2008年 06月 20日
ADVANCE試験・血糖管理アームの成績が示される “ACCORDショック”から約4か月,対照的な結果 第68回米国糖尿病学会(ADA,米サンフランシスコ,6月6~10日)において,現地時間の6日,ADVANCE試験の血糖管理アームの解析結果が発表された。 それによると,HbA1c 6.5%以下を目標とした厳格な血糖降下療法の実施により,主要血管合併症ならびに細小血管合併症の有意な減少が確認された。 血糖管理強化療法による死亡率の有意な増加は認められず,試験の一部が中止されたACCORD試験とは対照的な結果となった。 血糖管理強化療法で主要血管合併症の発症リスクが有意に低下 今年(2008年)2月,ACCORD試験における血糖管理アームが強化血糖管理群での死亡率増加により中止され,大きな波紋を呼んだ。 同じくハイリスク2型糖尿病患者を対象に血糖管理強化療法の意義を検討していたADVANCE試験委員会は,すぐに同試験の結果解析に影響はないとする声明を発表している。 ADVANCE試験では積極的な降圧と血糖管理が2型糖尿病患者の予後をどう改善するかが2×2のデザインで検討された。 昨年(2007年),降圧管理のアームにおいて,ACE阻害薬と利尿薬の追加により厳格な降圧目標を達成した群で血管合併症・死亡の有意な抑制が報告されている〔Lancet 2007; 370(9590): 829-40.〕。 今回の血糖管理アームにおける試験デザインは次の通り。 同試験の全被験者1万1,140例は標準血糖管理群,ならびに同群に比べ頻回の通院,積極的な生活習慣管理の実施に加え,スルホニル尿素(SU)薬をはじめとする血糖降下薬,持効型インスリンなどの投与を行った強化血糖管理群(目標値≦HbA1c 6.5%)の2群にランダムに割り付けされた。 各群の症例数は標準血糖管理群5,569例,強化血糖管理群5,571例で,ベースラインの背景因子は平均年齢66歳,32%が脳卒中や心臓発作などの心血管イベントの既往を有しており,平均HbA1c値は7.5%であった。追跡期間は66か月。 追跡期間中の両群のHbA1c中央値は標準血糖管理群7.3%,強化血糖管理群6.5%であった(P<0.001)。 その結果,強化血糖管理群において,主要な大血管/細小血管合併症の発症リスクが10%減少(P=0.013,95%CI 2~18%)したほか,主要細小血管合併症(腎症・網膜症)の発症リスクは14%減少(P=0.014,95%CI 3~23%)した。 心血管合併症(非致死性心筋梗塞,非致死性脳卒中,心血管死)について,有意なリスク減少効果は確認されなかった。 腎症の新規発症/悪化が21%減少,死亡率は標準血糖管理群と有意差なし 同試験では,血糖管理強化療法により腎イベントの大幅な抑制効果が示された。 既に降圧管理のアームでも積極的な降圧治療により同様の効果が認められているが,血糖管理アームにおいても,強化血糖管理群ですべての腎イベントが-11%(P<0.001),微量アルブミン尿の新規発症が-9%(P=0.02),ならびに腎症の新規発症または悪化は-21%(P=0.006)とそれぞれ有意に減少していた。 また,注目されていた血糖管理強化療法による総死亡率の増加については,両群に有意差は認められなかった。 さらに血糖管理強化療法では低血糖にも留意する必要がある。 同試験では検査値に応じて主治医自身が薬剤の量や選択を判断することとされ,日常臨床に近い形の検討が実施されている。 同試験統括研究者の1人Stephen MacMahon氏(The George Institute for International Health)は,当初,強化血糖管理群で多くの低血糖が発生すると予想していたという。 1回以上重篤な低血糖エピソードを起こした人の割合は強化血糖管理群で2.7%,標準血糖管理群で1.5%で,両群に有意差が見られたものの,この数値は同氏の予測よりかなり低かったとしている。 今回の結果について,同試験ディレクターのAnushka Patel氏(The George Institute for International Health)は,一次評価項目とされていた心血管合併症で有意なイベントリスクの低下が見られなかった点については,「有意ではないが改善する傾向が認められ,心血管合併症については血圧,血清脂質といった複合的なアプローチの必要性が示唆された」と考察。さらに特筆すべき点として「血糖管理強化療法により目標血糖値を積極的に達成することが,2型糖尿病における腎合併症の予防に重要な意義を持つことが証明された」ことを挙げた。 出典 Medical Tribune 2008.6.9 版権 メディカル・トリビューン社 カトラン 赤いシクラメンと柿の実 リトグラフポスター http://page9.