1cも低下させる。しかし体重に関しては,運動群と対照群を比較して有意な変化は見られなかった」と述べている。

さらに,運動療法追加後の重み付け平均HbA1c値は,対照群の8.31%に比べて運動群では7.65%と低かった。
Snowling氏らは今回のメタアナリシスで,Boulé氏らによる研究発表以来,エアロビクス運動,筋力トレーニング,組み合わせ運動に関する新たな研究が数多く行われてきたと説明している。

中年期発症は要注意
ジョンズホプキンス大学ブルームバーグ公衆衛生学部(メリーランド州ボルティモア)のElizabeth Selvin博士らは,施設に入所していない高齢者2,809例の全国横断的典型調査から得られたデータを分析し,被験者が糖尿病と診断されたときの年齢が40〜64歳か,65歳以上かにより,全く異なる特徴を持つグループに分類されるという結論をDiabetes Care(2006; 29: 2415-2419)に発表した。

同博士らは「糖尿病の発症が中年期か,老齢期かの違いにより,この疾患の負担量が異なる 2グループに分類できると考えられ,治療目標も変わってくる可能性がある。
中年期発症糖尿病の高齢患者では,高齢になってから発症した患者に比べて,微小血管疾患の負担量はかなり高くなるが,大血管疾患の負担量は同等である」と述べている。

中年期に糖尿病を発症した高齢患者は,高齢になって発症した患者や,高齢ではない糖尿病患者に比べて,血糖管理がはるかに劣悪である。
HbA1c7%以上の患者の比率は,中年期発症の場合は59.9%であるのに対して,高齢期発症の場合は41.6%,高齢ではない糖尿病患者の場合は55.3%であった。

40〜64歳に糖尿病と診断された患者は,65歳以上の高齢になってから診断された患者に比べて,網膜症などの微小血管疾患が多く,血糖管理もはるかに悪い。
そのため,筆頭研究者の同博士は「40歳代,50歳代で2型糖尿病を発症した場合と,60歳代になってから発症した場合で,異なる治療ガイドラインを設ける必要があるだろう」と述べている。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4022181&year=2007


出典 Medical Tribune 2007.5.31
版権 メディカル・トリビューン社

<番外編>
■ 犬吠様咳嗽」の読み方
小児の代表的疾患であるクループ症候群(急性喉頭炎)で認められる「犬吠様咳嗽」。
「ケンボウヨウ」ではなく「ケンバイヨウ」が正しい。
喘鳴は「ゼイメイ」ではなく,正しくは「ゼンメイ」と読む。
日本医事新報 No.4363 2007.12.8 P95

■ メタボリックシンドロームの原因は肥満でなく過食
http://www.drakahige.com/NEWS/DAILY/2008/2008042804.shtml
肥満そのものがメタボリックシンドロームの原因であると考える人が多いが、心臓や肝臓などの臓器が損傷される原因は脂肪細胞以外の臓器に脂肪が漏出することであり、脂肪分子が脂肪細胞内にとどまれば、有害な漏出は抑えられるという。
(HealthDay News 4月18日)


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by wellfrog2 | 2008-06-05 00:31 | 糖尿病