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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 08月 07日

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007

第40回日本動脈硬化学会総会・学術集会の演題で勉強しました。

「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007-この一年-」
動脈硬化の指標や発症抑制などで議論 現状の課題が浮き彫りに

学会初日には、「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007-この1年-」をテーマにセッションが開催された。
昨年2月に予防ガイドライン(GL)の改訂版が発表されてから1年余りが経過した。この4月からは特定健診・保健指導がスタートするなど、生活習慣病をめぐる社会環境も様変わりしている。
今回のセッションでは、動脈硬化性疾患の指標など現状の課題が浮き彫りとなり、増加し続ける動脈硬化性疾患の発症をいかに抑制すべきか、考えさせる場となった。

チャートの活用でリスク患者の生活習慣動機付け
Tsukasa Health Care Hospitalの枇榔貞利氏は、GLに参考資料として掲載されたリスクチャートについて「国を代表する貴重なデータ」と評価した上で、活用する上での留意点を解説した。

リスクチャートは、30歳以上の人を対象にしたコホート研究「NIPPON DATA」の結果に基づき、10年後の冠動脈疾患による死亡リスクを視覚化したもの。

枇榔氏は、リスクチャートの活用法について「冠動脈疾患のリスクがある患者に対し、(生活習慣改善の)動機付けをするため」に用いると説明。
「患者を脅すために使うものではない」と強調した。

また、示されたリスク値は、生活習慣が改善されず、現状のまま10年経過した場合の予測値に過ぎないことも紹介。
「生活習慣の改善に加え、薬物療法を考慮することで、その危険度が下がることを患者に理解してもらう」ことが必要とした。

冠動脈疾患の発症リスクが低い人については、加齢に伴い、発症リスクが上昇することから、喫煙者などには「生活習慣の改善を指導し、低いリスクに維持することが重要」と述べた。


LDL-C直接測定法確立に向け日米標準化計画実施
日本動脈硬化学会学術プログラム委員会脂質代謝部会の横山信治氏は“LDL コレステロール(以下、LDL-C)の直接測定法”をテーマに講演した。

横山氏は、LDL-C直接測定法の再現性を高めるために、LDL-Cの標準化を進めることの重要性を強調した。

LDL-Cは一般的に、Friedewaldの計算式で求められるが、TGが300~400mg/dLを超えるケースでは計算式によって求めることができず、LDL-C直接測定法が用いられている。

横山氏は、「LDL-C直接測定法は、臨床検査試薬開発の成果として高く評価されるべきもの」とした上で、まだ試薬による誤差があることを指摘した。

この誤差を明らかにし、再現性を高めるために、試薬メーカー7社が参加し、150~200検体を用いて検討する「日米共同実験計画」を現在行っている。横山氏は、近くこの結果が公表されるとし、この実験結果により「定量的データについて判断し、情報を公共のものとする」重要性を強調した。


高TG血症の第2管理指標にnonHDL-Cを

筑波大大学院人間総合科学研究科内分泌代謝・糖尿病内科の島野仁氏は、高トリグリセリド血症の管理指標として、食事の影響を受けにくい「nonHDL-C」を用いることの有用性を強調した。

nonHDL-Cとは、VLDL-C、LDL-C、IDL-Cなど悪玉コレステロールの総和である指標。総コレステロールから善玉コレステロールのHDL-Cを引くことで簡単に求められる。

高TG血症の指標としては、TGが用いられてきたが、食事などの影響を受けやすく、長期的なマーカーとして適さないことが指摘されていた。
これに対し、nonHDL-Cは、食事などの影響を受けづらいなどのメリットがある。

島野氏は、厚生労働科学研究で行われた原発性高脂血症に関する調査研究班で提唱した治療指針を紹介。
高TG血症の患者では、まずLDL-Cをコントロールすることが必要とした上で、LDL-Cが管理できたケースについては、nonHDL-Cを管理することを求めた。
なお、nonHDL-Cの管理目標値は、LDL-Cの管理目標値に30mg/dL足した値とした。

ただ、nonHDL-Cを管理指標に用いる上での課題があることも島野氏は指摘。
日本人に指標として用いた際のエビデンスが不足していることや、保険診療上の制約があり、2つ指標を測定することができないことなどを挙げた。


「産業現場も積極的な介入必要」
ソニー人事センター産業保健部の石川俊次氏は、約1万6000人を対象とした健診結果を踏まえ、「産業現場においても、動脈硬化の高リスク群に対して、生活改善や治療による、より積極的な介入が必要」との見解を示した。

石川氏は、2007年に行った1万6104人の健診結果をGLに当てはめると、動脈硬化性疾患の既往歴がない人のうち、1次予防で高リスク群となった人は、女性で1.8%(52人)、男性で10.3%(1339人)だったことを明らかにした。

