井蛙内科開業医/診療録(2)

wellfrog2.exblog.jp
ブログトップ
2008年 06月 19日

TNF阻害薬アダリムマブ

第52回日本リウマチ学会に関する記事で勉強しました。

わが国におけるTNF阻害薬の臨床成績を提示 
2003年のインフリキシマブ(INF),2005年のエタネルセプト(ETN)に続き,3番目となるTNF阻害薬アダリムマブが今春,製造販売承認を取得。関節リウマチ(RA)に対して生物学的製剤の使い分けが可能な時代となった。
札幌市で開かれた第52回日本リウマチ学会(会長=北海道大学大学院内科学講座・第二内科・小池隆夫教授)のシンポジウム「抗TNF療法の展望」(座長=名古屋大学整形外科・石黒直樹教授,東京医科歯科大学大学院膠原病・リウマチ内科学・宮坂信之教授)では,TNF阻害薬の臨床試験成績や市販後調査データが示され,同薬を今後どのように使用していくべきかについて議論がなされた。


~JESMR試験~
ETN開始に当たってはMTXも継続すべき
メトトレキサート(MTX)で十分な効果が得られないRA患者を,
(1)ETNに切り替え(単独群)
(2)MTXを継続しETNを追加投与(併用群)
―に割り付けたJESMR試験の結果,併用群のほうがより効果に優れていることが判明。
埼玉医科大学総合医療センターリウマチ・膠原病内科の亀田秀人講師は「ETN開始に当たってはMTXを中止するより継続したほうがよい」と報告した。


国内承認用量でも明らかな効果
わが国でのMTXの承認最高用量は8mg/週だが,同量に不応であったRA患者にETNを投与する場合,臨床現場ではMTXを続けたままETNを追加するか,MTXを中止しETNに切り替えるかの選択を迫られる。
また,MTX国内承認用量のエビデンスが乏しいという問題もあった。
 
そこで,ETNとMTX国内承認用量を併用することの有用性を検討し,わが国でのETN治療指針作成に不可欠なエビデンスを構築することを目的に,多施設共同ランダム化比較試験(JESMR試験)が実施された。対象は,MTX効果不十分のRA患者151例で,ETN単独群(MTX投与中止;75例)とETN+MTX併用(76例)にランダムに割り付けた。142例が安全性解析の,132例が有効性解析の対象となった。
罹病期間は10年前後,登録時の疾患活動性スコア(DAS)28は平均5.9であった。
 
米国リウマチ学会(ACR)のスコアACR20の推移を見ると,試験開始後2週時点で併用群では70.8%という高い到達率を示し,単独群との差は有意であった。単独群では4週以降は有効性が頭打ちになっているのに対し,併用群では順調に到達率が上昇。
24週に併用群では91.2%に達し,単独群より有意に高かった。ACR 50,ACR70は両群間で有意差は見られなかったが,12週以降は併用群のほうが到達率が高い傾向にあった。
 
DAS28は両群とも順調に低下し,12週以降は両群間に有意差が見られ,24週では単独群3.79,併用群3.18となり,併用群のほうが活動性が低下していることがわかった。
さらに同試験では,関節の腫脹の程度も評価できるHRAS38を用いているが,その値は一貫して併用群のほうが低いという,DAS28と同様の推移を示した。ただし,DAS28と違い,HRAS38では2週という早い段階で両群間に有意差が認められた。
 
欧州リウマチ連盟(EULAR)基準による改善度は,早期から併用群のほうが優れており,good responseの割合は12週以降両群間で有意差が見られ,24週には単独群39%,併用群54%となった。
また,併用群ではno responseがほとんどなく,亀田講師は「MTXのポテンシャルがかなり発揮された結果だろう」と述べた。EULAR基準による寛解率も単独群では4週以降は頭打ちになっているのに対し,併用群では経時的に上昇,24週では30%近くに達した。
 
副作用は両群間で差はなく,重篤と判断されたものは,併用群におけるうっ血性心不全1例のみであった。
 
以上から,同講師は「MTX効果不十分例におけるETN療法は高い有用性を示し,MTXは週8mg以内の国内承認用量でも明らかな併用効果が認められた。
したがって,一般的にはETN開始時にMTXは継続が選択されるべき」と結論付けた。


~アダリムマブ~
日本人RAで有効性と高い安全性示す
アダリムマブは欧米ではいくつもの臨床試験で効果が確認されているが,日本人RA患者を対象としたCHANGE試験においても有効性と高い安全性が示されたことを,座長を務めた宮坂教授が発表した。

AAA陽性者の割合が著しく高い
RA患者352例が,抗リウマチ薬(DMARD)のウオッシュアウト後,プラセボ群,アダリムマブ20mg群,同40mg群,同80mg群にランダムに割り付けられ,2週間に1回,24週にわたって皮下注射された。
罹病期間は10年程度,疼痛関節数は25近く,腫脹関節数も20前後と,かなり疾患活動性の高い患者群であった。
 
