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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 09月 29日

挑戦しつづけるSU薬  その1(1/2)

日本人の2型糖尿病の病態に即した薬剤選択のあり方,第3世代SU薬グリメピリド(アマリールR)の位置づけなどをめぐり討議した座談会で勉強しました。

日本人の2型糖尿病は,インスリン抵抗性を主たる病態とする欧米人とは異なり,インスリン分泌不全を背景にした患者の比率が高いことが知られている。こうした観点から,SU薬でインスリン分泌の促進を図ることが,目標到達型治療法「The Treat to Target」を行ううえで,日本人の2型糖尿病の病態に即した治療法といえよう。
 

司会:
仲 元司 氏 佐久市立国保浅間総合病院地域医療部長
コメンテーター:
山内 俊一 氏 帝京大学内科学講座教授
出席(発言順):
山内 恵史 氏 長野赤十字病院糖尿病内分泌内科部長
西井 裕 氏 長野市民病院内分泌代謝科科長
駒津 光久 氏 信州大学大学院医学系研究科加齢病態制御学講師
近藤 照貴 氏 長野中央病院診療部長(糖尿病・内分泌・腎臓内科)
日本人の2型糖尿病はインスリン分泌不全型が多数
仲 
本日は,長野県内の基幹病院で糖尿病診療を担っておられる専門医の先生方にお集まりいただき,山内俊一先生にエビデンスをお示しいただきながら,目標到達型治療法「The Treat to Target」を行ううえでのSU薬の適切な使用法について討議したいと思います。
 
日本人の2型糖尿病はインスリン分泌不全が主たる原因であるとの指摘がありますが,初回治療ではどのように薬剤選択をされていますか。

山内(恵) 
服薬コンプライアンスなども考慮しながら,個々の症例に応じて薬剤選択しています。
高度な肥満のない患者さんに対しては,グリメピリドの少量投与から開始することが多いですね。

西井 
私は初回治療から複数の薬剤を併用して治療することが多いのですが,その際,グリメピリド少量投与を主体とし,食後血糖値が高い患者さんはα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)を,空腹時血糖値(FPG)が高い患者さんはビグアナイド薬を併用しています。
α-GI,ビクアナイド薬は消化器系の副作用のために使用を継続できないケースもありますが,グリメピリドは低血糖以外の副作用が少なく使用しやすい薬剤と感じています。

駒津 
インスリン分泌不全とインスリン抵抗性のいずれのタイプであるかを見極めて,SU薬かビグアナイド薬を選択しています。
最近,欧米ではインスリン分泌促進薬ではない薬剤を第一選択にしようという動きがありますが,日本人の病態には即していないと思います。肥満のない方に対しては,少量のSU薬から開始するのが合理的です。

近藤 
初回治療であっても,既にHbA1C値7.5%以上を示す症例,あるいはHbA1C値6.5%以上でFPGが高値を示す症例に対しては,SU薬を少量から用いて確実に血糖値を下げる必要があります。

経口血糖降下薬の二次無効は糖毒性が主たる原因
仲 
糖尿病治療の原則は"The Treat-to-Target"ですが,HbA1C値やFPGが高いにもかかわらず低血糖や二次無効を懸念するあまり非分泌系薬剤またはインスリン分泌を促さない薬剤が優先され,SU薬の投与のタイミングが遅れる例が多いとの指摘もあります。
そこで,血糖正常化への戦略として,SU薬の効果,低血糖,二次無効についてエビデンスをお示しいただきたいと思います。

山内(俊) 
グリメピリドは1~2mg/日と比較的少量の使用でも,速やかで確実な血糖低下効果が得られます(図1)。
挑戦しつづけるSU薬  その1(1/2)_f0174087_18124657.jpg

一方,実地医家の先生方には,SU薬の投与により膵β細胞が疲弊し二次無効を来すと危惧される方がおられますが,理論的な根拠は明確ではありません。
糖尿病の病歴が長くなるにつれ膵β細胞によるインスリン分泌能が低下する現象は,SU薬のみならず他の血糖降下薬でも同様に示されています。
実際Steno-2 Studyでは,強化療法群の約半数にSU薬が処方されていますが,明確な二次無効の傾向は見られませんでした(図2)。
欧米では,UKPDSなどの大規模臨床試験の結果より,二次無効は高血糖の持続によりもたらされ,SU薬の使用が原因ではないというコンセンサスが得られています。
挑戦しつづけるSU薬  その1(1/2)_f0174087_18134947.jpg
 
また聞き取り調査による低血糖の発現頻度では,食事療法群と比較して,有意差は見られなかったという報告もあります(Miller CD, et al : Arch Intern Med 161, 1653: 2001)。
 
以上より,グリメピリドをはじめとするSU薬は重篤な低血糖さえ注意すれば日本人の病態に即した効果が得られる薬剤であると考えられます。

出典 Medical Tribune 2008.9.18
版権 メディカル・トリビューン社


<コメント>
"日本人はインスリン分泌不全を背景にした患者の比率が高い"
"SU薬でインスリン分泌の促進を図ることが,目標到達型治療法「The Treat to Target」を行ううえで,日本人の2型糖尿病の病態に即した治療法といえよう"
・・・ちょっと待って。それって結論急ぎです。
日本人では諸外国に比べてカルシウムの摂取量が少ない。したがって諸外国並みにカルシウム摂取量を増やす必要がある。
・・・その論理と変わりません。日本はカルシウム摂取量のはるかに多い北欧より骨粗鬆症は少ないのです。

”実地医家の先生方には,SU薬の投与により膵β細胞が疲弊し二次無効を来すと危惧される方がおられますが,理論的な根拠は明確ではありません”
・・・ちょっと待って。問題ないという理論的根拠はあるんですか。

”低血糖の発現頻度では,食事療法群と比較して,有意差は見られなかったという報告もあります”

・・・とても信じられません。

メーカーがセッティングした座談会は注意しながら読み進む必要があります。

<きょうの一曲> "They Can't Take That Away From Me"
Diana Krall - They Can't Take That Away From Me
http://jp.youtube.com/watch?v=BEgScNZkIQU&feature=related




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by wellfrog2 | 2008-09-29 00:06 | 糖尿病


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