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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 06月 06日

感染源になりやすい第三大臼歯

以前、医学界と歯学界とは接点はあまりありませんでした。
せいぜい抜歯と(亜)急性心内膜炎との関連ぐらいだったかもしれません。
しかし最近では、ビスフォネートと顎骨壊死、抗凝固剤や抗血小板剤と抜歯、そして歯周病と動脈硬化など両者の接点は増えてきています。

感染源になりやすい第三大臼歯
〔米ジョージア州アトランタ〕 エモリー大学(アトランタ)口腔顎顔面外科のSteven Roser教授らは,第三大臼歯(親知らず,智歯)を保持すると,たとえ健康な歯に見えても長年にわたり感染源になりうること,感染を放置すると歯周病につながる可能性があることがわかったと同大学のニュースリリースに発表した。

若年成人にも歯周病発生
口腔顎顔面外科手術財団(OMSF)の理事であるRoser教授は「歯周病は口腔と歯肉に限定されない深刻な健康上の問題である。歯周病が発生すると細菌が体内に侵入し,心疾患や糖尿病など他の深刻な疾患の原因となることがある。また,歯周病は妊娠にも影響を及ぼし,喫煙と同等に低出生体重児リスクを増加させることが証明されている」と述べている。

米口腔・顎顔面外科医協会(AAO MS)とOMSFが現在実施している研究によると,14〜45歳のかなりの数の患者群は,たとえ無症状でも第三大臼歯の領域に歯周病が発生していることが明らかになっている。

複数の疫学的研究から,35歳未満の成人では歯周病の発生率が大幅に低いことが示されている。
しかし同時に,歯周病は若年成人期に発生するが,問題が表面化するまで何年も発見されない可能性が示唆されている。

第三大臼歯が位置する領域は歯ブラシが届きにくいため,特に歯肉疾患が発生しやすい。
いったん細菌が繁殖を開始すると,口腔の他の領域にも感染が拡大し,歯が抜けやすくなったり,時には顎部に嚢胞や腫瘍が形成される恐れも出てくる。

同教授は「第三大臼歯の周辺に細菌が感染すると,治療の成功率は低い。第三大臼歯は顎に近い口腔の一番奥に位置しているため処置が難しく,修復材を頻繁に取り換えなくてはならない可能性がある。また治療費が高額となり,患者が強い疼痛を感じることがある」と指摘している。

さらに,同教授は「歯科医は,年齢に関係なくすべての患者の第三大臼歯を継続的にチェックし,抜歯を考慮するとよいだろう。
妊娠を考えている女性,あるいは既に妊娠している女性は,その他の健康上の予防措置を講じると同時に,歯の健康を保つことが特に重要である」と結論している。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M4022062&year=2007

出典 Medical Tribune 2007.5.31
版権 メディカル・トリビューン社


<参考サイト>
歯周病菌は動脈硬化にもかかわる!?
http://www.nikkeibp.co.jp/jp/kenkou/series/perio_2.html歯周病菌はどのように動脈硬化性疾患の発症や進展にかかわっているのでしょうか。
その一つとして、歯周病菌が作り出す毒素成分(内毒素)がかかわっている可能性が挙げられます。内毒素は、好中球やマクロファージといった免疫細胞に取り込まれて血液中を運ばれ、血管壁などで炎症性サイトカインの産生を促し、コレステロールの沈着や細胞傷害などを起こすのではないかと考えられています。
したがって、動脈硬化、ひいては心筋梗塞などの発症を防ぐためにも、歯周病原性細菌の温床となる歯周ポケットを極力なくし、歯周病の予防と治療に努めることが大切といえるのです。

放置すれば動脈硬化の恐れも
歯周病対策には丁寧な歯磨きを
http://www.nikkeibp.co.jp/style/secondstage/kenkou/q-a_080507.html動脈硬化になった血管を調べると、その25%に歯周病菌が見つかったという調査結果があります。冠動脈に動脈硬化を起こす原因は種々ありますが、菌が25%も見つかるということは、動脈硬化の形成に何らかの役割を演じていることは確かと思われます。
歯周病菌は、食べ物や吐物を、間違って気管に吸い込んでしまったことにより起きる誤嚥(ごえん)性肺炎の原因になったり、歯周病菌が産生するある種の毒素が、早産、皮膚炎、腎炎の原因になるといわれています。

メタボリックシンドローム撲滅 動脈硬化、歯周病治療で抑制も
http://www.sankei.co.jp/metabolic/200711/071106m_lfe_119_1.htm
頸(けい)動脈の肥厚度検査(IMT)で動脈硬化の早期病変を知ることができますが、歯周病の悪化によって肥厚度が悪化することが明確にわかっています。内皮機能障害に続いてIMTの変化が認められますから、歯周病に治療介入することによって、動脈硬化を予防できるのではないかという、画期的なデータでもあるのです。また、「抗炎症剤」を使うと、インスリンを作る膵(すい)β細胞の機能が改善し、インスリン分泌が良くなり、かつヘモグロビンA1cが下がるというデータもあります。

全身疾患と歯周病
http://www.ne.jp/asahi/fumi/dental/perio3/medicine/medicine3.html全ての歯の周囲に3mmを超えるポケットを持つ人はそうでない人と比較し、冠状動脈疾患となる機会は3.6倍高く、歯槽骨の吸収が大きい人はそうでない人と比較し、致死性の冠状動脈疾患となる機会は1.9倍高いことが示されています。

智歯周囲炎
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C3%D2%BB%F5%BC%FE%B0%CF%B1%EA智歯周囲炎は、高校生から大学生ぐらいの年頃に多くみられます。下あごのいちばん奥のあたりが腫れぼったく、口を大きく開けると痛い場合は、この病気を疑って歯科医に診てもらって下さい。口を開いても親知らずがほとんど見えないこともありますが、エックス線写真を撮ると親知らずがあるか、また、うまく生えてくる歯かどうかもわかります。

親不知のお話
http://homepage1.nifty.com/DENDENDENTAL/faq/emergency03.html



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(一般の方または患者さん向き)
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by wellfrog2 | 2008-06-06 00:19 | 感染症


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