井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 10月 01日

CKDの脂質管理としてのスタチン その2(2/2)

慢性腎臓病の脂質管理におけるスタチンの役割 (後編)
ハイリスク患者ではより厳格なLDL-Cの管理を

斉藤 
続いて,LDL-Cをどこまで下げるべきかについてお話を伺います。CKDにおけるLDL-C管理目標値は,NKFのK/DOQI(Kidney Disease Outcomes Quality Initiative)ガイドラインにおいて100 mg/dL未満,日本腎臓学会によるCKD診療ガイドにおいて120mg/dL未満(可能であれば100mg/dL未満)と設定されていますが(),この目標値について,ご意見をお聞かせください。
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Campese 
K/DOQIガイドラインの目標値は,介入試験によるエビデンスに基づいた数値ではなく,疫学研究のデータにCKD患者をハイリスク群として当てはめたに過ぎません。
したがって,エビデンスに基づいてガイドラインを見直す必要があると思います。
TNTでは,より低いLDL-C値を達成した群で心血管イベントや腎機能への好影響が認められました。
こうした積極的脂質低下療法の影響はGREACE(Greek atorvastatin and coronary heart disease evaluation)試験4)でも認められています。
これらのエビデンスに基づき,LDL-Cの管理目標値は少なくとも100mg/dL未満とすべきだと思います。
そして,特に著明な蛋白尿を呈するCKD患者に関しては,管理目標値を70mg/dL未満とし,より積極的な脂質低下を図るのが理想的だと思います。

斉藤 
先生はすべてのCKD患者に対して,LDL-Cを70mg/dLまで下げたほうがよいとお考えですか。

Campese 
リスクの低い患者も含めて70mg/dLまで下げるのが妥当であるかはエビデンスがないのでわかりません。
しかし,少なくともハイリスクCKD患者においては,LDL-Cを100mg/dLよりも70mg/dLまで下げることにより,大きなメリットがあると考えています。

斉藤 
日本では欧米のように高用量のスタチンを投与できないという問題があります。

Campese 
通常用量でLDL-C値70mg/dL未満を達成できるならば,それに越したことはありません。

斉藤 
日本では依然として「コレステロールは生体の重要な構成要素であるため,下げ過ぎはよくない」という考えが根強くありますが,これについていかが思われますか。

Campese 
介入研究においてはそうした事実はありません。
LDL-Cを十分下げることの有用性は,スタチンによるメタ解析でも裏付けられています。
特にリスクのある症例においては「the lower, the better」だと思います。

早期からの脂質管理が重要
斉藤 
血液透析患者の場合,HDLコレステロールの著明な低下が見られるものの,総コレステロールやトリグリセリドはさほど高くないことも多いと思います。
ステージ3までのCKD症例に対するスタチンの有用性についてはエビデンスがありますが,ステージ4~5のCKD症例に対するスタチンの投与についてはいかがお考えですか。

Campese 
透析中の2型糖尿病患者を対象に,スタチンの心血管イベントに対する有効性を検討した4D(Deutsche Diabetes and Dialyse Studie)では,心血管イベント発症抑制作用は確認されませんでした。
また,ESRDに対してスタチンの投与を控えるべきか否かについてはエビデンスがありません。
しかし,個人的には,心血管リスクの高いESRD患者に対しては,スタチンを使用したほうがよいと考えています。
少なくとも現時点のエビデンスに基づいて言えるのは,CKD患者に対しては,ESRDになるよりさらに早い段階から,スタチンによるLDL-C管理を開始すべきだということです。

CKDのLDL-C管理には積極的にスタチンを
斉藤 
CKDの診療においては,腎臓専門医とかかりつけ医の連携が不可欠ですが,腎臓専門医に紹介するタイミングを教えてください。

Campese 
ステージ3以上のCKD患者については,腎臓専門医へ紹介し,適切な診療を仰ぐべきだと思います。

斉藤 
最後にCKDにおける脂質管理に関して,日本の実地医家の先生方にメッセージをお願いします。

Campese 
TNTでも明らかにされたように,CKD患者へのスタチンによる積極的LDL-C低下療法は,心血管保護のみならず腎にも好影響を与えることが示されています。
CKD患者に対して,血圧値,血糖値のみならずLDL-Cの値に注意し,高値であれば積極的にスタチンを使用してLDL-Cをコントロールしていただきたいと思います。

(文献4)J Clin Pathol 57: 728-734, 2004


出典 Medical Tribune 2008.9.25
版権 メディカル・トリビューン社




<きょうの一曲> Without You

I can't live (without you)
http://jp.youtube.com/watch?v=orA_c2M-5KE&feature=related

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by wellfrog2 | 2008-10-01 00:20 | 腎臓病
2008年 09月 30日

CKDの脂質管理としてのスタチン その1(1/2)

慢性腎臓病の脂質管理におけるスタチンの役割 (前編)
慢性腎臓病(CKD)は,米国腎臓財団(NKF)より提唱された疾患概念で,「尿蛋白陽性などの腎疾患の存在を示す所見」あるいは「腎機能低下[糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2㎡未満]が3か月以上持続する状態」と定義されている。
CKDは末期腎不全(ESRD)発症の危険因子であるばかりでなく,心血管疾患発症の重要な危険因子であることからも,世界規模で対策が進められている。
 
アトルバスタチンをはじめとするHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)は,近年の大規模臨床試験においてLDLコレステロール(LDL-C)を低下させることに加え,eGFRを上昇させることが明らかにされつつある。 

福岡大学腎臓・膠原病内科主任教授
斉藤 喬雄 氏
Professor, Chief, Division of Nephrology/Hypertension, Keck School of Medicine,University of Southern California
Vito Campese氏
 
CKDは心血管イベントの独立した危険因子
斉藤 
CKDの発症頻度は,近年日本においても増加しています。
久山町研究では,1974年から2002年にかけて男女ともにCKDの発症頻度が有意に増加していることが示されました(図1)。
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その要因として,食生活をはじめとする生活習慣の欧米化により,肥満,高コレステロール血症,耐糖能異常などの代謝性疾患が大幅に増加したことが挙げられています。
 
また,同研究において心血管疾患の累積発症率を12年間にわたり前向きに追跡した結果,CKDのある群はCKDがない群に比べて心血管疾患の発症率が有意に高く(図2),CKDが心血管疾患の独立した危険因子であることが明らかとなりました。
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Campese 
CKD患者において心血管疾患のリスクが高いことは,近年のスタチンの大規模臨床試験においても明らかにされています。
例えば,TNT(The Treating to New Targets)において,冠動脈疾患(CHD)を有するCKD患者の心血管イベントリスクは,CKDのない患者に比べて有意に高いことが示されています(文献1)。
これらはいずれも,久山町研究を裏付ける知見です。CKDが心血管イベントの危険因子であることに関しては,今や世界中でコンセンサスが得られていると言えるでしょう。

CKDと脂質異常症
斉藤 
CKDは以前より高血圧や糖尿病との関連が指摘されています。
しかし,近年,脂質との関連性も注目され始めました。
CKDにおいては,心血管イベント発症リスクが高いことからも厳格な脂質管理が必要となります。
CKDに対するスタチンのエビデンスはいかがでしょうか。

Campese 
CKDにおけるスタチンの有用性は,高血圧患者におけるLDL-C低下療法による冠動脈イベント発症に与える影響を検討したASCOT-LLA(Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial-Lipid Lowering Arm)(文献2)やCHD症例における積極的LDL-C低下療法による心血管イベントに与える影響を検討したTNTのサブ解析(文献1)などで報告されています。

LDL-C低下療法の腎機能および蛋白尿に与える影響
斉藤 たいへん興味深い知見ですね。
CKDに対するスタチンのLDL-C低下療法は,腎保護の面からも注目されていますが,これに関してはどのようなエビデンスがありますか。

Campese 
TNTでは,CKD症例および腎機能正常例のいずれにおいても,アトルバスタチンのLDL-C低下療法により推定糸球体濾過量(eGFR)が試験開始前に比べて上昇しました(図3)。
また,その上昇率は,積極的にLDL-Cを管理したほうが高いことがわかりました。
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われわれもCKD患者56例を対象とした前向き試験において,アトルバスタチンによるLDL-C低下療法が蛋白尿の排泄を抑制することを報告しています。
同試験では,蛋白尿を有するCKD合併高コレステロール血症患者にレニン‐アンジオテンシン系阻害薬で血圧をコントロールしたうえで,アトルバスタチン投与群と非投与群に無作為に割り付けて1年間観察しました。
その結果,アトルバスタチン群においてLDL-Cが203mg/dLから121mg/dLまで低下し,尿蛋白排泄量も有意に減少しました(図4)。
CKDの進行が抑制されたのではないかと考えます。
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斉藤 
スタチンによる腎保護の機序としては,どのようなことが考えられるのでしょうか。

Campese 
腎細胞の炎症反応や線維化は,脂質異常により促進されますので,スタチンによる腎保護作用の一部は脂質低下を介したものだと考えられます。
一方で,スタチンは,脂質低下とは独立した機序で腎保護作用を表すこともin vitroの実験や腎疾患モデル動物を用いた研究から認められています。
スタチンには,炎症性サイトカインやケモカインの発現抑制,メサンギウム細胞や血管平滑筋細胞の増殖抑制,血管内皮機能改善などのさまざまな影響が知られています。
例えばCooperらは,部分腎摘ラットにおいて,アトルバスタチンの投与により蛋白尿や糸球体硬化が抑制され,同時に腎臓のTGFβ1遺伝子発現やマクロファージ集積が抑制されたことを報告しています(文献3)。

(文献1)J Am Coll Cardiol 51: 1448-1454, 2008
(文献2)LANCET 361: 1149-1158, 2003
(文献3)Kidney Int 56 (Suppl 71): S31-S36, 1999


出典 Medical Tribune 2008.9.25
版権 メディカル・トリビューン社


<自遊時間>
最初CKD(kidney)という言葉を聞いた時、どうしてCRD(renal)でないかと違和感がありました。
COPD(pulmonary)は形容詞です。
そんな中、患者さんで元高校英語教師(直接は教わってはいませんが、偶然にも私の出身高校の教師もしてみえた方で最近「英語ことわざ」関係の本も出版されました)が来院された時にこのことを訊いてみました。
即座に「名詞の形容詞化は普通にあること。たとえばboy friendとか」という返事がかえってきました。
目から鱗(うろこ)でしたが、でもなんだかまだ心にシコリが残ります。
(英語圏で使われているので何の文句もないのですが)


