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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 06月 13日

議論呼ぶメタボリックシンドロームの診断基準

女性の腹囲90cmの根拠とは? 
4月から特定健康診査・特定保健指導、いわゆるメタボ健診が始まった。わが国におけるメタボリックシンドロームの診断基準は、2005年に8学会合同の検討委員会(委員長:松澤佑次氏)がまとめている(日本内科学会誌2005;94:794-809)。
メタボリックシンドロームでは内臓脂肪の蓄積が主要な役割を担うとして、ウエスト周囲径(腹囲)を用い、カットオフ値を男性85cm、女性90cmとした。メタボ健診でも、この値が採用された。

この根拠として唯一引用されたのが、日本肥満学会の委員会が肥満症の定義を定めた論文(Circ J 2002;66:987-92.)だ。
ところがこの論文に対しては以前から、幾つかの疑問が呈されている。
例えば、内臓脂肪面積が100c㎡という基準は、肥満関連障害の数が1を超えるポイントとして、男女合わせての検討で決まったもの。
男女で体格が違うことを考えると、女性にとっては大きすぎるのではないかという疑問が成り立つ。

次に、内臓脂肪面積100c㎡に相当する腹囲を、今度は男女別に求め、女性では92.5cmだったことから、基準としては90cmが適切とされた。
しかし、90cmをカットオフ値として論文のデータをあてはめると、検査としての感度は45.2%、陽性的中率は60.9%となり、いずれも低かった(数字は論文の図を編集部で読んだ推定値)。言い換えれば、内臓脂肪面積が100c㎡の人の5割以上を見逃し、逆に、拾い上げた人の4割が、実は100c㎡に満たなかったことになる。

これらについて、論文の筆頭著者である住友病院院長の松澤佑次氏は、「BMIが25以上で、腹囲が90cmを超えるような女性は、やせることにメリットがあるという意味ととらえてほしい」と説明する。

この診断基準が発表された後も、日本人のメタボリックシンドロームにおける腹囲の至適カットオフ値に関して、複数の研究が相次いで行われている。
それらによると、男性の腹囲は現行基準(85cm)とほぼ一致しているが、女性の腹囲は、いずれも90cmより細めで、80cm前後だ。

日本内科学会は3月に、メタボリックシンドロームの診断基準についてはさまざまな議論があるとした上で、「今後、新たな疫学研究および臨床研究を踏まえて検討を行う」と発表した。
女性の腹囲の基準は今後、見直される可能性がある。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200806/506684.html
日経メディカル オンライン 2008.6.3
Nikkei Medical 2008.6
版権 日経BP社


<コメント>
本来、新年度の4月から施行すべき特定健診もドタバタを繰り返してやっと6月からスタートしました。
当院にも国保を中心に、時間にゆとりのある停年後の方が健診を受けにみえるようになりました。
働き盛りの方とは異なり、多くの方はメタボの基準を満たしません。
必要条件である腹囲が正常範囲であるためです。

最近、職域健診の方の検査結果をみせて貰いました。
総コレステロールが例年高いということでチェックを受けていたのですが今年の検査では総コレステロール値が280mg/dlでも異常は指摘されていませんでした。
例年ついている*印がついていないのです。
脂質異常症とメタボの概念とは違うとはいえ、こんなメタボ狂騒劇を黙って見過ごして我々医師は粛々と健診をしなければならないのです。

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by wellfrog2 | 2008-06-13 00:25 | メタボリックシンドローム


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