24週時点で,ACR20,ACR50,ACR70のいずれも実薬の用量依存性に到達率が上がっており,プラセボ群との間に有意差が認められた。
とりわけ,完全寛解に近いACR70はプラセボ群でほとんどないのに対し,実薬群では10〜15%に見られた。
宮坂教授は「この数値は低いと思うかもしれないが,これはDMARDをウオッシュアウトしたアダリムマブ単独の効果である」と強調した。
 
有害事象の発現率は,実薬40mg群,80mg群でやや多くなったが,重篤/高度なものはプラセボ群との間に有意差は認められなかった。
 
ところで,アダリムマブは完全ヒト型抗体でありながら,自身に対する抗体(Anti-Adalimumab antibodies;AAA)ができてしまう。
高用量を使うほうがAAA産生は少ないとされ,実際,欧米での出現頻度は約5%と報告されているが,同試験でのAAA陽性者率は20mg群40%,40 mg群44%で,80mg群でも26%と著しく高かった。
 
この点に関して,同教授は「欧米ではほとんどの症例に十分量のメトトレキサート(MTX)が使用されているのに対し,CHANGE試験はアダリムマブ単剤の治療であったことが関係しているのかもしれない。
多少効果が低かったことと合わせて,今後の検討課題だ」と述べた。
 
さらに同教授は,欧米の試験について紹介。
MTX未治療RA患者を,MTX単独,アダリムマブ単独,両薬併用群に割り付けたPREMIER試験では,各単独投与よりも併用のほうがより高い有効性が示され,併用群では関節破壊がほぼ完全に阻止されるというデータが得られた。
活動性RA患者を対象としたReAct試験では,DMARD抵抗性,特に生物学的製剤抵抗性の症例にもアダリムマブは有用なことがわかった。
 
同教授は「AAA出現頻度が無視できないほど高かったため,MTXと併用することで有効性が上がるかどうかを今後検証していく必要がある。
長期の安全性については,進行中のREAL試験,SECURE試験の結果から明らかになるだろう」と結んだ。


~ETN全例市販後調査~
8割強でmoderate response以上の有効率
ETNの全例市販後調査は2005年3月に開始された。
日本リウマチ学会抗リウマチ薬市販後特別調査委員会の委員を務める東京医科歯科大学大学院薬害監視学の針谷正祥教授が,1万4,000例近くのデータの結果を紹介。
重篤な副作用が5%弱に認められたが,有効率も84%と高いことがわかった。


早期の段階から使用するように
同調査の中間データ(7,099例)は昨年の同学会で既に発表されている。
針谷教授は今回,中間解析時と中間解析以降,全体(1万3,894例)にデータを分けて説明した。
 
RAのX線ステージ分類は中間解析時は27%がステージ I & IIだったが,それ以降は32%に増えており,関節破壊が少ない段階から医師が積極的にETNを使用するようになってきている実態が浮き彫りになった。
RAの身体機能分類(クラス分類)も同様で,中間解析時にはクラス1&2は63%だったのが,中間解析以降には70%に増加した。
 
罹病期間5年未満の割合は中間解析以降のほうが多く,全体では32%。RA活動性(DAS28/ESR)を見ると,中間解析時には79%がhighだったが,中間解析以降は68%に低下し,その分,moderateが増えていた。合併症発現率は全体では57%で,呼吸器疾患が最も多かった。
全体データでは結核既往あり6.4%,胸部X線異常あり16%で,ツベルクリン反応検査実施率は94%であった。
抗結核薬の投与は中間解析以降,増加していたが,全体では3割弱にとどまった。
 
抗リウマチ薬(DMARD)併用率は,中間解析の71%から,中間解析以降には77%まで増加していた。
1剤併用時に最も多いのはメトトレキサート(MTX)で,中間解析以降は75%に使用。
同8mg/週以上の割合も増えており(37%→41%),同教授は「MTXをしっかり使っていくというコンセプトがリウマチ医に浸透してきた経緯をこの数字に見ることができる」と指摘。
一方,ステロイド併用率は全体で70%と高かったことから,「RA患者に対するステロイドの使用をもう少し減らしていく必要がある」との考えを示した。
 
副作用は,中間解析30.7%,中間解析以降22.6%,全体26.7%。重篤なものに限ると,それぞれ5.75%,3.36%,4.58%で,調査後半に低下していることがわかった。
感染症全体の頻度は9.5%で,そのうち肺炎(1.25%)が最多であった。
 
24週Intention-to-Treat(ITT)解析の結果,一般の日本人における死亡率と比較した標準化死亡率比(SMR)は1.46となったが,この値は一般RA患者における既報のSMRとほぼ同程度という。
 最後に同教授は,有効性について言及。DAS28/ESRの推移は中間解析時と全体でほぼ同じ
で,DAS28/ESRは投与4週後でかなり低下し,その後も緩やかに低下し続けていた。
欧州リウマチ連盟(EULAR)基準改善度で見ると,投与24週後には31.6%でgood response,52.7%でmoderate responseが得られていた。


出典 Medical Tribune 2008.6.12
版権 メディカル・トリビューン社

[PR]

by wellfrog2 | 2008-06-19 00:37 | 未分類


<< ADVANCE試験・血糖管理ア...      胸部単純X線撮影の有用性 >>