<きょうの一曲> 「それが大事」
YouTube - 大事MANブラザーズバンド / 「それが大事」LIVE
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by wellfrog2 | 2008-09-30 00:19 | 腎臓病
2008年 08月 26日

糖尿病の動脈硬化対策

第40回日本動脈硬化学会の記事で、糖尿病と動脈硬化の関連について勉強しました。

糖尿病の動脈硬化対策に向けて―注目すべき因子探る
糖尿病やインスリン抵抗性,メタボリックシンドロームに端を発する動脈硬化が増えてきている。
つくば市で開かれた第40回日本動脈硬化学会(会長=筑波大学大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科・山田信博教授)のシンポジウム「糖尿病と動脈硬化症」(座長=自治医科大学内分泌代謝学部門・石橋俊教授,千葉大学大学院医学研究院臨床遺伝子応用医学・武城英明教授)から,動脈硬化の危険因子に関する検証や血管内皮機能障害を標的にした検査法について報告された。


■ 適切管理にはわが国独自のエビデンス必要
糖尿病は動脈硬化疾患を大幅に増加させるが,その対策を考えたとき,肥満度など病態背景が異なる欧米の研究のエビデンスを日本人にそのまま当てはめることには問題がある。
お茶の水女子大学人間文化創成科学研究院生活習慣病医科学の曽根博仁准教授や会長の山田教授らは,日本人2型糖尿病患者を対象 に現在進行中のJapan Diabetes Complications Study(JDCS)の登録患者の解析から,欧米の糖尿病患者の心血管危険因子とは異なる部分があることや,現行のメタボリックシンドローム診断基準が,わが国の糖尿病患者の心血管疾患の予知マーカーとしては使いにくいことを見出した。

JDCSで欧米との違いが明らかに
糖尿病が冠動脈疾患(CHD)発症のリスクを上げることに疑う余地はない。世界37地域のコホートのメタ解析でも,糖尿病患者は非糖尿病者より男性で2倍,女性で3倍強,CHDのリスク増加が見られ,このことはアジア,非アジアで違いがないことが報告されている。 

曽根准教授は今回,わが国の2型糖尿病患者に対する治療法の開発を目的とした大規模介入研究JDCS(全国の59糖尿病専門施設の外来患者約2,000人を登録;登録時平均年齢59歳,罹病期間11年)の解析結果の一部を紹介したが,同研究のCHDと脳卒中の絶対発症率を見ても,日本の一般人口と比較して2~3倍高かった。
さらに,脳卒中が多いというわが国の一般的な傾向とは逆に,糖尿病ではCHDが上回るという結果となっており,糖尿病においては脳卒中だけでなくCHD対策も重要であるとした。
 

JDCSでは,脳卒中の場合,HbA1cおよび血圧の上昇がもたらす発症リスクの上昇度はほぼ同じであり,わが国の糖尿病患者に対して血圧をコントロールすることは血糖コントロールと同程度に重要であることが示され,一方,CHDに関してはHbA1cよりもむしろLDLコレステロール(LDL-C)上昇のほうが発症リスクを高めたという結果が示されており,糖尿病患者のLDL-Cを是正することは血糖コントロールと同等以上にCHD対策として効果的である可能性が示された。
CHD,脳卒中を合わせた危険因子では,LDL-C,トリグリセライド(TG),血圧,HbA1c,喫煙といった動脈硬化の古典的危険因子がそろうことになったという。
 
ところで,日本,英国,米国の糖尿病患者の臨床的特徴を見ると,
欧米と比較して,わが国の糖尿病ではBMIが著明に低いことがわかり(各23.1,29.4,32.3),インスリン抵抗性をはじめとする病態背景の違いが,CHDや脳卒中の危険因子にも影響を及ぼしている可能性が考えられる。 

事実,JDCSとUKPDSから導かれたCHD発症リスクの上位3位は,1位がLDL-C,3位がHbA1cであることは共通するものの,英国の2位がHDCコレステロールであるのに対して,わが国ではTGとなっており,同准教授は,わが国独自のエビデンスに基づく対策が必要だと強調した。 

なお,メタボリックシンドロームの診断基準がわが国の糖尿病患者の心血管疾患の予測マーカーになるかという問題については,わが国と同様に腹部肥満を必須項目とする国際糖尿病連盟(IDF)の基準に当てはめた限りでは,CHDおよび脳卒中ともに予測できない結果が示されたという。

■ CAVIにより早期血管機能異常の把握が可能
動脈硬化の進展を考えたとき,血管内皮機能異常の位置付けはきわめて重要である。
東邦大学医療センター佐倉病院内科学講座・宮下洋准教授は,器質病変だけでなく,
早期血管機能異常の検出が期待できる検査法としてcardio ankle vascular index(CAVI)を紹介した。
血管機能の定量分析が可能という同検査の特徴は,定量的治療ストラテジーの確立にもつながると思われた。


器質病変の検出も
従来の心電図,心エコー,内膜中膜複合体厚(IMT)測定では血管内皮異常の把握は難しい。
特に健診受診者の多くは器質病変のない段階のため,各種危険因子を測定することで対処するほかない現状にある。
 