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/k58887627 ACCORD試験の経過も報告-2009年以降に追加解析結果が発表予定 同学会ではADVANCE試験の発表と同じ日にACCORD試験についても同試験関係者らの声明が出された。 ACCORD試験では強化血糖管理群においては標準血糖管理群に比べ死亡リスクが22%増加したため,血糖管理強化療法ならびに新規患者の登録が中止された。 一部試験中止時のHbA1cの中央値は強化血糖管理群6.4%,標準血糖管理群では7.5%,医療対応を要した低血糖の発症率はそれぞれ10.5%,3.5%であった。 ACCORD試験統括責任者のRobert Byington氏(Wake Forest University School of Medicine)は,同試験の被験者の35%が,登録時心血管イベントの既往を有するなど,全例がハイリスクの2型糖尿病患者であったことに留意すべきと述べた。 さらに,3年半の試験期間で言えることとして,「同様のプロフィールを持つ患者に6%台のHbA1cを目標とした血糖管理強化療法を行うことでなんらかのリスクがあることがこの試験から明らかになった」とコメントしている。 また,同氏は現在も検討を継続している全例の経過について,2009年をめどに追跡を続け,あらためて解析結果を発表する意向を示している。 なお,両試験の論文は6月6日配信の NEJM 電子版に掲載されている(ADVANCE試験:10.1056/NEJMoa0802987,ACCORD試験:10.1056/NEJMoa0802743)。 一律に比較はできないが,ハイリスクの2型糖尿病患者を対象とした血糖管理強化療法の意義について対照的な成績が示された両試験。 今後,専門家,臨床現場が至適方針をどう判断するのか,さらに詳しい解析が期待される。 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0806/080609.html 強化血糖管理治療で死亡率が増加 大規模臨床試験は早期中止 〔米メリーランド州ベセズダ〕 米国立衛生研究所(NIH)に属する米国立心肺血液研究所(NHLBI)は,北米で現在進行中の糖尿病・心血管疾患(CVD)リスクを検討する大規模臨床試験ACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)において,現在入手可能なデータをレビューした結果,強化血糖管理治療による安全性に懸念が示されたことから,同治療を計画より18か月早く中止した。 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/article/view?id=M41150051&year=2008&type=article 血糖コントロールの厳格性と安全性をいかに両立させるか? ―J-DOIT3試験のプロトコルに学ぶ http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0802/080215.html J-DOIT3の継続決まる ACCORD試験の血糖管理強化療法中止で広がる不安,10日で“断” http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/0802/080210.html <コメント> 文中の「アーム」の意味がよくわかりません。 ネットで調べてみました。 すると 「臨床試験のデザインと解析(アーム), 」 とか 「そこで,実地臨床においては,現在進行中の進行再発胃癌に対する化学療法の第3相試験のアームを参考にするとの対応も考慮される。すなわち第3相試験に選択されるアームは現在「もっとも有効か,それよりも有効かもしれない」治療法だからである。」 とか 「膵癌に対する外科治療をアームとする臨床試験の問題点」 といった使い方をされていることがわかりました。 armを英和辞書で調べてみました。 「腕」「武器」以外の訳は出ていません。 「手法」「手段」といった意味でしょうか。 どなたか教えていただけないでしょうか。 医療ニュース 毎日新聞社 2008.0619 脱「医療費亡国論」/3 効率追求なし http://mtpro.medical-tribune.co.jp/news/20080619ddm002040107/ 大手製薬会社エーザイ(東京都文京区)に05年3月、その英国から想定もしていなかった知らせが届いた。 同社のアルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」について、NICEが軽度の患者への使用制限を打診してきたのだった。 アリセプトは97年に発売。 アルツハイマー型認知症の進行を遅らせる効果があり、この分野では世界トップシェアを誇る。07年には世界で2910億円を売り上げ、同社の主力商品の一つだ。 