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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 09月 15日

腎障害検査と尿中NGAL

CKDの啓蒙活動が一段落して、腎臓病関連の話題を急性腎障害(AKI)にシフトしつつあります。
先日も「AKI」に関する学術講演会がありましたが、開業医としてはあまり関係なさそうなのでパスしました。
後でMRさんに当日の講演内容を聞きましたが、どうやらバイオマーカーの話が中心だったようです。

さて、最新のMedical Tribune誌に尿中NGALの記事が出ていました。
以前、肉眼的血尿で膀胱壁と思われる肉片が混じる患者さんが来院しました。
尿中NMP22をオーダーし、とんでもない高値の結果が帰って来ました。
後で急性膀胱炎でも高値が出ることを知ったのですが、尿中NGALも
AKIと思っていたら逆に膀胱がんだったりすることがあるかも知れません。

<参考>
NGAL ( Neutrophilgelatinase-associated lipocalin )はリポカリンファミリーに属する 22kDa のタンパク質で,主に活性化した好中球より分泌されます。
腸腺腫や炎症腸上皮,乳腺癌,尿路上皮癌組織での発現亢進が見られるほか,腎臓に障害を受けると尿中の NGAL 濃度が顕著に上昇することから,近年,腎不全など各種腎疾患の初期マーカーとして注目を集めています。
http://www.funakoshi.co.jp/shiyaku/entry/3902.php


腎障害検査に尿中NGALは有用
クレアチニンより迅速で正確

〔ニューヨーク〕コロンビア大学医療センター(ニューヨーク)内科のJonathan Barasch准教授と臨床内科のThomas Nickolas講師らは,急性腎不全患者の尿中に排泄される小分子量蛋白である好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)を用いた腎障害検査の有効性を検討した結果,クレアチニン検査よりも迅速かつ正確に急性腎障害を鑑別できたとAnnals of Internal Medicine(2008; 148: 810-819)に発表した。

1回の検査で高い鑑別精度胸痛で搬送されてきた患者にはどこの救急部でも血液検査が行われ,血清酵素値を基準に,原因が急性心筋梗塞に付随する組織損傷なのか,あるいは別の心イベントなのかを1時間以内に鑑別するはずだ。
 
しかし,生命にかかわる腎障害で救急部に収容された場合は別である。
まず,効率よく適時に腎障害を診断する方法がない。
現行の標準的な腎障害検査法は血清クレアチニン値検査であるが,クレアチニンは1日や2日では臨床的に重要な濃度まで上昇しない。
診断が下されるころには,取り返しの付かない障害が既に進行している可能性がある。
また,血清クレアチニン値は突発的な薬剤反応による急性腎不全や感染症,腎疾患の再燃のいずれの場合でも上昇する可能性があり,障害の原因までは特定できない。
 
今回の研究は腎障害と診断,治療の間のこうしたギャップを克服するために,基礎研究者,医師,医学生,医学部以外の大学生から成るユニークなチームにより実施された。
NGALの尿中排泄量を調べるだけの簡単な検査では,クレアチニン値検査よりも1~2日早く腎不全による腎障害を検出できるため,集中治療室(ICU)への入院や透析を必要としたり,死亡リスクの高い腎不全を救急部で正確かつ迅速に診断できる。
また,専門医がこの検査の結果を受けてエビデンスに基づいた治療判断を下せば,救命率も改善される。
 
重篤な疾患を正確に診断できなければ生命にかかわることになるが,救急部でNGAL検査がルーチンとして普及すれば,積極治療が必要な急性腎障害と,必ずしも緊急処置を必要としない糖尿病など多くの慢性疾患に伴う腎障害を正確に鑑別できるようになると思われる。
今回の検討では,尿中にNGALが認められた患者の約65%で腎臓専門医の処置,32%で透析,29%でICUでの処置が必要であった。

腎障害患者での発現量は30倍
今回の研究責任者でNGALと腎との関係を数年前に見出したBarasch准教授は「血清クレアチニン検査は1回で急性腎不全と慢性腎疾患を鑑別できないが,NGALは1回で診断が付く。今回の知見は,NGALで急性腎障害と他の原因を鑑別できることを示唆しており,NGAL検査を日常の臨床現場で実施するための第一歩と言える」と述べている。
 
試験はニューヨーク長老派教会病院(ニューヨーク)の救急部に収容された患者600例以上を対象に実施された。
 
実際に試験を行った同大学レジデントのPietro Canetta博士は「のちに急性腎不全と診断された患者のNGAL値は,腎障害のない患者の30倍であった。
疾患進行の早期に1滴の尿からこれほど質の高い情報を入手できれば,臨床医は助かるだろう。これまでしばしば推量や不確定な要素に基づいて臨床判断が行われていたが,具体的データが手に入ることになる」と述べている。
 
尿中NGALが明確なマーカーで,急性腎障害で大量に発現することは,シンシナティ小児病院(オハイオ州シンシナティ)腎臓・高血圧科のPrasad Devarajan部長らの成人・小児を対象とした以前の研究で確認されている。

出典 Medical Tribune 2008.9.11
版権 メディカル・トリビューン社


<関連サイト>
Review:Improving outcomes of acute kidney injury: report of an initiative
http://www.nature.com/ncpneph/journal/v3/n8/full/ncpneph0551.html
Acute renal failure ? definition, outcome measures, animal models, fluid therapy and information technology needs: the Second International Consensus Conference of the Acute Dialysis Quality Initiative (ADQI) Group
http://ccforum.com/content/8/4/R204
そろそろ AKI(Acute Kidney Injury) ?
http://intmed.exblog.jp/6084433/
尿中リポカリン(neutrophil gelatinase-associated lipocalin)の救急部での単回測定による急性腎障害診断の感度と特異度
Sensitivity and Specificity of a Single Emergency Department Measurement of Urinary Neutrophil Gelatinase-Associated Lipocalin for Diagnosing Acute Kidney Injury
[PDF] PowerPoint Presentation
http://www.cmic.co.jp/ir/pdf/cmic080516_3.pdf

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by wellfrog2 | 2008-09-15 00:22 | 腎臓病


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