宮下准教授は,
(1)測定が容易
(2)血圧に依存しない
(3)再現性に優れる
(4)血管機能の定量的解析が可能
―という脈波伝播速度(PWV)とStiffness parameterβの欠点を解消した特徴を有するCAVIを用いて検査した結果を報告。

CAVIはIMTよりも冠動脈の重症度判定に有用であることがわかったほか,剖検ができた3例では生前のCAVIが高値であるほど大動脈病変重症例であることが確認でき,器質病変の検出は可能であることがわかった。
一方で,血流依存性血管拡張反応(FMD)が低下するほど,CAVIは高値を示す相関があることも明らかとなり,血管内皮機能異常も正確に把握可能だったという。
 

そこで同准教授は,健診受診者1万4,728人を対象に,正常CAVI値の設定を行うとともに,早期血管異常検出の可否,早期血管異常の影響因子などを明らかにする試みを行った。
CAVI値と各種背景因子の関連を見ると,年齢と性のr値が高く,両因子を調整した共分散解析により,今回対象とした受診者から5.06+0.06×年齢(男性:+0.14,女性:-0.14)というCAVI正常値が導かれた。
つまり,CAVI値0.06の上昇で血管年齢は1歳老い,同年齢では男性の血管年齢が5歳上ということになるという。
この違いは男女の平均寿命の違いと一致しており興味深い。
 

また,BMIや耐糖能異常,血圧,LDLコレステロール,トリグリセライド(かつ/または HDLコレステロール)など動脈硬化危険因子の重複数が多いほど,CAVI値は有意に高くなり,年齢で調整すると,耐糖能異常と高血圧がCAVIの上昇(=血管機能異常)に重大な影響を与える因子であった。これら両因子の異常がある場合,血管年齢は各5歳老いることになる。
さらに,メタボリックシンドロームではそうでない場合に比べてCAVI値が高値であることから,CAVIにより早期血管機能異常の検出が可能なうえ,耐糖能異常と高血圧が早期血管機能の悪化に寄与することが示唆された。
なお,各危険因子を定量的に分析したところ,収縮期血圧10mmHg,HbA1c1%上昇でそれぞれ血管年齢が2歳老いることがわかったが,同准教授は「例えば血圧148/80mmHg,HbA1cが7.9%の人のCAVI値が8.4ならば,血圧を20mmHg下げたとき,HbA1cを2%下げたときのCAVIは0.188,0.1948と算出でき,定量的治療ストラテジーとしての応用も可能となる」と期待を述べた。

■ 2型糖尿病のCKDは動脈壁硬化に関連
慢性腎臓病(CKD)と心血管イベントとの関連を認めた報告は多いが,糖尿病患者の動脈硬化指標とCKDの関連は明らかでない。
大阪市立総合医療センター代謝・内分泌内科の細井雅之部長は,CKD発症は2型糖尿病において動脈壁硬化に関連し,アルブミン尿の有無が冠動脈の石灰化に関連することを示唆する知見を明らかにした。


アルブミン尿と石灰化に関連
細井部長は今回,2型糖尿病においてCKDとプレクリニカルな指標との関連を調べるために,2型糖尿病423例(45~75歳,平均61.7歳)の冠動脈石灰化指数(CCS)と脈波伝播速度(PWV)と腎機能との関連を見た。
推算系球体濾過量(eGFR)はMDRD式を用い(30mL/分/1.73㎡未満は除外),CCSに影響を与える血清クレアチニン(Cr)1.1mg/dL超,およびABI 0.9未満の症例も除外している。
 
対象の平均像は,血圧131/77mmHg,HbA1c 8.9%,総コレステロール(TC)205mg/dL,HDLコレステロール(HDL-C):56mg/dL,トリグリセライド157mg/dL,尿中アルブミン114.5mg/gCr,eGFR 82.5mL/分/1.73㎡,上腕―足首間のPWV(ba PWV)1,726cm/秒,CCS 221。
入院患者が多くを占めたため,血糖やbaPWVが高値だったほか,CCSは広範囲に分布していたため,log分析値を使用した。
 

まず,アルブミン尿との関連を見ると,baPWVはその有無で有意差は認められなかったが,石灰化についてはアルブミン尿が認められた群で有意に高いスコアを示していた。 

CKDステージ別に患者背景を検討したところ,血圧とHbA1cにはステージ間の差はなかったが,年齢に差が見られたほか(加齢とともにステージ進行),ステージ進行とともに,
(1)尿中アルブミン値は高値傾向
(2)baPWVは有意に高値
(3)logCCSはステージ3のみで有意に高値

―だった。
 
また,臨床の場ではアルブミン尿がなくてもCrが上昇したり,Crが低値でもアルブミン尿や蛋白尿が著明に認められる症例が存在するが,ステージングとアルブミン尿との関連を見ると,baPWVはCKDステージの進行とともに上昇する,eGFRと関連が深い因子であることがわかった。
一方で,logCCSはアルブミン尿の影響の強さが示された。
 
重回帰分析の結果,糖尿病患者のbaPWVは収縮期血圧,TC/HDL-C比,eGFRが有意の関連因子として,CCSはアルブミン尿の有無だけが有意の因子として浮かび上がった。
 
