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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 10月 06日

加齢と睡眠時間

加齢で必要な睡眠量が減少〔ボストン〕
Brigham and Women's病院,ハーバード大学(ともにボストン)睡眠医学のElizabeth Klerman博士とサリー大学(英ギルフォード)保健・医科学サリー睡眠研究センターのDerk-Jan Dijk博士は,加齢に伴い健康な高齢者でも睡眠量が少なくなるとCurrent Biology(2008; 18: 1118-1123)に発表した。

日中に疲労していれば検査を
Klerman博士らは「もし高齢者がベッドに入っても入眠までに時間がかかり,十分な睡眠を取れていないと感じたら,不眠症を訴えて不要な薬剤を服用してしまうかもしれない。ただし,日中に疲労しているのであれば,夜間の十分な睡眠を阻害する不眠症について検査を検討すべきであろう」と述べている。
 
同博士らは,若年者(18~32歳)と高齢者(60~72歳)について,昼間と夜間のいずれでも個人の選択に任せて睡眠を取ることができるようサーカディアンリズムを調整し,睡眠時間を比較した。
同博士らは「ヒトは時にはホメオスタシス機構に打ち勝ち,疲労時でも睡眠を取らないことが可能である。しかし,疲労していないときにも眠ることができるというエビデンスはない」としている。
 
同じ時間ベッドのなかにいても,高齢者では入眠時間が長く,睡眠時間は若年者よりも短くなる。
1日16時間ベッドのなかにいる場合,高齢者の睡眠時間は若年者に比べて平均1.5時間短かった。
また,加齢による睡眠時間の減少に関して,レム睡眠とノンレム睡眠が同程度短くなることが判明した。
 
同博士らは「この結果から,高齢者では必要な睡眠時間が少なくなることがわかった。睡眠を多く取ることが可能な状況でも,高齢者では睡眠時間が短くなる。それは加齢に伴い入眠,睡眠を継続する能力が変化するためである」と述べている。
出典 Medical Tribune 2008.9.25
版権 メディカル・トリビューン社


<関連サイト>
高齢者の睡眠
http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-004.html
睡眠を十分とっている人は高齢になっても「良い感じ」
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2008/06/007019.php
高齢者の居眠りに睡眠障害が関連(2008.5.8掲載)
http://www.healthdayjapan.com/index.php?option=com_content&task=view&id=1242
高齢者に多い不眠
http://www.leg-disorders.com/disease/senior.htm


<番外編>
マサイ族に心血管疾患が少ないのは豊富な運動量のため
〔スウェーデン・ストックホルム〕動物性脂肪の大量消費が心血管疾患(CVD)リスクを上昇させるとする強力なエビデンスが存在する。
このことから,動物性脂肪が豊富で,炭水化物が不十分な食事を取るマサイ族(ケニアやタンザニアの遊牧民)が,ほとんどCVDに罹患しないことは多くの研究者にとって驚きであった。
カロリンスカ研究所(スウェーデン・ストックホルム)のJulia Mbalilaki博士らは「マサイ族にCVDが少ないのは,彼らの身体活動量が多く,エネルギー消費量が大きいからだ」とBritish Journal of Sports Medicine(2008; オンライン版)に発表した。

西洋人なら1日20kmの歩行が必要
マサイ族にCVDが少ないという事実は,40年前から知られており,マサイ族は遺伝的にCVDから守られているのではないかという憶測が流れていた。
Mbalilaki博士らが今回発表した研究によると,その理由はむしろマサイ族の活動的なライフスタイルにありそうだ。
 
同博士らは,タンザニアの中年男女985人のライフスタイル,食事,心血管系危険因子に関する調査結果をもとに今回の結論に達した。
985人中130人はマサイ族で,371人が農民,484人は都市生活者であった。
過去の研究報告と同様,マサイ族は他の被験者よりも動物性脂肪の豊富な食事を大量に取っていたにもかかわらず,心血管系危険因子は最も少なかった。
つまり,体重,ウエスト周囲径,血圧値が最も低く,血中脂質値も健康な値であった。
 
マサイ族のライフスタイルが他と大きく異なる点は,身体活動量が多いことである。
今回対象となったマサイ族は,1日に基礎代謝で必要とされるカロリーよりも2,500kcalも多く消費していた。
これに比べて,農民では1日に1,500kcal,都会生活者では1日に891kcalしか消費していなかった。
マサイ族と同レベルのエネルギー消費を実現するには,大半の西洋人は1日に約20kmも歩かなければならないという。
 
同博士らは,マサイ族は未知の遺伝的要因により守られているのではなく,高い身体活動により心血管系危険因子から守られているとしている。
 
同博士は「今回の研究はマサイ族における心血管系危険因子を詳しく検討した初めてのものである。マサイ族の歩行距離を考えれば,食事に含まれる動物性脂肪の量が多くても,彼らのウエスト周囲径が短く,血中脂質値が良好であることは不思議ではない」と述べている。

出典 Medical Tribune 2008.10.2
版権 メディカル・トリビューン社



<きょうの一曲> "Death In Venice"
Death In Venice
http://jp.youtube.com/watch?v=FTP7XFVGnxQ


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by wellfrog2 | 2008-10-06 00:03 | 未分類


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