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2008年 07月 29日

糖尿病患者の血圧とLDL-C目標値

糖尿病患者の血圧とLDL-C目標値
"標準"以下でもCVD発症率に差ないがIMTは退縮

シカゴ〕メッドスター研究所(メリーランド州ハイアッツビル)のBarbara V. Howard所長らは「糖尿病患者の血圧とLDLコレステロール(LDL-C)を標準的な目標値以下に下げると標準的目標値の患者と比べて頸動脈壁厚はより減少するが,心血管疾患(CVD)イベントの発生率には差はなかった」とする試験結果をJAMA(2008; 299: 1678-1689)に発表した。

積極治療で有害イベント多い
この論文の背景情報によると,糖尿病患者はCVD発症リスクが高く,成人の糖尿病患者では冠動脈心疾患(CHD)が死因の第1位である。
糖尿病に関連したCVDリスクが上昇するのは,糖尿病患者では脂質異常症や高血圧などの主要なCVD危険因子を有する率も高いことによる。
糖尿病患者の収縮期血圧(SBP)とLDL- Cを推奨値よりも下げることにより,CVD関連の便益が得られる可能性を示唆する試験もある。
 
今回の試験は,2型糖尿病を有する米国先住民の男女499例における無症候性のアテローム動脈硬化症の進展を比較検討したStop Atherosclerosis in Native Diabetics Study(SANDS)
被験者のLDL-C値とSBP値をそれぞれ70mg/dL以下,115 mmHg以下まで積極的に下げる群(積極治療群)と標準的な目標値(100 mg/dL以下, 130mmHg以下)まで下げる群(標準治療群)にランダムに割り付けた。
3年に及ぶこの試験はオクラホマ,アリゾナ,サウスダコタなどの臨床センターで実施された。
 
その結果,両群ともLDL-CとSBPの平均的な目標値は達成され,その値は維持された。
試験開始前時と比べて,内膜中膜複合体厚(IMT)は積極治療群で退縮したが,標準治療群では進展した。
頸動脈の断面積も積極治療群で縮小した。
降圧薬に関係した有害イベント発生率(38.5%対26.7%)と重度な有害イベント発生数(4例対1例)は,積極治療群で高かった。
臨床的なCVDイベント発症率は両群で有意差はなかった。


健全な論争のきっかけに
Howard所長らは「臨床的なCVDアウトカムに関しては両群間に有意差はなかったが,イベント発生率は両群とも低く,標準治療群の無症候性のアテローム動脈硬化症の進展率は予想より低かった」と結論。
さらに「今回のデータは,LDL-CとSBPの目標値を定めた治療によりCVDの代理アウトカムが改善し,目標値をより低くすればより大きな便益が得られることを示唆している」と付け加えている。
 
しかし,「イベント発生率に差がなかったことと,降圧に関係した有害イベント発生率と重度有害イベント発生数が上昇したことから,長期的なアウトカムに対する便益は認められない可能性が示唆される。LDL-Cあるいは血圧をより積極的に低下させる治療戦略により,長期的なCVD発症率の低下ないしは経済的便益が得られるかどうかはいまだ明らかにされていない」と述べている。
 

JAMAの寄稿編集者でデューク大学(ノースカロライナ州ダーラム)医療センター循環器内科のEric D. Peterson教授らは,付随論評(2008; 299: 1718-1720)で「SANDSから学び取るべきメッセージは何であろうか。
今回の試験により,ある者にとっては,積極的な脂質異常治療と降圧療法が証明された早期マーカーに対してよい効果をもたらした。
したがって,長期間のフォローアップがなされれば,患者アウトカムの改善が証明されることはほぼ間違いないと捉えるだろう。
しかし,ある者にとっては2型糖尿病に罹患している高リスク患者を対象とし,理想的な状況で試験を行ったにもかかわらず,3年間のフォローアップ後でもまだ臨床的便益が確認されなかったと捉えるだろう」とコメント。
実際,積極的治療群では多剤併用(polypharmacy)により費用増大,有害イベントリスクの上昇が認められたという。
 
結論として,同教授らは「SANDSは目標値を下げることが一次予防のために実際によいことであるかどうかを明らかにするための重要な第一歩である。今回の結果からは,理想的な治療目標値に関する2つの異なる見解のいずれをも支持する解釈が可能だが,このようなディベートは健全なもので,最終的には,より確かなエビデンスの発見に医師を駆り立てることになり,さらに地域医療における治療目標をより効果的に達成するための,システムワイドな戦略を求めるきっかけとなるであろう」と述べている。

出典 Medical Tribune 2008.7.3
版権 メディカル・トリビューン社


<関連ブログ>
コレステロールと血圧を積極的に下げよう?!
http://allabout.co.jp/health/diabetes/closeup/CU20080620A/index2.htm
Effect of Lower Targets for Blood Pressure and LDL Cholesterol on Atherosclerosis in Diabetes
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/299/14/1678?etoc
2型糖尿病に対するコレステロール・血圧積極治療は動脈硬化退縮・・・だがイベントは・・・
http://intmed.exblog.jp/6989612/

<コメント>
対象をAmerican Indianにしぼって行ったトライアルということに興味があります。
米国の論文の多くが人種をはっきりさせないことが多いからです。
aggressive とstandard な治療でCVDイベントに差がなかったが、前者でIMTの退縮と心肥大改善効果がみられたとのこと。
しかしIMTがCVDイベントのサロゲートマーカーとするには少し無理があるのではないかと。
使用薬剤については不明ですが,最近大いに話題となったENHANCE試験を思い出してしまいます。

ENHANCE試験
http://blog.m3.com/reed/20080418/ENHANCE


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by wellfrog2 | 2008-07-29 00:09 | 循環器科