以上から,同部長は「2型糖尿病においては,CKD発症は動脈壁硬化に関連し,アルブミン尿の有無が冠動脈の石灰化に関連していると考えられた」と述べた。

出典 Medical Tribune 2008.8.14
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by wellfrog2 | 2008-08-26 00:18 | 糖尿病
2008年 06月 26日

充実するCKD関連領域の診療指針

『CKD診療ガイド高血圧編』 『CKD診療ガイドライン』など続々
慢性腎臓病(CKD)の関連領域の診療指針が充実しつつある。
昨年(2007年),日本腎臓学会から発刊された『CKD診療ガイド』は医学書としては異例の14万部のベストセラーとなったが,同ガイドの高血圧に関する記述をより詳細にした『CKD診療ガイド高血圧編』が近日発行される。
また,専門医向けの『CKD診療ガイドライン』も今秋発行予定だ。
一方,厚生労働省の「進行性腎障害に関する調査研究班」(以下,厚労省研究班)では,IgA腎症などCKDを構成する各種腎疾患に関する診療指針の改訂を進めている。


専門医向けにエビデンスに基づいた「ガイドライン」を作成
第51回日本腎臓学会(5月30~6月1日,福岡市,総会長=福岡大学教授・斉藤喬雄氏)の特別企画「進行性腎障害における診療指針の作成」で,CKD関連領域における各種診療指針の作成・改訂状況が報告された。

昨年,日本腎臓学会が発行した『CKD診療ガイド』はベストセラーになったが,同学会では今秋,『CKD診療ガイドライン』を発行する予定である。
 
東京医科歯科大学(腎臓内科)教授の佐々木成氏によると,「診療ガイド」はかかりつけ医(一般医)が対象で,専門家のコンセンサスに基づいて記述されるのに対し,「診療ガイドライン」は専門医が対象で,おもにエビデンスに基づいて記述されるという。
診療ガイドラインと診療ガイドが並存する実例としては,日本糖尿病学会の『糖尿病診療ガイドライン』と『糖尿病治療ガイド』がある。

『CKD診療ガイドライン』は,テーマごとにエビデンスレベル,ステートメント,解説,アブストラクトテーブルを記載。
ステートメントでは,勧告の強さを4段階で表記する。
今秋,書籍として出版するほか,日本腎臓学会誌に掲載。
また,日本腎臓学会のホームページでも公開する。
3~4年後をめどに改訂を行う予定だという。


「高血圧編」では降圧薬の選択を明確化
全体で116ページの『CKD診療ガイド』だが,「降圧療法」に充てられたのは3ページ。
そこで,日本腎臓学会では日本高血圧学会とともに「CKD対策合同委員会」(委員長=名古屋市立大学教授・木村玄次郎氏)を組織し,より詳しく使いやすい内容のガイドの作成を進めてきた。
近日中に『CKD診療ガイド高血圧編』として発刊される。

委員の1人,防衛医科大学校(内科2部門)准教授の熊谷裕生氏は,『CKD診療ガイド高血圧編』で新たに詳述した重要なテーマとして降圧薬の選択を挙げる。
『CKD診療ガイド』では,ACE阻害薬およびアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)を推奨し,降圧目標が達成できない場合は他剤(Ca拮抗薬や利尿薬など)併用の必要性を指摘していたが,『高血圧編』では,選択法をより明確に記載する方針である。

すなわち,
(1)第1選択薬:ACE阻害薬またはARB,
(2)第2選択薬:利尿薬とCa拮抗薬を同等に位置付ける。体液過剰(食塩感受性)が認められる場合は利尿薬,心血管疾患(CVD)の危険因子を多数保有する場合はCa拮抗薬,
(3)第3選択薬:第2選択薬と逆の薬剤
―とのステップを提案する。
ただし,腎硬化症や間質性腎障害では,推奨する降圧薬の種類を問わないという。


原疾患別診療指針の改訂も進む
一方,CKDを構成する各種原疾患についても,診療指針の作成が進められている。
最近まで厚労省研究班の班長として診療指針の作成を主導し,同セッションの司会を務めた順天堂大学(腎臓内科学)教授の富野康日己氏によると,厚労省研究班では,IgA腎症,急速進行性糸球体腎炎(RPGN),難治性ネフローゼ症候群,多発性嚢胞腎の4疾患の診療指針を作成しており,改訂作業を重ねている。
今後,改訂案は日本腎臓学会のホームページに掲載し,学会員の意見を聞いた後,正式発表されるという。さらに,日本腎臓学会では関連学会と合同で糖尿病性腎症の診療指針も新たに作成中で,腎硬化症については『CKD診療ガイドライン』のなかで取り上げられる。

課題は診療指針間の整合性である。
原疾患別の診療指針と「CKD診療ガイド(ガイドライン)」,あるいは関連学会のガイドラインなどとの間で,記載内容に異同があれば利用する医師を混乱させることになるだけに,指針作成者間の連携が求められている。

CKD診療の目的は,末期腎不全への進展抑制とCVDの発症予防。
診療指針が充実し,整備されることで,これらの目標達成に近づくことが期待される。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0806/080610.html

国を挙げたCKD対策が始まる
-積極指導による全国規模の介入試験を実施
http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0804/080408.html


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柏本龍太『花鳥風月』
http://page19.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/x37776836