同社側は効果のデータを出したが、NICEは06年に発行した治療指針で「軽度の患者に対しては費用対効果が十分ではない」と、新規の軽度の患者には英国の公的医療制度であるNHSでの使用を認めないことにした。 同社側は英国の裁判所に指針作成プロセスの開示を求め、主張が認められたが、現在は開示待ちの段階で、使用制限は継続している。 <コメント> 英国の言い分ももっともなような気もします。 患者、過去最多に 注意を呼びかけ 県調査 /愛知 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/news/20080619ddlk23040174/ 乳児では死亡する可能性もある百日咳(ぜき)の患者数が99年の調査開始以来、最も多くなっていることが、県健康対策課の調査で分かった。 患者数はさらに上昇傾向にあり、最近では乳児だけでなく、成人がかかる例も多く、同課が注意を呼びかけている。 同課によると、県内の182の医療機関を受診した1週間の百日咳の平均患者数は、5月26日?6月1日の週で0・14と過去最高を記録した。今月2?8日の週は0・07と減少したが、同課は「百日咳の患者数は週ごとの上下動が激しく、依然として注意が必要だ」などと分析している。 <コメント> 2~3日前、百日咳抗体の検査が出来ない旨、利用している検査センターから連絡がありました。 昨年の麻疹騒動の再現です。 デジャヴ・・・嗚呼。 恐怖記憶にブレーキ役 群馬大が特定 PTSD治療へ応用期待 /群馬 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/news/20080619ddlk10040191/ 動物が過去の体験を「恐怖記憶」として形成するのにブレーキをかけるたんぱく質を、児島伸彦群馬大講師の研究チームがマウス実験で突き止めた。 過剰な恐怖記憶が原因とみられる心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究や治療に役立つ可能性がある。米神経科学誌に掲載される。 研究チームは、神経細胞の興奮状態が過剰な恐怖記憶を作ると考え、興奮時に作られるたんぱく質「ICER(アイサー)」に注目した。 そこで、遺伝子操作でアイサーを作らないマウスを作り、電気ショックと同時にブザー音を聞かせた。 翌日ブザー音だけを聞かせると、このマウスは体をすくめたが、その時間は通常のマウスに比べて2倍も長いことが分かった。 逆に、アイサーを過剰に作るマウスでは、すくんでいる時間が通常マウスの半分以下だった。 一方、砂糖水を与える「楽しい記憶」の実験では、3種類のマウスの行動に大きな差はなく、アイサーが恐怖記憶の「ブレーキ役」になっていることが裏付けられた。 記憶形成の「アクセル役」のたんぱく質として「CREB(クレブ)」が知られているが、ブレーキ役は不明だった。児島講師は「2種類のたんぱく質のバランスを調節できれば、恐怖記憶の強さを変えられるかもしれない」と話す。 県下全域に警報発令 「目洗い、うがいを」 /鹿児島 http://mtpro.medical-tribune.co.jp/news/20080619ddlk46040773/ <コメント> 学校の現場では、目洗いをどのように考えて実際に指導しているのでしょうか。 プールで注意 目の病気 http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy/archive/2008/6/19 感染対策でプールでは洗眼するよう指導されるが、これにも気をつけた方が良さそうだと思わせるデータが出てきている。 外部環境と触れる角膜上皮は感染を防ぐ役割がある。 それを、涙液ムチン層という部分が保護している。 国立病院機構東京医療センター(東京都目黒区)の山田昌和・視覚研究部長は、都内の屋内外のプールで塩素濃度を測って平均的な濃度を割り出し、健康な男女10人の協力を得て、この濃度の塩素を入れた水に5分間目を浸してから、水道水で洗眼してもらった。 その結果、角膜上皮が塩素の入った水で傷つけられ、水道水の洗眼で涙液のムチン層も洗い流されてしまうことが分かった。 読んでいただいてありがとうございます。 コメントお待ちしています。 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞくhttp://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 井蛙内科開業医/診療録http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容)
by wellfrog2
| 2008-06-20 00:06
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