井蛙内科開業医/診療録(2)

wellfrog2.exblog.jp
ブログトップ
2008年 11月 01日

スタチンと肺炎

スタチン服用者では肺炎による死亡率が低い
デンマーク・アールフス大学臨床疫学部門のReimar W. Thomsen氏らは肺炎による入院患者を対象とした調査結果から,入院前からスタチンを服用していた症例で肺炎による死亡率が低いことをArch Intern Med (2008; 168: 2081-2087)に報告した。

スタチンの抗凝固・抗炎症作用が免疫応答の改善に関与?
1997年1月1日~2004年12月31日にデンマーク北部の病院に肺炎で入院した2万9,900例の医療記録から,スタチンを含む服用薬剤,合併症,社会経済的指標,検査結果,菌血症,肺の合併症や死亡に関する調査が実施された。

回帰分析により,スタチン服用群(1,371例)と非服用群における入院後の予後を解析した結果,スタチン服用群で非服用群に比べ,入院30日後,90日後の死亡率が少なかった(各10.3% vs. 15.7%,16.8% vs. 22.4%)。
各種サブ解析やpropensity score matching法による追加解析を行った後も,スタチン服用による死亡率は明らかに減少していた。
特に,80歳以上の患者および菌血症を合併した患者で相対死亡率が最も低かったという。
スタチン服用群における菌血症の相対リスクは1.07(95%CI 0.69~1.67),肺合併症が0.69(95%CI 0.42~1.14)であった。

Thomsen氏によると,肺炎関連死が最も多く見られる入院後初期の数週間でスタチン服用群における死亡率の低下が見られており「感染早期からスタチン服用によるベネフィットがある」という。

一方,過去のスタチン服用や他の循環器用薬の服用と,肺炎による死亡率減少との関連は見られなかった。

同氏はスタチンの抗凝固,抗炎症に関連する作用が血管機能不全を抑制し,生体の免疫応答を改善していると考えられるとし,こうしたメカニズムが肺炎発症早期のおもな死因となる敗血症や菌血症の発症抑制につながるのではないかとの見方を示している。



原著
Arch Intern Med (2008; 168: 2081-2087)
Preadmission Use of Statins and Outcomes After Hospitalization With Pneumonia
Population-Based Cohort Study of 29 900 Patients
http://archinte.ama-assn.org/cgi/content/short/168/19/2081

出典 MT Pro 2008.10.29
版権 メディカル・トリビューン社


スタチン系薬で肺炎による死亡が半減 高齢になるほど大きな効果
Audie L. Murphy記念復員軍人病院・テキサス大学保健科学センター(テキサス州サンアントニオ)のEric Mortensen博士は,スタチン系薬服用により肺炎による死亡リスクが低下したとの知見をEuropean Respiratory Journal(ERJ,2008; 31: 611-617)に発表した。

さまざまなエビデンスが存在
肺炎を併発している65歳以上の入院患者の場合,スタチン系薬を服用しているとその死亡率はほぼ半減した。
ACE阻害薬を服用している場合でも,生存率は若干向上した。ACE阻害薬は,一般に心不全や高血圧患者に処方されている。
 
今回の研究では,これまで知られていなかったスタチン系薬の便益が明らかになった。
スタチン系薬は世界中で広く処方されており,この種類の脂質異常症治療薬は深刻な心血管リスク(特に糖尿病)を有する患者で,長期の死亡率を低下させることが示されている。
最近の研究では,スタチン系薬やACE阻害薬が敗血症や市中肺炎,糖尿病に伴う下肢感染などの患者の生存率を向上させることが示唆されている。
 
一方で,両薬剤の呼吸器感染症による生存率あるいは重症度に対する効果は認められないとする他のいくつかの研究もある。
Mortensen博士は「重要なのは,市中肺炎やインフルエンザは,感染症による死因の第1位となっていることである。
実際,これらを合わせると,米国全体で7番目に多い死因となる」としている。


復員軍人の膨大な記録を分析
Mortensen博士らは,呼吸器感染症のアウトカムに対するスタチン系薬とACE阻害薬の影響を調べるため,米国復員軍人局の膨大な患者コホートを分析した。
対象は,2000年に肺炎またはインフルエンザで入院した65歳以上のHIV陰性患者で,入院前3か月間に化学療法を受けていない8,652例。
このうち入院前にスタチン系薬を投与されていたのは18.1%,ACE阻害薬を投与されていたのは33.9%であった。
 
同博士らは,対象群の入院後30日の死亡率を調べた。これまでの研究では,呼吸器感染症が死因であることを明示するためには,期間枠として30日が適していることが示されている。
 
その結果,入院30日以内に10人に1人が死亡していたが,スタチン系薬かACE阻害薬,あるいは両方を服用していた患者では,その割合ははるかに低かった。
スタチン系薬のみを服用していた患者では,死亡リスクはほぼ半減した〔相対リスク(RR)0.58〕。
この結果は,スタチン系薬とACE阻害薬を併用していた患者ではさらに改善された(RR 0.45)。
 
さらに注目すべきことに,スタチン系薬による生存率の向上効果は高齢(特に85歳以上)になるほど大きくなった。
同博士らは「今回の結果はこの年齢層の対象者数が少なかったり,あるいはきわめて高齢な患者では健康が損なわれやすいことに関連した別の因子のためにバイアスがかかっている可能性がある。
例えば,長生きしようと思っていない人には,主治医がその便益が乏しいと考えてスタチン系薬を投与しないこともある」と述べている。
 
ACE阻害薬のみを服用していた患者では,死亡率の低下は有意であり,インフルエンザによる死亡を除外したRRは0.84であった。


女性への効果は検証中
Mortensen博士らは,スタチン系薬とACE阻害薬による保護作用は,その免疫調節作用と全身性サイトカインの産生減少作用に起因すると考えている。
全身性サイトカインの過剰産生は毒素性ショックや急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を生じうる。
同博士らは,今回の結果がランダム化比較試験でも確認できるかどうかを調べる試験を計画中である。
スタチン系薬による死亡率の低下が,今回の分析で対象となった復員軍人にはほとんど含まれない女性にも適応できるか否かを確認することも必須の条件である。
出典 Medical Tribune 2008.5.8
版権 メディカル・トリビューン社


<きょうの一曲> ”NATHALIE”
NATHALIE- BECAUD
http://jp.youtube.com/watch?v=asAepCRxpek&feature=related
GILBERT BECAUD - NATHALIE
http://jp.youtube.com/watch?v=qKoYJEekiKs&feature=related
Gilbert Becaud - Nathalie
http://jp.youtube.com/watch?v=cxvhG78121Y&feature=related
Gilbert Becaud - Nathalie 1964
http://jp.youtube.com/watch?v=otiyMbGUvMA&feature=related
Nathalie
http://jp.youtube.com/watch?v=iHgRj86cv6Q&feature=related
Nathalie
http://jp.youtube.com/watch?v=SYsBojx4W1I&feature=related
[PR]

by wellfrog2 | 2008-11-01 00:04 | 呼吸器科


<< 麻酔科医問題      カンデサルタンと2型糖尿病の網膜症 >>