<自遊時間>
日本医事新報 No.4391 2008.6.21 P14
厚労省課長が「総合科」創設に改めて意欲
日医の藤原氏、国主導の構想に反対表明

記事の内容を読むと厚労省と日医が全くの対立関係にあることが分かります。

同床異夢ならぬ異床異夢。
日本の医療は崩壊の真っただ中です。


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by wellfrog2 | 2008-06-26 00:14 | 腎臓病
2008年 06月 17日

CKD+高血圧・糖尿病でCADリスクは6.5倍に

第51回日本腎臓学会(2008年5月30日〜6月1日 福岡)の記事で勉強しました。

GFRはCADの重症度に関連、早期の対策を
CKD+高血圧・糖尿病でCADリスクは6.5倍に

 
慢性腎臓病(CKD)に高血圧と糖尿病が合併していると、合併していない場合に比べ、冠動脈疾患(CAD)の発症リスクは6.5倍にも跳ね上がることが分かった。
第51回日本腎臓学会のシンポジウム4「メタボリック症候群による腎障害の機序と対策」で、福岡大学心臓・血管内科学教授の朔啓二郎氏が報告したもので、「
早期からCKDの有無に注目し、高血圧や糖尿病を合併している場合は、冠動脈造影CTなどを行い、イベント発生の予防に努める必要がある>」と朔氏は強調した。

朔氏らは、CKDとCADでは、同じような機序でHDLコレステロールが低下している点に注目、CKDとCADに、メタボリック症候群の診断基準の4因子(内臓脂肪、高血圧、脂質異常、糖尿病)がどう関与しているかを検討した。
 
福岡大病院心臓・血管内科を受診した、CADが疑われる313人を対象に冠動脈造影CTを実施し、冠動脈狭窄度や石灰化スコアを求めた。
また、CTにより内臓脂肪や皮下脂肪の面積も求めた。
腎機能障害の重症例(Cr≧1.5mg/dL)や透析中の患者、心機能低下症例(EF≦40%)など、腎機能、心機能が大きく低下している患者は除外した。

 
患者背景を、CKDあり(218人)とCKDなし(95人)に分けて比較したところ、CKDなしではGFRが49mL/min/1.73㎡で、CKDありの76mL/min/1.73㎡に比べ、有意に低値だった。年齢(CKDなし63歳、CKDあり68歳)、高血圧(同68%、79%)、高尿酸血症(同7%、25%)にも有意差が認められたが、腹囲や内臓脂肪面積には有意差はなかった。

また、冠動脈病変枝数が多いほど、メタボリック症候群の4つの因子の数も多かった。
病変枝数が多いとGFRも有意に低く、GFRがCADの重症度に関連していることが示された。
 
次に、CADありとCKDありの症例について、メタボリック症候群の4因子の関与を検討した結果、CKDには高血圧と糖尿病が関与していた(有意差あり)。
CADにも高血圧が関与し(有意差あり)、糖尿病とも関連がみられた。
さらに、冠動脈の石灰化の進展にはCKDの有無、GFRとの関連性も認められた(いずれも有意差あり)。

 
そして、CKDの患者で、高血圧も糖尿病もない患者のCADのリスクを1とすると、CKDに高血圧を合併した場合の相対リスクは4.0倍、糖尿病の合併は1.8倍、両者を合併していると6.5倍に上ることが明らかになった。
以上から、朔氏は「
ローステージのCKDでも、高血圧や糖尿病が合併すると、CADが加速される」と注意を喚起した。

さらに、朔氏らはCKD患者では、HDLコレステロールもLDLコレステロールも低下する低脂血症になっているのに、CADリスクが高まる理由を調べた。
 
血漿リポ蛋白のプロフィールをキャピラリ等速電気泳動(cITP)法という独自の手法で解析したところ、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)のうち、small dense LDL(超悪玉)分画の、陰性荷電LDL(超超悪玉)だけが増加していることを突き止めた。
 
朔氏は「HDLコレステロールの低下に加え、この超超悪玉LDLコレステロールの増加が、CKDでは問題だ。
これに対しては、高用量のスタチンが有効との報告があり、CADとCKDは同じような病態ととらえることもできる。
それだけに、早期からのCKD対策が求められる」と述べた。
出典 日経メディカル オンライン 2008.6.2
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jsn2008/200806/506669.html
版権 日経BP社

<コメント>
患者背景を、CKDあり(218人)とCKDなし(95人)に分けて比較したところ、CKDなしではGFRが49mL/min/1.73㎡で、CKDありの76mL/min/1.73㎡に比べ、有意に低値だった。
・・・?

