2008年 11月 24日
厚生労働省は、新型インフルエンザの流行時に、特定の患者には電話診療だけでタミフルなどの治療薬を処方できるようにすることなどを盛り込んだ対策指針の改定案をまとめ、11月20日開かれた専門家会議に示し、了承された、というニュースがありました。 「患者の殺到が予想される医療機関の混乱を抑えるのが狙い」とのことですが、無診療投薬を厳しく戒める厚生労働省自らが例外を作った形になりました。 電話診療でタミフル処方も 新型インフル対策で厚労省 「医療ニッポン」 http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=83282&categoryId=&sourceType=GENERAL& そこで誰もが疑問に思う事があります。 それは、タミフルが新型インフルエンザに効くかということです。 そこでちょっと厚生労働省のホームページでの記載をチェックしてみました。 出典は 新型インフルエンザに関するQ&A http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html です。 「抗インフルエンザウイルス薬はどのようなものがあるのですか」という質問に対して 「新型インフルエンザの治療薬としては、毎年流行する通常インフルエンザの治療に用いられているノイラミニダーゼ阻害薬が有効であると考えられています。 ノイラミニダーゼ阻害薬には、経口内服薬のリン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)と経口吸入薬のザナミビル水和物(商品名:リレンザ)があります。」 結局は「有効であると考えられています。」とさらっと流しています。 想定質問は「タミフルは新型インフルエンザに訊くのでしょうか」とすべきです。 言語明瞭、意味不明の典型例です。 さらに新型インフルエンザ対策の現状を読売新聞はこう伝えています。 新型インフルエンザ対策 タミフル頼み限界 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20051206ik08.htm 国は新型インフルエンザの感染者数を国民の25%と想定して2500万人分の備蓄を計画、タミフルを巡り各国や国内の綱引きが過熱している。 だが、この薬が新型ウイルスに確実に効く保証はない。 新型インフルエンザへの変化が懸念されている鳥インフルエンザ「H5N1」に対し、タミフルは作用メカニズムから効果が予想され、試験管内の実験でもウイルスの増殖を防ぐことは確認されている。 こうした理論上や実験では有効でも、人に使うと効果がみられない薬も多く、タミフルの場合も人で確かめなければ分からない。 鳥から人への感染が起きた東南アジアで、治療に使われたケースもあるが、効果があるとされる発症2日以内に使った症例が少なく、有効性は証明できていない。 最後に、新型インフルエンザワクチンについての厚生労働省のホームページでの見解です。 新型インフルエンザに関するQ&A http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html Q: 新型インフルエンザにワクチンは効きますか。 A: 通常のインフルエンザの予防接種は、新型インフルエンザとはウイルスの種類が異なるため、感染防止の効果はほとんど期待できないと考えられています。 新型インフルエンザに対して効果が期待できるワクチンとして、プレパンデミックワクチンとパンデミックワクチンがあります。 プレパンデミックワクチンとは、新型インフルエンザウイルスが大流行(パンデミック)を起こす以前に、トリ-ヒト感染の患者または鳥から分離されたウイルスを基に製造されるワクチンを指します。 政府は現在流行している鳥インフルエンザウイルス(H5N1)に対するワクチンをプレパンデミックワクチンとして製造、備蓄しています。 パンデミックワクチンとは、ヒト-ヒト感染を引き起こしているウイルスを基に製造されるワクチンです。 プレパンデミックワクチンと異なり、ワクチンの効果はより高いと考えられます。 ただし、パンデミックワクチンは実際に新型インフルエンザが発生しなければ製造できないため、現時点で製造、備蓄は行えません。 というように、現在のインフルエンザワクチンが完璧でないのと同様ないしはそれ以下のはずです。 現在のインフルエンザワクチンでさえ、私達医療提供側は予想株と実際の流行株を知らされないまま毎年「粛々と」予防接種を行っているのが現状です。 誰一人文句を言わないのが不思議です。 読んでいただいてありがとうございます。 コメントお待ちしています。 他にもブログがあります。 ふくろう医者の診察室http://blogs.yahoo.co.jp/ewsnoopy (一般の方または患者さん向き) 葦の髄から循環器の世界をのぞくhttp://blog.m3.com/reed/ (循環器科関係の専門的な内容) 井蛙内科開業医/診療録http://wellfrog.exblog.jp/ (内科関係の専門的な内容)
by wellfrog2
| 2008-11-24 00:46
| 感染症
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