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井蛙内科開業医/診療録(2)

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2008年 12月 05日

骨粗鬆症とビスフォスフォネートの選択

Japan Medicineの記事で勉強しました。

Interview 国立長寿医療センター機能回復診療部 原田敦部長に聞く
骨密度と既往歴でビスフォスフォネート選択が第一
骨粗鬆症の治療戦略目標戦略は大腿骨頸部骨折の減少
 骨粗鬆症は高齢女性の大腿骨頸部骨折を誘発するリスクが高く、高齢者介護の基本的課題として、今後の関心が高まる疾病だ。治療戦略は大腿骨頸部骨折の発生リスクを減らす予防的戦略が中心となるが、薬剤に関してはグレードを3つに分類したガイドラインが周知されている。国立長寿医療センター機能回復診療部の原田敦部長に、薬物治療を中心に最近の治療戦略を聞いた。

—骨粗鬆症治療の基本的な現状は。

原田氏 治療薬の選択は、治療の目的をいかに効率よく、また有害事象なく使うかということが戦略の基本となります。骨粗鬆症薬の場合に目標となるのは、例えば血圧や高脂血症が脳梗塞や心筋梗塞の予防的治療であるように、高齢期の骨折予防ということになります。

 高齢期骨折予防も脳梗塞や心筋梗塞が同じ梗塞でも部位が違うように、骨粗鬆症も骨折の部位によって重症度が違います。大腿骨頸部骨折という骨折が最も重症な骨折ですが、これは80代と90代の女性に多く、男性も90代の男性で増えている傾向が見られます。

 この骨折発生は5年ごとに調査が行われていますが、高齢者の数が増えているだけでなく、発症する頻度も高まっています。2002年調査では11万7900人ですが、07年には16万人を超えた。予防的戦略としては大腿骨頸部骨折を減らすということが基本的戦略になります。

骨折歴、骨密度で治療薬選択

 高齢前期、60代からに多い骨疾病としては背椎骨折があるのですが、これは75歳を超えると減ってきます。

 その意味では75歳を超えた女性には大腿骨頸部骨折の予防が第一。薬物治療としては、<表>に示されたグレードAのうち前2つのビスフォスフォネート製剤になります。

 大腿骨頸部骨折を予防することを当面の目標とすると、年齢と性を考えて骨密度を測定し、グレードAを選択する。

 患者背景については骨密度の測定と、臨床的リスクとして、骨折歴があるということが非常に大きな要素となる。75歳以上の人がいたら、骨密度を測って若い人の80%程度になっているかどうか、それに手首などの骨折経験があるということになると、当該の患者さんは骨粗鬆症と診断できます。

 ちょっとしたことで転んだりしても骨折リスクは非常に高い。こういう患者さんは事情が許す限り、積極的な治療、グレードAの薬物投与に踏み切ります。

 そういう目標が立ったら、アレンドロネート、リセドロネートというこの2つの第2世代ビスフォスフォネート製剤を使います。エビデンスもしっかりしているし、やはりこの2剤を使うことが第1選択です。

—重視すべきは。

原田氏 現状では第1には骨密度測定を行うことにしています。それもリスクの高い大腿骨頸部の骨密度を重視します。

 手首や腰椎といったところで測定すると密度にずれがあります。ただこの測定手法の普及度は低くて、一般の開業医の先生では測ることができる環境はありません。

 施設が限られますから、正確に測ることを重視するならそういう施設への紹介が予防的側面からは大きな因子となります。第2はやはり既往歴。持ち上げただけで手首を骨折したとか、非常にリスクは高い。

 骨密度が若い時の70%程度で、既往歴があるという場合は「重症骨粗鬆症」となります。その場合は、仮に年齢が60代であっても、グレードAのうちのビスフォスフォネート系薬剤を処方することになります。

 2剤のうちのどちらを使うかは、その患者さんの状態によります。胃腸障害があることや、コンプライアンスの問題などを考慮します。この2剤のいいところは、週1回服用製剤だということです。

 週1回、朝すぐに水で服用し、30分間は横にならないことという決まりがありますが、長期で服用回数が長いとコンプライアンスの問題が出ますが、週1回であればそのリスクは低いといえます。

難しいコンプライアンス上の課題

—留意すべき問題点は。

原田氏 骨粗鬆症治療の薬物治療の隘路(あいろ)としては、患者さんが非常に高齢だということです。リスクの高い女性は75歳以上で、中には認知症の方もいるし、治療への理解が低い傾向にあります。

 そうした中で、最近、米国で発表された2つの論文で、ゾレドロン酸の年1回静注が効果があるという報告があります。コンプライアンス面からいうと、こうした薬物療法開発に期待はあります。

 基本的には、薬物治療戦略は骨密度測定を検診などできちんと行い、既往歴を加えてビスフォスフォネート製剤の投与を行えば、骨粗鬆症は減ります。実際、カナダ、フィンランドではこうして減り始めています。日本でもそうした診断の体制を充実することが前提になる。

 数年前の調査では、臨床医の骨折手術後のビスフォスフォネート処方は27%程度、その1年後では10%という調査結果がありました。しかし現在では、薬物治療に関するガイドラインも普及しています。臨床医の間でもビスフォスフォネート製剤の使用に関する理解は進んできています。

寝たきりリスクを回避するメリット

 グレードAのうち、塩酸ラロキシフェンは脊椎骨折のケースのように比較的若い年齢層のリスクに対して、使いやすく積極的に使用します。

 グレードCのうち、女性ホルモンは大腿骨頸部骨折に関してはエビデンスとしては本来グレードAとなるものですが、子宮がん、乳がん、脳梗塞などの有害事象リスクが高いので、使われません。カルシウム製剤に関しては、一昨年からあまり使いすぎるとかえって骨粗鬆症リスクを増やすという論文が相次いで報告されています。欧米と日本ではカルシウムの推奨摂取量が違いますので、あまり心配することはないし、カルシウム製剤と活性型ビタミンD3を併用することは一定の効果はあるとされています。基本的に日本人のカルシウム摂取量はまだ少ないですから、摂取を増やそうという機運を阻害する必要はないといえるのではないでしょうか。カルシウム摂取量の課題については、国内の専門家間ではこれからの論議になります。


■治療薬剤の推奨の強さ
 総合評価
アレンドロネート       グレードA
リセドロネート        グレードA
塩酸ラロキシフェン グレードA
活性型ビタミンD3製剤   グレードB
ビタミンK2製剤       グレードB
カルシトニン製剤      グレードB
カルシウム製剤       グレードC
女性ホルモン製剤      グレードC


http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200810/series4.html
出典 Japan Medicine 2008.10.31
版権 じほう社


by wellfrog2 | 2008-12-05 00:02


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