<参考サイト>
CKDガイドライン
http://www.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/CKD-web070926_30.pdf
CKDにおける脂質異常症治療目標については,日本人のエビデンスは不十分であり,今後の検討課題である。


慢性腎臓病
http://www.nara.med.or.jp/uda/kouennaiyo19.9.8.htm
日本腎臓学会の「CKD治療ガイド」では、CKD患者の脂質管理目標値として、LDL-C<120mg/dL (できれば<100mg/dL)が示されました。GFRが低下するとCKDでは、LDLの上昇よりも、VLDL、IDLなどのTG-rich リポ蛋白の上昇が顕著ですので、これらの総和として Non-HDL-C (総コレステロール マイナス HDL-C)を指標にする方法も考えられ、米国腎臓財団のガイドラインでは、LDL-C<100 mg/dL と並んで Non-HDL-C<130 mg/dL が挙げられています。


メタボリックシンドロームは慢性腎疾患の有意な危険因子
http://epi-c.jp/entry/e001_0_0147.html
CKDの累積発症率は,非MetS群に対し,MetS群では有意に高かった。
MetS診断基準に該当する要素が多いほど,CKDの累積発症率は増加した。
MetSとCKDとの相関に対し,血圧コントロールが及ぼす影響はわずかである。


<追記>

日本腎臓学会が新たな腎臓機能の評価推算式(eGFR式)を発表

http://www.gclew.com/press/20080605_02.php1.
新しいeGFR式について
日本腎臓学会(事務局:東京都文京区、理事長:槇野博史)は、2008年5月30日開催の第51回日本腎臓学会学術総会において、腎臓機能を評価するための新たな推算式(eGFR式)を正式に発表した。
この推算式は、腎臓がどれくらい機能しているかを評価・推定するために利用される数式である。従来は米国人向けに作成されたMDRD注2という方式の計算式に日本人係数をかけて腎機能の評価を行っていたが、より精度をあげるために、日本人独自の新たな計算式を作る必要があった。
そこで学会内に特別プロジェクト「日本人のGFR推算式」を結成し、1年かけて作成に取り組んだ。

新たな推算式:
eGFR(ml/分/1.73m2) = 194×Cr-1.094×年齢-0.287(男性)
eGFR(ml/分/1.73m2) = 194×Cr-1.094×年齢-0.287×0.739(女性)

この推算式は、血液検査の項目の一つである血清クレアチニン値(Cr)の数値と、患者の年齢を代入すれば、その患者の腎臓が何%機能しているかが算出できる仕組みである。


2. eGFRで診断を行う意義
従来、腎機能の評価にはCr値が用いられてきたが、年齢・性別による筋肉量の多寡を考慮せずに一律で基準値を設定しているために、不正確な評価となってしまう問題があった。たとえばCr値が1.00mg/dLの男性は、全員異常なしと診断されていたが、eGFR式の利用により、同じCr値でも20歳男性ならば、eGFR82.1ml/分/1.73m2(=健康に問題ない軽度の腎障害)、70歳男性ならばeGFR57.3ml/分/1.73m2(=中程度の腎機能低下)と、より細分化した正確な診断が行える《さらに70歳女性では同じCr値1.00でもeGFRは42.4ml/分/1.73m2となり、すでに腎機能は半分以下にまで低下していることになる》。
このようにCrではなくeGFRで腎機能を評価することは極めて重要であり、現在国際標準となりつつある。日本腎臓学会ではeGFR式の普及に努めており、普及啓発に連携している人間ドック学会では平成20年度からeGFRを用いた腎障害診断を行っている。
日本腎臓学会は、「このたび、より精度の高いeGFR式が完成したことで、一層この流れを促進したいと考えています。ただしeGFRはあくまで腎機能の推算値であるため、より正確な腎機能の評価のためには、医療機関でのクレアチニンクリアランスやイヌリンクリアランス検査など、実測のできる検査を受ける必要があります。」と述べている。

例: 20歳男性、Cr値1.00の腎臓は、健常人を100%としたとき、約82.1%機能している
計算式: 194×1.00-1.094×20-0.287=82.1ml/分/1.73m2

例: 70歳男性、Cr値1.00の腎臓は、健常人を100%としたとき、約57.3%機能している
計算式: 194×1.00-1.094×70-0.287=57.3ml/分/1.73m2

例: 70歳女性、Cr値1.00の腎臓は、健常人を100%としたとき、約42,4%機能している
計算式: 194×1.00-1.094×70-0.287×0.739=42.4ml/分/1.73m2

日本人のGFR推算式作成グループの中心メンバーである今井圓裕 大阪大学腎臓内科病院教授は、以下のように述べている。
「新しいeGFR式の導入によって、患者さんの腎臓機能を簡便かつ今までより正確に評価できるようになります。式の公開により、一般のかかりつけ医が患者さんの比較的正確な腎機能判定を行うことができ、CKD患者のスクリーニングをより高い精度をもって行うことはもちろん、患者さん自らが、健診結果などから、自分の正確な腎臓機能を推定することができるため、式を利用できるWebサイトなどで積極的に自分の腎臓機能を把握して、腎臓に対する意識を高くもってもらえれば、と考えています。」


<コメント>
ある日のMR面会日。
あるメーカーのMRが「腎臓病診療支援ツール『Jポケットクリアランス』という計算機を持って来てくれました。
血清Cr値と年齢、性別を入れるだけで「新しい日本人のGFR推算式」が計算されるというものです。
無料でもらえるのはそれはそれで嬉しいことです。
しかし「CKD」には「メタボ」同様、新規マーケット開拓を目論んだ(?)医療関係業者が数多く協賛して(ぶらさがって)います。
その御裾分けみたいで何だか複雑な心境です。

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by wellfrog2 | 2008-06-17 00:21 | 腎臓病
2008年 06月 12日