また、男性6756人の動脈硬化性疾患の危険因子であるLDL-C高値とメタボリックシンドロームを合併している割合をみると、193人(3%)が該当することも分かった。

LDL高値+メタボを合併している人では、主観的メンタルヘルス評価が悪いとのデータも提示し、「(動脈硬化性疾患の)高リスク者は、メンタルヘルスや就業面からも望ましい状況ではなく、通常の保健指導に加え、就業調整も含めた支援が必要」との見解を示した。


「食後採血TGの基準設定を」
札幌医科大第二内科の島本和明氏は、特定健診・保健指導における受診勧奨について紹介した。

脂質異常症について、特定健診の受診勧奨基準は、TG300mg/dL以上、HDL30mg/mL未満としている。

島本氏は、診断基準値・受診勧奨値があくまで空腹時の値であることを説明した。
その上で、「健診では、半数以上の受診者が食後に訪れる」と指摘。血糖値については、HbA1cで食後は判定可能であることを引き合いに出し、「TGの食後採血判定基準の設定が求められている」との見解を示した。
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200807/conference3.html
出典 Japan Medicine
版権 (株)じほう


<番外編>
教授はなぜ学位審査の謝礼で学内処分されたのか
横浜市立大が教員20人を処分、停職の2人は自主退職
学位審査に際し、前医学部長の嶋田紘氏らが学位取得者から謝礼金を受け取っていたことが判明した横浜市立大は、7月29日、計20人の教員に学内処分を下した。内容は懲戒処分が5人、文書による訓戒が15人。

「学位審査の謝礼として教授に金銭を渡すことは、他の大学でも行われてきた」(ある公立大医学部の教授)というように、学位取得者が指導教授や審査の担当教授に謝礼を支払うことは、医学系大学院では“慣行”となっている部分もある。
ではなぜ、横浜市立大は厳しい処分を下すに至ったのか。

同大の金銭授受は、内部告発がきっかけで明るみに出た。
「学位審査等に係る対策委員会」が7月に公表した最終報告によれば、謝礼金を受け取ったことを認めた教授、准教授は19人で、最も多かった教授は2004年度から07年度までに300万円を受領していた(教授名は非公表)。

最終報告では、これらの金銭授受について「全体的に見て、必ずしも直ちに法令に触れるとまではいえない」との判断を示している。

公務員がわいろを受け取れば、刑法の収賄罪が成立する。
「学位審査等に係る対策委員会」の委員長を務めた、元名古屋高検検事長で弁護士の宗像紀夫氏によると、わいろの成立要件は3つ。(1)職務と関連性がある(2)当事者にわいろ性の認識がある(3)一般的に許容される社交儀礼の範囲を超えている、の3つである。宗像氏によれば、「調査の結果、謝礼金は社交儀礼として渡されたもので、謝礼の見返りに便宜を図るようなこともなかった」。3要件のうち(2)(3)を満たさなかったというわけだ。

だが宗像氏は、「学位審査の権限を持つ教授にお金が渡っていたというのは、形から見れば贈収賄的な行為。一般社会の常識から乖離した慣例であり、問題がないというわけではない」と指摘する。大学当局も、金銭授受を「教育や研究に携わる者として、あってはならない悪しき慣習」と断じて学内処分を下した。

なお、最も重い停職処分を受けた嶋田氏と前副学長の奥田研爾氏は、7月29日付で退職願を提出、横浜市立大はこれを受理した。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200808/507454.html


<コメント>
少し風化した”事件”ではありますが、どこの大学でもおこなわれている(いた)というつっこんだ内容に好感を抱きました。
博士号を取得された先生方。
神に誓って教授に謝礼を渡していないと言えますか。
私自身、旧○帝○といわれる大学の一つで博士号を取得する際に、謝礼をしたことを告白します。

自分がやっていてダンマリを決め込んで知らないふりをすることは性分に合いません。
このブログで小さな声でカミングアウトします。

それにしても名古屋と横浜の両市立大学。
自浄作用を示したとして賞賛に値する快挙(?)といってもいいのかも知れません。
黙認している大学や個人には、そのことを批判する資格はないと思うのです。

そして金銭授受は、この両大学だけでは決してないことは誰でも知っていることです。
スケープゴートとすることなく各大学は自主的に調査するか、文科省は処罰の公平性を期するために外部調査を指示すべきです。
刑事事件にもなりうる案件でもあるわけですから。

最後に。
国公立大学と私立大学ではまた意味合いが違うのでしょうか。
そのあたりも曖昧なままです。

他にもブログがあります。
ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy
(一般の方または患者さん向き)
葦の髄から循環器の世界をのぞくhttp://blog.m3.com/reed/
(循環器科関係の専門的な内容)
井蛙内科開業医/診療録http://wellfrog.exblog.jp/
(内科関係の専門的な内容)


by wellfrog2 | 2008-08-07 00:30 | メタボリックシンドローム


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