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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 11月 13日

経口血糖降下薬の使い方 その2(2/2)

SU薬間でも安全性に差

井口 
非専門医の先生方がSU薬を使用する場合はどのようなことに注意すればよいでしょうか。

迫 
血糖コントロールにSU薬は不可欠ですが,SU薬を投与するにあたって何より大切なのは,
外来治療における低血糖の発生を充分考慮することです。
そのためには,SU薬は少量投与から開始するのが原則で,増量投与する場合でも,二次
無効を考えて高用量を漫然と投与しないことが必要です。
一方,コントロールが良好である場合でも低血糖の発現を予測して,SU薬の減量を絶えず
念頭に置くことも大切です。

井口 
第3世代SU薬のグリメピリド(アマリールR)による低血糖の発現についてはどのような印象
をお持ちですか。

清野 
低血糖の発現が少ないという印象はあります。
グリベンクラミドに比べ,グリメピリドは効果の発現がマイルドです。

井口 
グリメピリドは少量投与が可能なので,軽症の患者さんにも投与できます。

迫 
体重増加が少ないことから,グリメピリドは肥満を呈する患者さんにも投与が可能であり,
処方しやすい薬剤だと思います。

久富 
グリメピリドが低血糖を発現しにくいこと,体重増加を来しにくいことには,GLP-1が関与
しているのではないでしょうか。

井口 
心筋の虚血プレコンディショニングへの影響についてはどうでしょうか。

田尻 
グリベンクラミドが心筋の虚血プレコンディショニングに影響を及ぼし,心筋梗塞の発症を
有意に増加させるという報告があります。
心臓カテーテルの検査前にグリベンクラミドを投与している場合は,グリメピリドに変更する
といった配慮は必要でしょう。

井口 
非専門医の先生方においては,大血管イベント抑制のためにインスリン抵抗性を改善する
薬剤を積極的に投与する傾向が多く見られます。この状況をどのようにお考えですか。

松本 
特に循環器を専門とする先生方がチアゾリジン薬をよく選択しているようです。
ただ,チアゾリジン薬を投与する際には浮腫や心不全に注意を払うことが必要です。


費用対効果を考えた薬物治療が必要
井口 
経口血糖降下薬も種類が増え,今後は医療経済的な観点から薬剤を選択する必要
が生じる場合もあると思います。
この点について石井先生が興味深い検討をなさっていますので,ご紹介ください。

石井 
半年間でHbA1C値を1%低下させるために必要な1か月あたりの薬剤費を2006年
4月1日現在の薬価をもとに計算しました。
その結果,血糖値を下げる効果が弱い薬剤ほど割高に,一方,古くから使われている
薬剤ほど割安になっていました。
薬剤によって大きな差が出ています。

井口 
結果としてグリメピリドなどのSU薬が割安になるわけですね。
清野先生,全体を通じてSU薬による治療のポイントをまとめていただけますか。

清野 
日本人の2型糖尿病の病態を踏まえた治療としては,インスリン分泌を促進する薬剤
の投与が基本です。
一方で,日本人にはわずかなインスリン抵抗性も大きな負担になることを考慮し,SU薬を
ベースに生活習慣の改善をはじめ必要に応じて他の薬剤を併用するという方法をとる
べきでしょう。
また,従来言われてきたようなSU薬によって膵β細胞が疲弊して二次無効を来すという
見解は,見直さなければなりません。
そして,特定の経口血糖降下薬単剤で長期間安定して血糖コントロールすることは
難しいので,悪化したらその都度対応を考えていくことが重要です。

<番外編>
医師8人が一斉に辞表 給与引き下げに反発 大阪・阪南市立病院
大阪府阪南市の福山敏博市長が表明した医師給与の引き下げ方針などを受け、阪南市立病院の内科と総合診療科の医師8人が12日、そろって辞表を提出した。
 
全員が退職すれば病院運営に支障が出る可能性があるため、市は今後、市長と医師らの直接対話などを通じて妥協点を探り、慰留する方針。
 
同病院では、昨年6月から今年3月にかけて内科医5人を含む計12人の医師が退職。病院側は内科を一時休止する一方で、6月に歩合給与制度を導入して医師の平均年収を1200万円から2000万円に引き上げるなどの措置を講じた。
出典 日経新聞・朝刊 2008.11.13
版権 日経新聞社

以下は久坂部羊氏の産経ニュースでのコラムです。
<引用コラム>
この状況をどう見るか。意見は二つに分かれるだろう。

市立病院は市民の治療に責任を負う立場にある。それを給与が引き下げられるからといって、すぐ辞意を表明するなど、医師の使命感にもとる行為だと見る向き。
 
今ひとつは、給与を上げると言ったから就職したのに、来たら1カ月で引き下げるなんて、詐欺も同然だ、辞意の表明は当然であるという見方。

医師も生活があるから、不当な賃下げを押しつけられれば、職場を去るのも当然かもしれない。
しかし、病気の市民を見捨てるのかという批判もあるだろう。
市の財政が苦しいという新市長の言い分も、私利私欲から出た発言ではあるまい。
 
医師が泣くか、患者が泣くか、市が泣くか。みんなが笑顔になれる状況などあり得ない。
それが今の日本ではないか。
いつ自分が痛みを引き受ける立場になるか、わからないのが恐ろしい。
http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/081112/acd0811120312002-n1.htm

by wellfrog2 | 2008-11-13 00:38 | 糖尿病


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