日本人のGFR推算式が決定

第51回日本腎臓学会(2008年5月30日〜6月1日 福岡)の記事で勉強しました。

心血管死の予防を非専門医との連携で実現へ 
日本人のGFR推算式が決定、連携の礎に
浜松医大第一内科教授・菱田明氏

腎臓専門医の役割は、一人でも多くの慢性腎臓病(CKD)患者を診ることではない。
かかりつけ医や腎臓以外の専門医、さらには栄養士や保健師を含めた、CKD患者を診る仕組み作りのオーガナイザーになり、心血管疾患による死亡を予防することだ・・・。
5月30日から始まった第51回日本腎臓学会の特別講演1「慢性腎臓病対策の現状と今後の展望」で、同学会理事長の浜松医大第一内科教授・菱田明氏(写真)は、CKD診療に対して腎臓専門医がどう向き合い、その役割を果たして行くべきかについて、方向性を明示した。

学会初日の午前のセッションで、日本腎臓学会「日本人のGFR推算式プロジェクト」から、日本人のGFR推算式が発表された。
この新しい推算式を基に、わが国のCKD患者数(尿蛋白陽性またはGFR60未満)を推計したところ、約1330万人(全人口の12.9%)になることが明らかになった。

日本人のGFR推算式
GFR=194 X Cr-1.094 X 年齢-0.287
X 0.739(女性の場合)
Cr:酵素法で測定した血清クレアチニン


これに対し、腎臓専門医は3000人弱に過ぎず、CKD患者の診療をすべて担うことは不可能だ。
しかし一方で、社会からは、透析患者の増加抑制、心血管疾患の発症とそれによる死亡の抑制が求められるようになった。
しかも、この双方にCKDは深く関与している。
さらに、上記のようにCKD患者が上述のように推計で1330万人もいることが分かってきた。

菱田氏は、こうした背景を踏まえ「CKDの治療が進歩し、CKDの進行抑制は可能になっている」とした上で、「これまで腎臓専門医は、CKDの患者が透析導入にならないように努力してきたが、CKD患者では透析導入数をはるかに上回る人が、心血管疾患によって死亡していることを認識することが重要だ」と指摘した。

実際、高血圧患者の心血管リスクの中で、CKDのリスクのハザード比は、脳血管疾患の既往、心疾患の既往、糖尿病の罹患より高い。一方で、CKDの患者に対し、血糖や血圧のコントロールを早期に開始することが予後を改善することは、数多くの研究結果から明らかになっている。
従って、腎臓専門医は「学術的課題を解決し、エビデンスと実践とのギャップを解消しながら、CKD対策を推進するという、重大な役割を追うことになった」と強調した。

菱田氏は、学術的課題を4つ挙げた。
第一の課題は、CKD診療に必須のツールである日本人のGFR推算式だが、それは上述のように決定され、二つ目の課題である、治療のターゲットとなる患者数も1330万人と推計された。
従って、残る二つの課題は「末期腎不全への進行や心血管イベントの発症リスクが高くなる、尿蛋白、GFRのレベルを決定すること、そして新しいCKDの治療法を開発することだ」と提示した。

一方、エビデンスと臨床現場のギャップの中で最も問題となっているのは、1330万人と推計されるCKD患者をどう診療していくかだ。
対策として、腎臓専門医を増やすのも一つだが、「かかりつけ医との連携、糖尿病や循環器疾患の専門医との連携をシステム化することによって、腎臓専門医以外の医師にCKDを診てもらうことが不可欠」とした。
このうち、かかりつけ医との連携による診療システムについては、戦略研究「FROM-J」によって、連携のモデルを構築できるとの見通しを語った。

学会レベルでの連携は、既に始まっている。
糖尿病学会、循環器学会、高血圧学会、脳卒中学会、人間ドック学会、産業衛生学会などと合同で日本CKD対策協議会を発足させ、学際的協力体制を整えつつある。
これまでに、日本CKD対策協議会を設立するなど、活動実績も重ねてきた。
そして「今後は、腎臓病療養指導のための講習会を開催したり、栄養士学会との協力関係を強化するなど、コメディカルスタッフへの啓発活動も推進していく」と語った。

こうしたことから、CKDの概念は腎臓専門医のためのものではなく、かかりつけ医、糖尿病や循環器疾患の専門医、コメディカルスタッフらが、腎臓の病気に取り組む際に分かりやすい概念として提案されたものだとし、「腎臓専門医は、多くの医療関係者がCKD対策に参加するよう促進するオーガナイザーだ」と位置づけた。

この4月から始まった「特定健診」で、尿蛋白は検査項目に入ったものの、血清クレアチニン値が外されたのは、厚労省のCKDに対する認識を示したものであり、その事実を受け止め、「メタボリック症候群や生活習慣病と、CKDは密接に関係していることを示すエビデンスを強化し、明確に示す必要がある。減塩、禁煙、メタボ対策、さらには特定健診への参加など、生活習慣の是正に、腎臓専門医も積極的に取り組むべきだ」と語った。

今後は、「究極的な総合」を目的とした腎臓学会創立の原点を見つめ、「社会や行政の要望へのアンテナを高くし、10年後、20年後に向けた課題に挑戦していくべきことを、一連のCKD対策が私たちに教えてくれた」と締めくくった。

出典  日経メディカル オンライン 2008.6.3
版権  日経BP社


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by wellfrog2 | 2008-06-12 00:24 | 腎臓病