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2008年 06月 24日

高齢者の脳白質の変化が歩行異常と関連

高齢者の脳白質の変化が歩行異常と関連
〔米ミネソタ州セントポール〕 ループレヒト・カール大学(独ハイデルベルク)のHansjoerg Baezner博士らは,高齢者によく見られる脳白質の変化,いわゆる白質希薄化が歩行や平衡の異常と関連性のあることを突き止め,Neurology(2008; 70: 935-942)に発表した。
転倒リスクが増大
フィレンツェ大学(伊フィレンツェ)神経科学・精神科学部が中心となって行われた3年間のLADIS(Leukoaraiosis and Disability)研究では65~84歳の男女639例を対象に,脳のスキャン,歩行検査,バランス検査を行った。
脳の白質の変化は高齢者ではよく見られ,その程度は異なるが,639例中284例に加齢による軽度の,197例に中等度の,158例に重度の白質の変化が見られた。
 
白質変化の重度群は軽度群に比べ,歩行検査とバランス検査のスコアが悪くなる率が2倍であった。
また,重度群は軽度群に比べ,転倒歴も2倍であった。
さらに,中等度群は軽度群に比べ転倒歴が1.5倍であった。


高齢でも自活を目指す 
LADISの研究者でもあるBaezner博士は「歩行困難と転倒は白質変化の主たる徴候で,高齢者が寝たきりや死亡に至る重大な原因である。運動をすると歩行能やバランス能が改善するため,歩行困難や転倒リスクが低下するだろう。長期的に白質の変化した例でも運動することでリスクが改善するか否か調べる予定だ。高齢になっても自立した生活ができるか否かは,可動性にかかっている。可動性に制限があると,ナーシングホームへの入所や入院が必要になることが多い。
この問題は今後数十年,われわれの社会と経済において大きな課題となるだろう」と指摘している。


白質変化は高血圧と関連 
さらに,Baezner博士は「白質の変化をモニターすることは歩行障害を早期発見するうえで有用である。歩行は健康上の他の問題にも関連している。最近,歩行障害により非アルツハイマー型認知症を検出できることが示された。歩行障害やバランスの異常を早期に検出することにより機能障害の状態を認識し,早期に診断・治療することが可能となる。他の人よりも白質変化が進行しやすい人が存在する理由,あるいは白質が変化する原因は十分解明されていない。
ただ,高血圧の治療が不十分であることとは明らかな関連性が認められている」と述べている。

http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?perpage=1&order=1&page=0&id=M41230011&year=2008
出典 Medical Tribune 2008.6.5
版権 メディカル・トリビュ-ン社

<番外編>
グラス1杯のワインは肝臓にもよい
1日にグラス1杯のワインを飲むことは心臓だけでなく肝臓にもよい影響があるようだと,米カリフォルニア大学サンディエゴ校のグループがHepatologyの6月号に発表した。

同グループは,米国の第三次国民健康栄養調査の参加者のうち,全く飲酒習慣のない7,211人と1日のアルコール摂取量が10gまででワインを好んで飲む945人を対象に,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が疑われる人の割合を調べた。
 
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のカット値を>43IU/Lとした場合のNAFLDの疑いは非飲酒群3.2%,ワイン群0.4%で,オッズ比(OR)は0.15であった。
カット値を健康人の95パーセンタイル値(男性>30IU/L,女性>19IU/L)とした場合にはそれぞれ14.3%,8.6%(OR 0.51)で,適度にワインを飲むことはNAFLDに保護的に働くことが示唆された。
Dunn W, et al. Hepatology 2008; 47: 1947-1954.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez/18454505
出典 Medical Tribune 2008.6.12
版権 メディカル・トリビューン社
<コメント>
こんなことがあるんでしょうか。
1日にグラス1杯のワイン。
なみなみ一杯かどうかも知りたいところです。
一杯で済めば苦労はないのですが。

ちょっと前に休肝日を設ける方法は,アルコール脱水素酵素(ADH)の活性が低下するからよくないという話を聞いたことがあります。
そのことと関係があるのでしょうか。


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by wellfrog2 | 2008-06-24 00:04 | 脳血管障害


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